ハリー・ポッターと魔法生物の王   作:零崎妖識

32 / 114
校長先生からのお知らせ

数分後、先生は戻って来た。あたしが撤収をお願いした後、吸魂鬼たちはすぐに汽車から出て行ったそうだ。被害はほとんど出ていない。気分が悪くなったり、調子が悪くなったりしたのが十数名、トラウマを刺激されたのが数名、尊厳を失いついでに気絶したのが一名、ぶっちゃけるとドラコだそうだ。ドラコ()じゃなくてドラクレア(小竜)とでも名乗ればいいのに。……うん、だめだ。ドラクレアの方がかっこいい。ドラコには似合わない。あと、吸血鬼の祖、ドラキュラの語源だし、ドラキュラを名乗ったヴラド・ドラクレア……串刺し公ヴラド・ツェペシェは偉大な人だし。悪魔だとかなんだとか言われてるけど。

 

「あと十分でホグワーツに着く。そこで、ダンブルドア校長から何か発表されるだろう」

 

ルーピン先生が言う。彼の言う通りに、十分で汽車はホグズミード駅に到着した。まだ雨は降り止まない。

ハグリッドは一昨年、去年と同じように、一年生を連れて行った。今年も湖を渡るのだろう。今年の一年生は大変だね。冷たい雨の中、水かさの増した湖を渡るなんて。誰か落っこちるんじゃない?

あたしたちはセストラルの牽く馬車で城に向かう。城の入り口には吸魂鬼が二体、警備についていた。窓から少しだけ見える空にも、何体か。

馬車から降りると、ドラコが立っていた。

 

「やあ、ポッター。吸魂鬼はどうだった?怖かったかい?ウィーズリーやグレンジャーと一緒に気絶したんだろう?優秀な僕とは違ってね」

 

ドラコが色々と言ってくるが、その後ろからコリンのカメラを持ったフレッジョが近づいてくるのに、彼は気がついていない。

 

「ようマルフォイ。この写真要るかい?」

 

「君が気絶した写真なんだけど、一枚十シックルでどうだ?」

 

「ちなみに千枚ほど刷ってあるな」

 

「僕たちには無用の長物だけど」

 

「お前はこれに出回ってほしくはないんじゃないのかな?」

 

「明日から販売開始するつもりだけど、君には特別に今日から売ってやろう」

 

「「さあ、どうする?」」

 

「なっ……いつの間に!ウィーズリー、返して貰おうか!」

 

「おいおい、今言っただろう?」

 

「これは俺たちにとっては商品なんだ」

 

「返すんじゃない、売るのさ」

 

「君にな」

 

「ちっ……千枚だったか。一万シックル……五百八十八ガリオンと四シックルか。ほら、こんな大金お前たちは見たことがないだろう?」

 

「「毎度あり!」」

 

包みを手にしたフレッジョが城に歩いていくけど、あの笑みを見る限りネガか何かでもあるんだろうなぁ……マルフォイの運勢は本当に悪くなってるようだ。

城に入り、大広間へと歩いていく。大広間に到着したところで、ハーマイオニーがマクゴナガル先生に呼ばれて出て行った。

 

 

 

組分けは去年と同じだったけど、今年は組分け困難者は居なかった。元々五十年に一人ぐらいだそうだし、去年一昨年が異常だっただけか。

組分けが終わったところで、ハーマイオニーとマクゴナガル先生が帰ってくる。ハーマイオニーは、組分けを見逃してしまったと悔やんで居た。

ダンブルドア校長が立ち上がって、話し始めた。

 

「おめでとう!新学期おめでとう!さて、みなにいくつかお知らせがある。後に回すよりも、先に言ってしまってから食事を取るのが良いじゃろうて。

まずは、みなもホグワーツ特急での捜査があったからわかっているじゃろうが、わが校は、現在、アズカバンから吸魂鬼たちを受け入れておる。儂は反対したのじゃが、知っての通り、凶悪犯が脱走してしもうたそうでのう。大臣から直々に、ホグワーツにディメンターたちを置いてくれと頼まれてしもうたのじゃ。

