二日目の朝、広間に大声が響いた。ロンたちの方だ。
見ると、赤い封筒が浮いていた。あー、『吠えメール』か。お疲れ様。すぐに封筒は燃え上がって灰になった。
まあ、あたしには関係のないこと。そう思いながらマクゴナガル先生から時間割を受け取った。
スプラウト先生の薬草学が最初の授業なんだけど、ロックハート先生がスプラウト先生について来てる。迷惑そう。うん、ロックハートさんに先生なんてつけなくても良いよね。
みんながこれまで入らなかった三号温室に入ったけど、ハリーだけロックハートさんに連れ出されてた。スプラウト先生が不機嫌そう。
少ししてハリーが入ってくる。ようやく、授業が始まった。マンドレイクの植え替えだって。意思があっても、植物とはなぜか話せないんだよね。前にママとヨハンナさんに暴れ柳を見せられたけど、話が通じなかった。というか、声も聞こえなかったし、届かなかった。
スプラウト先生の指示で耳当てを付けて、マンドレイク植え替えの様子を見る。スプラウト先生は簡単そうにやってるけど、実際難しそうだ。
ハッフルパフの三人とグループになり、植え替えを始める。やっぱり、大変だった。外に出るのを嫌がって、出たら出たで戻りたがらない。これをあっさり出来るなんて、スプラウト先生って凄い。
みんな汚れを落とし、マクゴナガル先生の変身術の授業に向かう。コガネムシをボタンに変える簡単な課題だったけど、みんな去年一年間学んで来たことを忘れてしまったようだ。ハーマイオニーは出来てたけど。ロンの杖が煙を上げてたりして、おかしくなってたりもした。
午後は闇の魔術に対する防衛術がある。教室に向かうと、すでにハリーが居た。ロックハートさんの本を全部目の前に積んでいるところを見ると、何か嫌な目にでもあわされたかな?あたしはハリーの近く、一番後ろの方に座った。
クラス全員が着席すると、ロックハートさんは咳払いして注目を集めた。そのままネビルに近づいて、本を一冊持ち上げて掲げる。
「私です」
ウィンク。顔は良いと思うんだけど……どこか残念。
「ギルデロイ・ロックハート。勲三等マーリン勲章、闇の力に対する防衛術連盟名誉会員、そして──」
あたしは聞くのを諦めた。自慢話は聞き流すに限る。
いきなり、テストペーパーが配られた。内容は……
1 ギルデロイ・ロックハートの好きな色は何?
よし、白紙で出そう。三十分間、あたしは机に突っ伏して眠りこけた。
三十分後、ハリーに揺すられて目を覚ました。
「ありがと」
「どういたしまして」
ロックハートさんは採点中。ハーマイオニーが満点を取ったらしい。ミーハーなんだね。
ロックハートさんはそのまま、覆いのかかった籠を出して来た。
「気をつけて!魔法界の中で最も汚れた生き物と戦う術を授かるのが、私の役目なのです!」
魔法界の中で最も汚れた生き物……?ボガートならほとんど何にでも変身できるし(相手のイメージが必要だけど)、吸魂鬼は幸せな感情を吸い取るらしいし、クトゥルフどもなら精神持ってかれるし、それよりも人間(特にアンブリッジって人)が一番危険だと思うけどねぇ。
あ、ロックハートさんが覆いを取り払った。
「捕らえたばかりのコーンウォール地方のピクシー小妖精」
……微妙。非常にビミョーなんですが。全く危険じゃないし、可愛いのに。
「さあそれでは!君たちがピクシーをどう扱うかやってみましょう!」
籠の戸が開く。
ピクシーたちは色々な悪戯を始めた。ネビルを釣り上げたり窓ガラス破ったらなんだり。あたしは被害なし。ピクシーたちが避けて行ってる。
「さあ、さあ、捕まえなさい。たかがピクシーでしょう?〈
ロックハートさんが呪文を唱えるけど全く効果なし。杖を取り上げられて捨てられてた。
終業のベルが鳴ると同時に、みんなが出口に押し寄せた。それが収まってきたころ、
「さあ、そこの四人にお願いしよう。その辺に残ってるピクシーを籠に戻しておきなさい」
と、ロックハートさんが外に出て、扉を閉めてしまった。もう「さん」もつけなくて良いや。
残って居たのは、ハリー、ロン、ハーマイオニー、あたし。
「……あの人信用できないわ。【籠に戻ってちょうだい?】」
あたしの言葉で、ピクシーたちは籠に戻っていく。動物言語を聞くのが初めてなハーマイオニーはいきなり質問してきた。答えられる分は答えたけど、満足してなさそう。
去年もつまらなかったこの授業が、さらに憂鬱になった気がする。三年生になったら魔法生物飼育学が取れるってハグリッドから聞いた。早く来年になれば良いのに。