第十九章 詩音君の受難
「…っっっつっかれたー!」
バターン、と詩音はやっと手にしたベッドの感触を全身に感じる。
あの後、宗玄にお金を要求したがそんなものはないと突き放され昨日は公園のベンチを寝床に、今日は金を稼ぐためにアルバイトをなんとか見つけ出し気のいいセイバーと一緒に働き、なんとか宿に泊まれ、詩音は三食ぐらいは食べられるだけのお金を手にした。
「もうやだ。1歩も動きたくない。今日は寝ようそうしよう。」
誰に言い聞かせるでもなくそう呟くと深い眠りに誘われた。
「…ター。マスター。」
遠くで誰かが呼んでいる声が聞こえる。だがこの感触は詩音を掴んで離さない。さらに毛布があるのだ。これが天国以外のなんであろうか。まだだ。俺はここにいるんだ。
そんな甘えごとなど許さないと言うようにセイバーは一向に起きようとしない詩音の前に何処で手に入れたのか服の中から不意に黒板なるものを取り出すと、爪でそれを引っ掻く。
きいぃぃ、と嫌な金属音は詩音を天国から無理やり現実に引き戻した。
「だぁぁ!なんだ!俺からこの天国を奪うに値するものなのか!」
「いや、バイトの時間だよ。マスター、さあ張り切って行こう。」
詩音の顔が真っ青になる。
「嫌だァァァ」
叫ぶ詩音だがその声は何処にも届かなかった。
第二十章 雑談
セイバーと一緒にバイトが終わった時はすでに陽は紅く空は緋色に染まっていた。
「お疲れマスター。どう?アイスでも買ってこようか?」
柔和な口調でセイバーから労いの言葉がかけられる。
「…いる!アイス、、ピノがいいな。」
「分かった。買ってこよう。」
セイバーは駆け出す。詩音と同じことをしてあれほどの体力があることに英雄としての評価を見直した。
少ししてセイバーがコンビニから袋を持って出てきた。
「ほい、良くやったよマスター。僅かだがご褒美だよ。」
詩音は受け取ると歩きながら封をあける。口の中に甘い味が広がる。近頃の金欠で詩音にはアイスのような贅沢が出来なかった故に尚更ピノがおいしい。
「すまないなー、もう少し収入があればアイスぐらい買ってやれるんだけどなー。」
セイバーは申し訳なさそうに言った。
セイバーは詩音のサーヴァント内で最も金銭的に信用出来るため、経済の事はセイバーに一任してあった。
「いやいや。これはセイバーのせいじゃないから気にする必要はないよ。」
セイバーはそれでも頭を垂れていた。
(…同じ英霊でもランサーだと金をギャンブルか酒にしか使わんのよなー。なんでこうもちがうものなのかねー。)
詩音の胸のうちには先日良い儲け話があると金をせびられた挙句それを半日でパチンコにつぎ込んだ愚か者の顔を思い浮かぶ。
と、その時、その愚か者が横に現れた。
「ようマスター。うまそーなもん食ってるじゃねーか。少しくれ!」
ブチり、と詩音の血管が切れる音がした。
「ふざけんな!これが欲しいなら働け!セイバーがどんだけ苦労してると思ってんだ!毎日遊んでる暇があるならせめてサーヴァントとして敵の動向でも読んでろ!」
「ん?敵の動向か?なら知ってるぞ?気配からしてあの工場地帯で固められてたランサーといっぱいサーヴァント連れてたやつが同盟組んだみたいだぞ?」
「…え?」
詩音は一瞬頭が空白になる。
ランサーが言ったことの真偽よりも遊んでいるとばかり思っていたやつが実は仕事をしてたことに驚きだ。
「え、え?調べたの?そんな重大なことを?でも、でもどうやって?ランサーだし気配遮断ないでしょ?」
「お!それ聞いちゃう?やっぱマスター空気読めるねー。」
ランサーは満面の笑みを浮かべると懐から何かを取り出した。それは鉄の塊でプロペラがついていて電池式で動いて、俗に言うラジコンだった。
「どーよ?これ昨日のパチンコで勝った金で買ったのを俺様直伝に改造したのよ。無音で飛べるしビデオ機能つき、あとライダーに頼んで魔術面のステルスもついたステルス機よー!」
詩音は先程あげたばかりのランサーの評価をすぐに落とした。そして詩音は無言でピノ最後の1個を食べた。
ランサーの叫び声は詩音には届かなかった。
今回投稿が少し遅かったのはカルデア側のマスター名考えてたんですけどFGOアニメで主人公の名前が出てきたんで徒労に終わっちゃいました泣
実を言うとまだ対立構造を決めきっておらず、、大丈夫かこの小説!?
まぁそこら辺はがんばりますが、、どうでしょう?後書きは前回のようにキャラ紹介しましょうか?出来れば感想でどちらがいいか書いて下さると助かります。