Fate パラレルクロニクル   作:柊彩

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はい、という訳で、だいぶ制作に時間かかりましたー。楽しみにしている方がいらっしゃったらごめんなさい。
今回はなんと5000字越えです。わお。
読んでいただけると光栄です。


聖杯問答(開幕)

第二十九章 運命の日(戦端)

~アインツベルン城にて~

静寂が訪れたままだった、と書いた。しかし、皆さんはイスカンダルが何も言わなかったと思うだろうか。もし信じてもらった方、詐欺に気をつけよう。

多少の静けさの後イスカンダルは問答を続けた。

「ところで貴様らは聖杯に何を願うのだ?」

まずランサーがそれに応えた。

「ワシはそうだな、、特にないな。」

「なに?」

「ワシは強いやつと戦えればそれでよい。そうだな…強いていえば…世界一うまい酒を飲みたいかな。」

「たわけ。世界一うまい酒など今貴様が飲んでいる酒がそれだ。この世に我の財に勝るものなどないわ。」

「おお?そうであったか!ならますますいらんな!ガハハ。」

「ランサーは分かった。して、そちらは?」

「私はそうですね、、私も特に願うことはないでしょうか。」

「ではなぜ剣をとる?ランサーと同じく貴様も強いやつと戦うためか?」

「そうではありません。私は…私のために誰かが悲しむのを見たくないから、戦います。」

「ん?どういうことだ?」

「…私の父は偉大でした。へんびな田舎の弱小領主に過ぎなかった長宗我部家を一時は四国の覇者にまでしたのです。私はそんな父から大きな期待をかけられていました。ですがその私が戦死したと聞くと父は人が変わった様に冷酷になり長宗我部家は滅亡しました。のちにそれを知り、その時に誓ったのです。もし、聖杯戦争に呼ばれたのだとしたら必要とするマスターの為に生き残ることを。私の為にもう誰かが狂うようなことが起きないように。だから私は勝利に興味はありません。」

「…変わった奴らだな。まあよい。お?ランサー酒が切れたようだな。金ピカ、酒追加だ!ほれほれ!」

「ほざけ!我が財に追加などないわ!」

「まあそう言うなって。酒がなければ始まらんのよ。」

「酒など貴様が持ってきたものでも飲ませておけ!」

「いやな、貴様の酒を飲むとどうしてもこの酒が物足りなくなってしまってな、、あと1杯!頼む!」

 

 

ギャーギャー騒いでいる王達を呆然と見ている者達がいた。特に長髪の男は口をあんぐりあけて塞がらない様だった。

「な、何をやっているんだあいつらは。…知らんヤツが二人いるようだが…なぜ宴会にくわわっているのだ…訳が…分からん…」

「先輩!孔明さんがオーバーヒートしそうです!」

「…マシュ、そっとしてあげるのも優しさなんだよ。」

スカサハが更に話に入り込んできた。

「ところでギルガメッシュとやらはどいつだ?そろそろ出ても良いのではないか?」

「ん?ああ、そうだな、、孔明、もう出てもいいか?」

「…もう…勝手にしてくれ…。」

「よし、なら出撃だ!スカサハ!狙いはあの金ピカ!マシュ、孔明はスカサハのサポートを頼む!」

「了解です、マスター!」

 

 

一方、カルデアとは少し離れ城内の場所でも似たようなことが起きていた。詩音は体をぷるぷる震わせ、

「な、なんで、監視を命じたはずのランサー達があそこで酒飲んでんだ…。」

詩音はカルデアより少し先に城に着いていた。だがランサー特製のラジコンで今の状況を見て呆気に取られほうけていたのだった。

(ともかく、ランサー達がいるのは仕方がない。カルデアは出てこないのか?もしかして…向こうにも大して戦力はないのか?ランサー達に恐れをなしたのか?)

そう考えていた矢先、どこからともなく3体のサーヴァントとそのマスターが出てきた。服はカルデア戦闘服だった。

「出た!」

詩音は駆け出す。世界を壊した災厄の使者を打ち砕く為に。

詩音は走りながらラジコンのカメラと繋いだ映像を見る。どうやら相手はギルガメッシュを狙っているのだろうか。前にキャスターを倒したランサーの女を主軸に隊列を組んでいた。

 

 

