Fate パラレルクロニクル   作:柊彩

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今回は戦いではなくとことん話ですかね。
つまんないと思いますので読み飛ばしも可です。



激戦編(間戦)

「っ。アサシンが!アイリ!早くこちらに!」

アルトリアはアイリの手を引く。アイリはアルトリアの方に倒れるように進む。同時、アサシンの弾丸が先程までアイリスフィールがいた場所を通って地面に当たる。

「狙いはアイリか。」

「…。」

アサシンは黙ったまま照準をアイリスフィールにむける。それを庇うようにアルトリアが立ち塞がるが、それが限界で、反撃も出来ず今はアイリスフィールと共に逃げるしかないが、アーチャーがここで妨害をしてくるともう逃げ切るのは絶望的となる。

(く、ここまでか…)

覚悟を決めたアルトリアだがその覚悟をしめすことなかった。

ドゴォォ、という音ともにアサシンのいたところが崩れた。みるとアーチャーが矢を放ったようだ。

「おいテメェ、横取りはよくねえぞ。このセイバーは俺が頂くって決めてんだからよ。」

「…別に誰が倒してもいいだろう?」

「いんや、ダメだ。こいつは俺が倒す。お前は黙ってろ。」

「…僕はそいつのマスターが目的なんだ。そのサーヴァントが望みならさっさと戦ったらどうだ。」

「今の今までそのつもりだったがお前に従うのも癪だ。まずお前を片付けてからにしよう。」

アーチャーは矢を番える。アルトリアも同じく剣を構えた。打倒アサシンへ協力したしい。

「ちっ、厄介な…。…仕方が無いな。」

「お前、逃げるのか!?」

「生憎僕はアサシンだ。誇りなんてないし、正面からやり合うつもりもない。せいぜい気をつけることだ。 」

アサシンはそう言うと霊体となった。

「…さて、続けますか?アーチャー。」

「んー、それだがな、また明日にしよう。お互いマスターが疲れてるんだ。お前とは全力でやり合いたい。明日この場所に。それでいいか?」

「構いません。正直私も嬉しい条件ですし。」

「んじゃ、決まりだな。明日夜11時、ここに来い。待っててやる。」

「分かりました、アイリ、帰りましょう。」

アイリスフィールは小さくうなづき、セイバーとともに帰っていった。

「さて、帰るか。マスター。ん?どうかしたか?」

詩音は体が震えるのを感じていた。抑えようとしても体の奥底から湧き上がる感情を留められない。

「…ランサー、ランサー。」

「おい、マスター!?」

「俺のせいで…俺の…」

詩音は意識が遠くなっていくのを感じた。

 

夢を見た。悪夢(ユメ)を見た。詩音の体から杯が出てくると七つの大きなものがその中に入り、杯は満たされてゆく。その時、詩音は…

 

体が痛む。節々が軋むようだ。

「ここは…」

目を開くとみえたのは木の天井だった。あとは、セイバーがそこにいた。

「…随分、うなされていた。…マスター、今マスターが感じているのは…」

「…俺は…怖いんだ。みんなを失うのが。俺のせいでランサーは死んだ。俺が…俺がアルバイトなんか行かせたから!」

「…それは違うぞ、マスター。」

「違わない!俺が、もっと優秀だったなら、きっと…。強くなりたい。何もかも、誰でも倒せるくらい。それならもう…誰も…」

「それが違うと言っているんだ!」

セイバーが怒号をあげる。

「いいかマスター!あなたは英雄ではない!ただの凡人だ!それを何様になったつもりでいる!」

「な、何様って…」

「あなたは背負いすぎている!どんなに策をねっても、どんなにサーヴァントが優秀でも、敗れる時もある。負けて死ぬ時もある。それは当然だ。どんな英雄であれ、間違いは生じてしまう。まして凡人のマスターなら、全てを背負おうとはしないほうがいい。」

