Fate パラレルクロニクル   作:柊彩

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みなさんこんにちは。いやはや、この物語もついに最終話でして。ここまで書けたのも皆様が読んでくれたおかげです。どうもありがとうございました。書き始めてもう何ヶ月たったのか覚えていませんが楽しい日々でした。厚くお礼申し上げます。では、終話、スタートです。


終話

「…!?」

四郎と信親が交戦している中、詩音はその違和感に気づいた。先程まで確かに彼の魔力はあるサーヴァントに流れていた。彼の宝具の固有結界が発動してから、莫大な魔力が消費されていた。それが突然、切れたのだ。減ったのなら何の問題もない。固有結界を解いたのだろう。しかし、切れたとなると説明がつかない。消滅したにしても燃え尽きたように消えていく。

(なんだ、何が起きた?なぜ念話が通じない?)

その違和感に信親、そして、カルデアも気づく。信親、四郎の手が止まる。

(Dr?Dr.ロマン?応答してください!)

マシュは司令塔であるDr.ロマンに必死に通信をかける。が、通信先の音声はノイズがひどく聞き取れない。

(ダメです。通じません。)

(そうか、何が起きたんだ?カルナは?聖杯は?)

と、その瞬間、マシュは背中に悪寒が走る。信親も感じていた。

それぞれのマスターに白い剣が放たれていた。

マシュは盾でそれを防ぎ、信親は刀で打ち捨てる。

(セイバー、これは、、、)

「マスター。これは、すこし、不味いかもしれないですね。」

女は笑う。ゾッとするほど悪辣な笑みを浮かべて。

(バーサーカーは負けたのかな?正直ここまでとは…。今の私では勝ち目ありませんよ、まったく。)

と、心の中で悪態ついているとセイバーと詩音の頭の中に聞きなれた声が反芻する。

(セイバー、マスター!生きてるか?)

(その声、バーサーカー!?生きてたのか?)

(ん、まぁな。それより時間が無い、セイバー、マスター、余の言うとうりにしてくれ。)

(な、どういう事??)

(詳しく説明している暇はない。頼む。)

(…分かりました。話してください。)

 

 

 

 

 

~数分前~

魔力が回復し、バーサーカー・足利義輝は体に魔力を纏う。言うべきだろうか。いや、しかし。

「…おい、バーサーカー。」

不意にランサー・カルナから声がかけられた。

「なんだ。」

「お前、あの聖杯の所に飛べるのか?」

「な、何故それを?」

「お前の今の状態はうちのランサーに見覚えがあってな。もし出来るなら、今すぐ飛べ。」

「しかし…」

義輝は目を伏せた。今の彼のマスター・ウェイバーベルベットからしてみれば、カルデアも詩音も全く無関係であり、彼らがどうなろうとウェイバーには無関係だ。

「いいよ。行け、バーサーカー。」

義輝は顔を上げる。そこには、少しだけ後ろを向いたウェイバーがいた。

「なんだよ、僕がそんなに信じられないか?僕も臣下だ。部下としての気持ちは分かる。それに、そんな状態で戦われても迷惑なだけだ。」

「ふふ、言ってくれる。だが、感謝する。その期待に応える為にも、この一撃を外す訳にはいかないな。」

(そのためにも…この剣の品格では不十分…ならば…)

 

 

 

「セイバー!」

詩音の悲痛な叫びがこだまする。

無数の剣で身体を貫かれている光景を見れば仕方ないとも思うが。なんとか致命傷を避け、凌いでいるがこのままではジリ貧だ。

彼の宝具『勝利への観察眼』は対処法は教えてくれるが、その力をくれる訳では無い。端的にいえば、彼の力では女には勝てない。だが、それでも。それでも、刀を捨て、諦めるわけにはいかない。ここにたっている限りは足掻いてみるしかない。その瞬間をひたすら信じて。

「ずいぶん手間をかけさせてくれるわね。いい加減諦めたら?」

女は手を上げる。そして、現れたのは特大サイズの銀色の剣だ。

「終わりにしてあげる。」

剣が発射された。目が示す未来には決して手が届かない。剣を握る手が震えた。やはり無理だったのか。自分はまた、負けるのか。散々期待をかけられ、答えられずに果てるのか。

(………………。ふざ、けるな!私、いや、、俺が!諦めてどうする。まだ、マスターもバーサーカーも諦めちゃいない。やってやる。一矢、報いてやる。 )

