Fate パラレルクロニクル   作:柊彩

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皆さんお久しぶりです!今回はなんと8000字のボリュームに加えて、陣形や作戦が色々出てくるため戦いの構想が大変でした泣
では、どうぞ!


聖杯問答(大軍対決)

第三十一章 運命の日(死闘)

友信の槍の穂から魔力が放出されると、それは渦を巻き、ドリルのように回転していた。それだけならかつてもそのような感じだったが、今回は前回のに比べて明らかに魔力量が多い。そのため、魔力のドリルは以前よりはるかに大きく、槍を持つランサーの右腕は完全に見えない。

「これこそは、天下三名槍の一つにして『貫』の奥義を備えし槍。その威光、存分に晒せ。」

槍から出る魔力はなおも規模を増しているようだ。

 

「おいライダー!あれ、やばいぞ!くらえば即死クラスじゃないのか!?さっきからあの軍師っぽいのも叫んでるぞ!」

ウェイバーが言葉をひねり出す。事実、孔明も後ろで必死に止まるよう声を荒らげていた。だがイスカンダルは

「すまんがこのまま突き進む。討ち取られる覚悟など承知の上だ。ここは戦場故にな。それにあれほどの魔力放出は敵のマスターにとっては負担がデカすぎるとは思わんか?ハッタリではないだろうが実際の威力は見た目程ではないと賭ける。それで構わんか?」

「…分かった。お前がそういうのなら僕は、従う。」

「よしよし、ならばこのまま敵の城まで直進するぞ」

 

詩音はランサーの後ろ、イスカンダルが破ったのより小規模の土塁をはさんですぐの櫓にいた。

「マスター、今からの宝具だが、これは魔力が馬鹿みたいにかかるんだ。悪いが令呪を頼めるか?」

友信の声が聞こえる。返事の代わりに詩音は令呪に向かって

「ランサーよ、遠慮はいらない。その宝具、余すことなく存分に振るえ…!」

詩音に魔力が少し通ったと思うとすぐに友信に莫大な魔力がもたらされた。

 

「こっ、これは…」

孔明は息を飲む。視線の先には今にも宝具を打たんとする友信とそれに正面から突撃して行くイスカンダルの姿があった。どうせ自分が止まれと言ってもイスカンダルが止まらないことは目に見えており、先程までのランサーの槍は見た目こそ派手ではあったが魔力量が足りておらず見掛け倒しだと踏んでいた。

だが今は違う。その友信の宝具の魔力が突然倍増した。

先程まで腕を隠していたくらいの気流だった宝具が、友信の体全体を覆うまでに膨れ上がっていた。

これ程までの変化ができる方法など普通はありえない。ならばこれは、間違いない。敵が令呪を使ったというわけだ。敵も本気のようだ。

「…なのにあのバカはまだ正面突破を図るのか!?」

孔明はショートしそうな頭を抑えながら周りをふと確認した。すると、土塁の、中の、イスカンダルが破った場所を囲むように配置された部隊を確認した。

「これは、まさか!」

 

少し放心していたアルトリアだがすぐに現実に帰った。

「アイリスフィール、私もこれからライダーの方に加勢しに行きます。」

「…ええ、そうね。あまり気は進まないけど協力関係に同意したのだからするべきだしね、、」

「ええ、では、、」

「ん!?ちょっと待ってセイバー!何かがこっちに向かってくるわ!」

「?アイ、、」

言いかけたところでセイバーも気づいた。アイリに何か言おうとしたが向こうからの叫び声でかき消される。

「Aaaasaaa!!!」

あまりに特徴的なその声の主は真っ直ぐにセイバーに突進してきた。

 

魔力が槍に集まる。先端から後方へ発せられる風圧は友信の筋力ギリギリで力を抜けば腕ごと後ろに飛ばされそうだ。令呪を使うとこれ程まで出せるのかと少し感心した。だが、ここは戦場ということを思い出し、すぐに意識を戻す。

前方からは牛車で真っ直ぐ突き進んでくるサーヴァントが今にも迫らんとしていた。

狙うは牛の頭部。振るうは日本号。この一撃は我が主、そして戦に懸けた己の生き様を示す為に。

友信は体を少し捻り右腕を後ろにねじる。そして、イスカンダルとの距離が1mにもならんとなった時、

友信は勢いよく槍を突き出した。同時、槍にあった魔力のドリルがイスカンダルに向けて噴出される。

津波のような魔力放出がイスカンダル、ウェイバーの乗るジャリオットを飲み込む。津波は後方のイスカンダル軍にも影響を出したようだ。だが軍勢自体は消滅していない。これはつまり、

