Fate パラレルクロニクル   作:柊彩

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こんにちわー。以前のあとがきに6月10日とか書いてたんですが完全なミスですね。まぁ書けたのでもう出しちゃいます。では、どうぞ!


終章4

時を少し遡り、詩音とカルデアが接触した時、詩音サイドのバーサーカー、足利義輝は冬木の汚染された聖杯との邂逅を果たしていた。

 

「なんだ、お前は…。私の子供ではなさそうだけれど。」

その女の声は氷のように冷たく、また、ねっとりと耳にこびり付く。

「ふん、残念だが余はお前の産物ではない。」

「ほぉ…」

黒いドレスを来た女はとても退屈げに呟く。

「悪いがここで仕留めさせてもらうぞ、聖杯。」

「とことん無粋な奴。500年ぶりの空気をもう少し吸わせてくれてもいいのではないか?」

「ぬかせ、お前がそんな殊勝なこと思う訳ないだろう。」

「始めて会ったにしては随分と知った口を。いや、何処かで会ったかな?」

「初見だが、お前の目を見ればどんな性格なのか察しはつく。さて、そろそろ始めようか。

宝具展開。この焔は古く朽ちゆくものを焼き尽くす業火。余も、そして貴様も、この二条御所にて共に灰燼となろう。そして、願わくばその先に…『戦国創造!!』」

一瞬の光の後、彼らを包んだのは焼け落ちる城の一角。

黒煙と血の匂いが溢れる。そして、畳の上には何十本もの宝刀、宝槍が刺さっている。

「随分と、小汚い所ぞ。」

「小汚いとは、言ってくれるな。ここがお前の墓地になるのだぞ。」

「ふん、生意気な。」

「嘘だと思うなら、試してみるか?」

義輝は手近にあった刀を抜き取る。そして、それを下段に構えた。同時にバーサーカーの狂化で底上げされたスペックの上により大きな魔力量が加わる。ほぼ反則技だが、それでも女は顔色一つ変えず退屈そうな顔を浮かべる。

「行くぞ。 」

義輝は足に力を込めると一気に駆け出し、距離を詰める。が、そこに白い鳥のようなものが目の前に現れたかと思うと鳥が剣に変わり、自分に向かって突っ込んでくる。

ギョッとして身をひねり刀身をなんとかその剣にねじ込み下から上に切り捨てる。糸のように細い感覚だったが、その威力はすぐに分かる。

「ちっ、そう簡単にはいかないか。」

「まだまだ、もっとたのしませて。」

女の髪から次々と新しい鳥が生まれ、それらは無数の剣となる。

ノーモーションで、それらは一斉にバーサーカーに襲いかかる。

(この数を捌くには刀は微妙だな…。)

片手で剣の連射をいなしながら、もう片手で小振りの槍を取った。瞬間、義輝の俊敏が上昇し、代わりに魔力量が減る。

そして、刀を捨て、武器を槍に持ち替えると先程よりも対応速度が加速し、縦横無尽に槍を振りながら、ジリジリと女との距離を詰めていく。

「随分と変わった能力だこと。なら、これならどうかしら?」

女は少し微笑むと同時、鳥が一斉に上に飛ぶ。そして、そこから剣になり、上からの攻撃が雨のように降り注ぐ。

「く、、」

義輝の反応が鈍る。正面からの攻撃は散々想定され、生前よく訓練されたが、真上からの攻撃、しかも無数の剣というのは始めての体験だった。故に、長期戦になるのは得策ではないと判断する。

なので、いったん槍から弓に持ち替える。同時に手に矢が現れ、その矢で剣を防ぐ。が、対応速度が落ち、次々と剣が容赦なくバーサーカーに襲いかかる。

「痛いな全く、だが、、、浅い。」

魔力を矢に貯め、剣の集中している所めがけ矢を放つ。

その矢は真っ直ぐに、剣…からは外れ、天井に刺さる。

「残念ハズレ。どこを狙っているんだい?」

「ふん、これでいいのさ。」

義輝はあと三つ矢を天井に刺すと一気に駆け出した。

剣がねらいを定める。走りながら、義輝は上に矢を放つ。同時に口を開く。

「一の太刀。モデル英雄王。」

それは、やはり剣は外れるが、天井に刺さった先程の矢と触れ、瞬間、爆発が起きる。剣の半分程が爆発によって消えた。

(あの金ピカの奴の威力の半分くらいか。ま、仕方ない。)

「へぇ、今のは…。」

女の口角が少しだけ上がる。

義輝は全く気にせず、今度は見ずに後ろに矢を放ち、同時に女の前に矢を放った。後ろに放った矢は畳に刺さった刀に反射し、それが上の矢に当たり、また反射。女の前に刺さった矢に触れる。その瞬間、矢は爆破する。爆炎は女を飲み込む。が、

