「行くぞ!」
藤丸の掛け声とともに天草四郎は戦闘態勢を整える。
右手に魔力を貯めるとその魔力の束は詩音の前方に現れた。
「あ…」
詩音の体は本能的に死を悟る。その諦めは頭からの動けという指示とは反対に不動に徹してしまう。
(くそ、動け、動け!…あ…終わったかも…)
体と同じように頭も思考を停止する。
が、彼の体が四散することは無かった。なぜなら、天草四郎の攻撃は長宗我部信親によって魔力の核を切り捨てられたからだ。
「何を突っ立てっているんですか?わたしの隣にたっていると息巻いた貴方がその様ではすぐに死にますよ?」
「…っ。あの容姿…父さんに…」
「ん?どうかしたの?」
「そんな…いや、そんなはずはない!ありえない!」
「な、マスター!?どうした?」
「…お前は…なるほど、そういう事か…」
「どうかしたの四郎?」
「四郎…いや…」
「…ふ、いか にも私の名は天草四郎。島原の乱の総大将なり。」
バァーン、と、天草四郎は堂々と名乗りを上げた。
「………な、四郎…何故…いきなり…遂に頭が…って、え…」
四郎の行動に疑問しか抱かなかった藤丸だが、その行動は彼が狂ってしまったということではないと言うことは敵のマスター、天草詩音の態度から分かった。詩音は頭を抑え唸っていた。だが、はじめに口を開けたのはその隣にいたセイバーだった。
「天草四郎だと!?それでは、マスターは…!」
「っ!!嘘だ!」
「は、残念ながら私は天草四郎その人だ。」
「っ。」
詩音の体には恐れとも怒りとも違う、もっと気持ちの悪い何かが溢れた。今まで自分がしてきたこと、命を懸け、必死に積み上げたものがすべて崩されたようだ。
「さて、じゃあ、君はどうする?ここで死ぬかい?」
四郎は刀を抜く。片手には魔力を貯めた。
「…なぜ、貴方が…俺達の英雄が!そこで!俺達に立ちはだかるんだよ!」
「…そんなの、決まってるだろう。お前が俺の敵なのさ。」
「……」
「…マスター、あまり本気にしなくてもいい。あいつが言っていることは本当かどうかわからないぞ。」
「…本当だよ。父さんから何回聞いたか分からない。あの容姿。そして、俺の魔力と似ている。似すぎている。間違いない、あいつは…天草四郎だ…。」
「ま、マスター…。」
「…セイバー、、俺は…ごめん…無理だ…。天草四郎だけは…彼だけはどうしても…」
「へぇ、逃げるんだ?君のサーヴァント達は必死に戦ったのに、全部投げ捨てるんだ?まぁしょうがないよね。彼等、所詮知名度が低くてサーヴァントに慣れなかった不良品なんだし。」
「…なんだと…」
「おや、怒らせてしまったかな?真実を言ったまでだけど。」
「…取り消せよ、今の言葉。あいつらが不良品?…ふざけるな!あいつらは!立派な英雄だ!たとえ無名でも!あいつらの事は俺が知ってる!誰も穢させやしない!」
「息巻くのは結構。さっさとかかってくるといい。」
「…セイバー!やるぞ!」
「了解です。」
(四郎、あいつは本当にお前の子孫なのか? )
(ほぼ間違いなく。)
(…なんで焚き付けたの?そんなキャラじゃないよね?)
(さぁ、自分でもわからないのですが…何となくこのままで終わらせるのも間違っていると思ったので…)
(…随分とぼんやりとした理由だね。)
(やはり迷惑だったかい?)
(…いいや、ただ珍しいと思っただけさ。思うがままに行動してくれて構わないよ。)
(…感謝するよ。じゃあ思う存分、子孫と喧嘩してくるとしようか。)
天草四郎は意識を詩音とセイバーに向けた。
(あの隻腕の奴が厄介だな。マスターは大した戦力ではないだろうし、ここは一旦あいつから倒すとするか。)
四郎はまずセイバーを倒そうと試み、刀を持ち、眼前に先に迫る詩音を適当にいなせばいいと鷹を括っていた。
「スキル『勇猛』!」
詩音が叫ぶと同時に彼の戦闘力が爆発的に上昇した。
振り下ろされる刀をいなすつもりがそれでは力づくで叩き切られると判断し、咄嗟に体ごと飛んで避ける。
「く、、」
間髪を入れずに詩音は連撃をかける。力任せにあばれているだけだが、それゆえに次の行動が読めずに必然的に後手に回ってしまう。駆け引きなどを試みるも全く効果を得られず、ただ暴れるのみだ。こうすると敵にしているのは猛った獣のようだ。が、その大振りさゆえに隙をいくつか見つける。そこに魔力砲をぶつければ生身は吹き飛ぶはずだ。魔力を貯め、それを詩音に
ぶつける前に彼が身を捻ると彼の後ろから刀が現れ、四郎の魔力砲を切った。
「ち、セイバー…。」
「わたしも参戦しているのを忘れないでください。」
2人の連携攻撃の前にさすがの四郎も押される。が、そこで一つ違和感に気づいた。
(マスターのほう…さっきに比べて弱くなっている?先程の猛虎のような荒々しさが消えてる。そういえば、奴の動きが急に昇華したのは奴が勇猛とか叫んだ時だったか…。となると…奴は…)
仮説を確かめるために四郎は詩音の攻撃により意識をさいた。結果、明らかに先程より動きが劣ると判断した。あとは…
(スキルに使用して無くなるなんて聴いたことがない。そもそも生身の人間にスキルなんて使用できるはずがない。なにかカラクリがあるのか?でも今は悠長に考える時間はない。)
四郎は上空に飛び、そこから右手に貯めた魔力を放出した。狙いは詩音だ。
「右45!」
セイバーが叫ぶ。同時に詩音が刀を振るい、魔力砲を叩き切る。
「なに…?」
四郎は懐から小太刀を抜くとそれを詩音に投げる。ただ、それは魔力が通っており、曲線で標的を捉える。が
「三秒後に左67振りおろせ。」
またもやセイバーの指示で詩音は確実に四郎の攻撃を凌いでいる。
(く、しぶとい…。スキルを使用しないのでは正しかったのか分からないですね。それに、このふたりを倒すのはなかなかに骨が折れそうだ。)
と、そこまで考えたところで藤丸の声が聞こえた。
(四郎、宝具の使用を許可する。あまり時間はかけたくない。)
(了解。ちょうど考えてたとこなんでタイミングバッチリですね、マスター。)
四郎の両手にはとても濃い魔力の玉が乗っていた。その魔力量からするに宝具と判断するのは簡単だった。
「来ますよマスター。気合入れてください。」
「おう!」
「set…ヘブンズフィール起動。万物に終焉を…双腕・零次集束(ツインアームビッグクランチ)!!」
コレだと天草四郎完全に悪役ですが…ま、そんなキャラだと作者は感じてます。あえて悪役になるー的な。次の投稿は2週後の20日です。よかったら読んでください!