吸魂鬼たちは学校の入り口という入り口を固めておる。あの者たちがいる限り、誰も許可無く学校を離れてはいかんぞ。誤魔化しや変装は効かんし、透明マントですら意味はない。言い訳やお願いを聞き入れることもなかろう。──万が一、そんなことができる者がおった場合には、出来るだけ丁寧な手段で、無理やり戻ってもらうことになるかのう」

 

最後の一言はあたしの方を向いてたし、完全にあたしが勝手に森とかに行くと思ってる。明日あたり、いや、今夜にでも使い魔を使ってシリウスのことを話さなきゃ。

 

「さて、つまらない話はこれまでとし、楽しい話に移るとしよう。ご馳走はまだ待ってくれるかな?

今学期から新たに二人の先生をお迎えすることになった。まずはルーピン先生じゃ。『闇の魔術に対する防衛術』を担当してくださる。もちろん、ピクシーに放り投げられるようなことにはならんと言っておきましょうぞ」

 

まばらに拍手が起こった。スネイプ先生はむすっとしている。ジト目だ。ジニーやハーマイオニーなら可愛いだろうけど、男にジト目されても困る。男の娘ならともかく。

 

「もう一人の新任の先生じゃが、これまで『魔法生物飼育学』をお教えしてくださって居たケトルバーン先生が前年度末を持って退職なさってしまった。手足が一本でも残っているうちに余生を楽しみたいとのう。その代わりに、森番をしてあるハグリッドが教鞭をとってくださることになった。喜ばしいことじゃ」

 

今度は大きな拍手が──主にグリフィンドールから──巻き起こった。確かに、怪物本だなんて指定するの、よっぽどの怪物好きぐらいだよね。ハグリッドとか、あたしとか。

 

「さて、これで大事な話はいい尽くしたようじゃな。あとは諸々の注意事項じゃが、後で寮監から受け取ってくだされ。では、宴を始めようぞ!」

 

ダンブルドア校長が手を叩き、料理が出現した。相変わらず美味しい。デザートも豊富だし。スネイプ先生が何かの薬品をダンブルドア校長の盃に入れようとして校長が必死に阻止してるけど、なんなんだろう。

最後の料理を食べ尽くし、就寝時間の宣言が出された。パーシーを先頭にグリフィンドール寮まで歩く。その時にハリーに聞いたことだけど、ハグリッドは感極まって泣いてたらしい。ケトルバーン先生が辞めた後、まっすぐにハグリッドの小屋にダンブルドア校長は向かったそうだ。泣いてしまってもおかしくない。

おっと、もう『太った婦人(レディ)』の前についてた。

 

「合言葉は?」

 

……あれ?パーシーは?

周りを見渡してみると、後ろの方で遅れてる一年生を引っ張ってきてた。案外優しいのか、監督生としての意識からか。

 

「道を開けてくれ!僕は監督生だ!

新しい合言葉は『フォルチュナ・マジョール。たなぼた!』」

 

「あーあ、覚えられるかなぁ」

 

ネビルが悲しげな声を出した。合言葉で入るのはグリフィンドールとスリザリンだけらしいし。ハッフルパフは独特のリズムが鍵になってるそうだ。レイブンクローは謎かけ。合言葉はともかく、ハッフルパフ・リズムやレイブンクローの謎かけ、それぞれの寮の入り口を知っていたママは本当に何をしていたんだ。……あ、ママはレイブンか。知識欲を満たしたくて探し出したんか。納得。




スネイプがダンブルドア先生に服用させようとしていた薬は、『あらゆる菓子、デザート類を食べられなくなる薬』。効果は一年ほど。ダンブルドアに呑ませるのは阻止され『消失』させられた。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。