敵に一番早く反応したのはランサーだった。おもむろに立ち上がると、、

「ん、なんか近づいているようだな。…誰が出る?ワシが貰ってもいいか?」

その言葉にイスカンダルが待ったをかけた。

「待て待て、ここは余が出る。貴様らに余の力を見せる時だ。余の力を見れば貴様らが余の軍門に下りたいと願うことは間違いなしだな!」

「待て待て待てライダー!こいつが勝手に戦うのなら別にほっときゃいいじゃないか!相手なんでか3体もサーヴァントいるぞ!むちゃくちゃだ!」

「ふふん、それを蹴散らしてこそ征服王の名は轟くというもの。見れおれ小僧!」

イスカンダルが悠々と立ち上がった。だが、、

「英雄王〜!!!」

マスターらしき少年が叫ぶと同時に先頭のランサーの女が体の周りに朱槍を三本出すとそれをギルガメッシュ目がけ打ち放した。と、言ってもその女がしたのは走りながら手で持った槍をギルガメッシュの方に突いただけだったのだが。

紅き槍がギルガメッシュに触れようかとした瞬間、ギルガメッシュの後ろの黄金の空間、ゲートオブバビロンから宝具が嵐のように噴出された。

「…どうやら、俺が目的のようだな。」

ギルガメッシュはイスカンダルの前に立つ。

「貴様らはそこで見ていろ。これは王の命令だ。」

 

 

詩音は城をただ駆ける。そして、遂に屋上にたどり着いた。こちらはカルデアとは逆の方向だった。扉を勢いよく開けると同時に彼は叫ぶ。

「ランサー!セイバー!今すぐあいつらを倒せ!俺に構わず宝具連発しろー!」

ランサーとセイバーは突然の命令に少し固まった様だったがすぐにギルガメッシュに加勢せんと武装を固める。

だが、そこにこちらも先程のTシャツ姿ではない、征服王としてのイスカンダルが立ち塞がった。

「そこをどけイスカンダル!」

「ここを通すわけには行かぬ。あちらはあちらで決戦をしているようだ。それに、王として、先程金ピカからここで、黙っていろと命令されている。見るに実力は拮抗しているようだな。敵の方は後ろでいろいろサポートはしているようだが、それも非力。あれほどまてま出に拮抗している勝負に水を差すのは無粋極まるとは思わんか。」

そんなイスカンダルの言葉にいつの間にか現界していたライダーが応えた。詩音もそこにたどり着いていた。

「ふん、王自ら一騎打ちに出るなど愚の極み。王に求められるのは勇猛さではなく冷徹さだろ。」

「…冷徹な王に誰が従う。兵よりも前に立ち、鼓舞してこその王であろう。」

「その兵を鼓舞するために王が死んでは元も子もない。勝つための策略をねるのが必要なのだ。」

「策を弄し敵の弱みにつけ込み斃す、そこにいかな熱がある?人を引きつける?誰が。その王に!焦がれる程の夢を見る?貴様が否定したものの強さ、ここに示さん!」

イスカンダルから莫大な魔力が放出される。

 

少し前にカルデアの方では孔明がイスカンダルが交戦状態に入り宝具をうとうをしていることが分かった。

だが今は動く訳には行かなかった。スカサハとギルガメッシュとの戦いは一進一退を繰り返していた。

ギルガメッシュの宝具の嵐をスカサハは槍を前方で横に並べそれを盾として使っていた。そこから槍を放出していたがすぐに打ち消される。だが爆炎から槍が噴出された。槍の真後ろにもうひとつ別の槍を用意していた。ギルガメッシュからは死角になっている所からの突然の攻撃に少しだけ身を捻らせ、なんとか回避する。そこに更に追撃がかかり、ギルガメッシュは城の外に放り出された。スカサハもそれを追う。藤丸もマシュの手助けを借りて追撃するようだ。

と、不意に孔明に藤丸が声をかけた。

「…孔明、貴方はあちらに加わってほしい。 」

「なに?」

「イスカンダルは失う訳には行かないだろ。それに先程から気になっているみたいだしな。行ってきな。」

エルメロイ二世は少し驚く。自分がまさかあのような者達を気にかけていた、そして、それは藤丸が気づくぐらい明らかだったということに。

「…感謝する。必ず、勝って帰ってくる。」

そう言い残すとすぐさま駆け出した。エルメロイ二世には申し訳なさとどこか嬉しさがあるようだった。

 

時を現在に戻す。

イスカンダルは己の最強宝具『王の軍勢(アイオニオンヘタイロイ)』を展開する。

それに対して詩音たちにはランサーとセイバー、それにライダーのみでしかも戦いになれば2体のみの現界になる詩音にとってこの宝具はまさしく最強にふさわしかった。イスカンダルの号令の元、大軍団が詩音らに迫った。