噴煙が静まるか否かの時、雷鳴が轟いた。そして煙から馬に乗ったイスカンダルとウェイバーが現れた。

「避けたか!」

友信は槍を構える。だが思うように力が入らない。宝具・日本号は魔力量と打った後の少しの無力化が難点だった。思うように動かぬ手を何とか動かしてイスカンダルの進撃を止めようと槍を突き出す。だがそれは刀に弾かれ地面に倒れてしまった。最早それは死亡確定の事だった。友信は覚悟を決める。

しかし、首が飛ぶことはなかった。

突如、イスカンダルの後ろの土塁が光に覆われたからだった。そこに気を取られていた時、友信は髑髏の仮面を付けた黒い影に拾われた。

光が消えると、そこには今迄そびえ立っていたはずの土塁が跡形もなく消えていた。

イスカンダルの開けた穴から突入しようとしていた者達が縦に伸びている様がありありと分かる。

と、その時左右の側面から叫び声が聞こえた。どうやら土塁の内側で待機していた部隊のようだった。動きからして我らの軍勢を囲むつもりだろうか。

そんなことを考えていると後ろからも声がした。見ると孔明だった。

「征服王!兵の指揮権を私に預けろ!このまま魚鱗のままでは鶴翼の陣に食われるぞ!」

「鶴翼?なんだそれは?」

「陣の一つだ!奴らお前が土塁を破壊することを読んで作戦を立てていたんだろう!」

「それで貴様はどうするつもりだ?」

「方円という陣で耐える!正直いってそこは凌ぐだけの戦いになるだろう。お前が開けた穴から入ろうとしていたためにこちらの兵はわりと縦に集中してるんだ!側面の敵の包囲は8割型完成している。」

イスカンダルに迷いが生じた。目の前の長髪が嘘を言っているとは思えない。鶴翼とかは分からないが包囲されてそうだということは分かり、考えていた対応策(中央突破)も奴と同じ考えだった。

それに、気になったのは奴の目だった。真っ直ぐにイスカンダルを見つめる双眸はイスカンダルの家臣達の持つ目にとても似ていた。

(この男…まさか …)

「…分かった。貴様の力ここに示してみよ。」

イスカンダルはすう、と空気を吸い込み、

「全軍に告ぐ!これより我らの指揮をこの若者にする!以後、この者の判断で動け!」

「ライダー、感謝する。それと、今からは正面からもおそらく敵が出てくるだろう。…潰されるなよ。」

「はん、余を誰と心得ているのだ、征服王だぞ。」

知っているさ、と小さくつぶやくと孔明は作戦を近くの兵に全軍に伝えるよう言った。

イスカンダルは再び城へと駆ける。ジャリオットは失ったが、敵の本丸を守るのは強固な土塁ではなく、門が1つあるだけだ。

と、その時、その門が開いた。同時に、数百人の騎馬隊が門の向こうから現れた。

「武田二十四将・原虎胤、甘利虎泰、小山田信茂!その首、我らが譲り受けた!」

武田軍の猛攻が始まった。数百の騎馬隊がイスカンダルに押し寄せる。対するイスカンダル軍もその3倍位はあろうかという兵力でこれを迎え撃つ。

 

~武田本陣~

「勘助、戦場はどうなっている?」

「序盤こそ我らの包囲で右翼の穴山梅君・秋山虎繁・小畠虎盛、左翼の馬場信春・三枝守友・曽根昌世共に押しておりましたが敵方の陣の構築が思ったより早く、兵力量でやはり押されているようです。このままではせり負けるかと。正面の原、甘利、小山田もなかなかに苦戦しているようです。防衛面では敵はとことん正面突破をするつもりのようで本丸西の武田信繁様、東の武田信廉様、南の真田幸隆らは手が空いているかと。今は正面に移動中とのことです。」

「ふむ、敵もなかなかやりおるな。では、こちらも少し本気を出すとするか。」

信玄は、ゆっくりと立ち上がると、

「宝具・風林火山起動。速きこと疾風の如く。秋山虎繁・三枝守友・小山田信茂に風の加護を。侵略すること烈火の如く。穴山梅君・馬場信春・甘利虎泰に火の加護を。…さて、これで多少は競り合えるはずだ。だが安心には遠いな。飯富虎昌、多田三八郎は左翼、原昌胤、真田信綱は右翼、土屋昌続と横田高松は正面に加勢してこい。板垣信方、内藤昌豊はもし敵が中央を破った時に城から矢と礫を放て。門を通過させるな。山県昌景、お主は赤備えを以て敵を撹乱しろ。」

