長いかもですが続けて読んでくれると嬉しいです!
「は、はは、出来るわけねえ…こんなの…」
詩音は思わず笑みがこぼれた。修行開始から3時間ほど、ずぅっと木刀を振り回していた。修行の内容はシンプルで、シャワーの水をすべて切る…が最初だったが当然全くできなかったので最低限信親がいう座標に的確に刀を振るえるよう、野菜を信親が投げてそれを切る訓練に変更された。
「35、15、73。」
信親は投げる前にその野菜を詩音が切る座標を伝える。ヘソを0として最初に横方向、次に縦方向、最後に奥行きの座標。数学でいうと最初のがX 軸、次にY軸と言ったところだ。と、口に出すのは簡単だが…
「21、マイナス53、64。 16、72、マイナス46。9、4、5」次々と野菜が飛ぶ。
「ちょ、ちょま、ぜぇ、まっ、うぇ、もう動か…」
詩音はその場に倒れ込んだ。
「…まだまだ、甘いですね、マスター。」
「うっ、で、でも…最初に比べたら良くない?」
「まぁ最初に比べたら…。でも1が2になったくらいですよ。」
「ごは、、」
どストレートな言葉に詩音のライフは容赦なく削られた。と、そこに
「さて、そろそろ少しはできるようになったか?」
バーサーカーが現れた。
「まぁ筋は悪くありませんし…。まだ実戦では役に立ちそうにありませんが…。」
「ま、そんなに早く強くなれる訳があるまい。だが、それでは困るのだ。反則スレスレだが、余の力で貴様を少しは戦えるようにしてやろう。使い時は貴様自身で決めるのだな。 」
そう言うとバーサーカーは詩音の頭の上に手を置いた。
「技能移譲。『勇猛』、『身体強化』、『気配隠蔽』、『戦闘続行』、『勝利への観察眼』。移譲開始。」
バーサーカーの手から一瞬光が現れ、詩音を包んだ。
一瞬の後、詩音たちは…
「バ、バーサーカー…。今のは…?」
先ほどと何も変わっていなかった。
「ん?ああ、今のは余の宝具『一の太刀』余の師、塚原卜伝から最後に教わったものだがな、、
この技はちと特殊でな、他のサーヴァントのスキル、又は条件付きで宝具をコピーできる。合計7個。いわば見切りの最終系だな。余自身でコピーした攻撃を出すならスキルは3分ほど使用可能、宝具なら1ランクほど落ちた性能だが、この宝具の真髄は他社に移譲が可能なのだ。その場合スキルでは1分ほど、宝具は相当ランクが下がるもののただの人間でも戦いに参戦できる。マスターも多少は戦えるというわけだ。」
「俺が…宝具を…」
「あくまで時間制限つきの再現に過ぎないがな。ただ、この宝具で得たのは併用が可能だ。組み合わせれば少しは戦える。」
「…これ、バーサーカーはどうなるの?俺に渡した分のスキルとかは補充ができるの?」
「いや、スキルが使われない限り余の中に残るから余が使えるのは後の2つだ。」
「…じゃあ…」
「ふん、案ずるな。余にはもう一つ宝具がある。さて、そろそろ寝るぞ。さっさと飯を食ってこい。アーチャーは明日敵のセイバーと決着をつけると息巻いていたぞ。」
「それに、私もランサーの仇を討ちたいです、マスター。」
「…分かった。けど、今までので行くとカルデアは同時に3体のサーヴァントを使役できるんだと思う。あの盾の子はマスターに付いてたから実質2人のサーヴァントだとして、あのセイバーは別のマスターがいる。このままじゃ人数で押し負ける…。」
「まさか、マスター。お前はまだサーヴァントとやり合えるだけの力などないぞ!」
「そうじゃないよ。バーサーカー、さっき言ってたもう一つの宝具、それを使えば時間稼ぎ、または敵を倒すことは可能だと約束してくれるかい?」
「うむ、約束しよう。余の生きた証、その全てを象徴した宝具なのだからな。」
「…じゃあ…」
「ああ、なるほど。」
「…ホントにいいのかマスター。二つ目の令呪をこんな使い方をして。なんなら私が二人同時に…」
「無理だよセイバー。カルデアは強い。ランサーでも1人に負けたんだよ。」
「…分かりました。」
詩音は2人から離れた。向かう先は食事場だった。そこにはいつ作ったのか詩音の好物だったハンバーグがあった。
「ハンバーグか……ランサー…」
詩音は久しぶりに肉にありつけた。というのもただの金欠に加え、肉はいつの間にか友信に食べられていたからだった。久しぶりの好物を口いっぱいに頬張る。肉汁が口の中で溢れ、とても美味しい。けれど…
「何でだろう…しょっぱい…」
「おはようマスター。」
寝起きの詩音にまず声をかけたのはアーチャー・為朝だった。
「ああ、おはようアーチャー。ご飯を食べたら、行くかい?」
「そうだな。腕が鳴るというものだ。」
~カルデア拠点~
「転送完了。」
「終わりました、先輩」
「そうみたいだね。これで俺達の持ち得る最高戦力が揃ったわけだね。」