信親の目に光が宿る。燦々と輝く双眸に浮かぶのは死に瀕してなお生を求めんとする原始的欲求を写していた。

叫び声を上げ、迫る特大の剣を睨み、、

 

「俺も、忘れてもらっては困るな。」

声と同時にいくつか爆発が起き、剣が霧散していく。

そして、そこに確かな光明が差し込む。

無我夢中に刀を振るう。腹、肩、体のあちこちが削られる。だが、刀を握る手は健在だ。そして、天草四郎の助力の下、剣を切り抜ける。女との間に遮るものは何もない。

「おおおおおお」

叫び声を上げながら、信親は翔る。途中苦し紛れの女からの攻撃があったが、それらをもはや避けることはしなかった。どのみち刺し違えるのだから急所以外なら別に構わない。アドレナリンの影響か、痛みはなかった。

射程圏内に女を捉える。腕に力を込め、体に巻き込み、斜め下から横に女の身体を一閃

 

ザン!と、鈍い音を遠くで聞いた。一瞬何が起きたかわからなかった。ただ、気づけば刀を握る腕が飛んでいた。

(予備で死角に剣を隠していたのか?)

おそらく、女は万が一に自分に危険が迫った時のために一つの剣をはるか上空に配していた。隻腕だった信親はこれで手も足も出ない。

だから、その後の事はただの本能だった。自分の腕が刀を握っているのを見た瞬間、口で腕から刀をむしり取り、女の体に刺した。

「つっ!」

女の顔に少しだけ苦痛が浮かぶ。だが、彼が刺したのは肩だったので、致命傷にはならない。このまま体を引き裂こうとしたが、先に女から剣の洗礼を受け、身体中の力が抜けていく。ノーガードの体に叩き込まれた無数の剣は明らかに致命傷だった。

「さようなら。」

女はつぶやき、最後のトドメを、、

「っっ。」

同時、刀が頬を掠めた。詩音の全力の刀の投擲だった。だが、それも外れた。

「…残念。外れ。じゃあね。」

信親は笑う。

「 いや、これでいいんですよ。」

「何を…?」

刹那、後方から莫大な魔力と殺気を放つ男が詩音の投げた刀を手に立っている。

「お膳立てはしましたよ。バーサーカー…」

女は必死で逃げようとするが信親がそれを押しとどめた。

セイバーの呟きはバーサーカーの叫びにかき消される。それは勝利を唄う凱旋歌。騎士王アーサーの宝具。膨大な魔力が刀に蓄えられ

「一の太刀『偽・風王鉄槌(ストライク・エア)!』」

刀を突き出す。女の身体を、そして、信親の体も共に爆流に飲み込まれる。

 

 

 

 

「どうやら、勝ったみたいだな。」

カルナとウェイバーは彼方の魔力の変化に気づく。証拠に、先程までのランスロットの力は今はもうない。決着はついたようだ。

「ああ、終わったんだな。」

カルナはランスロットに止めを指し、そして、

 

「!!!??」

信じられない現実を目にする。

 

 

「…終わったんだな。」

詩音はつぶやく。長い戦いだった。最後の詩音のサーヴァントのセイバーも消滅し、もう戦える力は残っていない。ここでカルデアと対峙しても勝ち目はない。詩音はカルデアのマスター・藤丸の方を向き、

「…殺せ。」

「…嫌だ。」キッパリと断られた。

「なぜだ。俺はお前達と敵対していたはずだ。」

「それは違います。」藤丸の隣にいた盾を持つ少女が口を挟む

「貴方達はこの第四次聖杯戦争に起きるインレギュラーを取り除く為に来たはずです。我々はそしてそれは私達カルデアと同じ目標でした。誤解の結果戦うことになりましたが、見ていた目標は同じです。あなたを殺す必要など何処にもありません。」

「……そうか。やっぱり、お前達が…ヒーローだったんだな。」 声にならない言葉はどこに届くでも無く消えていく。

「さて、ではドクターに連絡を入れますね。あなたもカルデアに来ませんか?」

「え、、いいのか?俺が、、」

「もちろんです。人類にはいま先輩しかマスターがいません。もし入ってくれるなら大歓迎です。あ、もしもしドクター?聞こえますか?」

詩音はバーサーカーの方に振り向く。たが、彼は青ざめた顔をしていた。

「バーサーカー…?」

マシュは新たな仲間を彼に伝えようとする。だが、それより先に彼の叫びがそれを遮った。

「マシュ、藤丸君!逃げて!」

刹那、詩音は天草四郎に突き飛ばされた。

「なにを…え?」

そこに立つ四郎の体から赤い液体が流れ出る。先程まで詩音がいた場所だ。 そして、彼の胸に刺さった白い剣には見覚えがある。

慌てて剣が飛んできた方向を見ると、そこに立っていたのは、4人の先程の女だった。

「な、、、」

信じられない現実に言葉を失う。なぜ生きている。そして、何故、四人もいる!?

