Fate パラレルクロニクル   作:柊彩

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こんにちわ〜。いやはや夏で暑くなってまいりましたね。こうも暑いと執筆にも妨げが生じるものでして…(言い訳)
やはり夏はアイスが恋しくなりますね。ジャンボ食べたいなー。はい!では、本編どぞ!


終章5

「しかし、ここは心象風景なのだぞ。やすやすと入ってこられてはたまらんな。」

「生憎、抜け穴が開いてたんでね。乱暴な先客がいたんだな。」

「あー……」

カルナのマスター・藤丸は今頃バーサーカーのマスター・天草詩音と交戦している。が、カルナは事前にマシュから敵の正体と目的を聞かされ、なるべくマスター同士の決着がつく前に聖杯を破壊し事を穏便に済ませて欲しいと頼まれていた。

(マシュもなかなかに無理を言ってくれる。このレベルの聖杯を倒せとは…。しかし、勝算が無いわけでもないか…)

彼はチラリと横を見る。

「貴様、なぜ余を助けた?お前はあちら側ではないのか?」

足利義輝は首を向ける。

「…あなたは、俺が聖杯を求めていると?」

「2016年の人理崩壊、起こしたのは貴様らだと余のマスターは言っていたが? 」

「…薄々、気づいているのでは?あなたがもし本当に俺たちを敵対視していたなら腑に落ちない点がいくつかあるが?なんなら一つづつ挙げていこうか?」

「…いや。いい。確かに、貴様らがもしあれを起こしたのならこちらも色々おかしな点がある。それに、貴様らのマスターの目は、そしてあの盾の小娘の目はそんなことをしでかす様な奴らじゃない。」

「へぇ、買ってくれてんだね、うちのマスターを。」

「組める相手かどうか、見間違えたらこの命は無くなるような時代に生きたんだ。ま、最後にはそいつの中の狂気に気づけなかったがな…。」

「………ですか。…では、話はこのへんで。バーサーカー、少し時間を稼げるか?」

「…構わんが、急がねば余が全員倒してしまうぞ。」

「それは困る。なるべく急ごう

「…誰が誰を倒すと?不届きもいいところだわ。」

「やかましいぞ破廉恥女。淑女ならもう少し慎ましさを覚えたらどうだ。」

「は、ハレン…。これはそういう…!」

「あーはいはい。そういうのいいわ。さっさと始めないか。」

「…ふふ。久しぶりに現世に来たというのにここまで苛立たせてくれるなんてね。いいわ。お望み通り、殺してあげる。」

女の髪が無数の鳥になり、その鳥達が剣に変わる。

そして全方向から刃が義輝に襲い掛かった。一つ一つは大したことない攻撃だが、こうも数があるとさすがに捌くのは厳しい。さらに、そこにランスロットも参戦しさらに分が悪くなる。接近戦を持ち込まれた場合、槍というのは攻撃力が著しく落ちる。槍というのはつくものだとおもわれがちだが実際の戦場では先端部が折れるのは日常であり、遠心力を使った薙ぎのほうが殺人術としては有効だったりする。逆に言えば、近くによられた槍というのは武器としては最悪の部類である。

そんなわけで総合力の取れた刀で対応するが、やはり速度が足りない。

絶え間なく続く剣の放射が体のあちこちを切り裂き、、ランスロットの一撃が大きく態勢を崩させる。

この調子ではあと何分持つかわからない。しかし、大言を吹いた手前引くわけにはいかない。たとえどんなに不可能だと思えるものでも、必ず。

「こんなものか?強化サーヴァント?ふん、案外大したことないじゃないか。」

だからこそ、あえて強気でいく。そんなもの、何の気休めにもならないのは百も承知だ。

それでも、初めから諦めては勝てるものも勝てなくなる。

技術とか、経験とか、そんなものよりも、心のほうが大切だと思っている。だからこそ、折れる訳には行かない。

体を限界まで動かす。体がきしむ。しかし、それでも足りない。なにより厄介なのが、女の剣がランスロットを傷つけるのを全く気にせず、ランスロットも気にしていないところだ。自滅覚悟で来られると対応がこの上なくしずらいのだ。ランスロットが接近する。だが、鳥の剣が先に体を抉る。だからこそ対応が疎かになってしまう。アロンダイトがランスロットの体の下から現れた。刀で横に弾く。力技の為に刀に刃こぼれが刻まれる。

(別の刀に変えないと…。)

手を伸ばす。刺さった刀は義輝の所有する刀の中でも最高峰の武具。だが

(…なんだ、これは…)

刀にはとても冷たく黒い魔力が流れていた。

刀の制御権は義輝ではなくなっていた。

と、そこにランスロットから横薙ぎの一撃が刀に叩き込まれる。バキン、という鈍い音とともに、刀の半分が吹き飛んだ。

(死んだか?未練は、、、いや、少しあるかな。すまんなマスター。)

義輝の首がアロンダイトに切り裂かれ、

「待たせたな、バーサーカー。」

切り裂くような声にアロンダイトが止まった。

見てみると背中には炎を出している赤い八つの翼、そしてそれから伸びる八角の爆炎で空中に固定した、カルナの姿があった。その手に握られた大きな槍が纏う魔力の量は明らかに、