言われた者達はははっ、と返事をすると本陣を後にした。

「さて、温存戦力も出すとするか。静かなること林の如く。林の加護解除。アサシンとやらのお手並み拝見だ。」

 

孔明は指揮を執りながら違和感を覚えていた。

(おかしい、先程までと比べても敵の強さが段違いに強い…、強化魔術?だが兵一人一人への強化などどれほどの魔力をつかうんだ。………宝具…の線が濃いかな…しかし…)

頭の中はぐるぐる回り、いまにも潰れそうだ。

と、さらに追い打ちをかけるようにイスカンダルの方に嫌な気配を感じた。

「この気配…馬鹿な!アサシンだと?奴らアサシンも味方につけたのか!?」

四方から敵の兵が襲ってくるがそのことも目に入らない。刃が後ろから迫った。意表をついた攻撃に対応が遅れた。

(しまった!)

孔明に反撃する手段はない。本能的に手で顔を隠した。だがいつまで経っても痛みはない。

「大丈夫か!?何をぼーっとしてる!」

見ると切りかかってきた男は消滅していたようだ。おそらく目の前にたっている男が助けてくれたのだろう。

情けない、かつてと同じように自分はまた、あの人の役に立てないのか。英霊の力を借りた今でなお。

「浮かない顔だな。」

男が語りかける。

「先程までのすぐに陣形を立て直したお前はどこにいった?どこかおかしいぞ。」

…分かっているとも、普段のエルメロイ2世ならば背後を取られるなど有り得ない。

「…我らの王の元になにか危機が迫っているのだろう?」

孔明ははっとする。

「少しばかり勘が良くてね。お前さんが何を考えているのかぐらいわかるさ。…行ってきな。」

「…し、しかし、」

「いいから。こっちにはまだ数がある。このくらい耐えてみせるさ。」

「…っ。すまない、感謝するっ。あ、あと陣形なんだがな、これから私の言う通りにして欲しい。あと 、あなたを強者と見込んで頼みがあるんだ。」

言うだけ言うと孔明は駆け出した。名も無き男は少し笑うと聞いた作戦を実行する。

 

「ライダー!どうなってるんだこれ!?なんでアサシンまであっちにいるんだー!」

「こら、やかましいぞ坊主。何でってアサシンがあっちと手を組んだだけだろう。」

語りながら、イスカンダルは目の前の兵を倒す。

騎馬同士の戦いのため、槍を持ちリーチのある敵を前に、イスカンダルも少々手こずっていた。

(一人ひとりはそこそこだが、、いや、だったのだが。どうやら先程より強くなっている。だが、、)

脳裏には先程何とか倒した小山田と名乗っていた将を倒したことが浮かぶ。将を討ち取るとその周りの兵たちが一斉に消えた。このことを考えると、アイオニオンヘタイロイとは異なり、どうやら将が消えればその部隊は消えるらしい。だがその将もまた一人一人とても強く、とても一筋縄ではいかない。さらに、騎馬隊の度重なる突進は確実にイスカンダル軍に被害を与え、イスカンダルの周りの部隊の三割方は消滅していた。加えて、どうもあちこちでアサシンが動いているようだった。

次の一手にうち悩んだイスカンダルだったがそこに先程兵の指揮を任せた男が近づいてきた。

「貴様、、指揮はどうした?」

「…ある程度は持つようにしてる。だがどんなに粘っても勝てなければ意味があるまい。」

「ほほう、余が負けると?」

「可能性の話だ。それにそこまで非現実的でもあるまい。手を誤ればこの戦い、我らは敗れるぞ。」

「では貴様のいう策を言って貰おうか。どうやって攻める?」

「兵にはこう伝えてくれ。一旦下がり態勢を立て直せ。そうしなければその者達も巻き込まれる。」

真意は分かりかねるがイスカンダルに悩む余裕はなかった。全部隊に一時撤退を命じた。騎馬隊に追われながらも何とか成功したようだ。敵は相変わらず次々と攻めきて、防戦一方となっていた。

「これぞ大軍師の究極陣地…石兵八陣!」

叫ぶと同時に、敵の兵団の周りに石の柱が4本、四方に完成した。同時に、中にいた兵たちは竜巻や落石など様々な効果が彼らを襲った。

その様相に敵からの突撃が止んだ。

「今だ!兵はまず縦に並び正面に突っ込み、途中で左右に分かれる、これを繰り返して道を開いていろ!ライダーはその間に馬で本丸まで駆けるんだ!目指すは敵大将の首、ただひとーつ!」

