ハリー・ポッターと魔法生物の王   作:零崎妖識

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三年目はペットを侍らせ
コインヘン


海、だー!

今、あたしとママ、非番のヨハンナさんの三人で海に来ていた。もちろん、コインヘン(仮)を捕獲もしくは討伐するために。

 

「神話の怪物に興味あるからついてきたが、策はあるのか?捕まえるにしても殺すとしても」

 

「ないわね。リアスが彼もしくは彼女を魅了できるかどうかが鍵よ」

 

「わお、責任重大」

 

多分コインヘンと仲良くなることはできるだろうけど、そもそもここに来るのかな?

 

「んー、多分しばらくしたら来ると思うけどね。一週間も居れば確実に。だってさ?近くに好敵手(ライバル)の骨があるんだよ?私だったら絶対に見に来るね」

 

あー、そういえばあたしの杖の芯材って海獣クリードの骨だっけ。確かに、神話の時代から生きてるコインヘンなら来るかも。

この日は海に怪物が現れることはなく、あたしたちは近くの宿に戻って行った。

 

 

 

二日後、あたしは海の上にいた。ママがボートを借りて、海へ漕ぎ出したからだ。

 

「海の上なら彼も来やすいんじゃない?」

 

ママの目はキラキラしている。ママもコインヘンに会いたいようだ。一矢報いたいってのもあるんだろうけど。

昼になっても何も起きなかった。一度海蛇(シー・サーペント)が近くを通って行ったぐらいだ。

 

「私たちの言う海蛇とマグルのウミヘビって違うのよね。マグルのはもっとちっちゃい、海に適応した蛇なのよ」

 

「そうなんだ。どんなのなんだろ」

 

「そこに泳いでるけど」

 

確認したら、エラブウミヘビって種類だった。蛇の蒲焼は美味いと聞いたので捕獲しておく。ごめんね?後で美味しくいただきます。

手に持ったウミヘビをジーっと見ていると、何か変な感覚がした。舟の下を確認して見ると、一面真っ黒。とてつもなく巨大な何かが舟の下に居た。

影があたしたちの乗る舟を背中に乗せたまま、海上へと浮かび上がる。骨のような、鱗のような背中で、幅は広く長い。狗頭で、猛犬というのが一番合っているだろう頭。下半分は見えないけど、身体中古い傷だらけだ。

 

「あー、コインヘンで合ってるわこれ……」

 

「え?」

 

「いや、クー・フーリンって『クランの猛犬』って意味なんだけど、クー(Cu)の方がアイルランド語で犬って意味らしいの。で、複数形がコイン(Coin)。だから、この狗頭の怪物はコインヘンで間違いないって思うのよ」

 

なるほど。それを踏まえてもう一度狗頭を見てみる。キョロキョロと辺りを見渡しているようだ。何か探してるのかな?

そーっと背中に下りて、首筋まで歩く。鈍いのか知らないけど、全く気づかれない。頭の上までよじ登ったところでようやく気づかれた。

 

「バウッ!」

 

うん、犬だ。

 

「【あなたがコインヘンかなー?】」

 

【グルル……ニンゲンはそう呼んでいるようだな。……待て、貴様が我らの王とやらか?】

 

「【?よくわかんないけど】」

 

【わからんのならいい。あの女……影の国の女王が我のところに現れて「獣の王が現れるらしいぞ」と告げただけだからな】

 

スカサハさん、こんなとこにも。影の国の門を離れられないんじゃなかったっけ?

 

【精神体で来て居たからな。まあいい。この近くに彼奴の……クリードの存在を感じたのだが、貴様は何か知らんか?】

 

「【あたしの杖の芯材がクリードの骨だって。作った人がスカサハさんから骨を分けて貰ったんだってさ】」

 

【……そうか】

 

コインヘンはどこか寂しげに沈みゆく太陽を見つめた。

そうだ、もう一つか二つ聞きたいことがあったんだ。

 

「【クリードの子孫も居るんじゃないっけ?】」

 

【彼奴らは確かにクリードの息子どもで、我が面倒を見て居た時もある。今はどこぞの深き海にて泳ぎ回っておるよ。確か……ニンゲンの言うマリアナ海溝というところか】

 

マリアナ海溝……世界で一番深い海。そこにクリードの子孫が……。

 

【彼奴らにも貴様のことは言っておこう。面白い反応をしてくれるかも知れぬからな】

 

「【お願いね!あ、あともう一つ!なんかウザい人を襲わなかった?】」

 

【ウザいニンゲン……?ああ、何やら逃げようとして居たが我の進む方向と同じだったのでな。そのまま少し追ってみたが、いきなり喚いて攻撃してきおった。で、面倒なので腕を食いちぎって尾で吹き飛ばしたのだよ。死んでいるかも知れんなぁ】

 

「【どっこい生きてる。重症だけど】」

 

コインヘンは驚いて居た。自分の尾の一撃を喰らって生きてる人間はほとんどいないそうだ。それこそスカサハさん以下アルスターの者ぐらいらしい。

 

【呼びたければいつでも呼べ。我は貴様の力となろう。陸には猪も居るというが、其奴にも会ってみろ。きっと力となってくれる。

あと泳いでいる最中にこいつを丸呑みしてしまったのだが、要るか?】

 

コインヘンはそう言って何かを吐き出した。ママが回収したそれを確認すると、大きな黒犬だった。

コインヘンに海岸まで連れて行ってもらい、待ち構えていたヨハンナさんと合流する。ヨハンナさんは目を輝かせていた。神秘部はこんな人ばかりだ。ママのチームだけかもだけど。

その日に配られていた日刊予言者新聞を見てみると、ウィーズリー一家がガリオンくじに当たってエジプトへ行ったとあった。ウィーズリー一家ってお金ないんだっけ。良かったね、ロン。




コインヘンの姿がわからなかったので、どこかに載っていたCoin=Cu(犬)の複数形という話を使わせていただきました。さて、クリードの方の姿はどうしよう。

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