「…でも、でも、ランサーはこのままじゃ、誰も評価されない…」

「…いいか、マスター。人の評価を、何が正しかったのかを決めるのはマスターでも俺達サーヴァントでも、結果でもない。それを決めるのは時だ。時が、何が正しかったのかを示してくれる。私達ができることは私達の正しいと思う道を進むことだ。」

「セイバーのいうとおりだ、マスター。それに、今回はランサーが悪い。」

バーサーカーが出てきた。

「ランサーが?」

「ああ。あっさり死を選ぶとは。あの時代のものらしいと言えばらしいが、悪しき風習よな。」

「ん?なんのことを…」

「マスターは先程誰でも倒せるくらいの強さが欲しいと言っていたな。ひとつ問う。真の強さとは、なんだと思う?」

「え、、、誰にも負けないとか…?」

「余も生前はそう考えていた。だがな、余は最期は雑兵にやられた。剣聖将軍と恐れられた男の哀れな末路よ。その時分かったのだ。真に強いのは負けない力ではない、強いのは何度負けても立ち上がる力だ。それを貴様は持っている。誇るがいい。この剣聖を持って持ちえなかった才能を、貴様は持っているのだ。」

「…っ。それでも、俺は…強くなりたい。守るとまでは行かなくても、俺も戦いたいんだ!」

「マスター…」

その言葉にバーサーカーはにやりと笑うと

「そうだ、大事なのはこれまでじゃなくこれからだ。セイバー、お前が剣術を教えてやれ。」

「分かりました。」

「さて、セイバーに稽古をつけてもらえたら余のところにこい。即戦力をくれてやる。」

そう言ってバーサーカーは霊体になった。

「だけど、剣術って何をするの?素振り?」

「そんな悠長なことはしていられません。まずは、そうですね、シャワーの水をすべて叩き落としてください。たまに私と打ち合います。」

「…は?」

「聞こえませんでしたか?シャワーの水を全て叩くんです。濡れたらダメですよ。」

「ちょ、え、そんなこと出来るの?!」

「身体強化の魔術と組み合わせてください。めざすのは私の宝具の模倣。宝具クラスの力を使いこなすのならハードルは高いのは当然です。」

 

 

 

「はぁはぁ。し、詩音…。」

宗彦はほとんど動かない体を引きずる。

先程、彼の監視していた、現在の天草詩音が突然宗玄を襲った。理由はわからないがこのまま今の天草詩音が世界から確定されてしまえば、もう詩音はこの世界には戻ることは出来ない。そうなる前に。

「確か、この辺に…」

宗玄はほとんど見えなくなった目の代わりに手探りでスイッチを探す。スイッチとはノアに宗玄の生命力をくべて詩音を現世に戻すスイッチのことだ。発動と同時に宗玄は生命力を失い死ぬが、それでも構わない。詩音には生きていてもらわなければならない。それに今、詩音がしていることは…

 

 

前日、彼のパソコンに1通のメールが届いた。もはや世界は朽ちたものだと思っていたが、そのメールは未だに生存する者がいる確たる証拠だった。そして、感動の赴くまま、彼は返信をした。

「あ、繋がった!ダヴィンチちゃん、ちゃんと繋がったよ!」

突然、音声が流れる。なにか細工をしていたのだろうか?疑問はあったが、確かめるのも億劫だった。

向こうの声は30代位の男の声と、同年代くらいの女の声、そして、無数の人間の騒音が聞こえた。

「…?あなた達は…?」

宗玄は恐る恐る尋ねる。

「ああ、僕達はカルデア。それを言えば分かるだろう?天草宗玄、かつての同志よ。」

「っ、カルデア!?なぜ私を!」

「あまり舐めないでください。第4次聖杯戦争の乱入勢力はあなたが仕掛けたのでしょう?観測の結果、マスターの体からはレイシフトした後があった。カルデア以外で同じような方法でレイシフトさせる技術があるとするなら、天草宗玄、あなたをおいて他にいないでしょう?オランダとは思いませんでしたが、ご存知の通り、この地球上にパソコンなど使うものなどもういない。特定するのはそれほど難しくないでしょう?」