「はい、それで、今日はどこに?」
「そうだね、街くらいに行ってみようか。」
「了解しました。沖田さんもどうですか?」
「ああ、では。」
「じゃあいこう。」
~街の郊外にて~
「…遅いです。」
アルトリアは苛立ちの声で語りかけた。
「いやすまんすまん。マスターが便秘気味でな、トイレに篭ってたんだ。」
「ちょ、アーチャー!?それ言わないでって言ったのに!」
アルトリアは正直脱力していた。今から殺し合うのに何故ここまで平然といられるのか不思議でしょうがなかったが
「…ま、まぁいいです。それで、ここで死ぬ覚悟は出来ていますか。」
「は、言ってくれるじゃねえか。思っきりやってやろうじゃねえか。それで死ぬことに何の覚悟がいるんだよ。むしろ誉れってもんだぜ。」
アーチャーは弓を出し、戦闘状態に入る。
アルトリアもまた、ドレス姿の戦闘態勢に移る。
「じゃあ、二回戦の開幕と行こうか!」
「!先輩!この魔力は…」
「アルトリア!?誰かと戦っているのか?行こう、 マシュ!」
「はい!」
カルデアもまた、街の郊外へと向かう。
アーチャーの放った矢を甲冑で払い、アルトリアはアーチャーに猛進する。対するアーチャーは矢を投げて牽制するとともに、刀を抜くとその刀を矢の先端に括りつけ、即席の槍のようにした。
「へへ、槍術と弓術は必須科目ってな。ま、あくまで弓がメインだがね。」
そう言うとアーチャーは即席の槍を一旦地面に刺し、矢を番えて引き絞る。だが、狙う先はアルトリアではなく、その後方のアイリスフィールだ。
「っ。」
アルトリアは咄嗟にマスターを守るため射線に割り込んだ。アルトリアならアーチャーの矢もなんとか防ぐことが出来る。
ビュオ!と、矢が空を切る。アルトリアは精神を沈め、
「はああっ!」
エクスカリバーの横なぎによって矢は弾かれた。
「甘えよ」
間髪入れずアーチャーから先程作った槍の一撃を肩に食らう。
「がっ、」
鎧の継ぎ目の最も弱い所を的確に突いたため、アルトリアの肩からは赤いものが流れていた。
「そらそら、もう終わりかよ?ぜんぜん足りんなぁ。」
「…ふ。いえいえ、まだまだ、これからです!」
(…来たな。)
(ええ。バーサーカー、カルデアのセイバーは私が貰っていいですか?ランサーに託されたので、彼女だけは私にやらせて下さい。)
(良かろう。では余はランサーの方か。)
為朝とアルトリアが鎬を削る中、新たな戦いが静かに動き出していた。
「あなたは…」
「セイバー・長宗我部信親。ランサーの仇、討たせていただきます。」
「仇討ちなど時代には合わないと思いますが、いいでしょう。新選組一番隊隊長沖田総司。押して参る。」
バーサーカーに対しているのは白髪で片目は灼眼、片目は緑眼をし、はだけた胸には赤い丸がある、槍とも杖とも言えるような棒を持った美少年だった。そこに、マスターと盾を持った少女もいた。
「貴様が余の敵だな。変わった槍だな。」
「…別にそこはいいだろう。」
「ま、そうだな。じゃあ、始めるとするか。」
「…天草詩音が令呪を持って命じる。バーサーカー。宝具を開帳せよ!」
赤い魔力がバーサーカーに流れる。
「さて、カルデアのランサー。悪いが長々と勝負を長引かせるつもりは無い。すぐに終わらさせて貰うぞ。」
バーサーカーは魔力を解放する。禍々しささえ感じさせる程の魔力だ。
「この焔は古く朽ちゆくものを焼き尽くす業火。人よ、余を超えてゆけ。もう止まらぬ。この廻されし大いなる力には。余とともに灰燼となろうではないか、二条御所。『戦国創造』」
バーサーカーの口から紡がれたのはその者の最期を宝具化したものだ。辺りが炎に包まれたかと思うと、そこには今にも焼け落ちそうな城の中の和室の中だった。ただし、その部屋の床にはあちこちに刀やら弓やら槍やらが刺さっていた。一見するとエミヤの『無限の剣製』に似ている。
「さあ、始めようか。」
そう言ってバーサーカーは一番手近な槍を取った。
瞬間藤丸は目を疑う。何故なら、
「偽…槍兵?」
「せ、先輩?」
「マシュ、クラスチェンジってあんなに簡単に出来るの?」
「…え?」
「アイツは…今…狂化の能力全体が底上している上からランサーの形態で俊敏の能力が向上してる…!」
「な、それではクラスチェンジというよりも…」
「クラス強化…あるいはクラス付属…」
マシュは体が震える。ここまでの覇気は感じたことがなかった。
「さぁ、来るがいい雑兵ども!本気でかからねば余の代わりに燃え尽きる他ないぞ!」
もうバーサーカーの真名は出したも同然ということで、はい。詩音陣営完成です!
あとはカルデアですが…ラストのはもう少し先かと…
次の後書きでは泣く泣くボツにしたキャラを紹介したいと思います。