(は、あんな力があったのか。蘇ってみるものだ、余が見ていた世界というのは、ずいぶんと小さかったのだな。)

「神々の王の慈悲を知れ。絶滅とは是、この一刺し。インドラよ括目しろ。焼き尽くせ、『日輪よ、死に随え。(ヴァサヴィ・シャクティ)!』」

槍の先端から、魔力の光線がまっすぐに聖杯に向かう。

彼女との距離はそう遠くない、義輝の体も吹き飛ばされ、消滅は避けられないだろう。だがその時、彼の耳には確かに聞こえた。虫が体を這うような、ねっとりとした声が。

「やれやれ、過激なものが多くなったな、なあ、ユステーィツァ。こっちは500年待ったというのに。そう早く勝負を決されては敵わんよなあ。」

そういうと、老人の体から無数の虫が湧き出てきた。そして、その虫たちは次々と炎に向かっては焼かれていく。

しかし、ただ焼かれているのではなく、炎を抑えていた。信じられない光景だったが、確かに、業火の光線は女の前で威力が激減していた。

白い剣五本ぐらいで作られた盾で防がれるほどにしかなっていない。

しかし、その虫たちも永遠に続くはずもなく、徐々に押されてゆく。眼前に迫る炎が盾を削り取った。

「…落ちたな、ゾォルケン、ま、間に合ったのだから良しとしよう。」

女の顔に残酷な笑みが浮かぶ。

「『黒き聖杯よ謳え(ソング・オブ・グレイル)!』」

当たりが黒い霧でみちた。そして、上に黒い太陽のようなものが現れた。

気づくと、当たりは荒野に戻っていて、義輝とカルナが地面に付していた。なんとか体を起こすがどうにも力が入らない。女は老人のそばに行っていた。

「な、にが…」

彼の宝具の『戦国創造』を解いた覚えは無い。で、あれば、先程彼女が放った黒い霧の影響としか考えられない。

これが女の宝具だろうか。だが、どんな能力なのかさっぱり検討がつかない。

「おい、ランサー。どうなったか分かるか?」

「…原理はわからん。が、状況から見るに無理矢理俺の宝具は中断され、魔力の繋がりを絶つような能力らしい。マスターとの繋がりが切れている。」

気づかなかったが確かにそうだった。義輝と詩音との魔力の繋がりが消され、力が急激に落ちている。

(なら、余の固有結界が消えたのは魔力が足りなかったからか…?)

固有結界はその維持にも膨大な魔力を要する。魔力の供給源であるマスターからの魔力が消えたのなら必然的に固有結界の存続は不可能である。

が、ここでも違和感を感じる。義輝の所有する武具の殆どが消滅していた。彼の武器は心象風景に映る武器を現実に引っ張り出して用いている。固有結界内に武器がある限り現実世界からの干渉は…

と、そこまで考えて一つの可能性に至る。

もし、この一連の流れ全てが彼女の宝具の影響なのだとしたら?全て見越したものだったとしたら?義輝、カルナ双方の戦闘力をたった一つの宝具で激減させるためにわざとカルナの宝具を打たせた、と言うことは考えられないだろうか。

「…思ったよりも少ないな。ま、人の身で永久の力など手に入るはずもないか。」

冷たい女の声が聞こえる。顔を上げると老人の姿は無かった。代わりに女の魔力が少しだけ回復しているのと左手に赤い紋章が浮かんでいた。何をしたかはすぐに分かった。

「この犬は使えそうだ。む、魔力を絶ったのにまだ立つか。」

凍てつく視線が義輝に刺さる。

「この程度でくたばってたまるか。…お前の宝具、空間内の魔力操作とかか?」

「ふうん、なんでそう思ったわけ?」

「まずマスターとの魔力の繋がりが切断。余の固有結界内の武器の消失。そして、余の武器の一つが所有者がお前になっていた。あの刀は固有結界を維持するには必要な要素だった。つまり、お前の宝具は空間支配で余の固有結界そのものを貴様が奪い、ランサーの宝具はそのままに俺達だけを空間から引きずり出した、と考えるのが妥当だ。」

「へぇ、正解。名付けるとするなら対英霊宝具。ま、それに加えて英霊に対して世界から存在を否定することで力を奪うんだけど。」

「存在を…否定?」

「マスターからの繋がりを絶って世界から排除する力を受ける。それが強力かつ有名な英霊であるほど死んだ事実を肯定させるために現在の存在を否定される。それが私の宝具。」

「つまり、お前は英霊にとって天敵であると?」

「まぁね。そもそも私を呼び出すための英霊なんだから。さて、話はおしまいね。もうこうなったらそこの犬にでも任せておけばいいでしょう。」

黒い霧のようなものを纏った鋼鉄の鎧の男から聞こえるのは獣のような呻きだけだ。

女は足早にその場を去る。なんとか追いかけようとするがそこにランスロットが立ち塞がる。強化サーヴァントというだけあって今の状態ではたとえ二人がかりでもおそらく勝てない。