女達はそんな詩音の顔を見てクスクスと笑う。

「っっ。なんで、さっき殺したはずじゃ…?」

「そうだわね。確かに本体は殺され、私達は残滓。さっきまで地下のそこでフードをかぶった男から散々邪魔されて、やっと出てこれた。ふふ、一人で勝てるわけないのに。」

フードをかぶった男?誰だろう?だが、そんなことはどうでもいい。この状況を覆す手は…

必死で詩音は脳を回転させる。だが、至る結論は決まっていた。不可能だ、と。

もはや立て直しは効かない。完全に敗北した。目を伏せ、残酷な現実に心が折れた。

そんな詩音の顔を見て、女達はさらに恍惚の笑みを浮かべた。

その時、彼の脳内に一つだけ活路を見出した。これしかない、という確証も何処からか湧いてきた。

(…すまない、みんな…)

心の中で彼のサーヴァント達に謝る。だが、やめるつもりは無い。目に光が宿る。そんな詩音の変化を見抜いたのか女達は笑いを止めた。

「何かしら?今更何も出来ないわ。」

「そうだな。こうなっちまったら、聖杯の力でも使わなきゃ覆せねぇな。」

聖杯、という言葉を合図に詩音の体が光に包まれていく。2016年のオランダにある聖杯装置、ノアとコンタクトが取れた証拠だ。

「…な、貴様、まさか、聖杯の…」

「…いえ!だとしても、偽物!私達を殺すことは出来ない。」

確かにそうだ。ましてやノアにある聖杯のエネルギーは僅かだ。だが、最後の願いはどうやら実行できそうだ。

「…おい、カルデアのマスター、ひとつ聞いてもいいか?」

「な、何?」

「もし、初めからやり直したら、勝てるか?」

「…分からない。全力は尽くす。」そして、この問に藤丸は詩音の真意がわかった。

「できないとは言わなかったな。信じてみよう。」

「聖杯よ、最後の願いだ!この第四次聖杯戦争をやり直せ!そして…俺達の存在を、無かったことに!」

マシュ、そして女達から驚愕の声が上がった。

女はそれを止めようと剣をはっしゃする。

が、バーサーカーがそれを弾いた。

「おいおい、男が覚悟決めたんだ。その覚悟、見届けさせろよ。」

(…ありがとう、バーサーカー…そして、任せたぞ…カルデア…)

詩音は少し笑うと願いを実行する。世界は光に包まれた。

 

 

 

 

 

 

「先輩!おはようございます!」

マシュの声が響く。眠りから覚め、ベットから体を起こす。カルデアの、いつもの日常だ。

「おはようマシュ。

「はい!おはようございます先輩。ドクターが呼んでいます。どうやら特異点が見つかったようで、次は日本らしいですよ。」

「へぇ、じゃあ行こうか。」

藤丸とマシュはドクターの所に行く。

「やあ、藤丸くん。おはよう。早速なんだけど特異点だ。天草くん。」

ドクターロマンが呼んだのは40代位の古参の技術者だ。

名を天草宗彦。

「今回、君たちに行ってもらうのは日本の冬木の第四次聖杯戦争だ。ここで異常が起きている。」

「分かりました。じゃあマシュ、行こうか。」

「はい!」

そして、レイシフトを開始する。一瞬のまたたきのうち、彼らの体は1994年11月の日本にいた。

「さぁ、行こう!」

彼らは駆け出す。過去の特異点を改善し、世界を救う為に。そして、彼らの隣で紫苑の花が風に吹かれ揺れていた。

 

~~~FIN .~~~




さて、これで本編無事フィニッシュを迎えられ、重荷が一つ降りたような感覚となっております。ですが、これ、実はエピローグがあるのでもしかしたら来週、多分再来週投稿するので良ければ見てください。
長らくの駄文、読んでいただきありがとうございました!また会える日を!

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