ハリー・ポッターと魔法生物の王   作:零崎妖識

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冷戦とレイブンクロー戦と

談話室でうたた寝していると、急に大声が聞こえてきて目が覚めた。

 

「見ろ!血だ!スキャバーズがいなくなっちまった!」

 

階段の方を見ると、顔を怒りで赤くしたロンが、シーツを手に立っていた。真っ白だったシーツには所々に赤い血がついている。

 

「床にはオレンジ色の猫の毛が落ちてた!この中でオレンジ色の猫を飼ってるのはハーマイオニー、君だけだ!クルックシャンクスはとうとうスキャバーズを襲ったんだ!」

 

……えーと、要するに部屋からスキャバーズが消えてて、シーツには血痕、床にはオレンジ色の猫の毛があった。この寮でオレンジ色の猫はハーマイオニーのクルックシャンクスのみ。だからスキャバーズはクルックシャンクスに襲われたはずだ、と。

ハーマイオニーは必死に否定してるけど、ロンは聞く耳を持っていない。次第に、ハーマイオニーまでカンカンに怒ってしまった。

 

「絶対に違うわ!クルックシャンクスは賢いのよ。あなたのネズミを襲ったりなんかしてないわ」

 

「だったらこの毛はなんなんだよ!ほら、頭がいいんだろう?説明して見ろよ!」

 

「クリスマスの時からそこにあったんじゃないの?もしくは、それよりもずっと前から。それに、ちゃんと隅々まで探したのかしら?ベッドの下とかにはいなかったの?」

 

「いなかったよ。クローゼットの中もトランクの中もコートのポケットも全部探した。それでもいなかった!君の猫が食べたんだからね!」

 

「だから、違うって言ってるでしょう!それに、ホグワーツには縦横無尽にパイプが通ってるわ。そこに逃げたんじゃないかしら?」

 

「ありえないよ!あいつにそこまでの体力はない!」

 

「ありえない、なんてことはありえないのよ。覚えておきなさい」

 

「ふんだ!もう君のことなんて知らないよ!」

 

「結構。私も無視させてもらうわね。あとで泣きついてごめんなさいって言っても知らないんだから」

 

これは……修羅場ってやつかな?ともかく、ロンとハーマイオニーは冷戦状態になってしまったようだ。ハリーはロンの味方をするらしい。

あたしは部屋に戻ってキーパーを呼び出した。何をするのか?もちろん、スキャバーズの捜索だ。ハーマイオニーの言った通りにパイプに逃げ込んでるか、もしくは廊下を徘徊しているか。もしかしたら森を彷徨ってるかもしれない。でも、絶対に見つけ出す。シリウスの無罪のために。あと、あの三人が冷戦状態だと談話室の空気が重たいのでさっさと仲直りしてほしいし。

 

 

 

 

数日経っても見つからず、どうしたものかと考える。ただし、今いる場所は寮室じゃない。ここは──

 

「やったれ、ハリー!」

 

「速い、速いぞファイアボルト!さすがは炎の雷!あらゆる動きでチャン選手のコメット号を翻弄しています!コメット号では絶対に、ファイアボルトには敵わないでしょう!」

 

「ジョーダン!あなたはいつからファイアボルトの宣伝係になったんですか!あれが素晴らしい箒だということは認めますが、ちゃんと真面目に実況しなさい!」

 

──グリフィンドール対レイブンクロー戦真っ最中のクィディッチコートだ。グリフィンドールがリードしていて、初心者のあたしでもレイブンクローに勝ち目がないことがわかる。

あ、ハリーが急降下して──急に上昇した。相手側のチョウ・チャンは急降下を続けている。

 

「あっ!」

 

チョウが下を指差す。そこには、

 

「なんでここにいるの!?」

 

あたしが、クィディッチコートには近寄るなと頼んだはずの吸魂鬼が三人、ハリーを見上げ立っていた。

 

「お願いが伝わってない吸魂鬼がいた?いや、それはないはずだし……もし伝わってないのならスリザリン戦の時も寄ってくるはず。だとしたら……誰かの変装?」

 

口元を手で覆い考え込んでいると、ハリーが杖を取り出し、吸魂鬼(仮)に向けるのが見えた。

 

「〈守護霊よ来たれ(エクスペクト・パトローナム)〉!」

 

ハリーの杖から白銀のもやが溢れ出て、吸魂鬼の方に向かう。吸魂鬼たちが避ける暇もなく直撃して、ハリーはそれを見ずに上昇を続けた。

吸魂鬼のフードは脱げて、ドラコ、クラッブ、ゴイルの顔が出てきていた。なるほど、あいつらの変装だったわけか。

 

「ポッター選手、スニッチを獲ったー!試合終了、グリフィンドールの勝利です!」

 

リーの声と共にフーチ先生が笛を鳴らす。

マクゴナガル先生は解説席を下りて、偽吸魂鬼たち──クラッブ、ゴイル、ドラコ、ドラコを肩車していたらしきマーカス・フリント──の前に立ち、(オーガ)も裸足で逃げ出すんじゃないかってぐらいの形相をしていた。

 

「まったく、浅ましい悪戯です!試合中の選手に危害を加えようだなんて言語道断!スリザリンから五十点減点します。ああ、言い間違えました、一人五十点です。もちろん、この悪戯に加担した生徒全員。実行犯の四人は処罰を与えます。また、このことはダンブルドア先生に報告させてもらいます。ちょうどいらっしゃったようですので、あなたたちはここで待機していなさい。逃げようなどと思わないように。減点と処罰を増やしますからね」

 

一転して真顔になったマクゴナガル先生がダンブルドアに報告し、四人を連れて行ったところで、グリフィンドール全体から大歓声があがった。フレッドとジョージがキッチンから料理を取ってくることを計画しているし、ハーマイオニーも笑っている。うん、清々しいね。

 

 

……あとであの四人にはマラクローでお仕置きだけど。




現在、活動報告にてアイデア募集をしています。詳しいことは活動報告「魔法生物の王:アイデア募集」をご覧ください。

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