「くそ!」

数少なった宝具の武具をなんとか引っ張り出す。

最下級の刀しか残って無かったのは残念だが今の魔力量ではそれすら維持が難しい。

ランスロットが雄叫びをあげて突っ込んできた。

なんの捻りもない、豪快な首を狙った横ぶり。身を屈め、上に一撃を、刀を翻し、腕に力を込める。

「う、」

腕に痛みを感じる。見るとランスロットの背中からワイヤーの様なものが出ており、その先の棘が刺さっていた。

「なん、、」

即座に距離をとろうと後ろに飛ぶ。

ランスロットかそれを許すはずもなく追随してきた。

上にアロンダイトを振り上げる。力押しでこの刀を折るつもりか。

「忘れてもらっては困る。俺も、いる。」

カルナが槍でアロンダイトを弾いた。

「もういいのか?」

「良くはないが。ねていたらマスターにどやされる。」

ランスロットは少し固まっていたが、突然ふるえ出したかと思うと体から無数の虫が湧き出てきた。

「な、んだ、あれは…」

「おそらく俺の宝具を止めた虫の類だろうな。まったく、趣味が悪い。」

「まずいな。殲滅戦など余が最も苦手なものだぞ。」

「今はそうも言ってられん。とりあえず出来るだけしてみようじゃないか。」

カルナの槍から炎が出てきた。その炎は火炎放射器のごとく虫たちを焼く。

だが、数が多すぎる。炎を乗り越え何百もの虫が迫る。もはやこうなっては何も出来ない。刀1本で対処できる数ではない。

(くそっ、ここまでか。まさか虫にやられることになるとは…。)

覚悟を決める。もはや無駄なことだがせめて一匹でも多く虫を殺してランスロットの魔力を削ってやる。

だが、彼は背後に僅かな存在を感じた。

「これぞ大軍師の究極陣地『石兵八陣(かえらずのじん )!!』」

少年の声が聞こえた。瞬間、石の棒のようなものが虫を囲んだかと思うと次々と虫が落ちていく。

「お前は…?」

振り返った先には緑のブレザーにYシャツそして、その上から赤いマントを肩にかけた少年がいた。見た目からして15歳くらい。そして何より気になったのは、彼がサーヴァントでも人間でもないという点だった。確か擬似サーヴァントとか呼ばれていたか。

と、そこまで考えていると、少年は真っ直ぐに義輝、そしてカルナを見つめる。そして、

「―――告げる!」

口を開く。突然のことに混乱したが、続く言葉に真意を知った。

「汝の身は我の下に、我が命運は汝の剣に! 聖杯のよるべに従い、この意、この理に従うのなら―――”

 

 「―――我に従え! ならばこの命運、汝が剣に預けよう……!」

手を伸ばす。三つの刻印が赤く光る。

サーヴァントの召喚呪文。ここで口にしたということは、

(契約するつもりか?余らふたりを!?…半分マスターの擬似サーヴァントならできないことも…ない…のか?)

普段は果断即決を良しとするカルナも流石に決めかねていた。この半英霊が味方の保証はない。最悪悪用される。その時、

 「剣聖将軍の名に懸け誓いを受ける……!

  貴殿を我が主として認めよう―――!」

その瞬間、義輝の体は光に包まれ、魔力が漲る。

「…ランサーの名に懸け誓いを受ける……!

  貴方を我が主として認めよう―――!」

カルナの体もまた、光を取り戻した。

(これで、後には退けなくなった…。しかし、)

カルナは一つだけ義輝に聞きたいことがあった。今なら念話で会話ができた。

(…何をもって、敵かもしれない者にあれほどはやく身を預けれた?味方である保証など一つもないのだぞ。)

(…余はな、ランサー。以前も言ったように目には自信があるのだ。あの者は、余の、そして、お前のマスターと同じ目をしていた。)

(同じ目?)

(99%の人間はこの世界に対して、登場人物の一人に過ぎない。だが、奴は残り1パーセントの、主人公たる目だ。)

(…ちなみに我々は?)

(…この世界に対して、と言ったはずだ。今を変えられるのは今を生きる者だけだ。その理から外れた我々はただの読者さ。)

 

擬似サーヴァント・ウェイバーベルベットの体から二人分の魔力が流れ出る。だが、それでも弱音を吐くわけにはいかない。彼の中から湧き出る衝動は戦えと彼を鼓舞する。それが、中に宿る英霊のものかは分からない。だけど、これがもし、自分の感情なら。自分はライダーのいう自分の戦場なのだろうか。

(…ライダー。少しだけ、貴方の真似をしてみるよ。見ていてくれ。あなたの臣下らしく、蹂躙してみせるよ!)




うーん、なかなか進まないっすね。結末は決めてるのになかなか展開が遅いですね。残念。まぁウェイバー出せたんでギリセーフです。いよいよ戦いも大詰めです。もう少し読んでいただけると嬉しいです。
では、また再来週、7月2日に会いましょう!

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