では、どうぞ!
剣聖将軍・足利義輝。室町幕府13代征夷大将軍にして類まれなる能力を持って墜ちゆく足利幕府の権威を取り戻す為に尽力するも配下であった松永久秀により暗殺され皮肉にも優秀な彼の死が戦国の世を作り上げることとなる。
彼の宝具の『戦国創造』は彼の死を宝具化したものだった。焼け落ちる御所で床に名刀、名槍を何本も刺した風景に詩音は言葉が出なかった。
(これが、バーサーカーの最期…臣下に裏切られた王の末路…)
「固有結界…しかし焼け落ちる城とはなかなか変わった宝具だな。」
「仕方あるまい。ここは余が生涯を終えた地なのだからな。」
「…ふん、己の死地を呼びだすとは奇特な奴だな。」
「余とて好きでこの宝具を得たのではない。ま、成り行き上手に入れた力だが…不満か?」
「…いいや、上等だ。」
カルデアのランサー・カルナは背中から翼のようなものを出すと少し浮き、トンビのように、角度をつけ一直線に義輝に急降下攻撃を繰り出す。と共に槍から爆炎が生じた。炎を纏った槍が真っ直ぐに義輝に向かう。
対する義輝は近くの刀を引き抜くと下段の構えから刀の切っ先を上に向け少し斜め上に刀を振る。
ガギィンと鈍い音と共に、炎が義輝の横を過ぎた。
(避けた…?いや、魔力放射で炎をいなしたのか…?)
義輝は弾いたカルナの槍を制するよう義輝と槍の間に刀 を動かすと共に少し浮いたカルナの腹を切る為に前方へ飛んだ。
カルナは槍を両手に持ち、刀ごと義輝の体を無理矢理地面へ叩きつけた。煙が上がる。カルナは更に追撃をかけようとそのけむりに向かう。が、突然、その煙を引き裂き矢が飛び出た。その矢は正確にカルナに向かい、あわてて身をねじりなんとか横腹を掠めた。間髪入れずに煙の中から槍を持った義輝が飛び出した。義輝は大きく槍を横に振る。
「っ。」
カルナは自身の槍で防ぐも義輝は強引にカルナを叩き落とした。
「やっと引きずり下ろせたな。」
「地上じゃ勝てると…?」
「ま、それは分からんが、少なくとも空でチョロチョロされてるよりはやりやすいな。」
カルナはふ、と笑う。
瞬間カルナは義輝との距離を一気に詰め、腹に向けて突きを出す。が、その一撃は義輝の下方からのやりの一撃に阻まれる。槍は頬をかすめたが、カルナは動じずに槍の腹を義輝の横っ腹に叩きつけた。
「が、、ふ、ふふ、楽しいな…」
義輝の目に狂気の色が浮かぶ。
「やっと狂戦士らしい顔だな。随分楽しそうだが?」
「そうか?」
「お前の目がなにより嬉しそうだ。」
「は、なんだそれは。」
義輝が飛んだ。詩音に見えたのはそこまでだった。
後は剣戟の音がするだけで義輝とカルナがどう戦っているのか分からなかった。二人の距離は変わらずに、手だけが激しく動き、その攻防は見えなかった。
(狂化に俊足の力をうわましした義輝のランサータイプと互角…?あいつ、どんだけつええんだ!)
(マシュ、カルナとあのバーサーカーがどんな風に戦っているのか見えるか?)
(ええ、なんとなく。ですが、気を張ってないと見えなくなります。)
魔力の消費量からしてカルナも相当に本気だ。それと張り合うなら向こうも大英雄クラスの英霊ということになる。そもそも基礎ステータスが上昇される狂化の上に握った武器で三騎士のクラスのスキルを載せるというのはルール違反だと思うが、、
と考えているとカルナが義輝を押し飛ばした。
どうやら競り勝ったのはカルナのようだ。
更に追撃をかけようとカルナが1歩、踏み込もうとしたが、即座に体を後ろに翻した。もう少し踏み込んでいれば、義輝の刀の横振りに顔を抉られていた。
「ちっ」
義輝は槍を捨て刀を握り、魔力を通した。
そして、刀をかまえた義輝の体から魔力の鎧のようなものが出来た。その鎧はカルナの槍から出ていた焔をかき消す。
(偽セイバー…ということはあの鎧は…対魔力と言ったところか…まったく冗談キツイな…)
と、そこまで考えたところで義輝は刀を捨て畳に刺さっていた矢をとる。
同時に空中から弓が出てきたと思うとつがえたが狙った先は全く別の方、すぐにカルナに矢を放つ。
カルナはやすやすとそれをかわすが背後からの矢がカルナを襲った。
「が、、」
「カルナ!」
(刀に当ててはんしゃさせた?どんな技術してんだ向こうのバーサーカー。知性ありまくりじゃないか!)
義輝はあちこちに矢を放ち続ける。。カルナは即座に矢を切り伏せたが、、
「…ふん。」
無数に乱射された矢の数本が藤丸へと向かった。
「…っ。」
あと数センチ、しかも全方位からの攻撃を藤丸が受けきれるとは思えない。だが、カルナ自身、自分の方へ飛んでくる矢の嵐に身動きが出来なかった。
藤丸の目前に矢が唸る。
が、、ガギィ、という金属音と共に矢が叩きおられた。
盾を持った少女の手によって。
「私だって、サーヴァントです!そう易々とマスターを取れるとは思わないでください。」
「ふ、未熟なシールダー、そこでマスターを守れ。」
「はい!」
「ちっ、厄介な…。」
「残念だったな。マスターを倒すのは俺たちふたりを倒してからにしてもらう。」
「ああ、そうするとしよう。」
矢を捨て、再び別の刀を引き抜いた。
だが、今回は纏う魔力量的にも先程より本気度が明らかに増している。
「じゃあ、鬱陶しいカラスを狩るとしようか。」
「カラスとは、せめて鷲がいいです。」
「どっちでもいいわ。」
次の一撃はお互いの全力の攻撃だというのは詩音でも感じられた。が、
(アーチャーがセイバーと…いや…そんな事より…!!)
そう、そんなことよりも、、
「なんだ…これ…!!バーサーカー!!」
「…ちっ、なんだこれは…アーチャーの奴がミスったのか?」
「いや…だが…ともかく!」
「…是非もなし」
義輝の結界が解かれた。街の路地に世界が戻った。
「悪いがこちらも想定外だ。この決着はいつかつけたいものだな。」
そう言うと義輝は霊体化する。
「くそっ。」
詩音はあてもなく駆け出した。
「…追わなくてよかったのか?」
「…構わないよ。それよりもこれは…この魔力量は…」
「先輩、これは恐らく…」
「…聖杯…」
詩音の頭に浮かぶのは疑問ばかり。ただ、見落としはいくつかあった。少なくともアイリスフィールが現界している限り、聖杯は起動しないと踏んでいた。ただ、よく考えれば、第四次聖杯戦争のサーヴァントのうち、残っているのはバーサーカーのみ。条件は揃っていた。
特にこれといって、、あてもなく、走ったつもりだった。そこにはセイバーがいた。
ホントはもう少し戦わせたかったんですが、バーサーカーはもう少しネタを温存させておきたいのでここら辺で一応留まらせておきます。次からはいよいよ終章ですが、一旦休息を挟みます、たぶん。
なんとか納得のいくエンドに仕上げたいと思っていますので最後までお付き合い下さると嬉しいです