孔明の叫びに負けないくらい大声でおおー!!と叫び、部隊が動き出した。

 

「む、これは…!」

「どうした勘助?」

「はい、どうやら敵が正面の部隊を抑え、門までの道を開いたようです。」

「なに?どうやったのだ?」

「敵も宝具を使ったようです。一瞬の躊躇いをつかれたようで。それに後方でも方円だったのを一点突破に切り替え、城を囲むような素振りを見せており、槍の投擲が行われているようです。中央に行っていた信繁様、信廉様、幸隆が持ち場に引き返しております。」

「…お館様、私にもどうか、出陣のご許可を。大将首は上げられずとも敵軍に損害を与えてご覧にいれまする。」

真田昌幸が信玄に頼んだ。

「…良かろう。暴れてくるが良い。」

「感謝します。」

昌幸は馬に乗り部隊を連れて戦地へと駆ける。六文銭の御旗を掲げながら。

「では私も、持ち場につくとしましょう。」

「ああ、任せたぞ、勘助。」

勘助はイスカンダルとは逆方向に駆け出した。

信玄は勝頼にちょっとした疑問を投げかけた。

「…勝頼、敵の大将はどんな奴だった?」

「…そうですね、初めはガサツで傍若無人なやつだと思っていたのですが…この宝具などを見るに父上と似た方といった感想です。」

「なるほど。」

その時、詩音が帰ってきた。

「ライダー!なんで外にいるんだ!?槍が投げられてるぞ!なかに陣はればいいんじゃないか?」

「…ふっ、いずれ分かるさ。それよりもだ、あのアサシンらは本当に信用に足るのか?」

「…どうだろう。でも今回だけなら大丈夫だ。アサシンのマスター直々の命令ということで自分から加勢しに来たんだからな。」

と、その時、門と屋敷の中間の出丸から火が上がった。

「…!?信玄、これは、」

「落ち着け。これは昌幸の策だ。…だが、不発だったようだな。」

 

炎の中から、二つの馬が出てきた。

「ライダー!あいつは…!」

「どうやらやっと大将までたどり着いたようだな。」

「まだ勝負はついていない。気を抜くな!」

と、そこに六文銭の旗を掲げた部隊が後ろから近ずいていた。

「お館様〜!!!」

昌幸はイスカンダルらを囲んだ。

信玄は立ち上がると、

「昌幸、下がれ。手を出すな!」

「は?は、はいっ!」

困惑した表情のまま、昌幸はイスカンダルの包囲を解いた。

信玄は笑いながら

「…正直、ここまでやるとは思わなかったよ。我が陣にここまで深く切り込んできたのは、貴様で二人目だ。」

「はっは、そうか。出来れば、その一人目とも刃を交えたいものだな。」

「やめておいた方が良いぞ。あいつはたしかに強いが、義に厚いからな。貴様とは正反対の性格だぞ。」

「そうか。だがそれもそれで面白い。」

「ふっ、だがここまでたどり着いた褒美に、この武田信玄の全力を見せてやる。」

そこに孔明が割って入った。

「残念だがその言葉は偽りだな。貴様の策は私が看破した。」

 

勘助は屋敷の後ろの櫓の上にいた。といっても高さはとても小さく、大人二人分だった。

というのもこれは城外の敵を見るのではなく、城の本陣まで攻めた敵の大将を外側から射るためのものだ。屋敷は外からの攻撃には土塁が守るのだが、この櫓の上だけは斜線が通る。勘助は矢を番える。狙うは敵大将の首。強弓がしなってゆく。狙いを定め、、

その時グサッ、と鈍い音がした。見ると、腹に槍が刺さっていた。勘助の口から血が出てくる。

「城の後ろの櫓にいる奴を倒してほしい。」

それが、彼が孔明から頼まれた事だった。

(くっ、読まれていたか…すみません、お館様、ですが、この勘助、必ずや…)

震える手で弓を引く。狙いは変わらない。弓に再び力がこめられた。

 

「…なるほど、我が策を看破したか。だが、それでは足らぬな。」

「何を…っ!」

孔明は、先程確かに槍で貫かれた男がまだ生きていると気づいた。

「ライダー!そこを離れろっ!」

必死でライダーに訴えるが、そのライダーは動いていない。

「何をしてる!?はや、、く、、」

いや、違う。ライダーの周りには歪な魔力が漂っている。これは、、!

