ハリー・ポッターと魔法生物の王   作:零崎妖識

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誕生

「予言の子が産まれる年、魔法生物の王が産まれる。その者は人以外の全ての生物を従え、光にも闇にも染まるであろう」

ダンブルドアは困惑していた。一度予言を聞き、目の前のシビル・トレローニーが正気に戻った直後、再び予言をしたのだから。

予言の子、今はまだ見ぬ子供がヴォルデモートを打ち倒す。しかし、恐らくは再び、ヴォルデモートが戻ってくる。

その時に、彼/彼女と同い年に、光にも闇にも染まるであろう二人目の予言の子が産まれる。その子が我らの力となってくれるのなら……

ダンブルドアはその子を闇に落とさず、来たるべき戦いーーヴォルデモートとの最終決戦で敵対しないよう、ホグワーツで育てることに決めた。

 

 

その年の七月末、一つ目の予言に当てはまる子が二人産まれた。

ハリー・ポッターとネビル・ロングボトム。

 

 

そして、その年の十月末、ハロウィンの日。魔法省にとって、魔法界にとって驚くべきことが起きた。

人の感情を吸い取る闇の生物、吸魂鬼。人に懐かぬはずの彼らが、一人の赤子を抱え、崇めていたのだ。

前代未聞の事態に、魔法省はダンブルドアに指示を仰いだ。そのダンブルドアは彼女をホグワーツに入れると言った。

では、それまではどうするのか。

身寄りのない少女は、魔法省に勤める魔女に預けられた。エリザベート・クリミアと言うその魔女は、彼女を自らの養子とし、名前を与え、成長させていった。

 

エリザベートが預かった少女、リアス・クリミアは驚くべき才能を見せた。

魔法界では珍しい蛇語使い(パーセルマウス)。彼女はそれを使え、さらに、他の生物とさえ話して見せた。それこそ、人に懐かないような生物でさえ、人間以外の生物全てと。

魔法生物の持つ毒も効かず、どのような猛獣であろうと彼女には従う。

魔法生物の王と呼ばれた少女は、この年、ホグワーツに入学する。

 

 

「ママ、ホグワーツからの手紙届いたよ!」

「あら、お祝いしなくっちゃ。まずはホグワーツで必要な物を買って、特大のケーキも買わないと」

「ケーキはいいから、みんなの分のご飯買わないと」

はしゃぐ少女の周りには、多種多様な生物がいた。犬、猫、烏、鷲、鷹、梟、蛇、人に懐くことがないはずのドラゴンまで。クローゼットがガタガタいっているのはまね妖怪(ボガート)だろうか。

「この数年で、動物園みたいになっちゃったわねぇ」

「みんな可愛いし、いい子だから問題なし!」

胸を張る少女の頭を、女性が撫でる。

少女の体質ーー人間を除く、あらゆる生物に好かれると言うその体質を前に、女性は驚くばかりだった。討伐記録が全くと言っていいほど存在しない、マンティコアやヌンドゥですら従え、さらにはヌンドゥが撒き散らす病気を、少女の一声でヌンドゥが押さえ込んだのだから。

「そうね。それじゃあ、漏れ鍋に行きましょう。みんなはお留守番しててね?おやつ買ってきてあげるから」

女性は少女の手を掴み、その場から姿を消した。行き先は、イギリス魔法界への入り口の一つ、漏れ鍋。

 

 

さて、一つの予言が連れてきた、存在しなかったはずの一人の少女。彼女はホグワーツで何を学び、どう暮らしていき、どう、ハリー・ポッターに関わっていくのか。

それは、まだ誰もわからない。




新作なのです。

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