「こんなもので、倒せると思っているなんて、可愛いわね。」

女は無傷で片手で煙を払う。だが煙の先の義輝は消える。

「うん?」

女の後ろに銀の刃が走る。狙うは首。斜め下から、完全な死角で一閃する。さらにライダー・武田勝頼の気配隠蔽の模倣によって義輝の攻撃を防ぐことは不可能だ。

…だった、はずだった。

ギィン!と腕に明らかに生肉とは違う、金属に触れる衝撃が走る。

「…また、厄介な…」

義輝の刀を防いだ黒い騎士は鋼鉄の仮面の下、荒い息をたてる。その手には紫の妖しい光を放つ剣が握られていた。

「アーサー王・円卓の騎士?近衛兵の隊長のようなものか?」

以前は読み取れなかったバーサーカーの性能や真名が明らかになっていた。

「人のことは言えんが、変わった能力だな…。」

「随分と遅かったじゃないか、ゾォルケン。」

女は特に驚きもせずバーサーカーの後ろから現れた老人に声をかける。

「心象風景に入り込むのじゃから、時間もかかるじゃろ。それに、バーサーカーの調整も終わらせるのに時間がかかったしな。しかし、おかげで、わしの最高傑作が出来たぞ。」

「ふん、随分と変わったな。ゾォルケン、腐りきって、今にも崩れ落ちそう。」

「そういうお前さんは昔とちっとも変わっとらんな。」

「で?この犬はお前のかい?」

「ああ、こいつはうちの蟲の力を総動員して生まれた強化サーヴァントで並のサーヴァントとは比べ物にならん力を持っている。その分蟲に侵され尽くしたらサーヴァントは死ぬが、バーサーカーだと反抗しないからいい。」

「悪趣味ね。どこでそんなに捻れてしまったのやら。」

「それはお前さんこそだろう。人の願いを叶える万能具が、いつの間にここまで穢れたものか…。」

「ふん、口の減らない爺だね。」

黒い騎士の元のステータスを知らないので何とも言えなかったが、義輝が感じた騎士のステータスは全力時の義輝、そして、おそらく、以前戦ったランサーのステータスも凌駕していた。

瞬間、黒い、湖の騎士・ランスロットは義輝の体を真っ二つに切らんと義輝の前に剣を構えてたっていた。見えなかった。間一髪、刀を体との間に滑り込ませるのと後ろに飛んでなんとか避けたが、刀には深い刃こぼれが刻まれていた。

(なんとまあ力押し。まるで示現流でも相手にしてる気分だ。刀では不利か…)

切り結ぶ戦闘には向かない刀は鞘にしまい、槍を取った。同時にランスロットは再び義輝の動体視力を超える速度で距離を詰め、次は剣を上に構え、振り下ろした。

(躱すか、いや、ここは…)

義輝の現在のタイプは俊敏性を高めたランサータイプだ。そして、敵はバーサーカー。小手先の技術は使わない。ならば。あえて。無理に避けない。

槍の柄をアロンダイトに押し付ける。このまま弾くのは不可能。ならば、軌道を逸らせる。もう数ミリに迫っていた刃が少しだけずらされた。左肩に剣がくい込む。鎧を砕き、だが、なんとか切り落とされる前に肩を前に突き出すことで体をひねり、件を流すことに成功した。そして、右のめりになった体をそのままに右手で後ろ腰から懐刀を抜く。そして、一気に喉をカッ切ろうと力を込めた。同時、とてつもない悪寒が彼を襲い、態勢を変える。

ド、という鈍い音と共に、腹部に衝撃が走る。見ると糸のようなもので出来ていた白い剣が腹を貫いていた。

「私も、いるのだけれど。」

心底つまらなさそうな凍てつく声が聞こえる。

「終わりね。」

無数の剣が義輝に向け放たれた。

 

「いいや、そうでもなさそうだぞ。」

凛とした声と共に焔が現れ、剣の雨を焼き尽くした。

「お前は…」

「いつか、決着をつけたいと言っていたのを忘れたのか?ここで死ぬというのは、俺の不戦勝となるが、それがお前の願う決着なのか?」

「…は、抜かせ。これからが面白いところなのだ。」

「…一人増えたところで、なにが変わる。」

「変るさ。それを今から、証明してやるよ。」

義輝の目に炎が宿る。

「行くぞ!」




再びシリアスに戻れましたー。そして、この物語の最後ももう(やっと)決まったのであとはそれに従い書くだけでちょっとだけ寂しくもありうれしくもあります。
まぁどうでもいいと思うので深くは言いませんが…。
さて、今回を初めとして終章で活躍する(予定の)詩音サイドのバーサーカー・足利義輝ですが、僕はこのキャラ、というか史実が好きなので彼のテーマ曲が欲しいと思ったので紹介します。EGOESTさんの「the ever lasting guilty crown」ってゆーのがオススメです。もし一度も聞いたことがなかったら一度聞いて見てください!超かっこいいです!
次の話は6月18日ですね、よろしくお願いします〜

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