「動かざる事山の如く。詰みだな。」

勘助は必死の力で矢を放った。

刹那、孔明は考えるより早く体が動いていた。乗っていた馬から跳び、イスカンダルの前方に出た。

グサッ、と鈍い音がした後、腹部に強烈な痛みが孔明を襲った。だが、まだ、地面に倒れふすにはやるべき事がある…!

孔明は手に魔力の塊を作ると、信玄に向け放った。

信玄は防御し、同時にイスカンダルの拘束も解けた。

それを見るかいなかに、孔明は地面に倒れた。

「…貴様…」

イスカンダルは孔明の近くに寄った。

「ライダー、何をしている…。こんな俺に構うな。はやく、敵の大将を­…­­」

「もちろん、すぐにでもそうさせてもらおう。だが、 」

イスカンダルはおもむろにウェイバーの服を掴むと、

孔明の近くに落とした。

「ラッ、ライダー!何するんだ!」

「坊主、いや、ウェイバーペルベットよ!そして名もしれぬ英霊よ!…貴様らは余の臣下としてこの王の疾走をそこで見ていろ。」

イスカンダルはそこまで言うと、ふっ、と笑い

「二人共、生きろ。必ずな。」

ライダー!とウェイバーは叫ぶもライダーは駆け出す。孔明はそんなウェイバーを叱責する。

「…涙を払え。あの王を目に焼き尽くすために。」

 

「うおおらららい!」

イスカンダルは信玄に真正面から向かっていく。それに対し、信玄は刀を抜き、

「…見事なり。ならば今回は本気で相手をしよう!

風林火山の真髄、ここに示さん!侵略すること業火の如く!」

言うやいなや、刀から爆炎が噴出された。そして、その刃を横に振るう。それだけで火炎放射器のように炎がイスカンダルまで届いた。イスカンダル自身は避けたものの、ブゲファラスが炎に飲まれた。

すぐに立ち上がるとそのまま走り出す。刀の射程に信玄を捉える。

「おおおおおお!」

刀をあげ、振り下ろす。

「動くこと雷霆の如く!知りがたき事陰の如く!」

信玄が叫ぶと同時に、一瞬だけ、イスカンダルの意識に空白が生じた。自分が今倒さなければいけないもの。それがどうしても分からない。そして、一瞬の後、イスカンダルの体には信玄の刃が突き刺さっていた。

「…まったく、貴様、まだそんな力を持っていたのか…。ガハッ…」

「…真打とは最後までとっておくものだ。だが、、本当はこれは使う気は無かったものだ。誇れ、お前はたしかに俺の予想を超えた。」

「ははっ、それは…なにより、」

イスカンダルは少し笑うと、虚空へと消滅していった。同時に心象も消え、元のアインツベルン城屋上へと戻った。端ではまだ、バーサーカーとセイバーが戦っているようだったが。

 

「さて、、貴様がライダーのマスターで、貴様がカルデアのサーヴァント、それに間違いはないな?」

「あっ、ああ。」

「主君の敵を討たなくてよいのか?」

「貴様に挑めば僕は死ぬ。」

「そうだな。」

「それはできない。僕は、あの人から生きろと命じられた。」

「…ふっ、良い覚悟だ。忠道、確かに承った。…だがそちらのサーヴァントはそうもいかない。悪いが…ここで…」

言いかけて、信玄は自身の身体が消滅していっていることに気づいた。見ると、勝頼も消滅していた。

「ここまでか。まったく、ここまで苦戦した戦いは久方ぶりだ。が、久しぶりに心躍る戦いだったな。」

信玄は少し笑うと空へと消えていった。

 

ライダーの代わりにランサーが出てきた。

「…ライダーがいなくなったが、お前はここで討ち取らせてもらおう。」

ランサーは孔明に近ずいてゆく。

その時、赤き槍が複数、ランサーを襲った。その方向には腹部と足に怪我を負ったスカサハが立っていた。




今回小説出すのが遅かったのも納得していただけると光栄です。陣形の展開や二十四将の使い方が難しかったです。ほんとうならもうちょっと二十四将の方々には活躍してもらいたかったのですが、きりがないためなくなくボツになりました。
出てきた陣形の鶴翼や魚鱗は実際によく使われた陣形なので興味があったらお調べください。
サラッとだけ言っとくと魚鱗は△の陣形で鶴翼はV字型の陣形、方円は〇型の陣形です。
イスカンダル、活躍…ごめん…
あ、言い忘れてましたが、孔明の名誉にかけて言っておくと部隊を二手に分けて分断させる作戦は長宗我部元親が四万十川の戦いで一条氏を似たような戦法で破ったことがありますので、、それに免じて!

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