「…ちっ、それで?われわれにどうしろと?」

「ずばり、あの場から退いて欲しい。カルデアの望みはそれだけです。」

「断る。お前達が何をしにあの場に行っているのかは知らないが、世界を壊そうとするなんて、馬鹿げてる。 」

「な、カルデアが…世界を…?」

「とぼけても無駄だ。今、人類が滅びの危機にあるのはカルデアの仕業なのだろう?いい加減目を覚ませ!レフ・ライノールに騙されるな!」

「な、何故あなたの口からレフの名が…?」

「あの男は危険だ!そこにいるのだろう!出てこい!」

「…宗玄さん、あなたは……っ、レフ・ライノールはもう、カルデアには…いません!」

「……な、なん…」

「確かに、我々はレフ・ライノールに騙され、今の状況にあります。そこは認めます。ですが、そこからはカルデアはレフ・ライノールの行った人理焼却を止めるために戦っているんです!決して、世界を滅ぼすためではありません!」

「な、な、、」

「信じられませんか?証拠もあります。おかしいとは思いませんでしたか?世界が焼き尽くされて半年が経とうとしてやっとあなた方はレイシフトした。いくらあなたでもそこまでたどり着くには相当の時間はかかるでしょう。その半年間、敵は何もしなかったと思いますか?」

「…」

「カルデアは人理継続機関です!いまはその為に戦っているんです。どうか、彼を戻してください。」

「…」

声がでなかった。カルデアは敵ではなかった。むしろ、正義だった。じゃあ、今、詩音がしていることは。宗玄がしていることは。

「…お前達は…この半年、何をしてきた?」

「グランドオーダー。僕達がそう呼んでいる、人理継続の為に歴史の特異点を修正する作業です。今は三つほどの修正を完了しています。」

宗玄に衝撃が走る。完全に負けている。やっとこないだレイシフトの機器を整えた宗玄と、もう歴史を修正しているカルデア。どちらが優秀かなど比べられるはずもない。

「…分かった、詩音は、マスターは、こちらに返す。人理継続は、任せた…。」

力ない口調で返事をした。虚ろな目はもう、何も写してはいなかった。

 

 

「あった。これだ。」

スイッチを見つけた。宗玄は震える手をなんとか抑える。

(すまない、詩音。不甲斐ない父を責めてくれ。馬鹿な父だと罵ってくれ…。)

勢いよくスイッチを押した。ノアの内部からキュィィという音が鳴る。と共に、宗玄の体の力が抜けていく。

「ああ、これが、死…。悪く…ないな…。」

だが、

「システムエラー。天草詩音の転送に失敗。行動をキャンセルします。」

「な!」

ノアの冷却が始まった。つまり、動作は完遂されたと判断されたのだ。だが、詩音はこの場にいない。それが意味するのは

「間に…あわかったのか…」

過去にレイシフトした天草詩音とは異なる、現在の天草詩音が世界から存在を確定されたのだ。聖杯の力をして、届き得ない領域に入ってしまった。宗玄の生命力でなんとか出来るほど、軽いものではなくなってしまった。聖杯の器が認めたものが、残りのサーヴァントの命をすべて使い、やっと出来るかどうかの、そういう領域なのだ。

さらに悪いことに、宗玄の生命力はノアに吸い込まれており、取り出すことが出来ない。

「し、詩音…。」

前が見えなくなった。それが倒れたのだと分かるには少しかかり、痛みも遠くになっていった。ノアのみが、少しの音を立てて、その男の最期を見届けた。




次も修行が入ると思うんですが暖かい目で見てくれていたら幸いです。これがおわったら激戦編のラスト、そして一気に終章です!
と言っても終章も5話ぐらいはあると思うんですがね…。
アクセルゼロオーダーもだいぶ過去のものとなりほとんど内容を忘れてしまいましたがなんとか記憶を辿り頑張りますので最後までお願いしますm(_ _)m

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