「…あぁ、終わったのか…」

ぽつり、と詩音はつぶやく。最早この数の優位を覆す手はなかった。あとは数にものを言わせ蹂躙される。

詩音はガックリとうな垂れる。

「…すまないな、マスター。私が手伝えるのはここまでのようだ。」

不意にライダーの声が聞こえた。詩音は顔をあげる。

ライダーの瞳にはまだ光が灯っているようだった。

そんな顔をするな。あれくらいなら我が父はやってくれるさ。ランサー、セイバー。あとの事は父と協力してやってくれ。私は戦いからは降りる。」

言葉の意味を理解できない詩音を他所にライダーは片足を立てて身を屈める。それはちょうど第五次のアーチャーのvsバーサーカー戦で見せたポーズのようだった。そして彼は告げる。彼の真の宝具、その儀式を。

「――奉る。御身は我が身の名代に。

主が命運は御身の剣に。

我が身を焦がして御身に息吹を。

我が身を喰らいて御身に肉体を。

其は甲斐の虎。

抑止の輪より来たれ、我が父武田大膳夫晴信よ――」

光が、詩音らを包む。それにイスカンダルも進撃を一時止める。

そして純白の光からはライダーと、横に1人の男が、その後ろには24人の将、そして、無数の兵団が、そこにいた。

兵たちの掲げる旗には風林火山の文字が刻まれていた。

「敵は大軍だな。勝頼ぃ、これほどまでの大戦を設えてくるとはなかなかにわかってきたではないか。」

先頭の男はにっ、と笑い、隣に立つライダー・武田勝頼に声をかけると後に振り向いた。

「…勘助、敵とこちらの戦力は?」

勘助、と呼ばれた男が前に出て告げる。

「敵兵数は約4万9千、自軍は3万9千人余りと思われます。」

「ほほう、我らは全兵が揃ったのか。めずらしいな。」

「それはおそらく固有結界を向こうが張ったのでそこに霊力を使わなかったからでしょう。」

「なるほど、して、敵は49,000か。死した後まさかこのような戦いに恵まれるとは人生とは分からんものよな。」

そう言うと男・武田信玄はイスカンダルの方に向き直り、

「異邦の王よ!我が名は武田信玄!貴様を砕く者だ!その名をしかと胸に刻みおけ!」

うおおー、と後ろから雄叫びがあがる。

 

それに対してイスカンダルは歩を止め武田信玄を見ていたが不意に横から声が聞こえた。

「ライダー!向こうが戦闘態勢を整える前に潰すんだ!早く!」

見ると前に1度見たことがあるしかめっ面の男だった。

「貴様はいつぞやの…」

「そんなことなどどうでもよい!」

必死の剣幕にイスカンダルは少しだけたじろいだ。

その困惑は一番早い勝ち筋を塞ぐ。

 

「さて何をするにもまずは策を練らねばな。昌幸、陣をはるぞ!」

着物に六文銭の家紋を付けた武将、真田昌幸が前に出る。と、同時に兵4、50人が信玄の軍勢の周囲に走った。

信玄は言葉を紡ぐ。

「人は城、人は石垣、人は堀。我らが躑躅ヶ崎館、ここに再現せん。」

言うやいなや、兵たちの体が光り始め、、

気がつくとそこは巨大な屋敷のなかだった 。と言ってもそれが屋敷だと分かるには少し時間がかかったが。イスカンダルの軍勢の方に大きな正門が、側面には櫓がいくつかあった。

「ふむ、このような平野では堀は無理か、まあよい。これなら多少は持つだろう。」

信玄の言葉通りこの屋敷には籠城のみを目的としているので正門しか外界に通じず、あとは土塁に囲まれていた。

詩音は目の前で起こる次々の事に理解が追いついていなかった。先程やっと現実を認識し始めた。

「おい、ライダー。どうなってんだ?なんでお前がサーヴァント召喚してんだ?魔術師でもないのに。」

「それは早計だな。確かにサーヴァントがサーヴァントを召喚なんて普通は出来ない。一つは魔力を持たないから。だがこれは問題ない。マスターから魔力を貰って俺達は現界してる訳だからその魔力を使えばいい。あともう一つはサーヴァントがマスターになった時はそのマスターからの関係は切れる。魔力の創造が出来ない俺みたいなやつはそこで潰れるしかない。」

「そんな、じゃあ…」

「ああ。俺はこの戦に勝とうが負けようが消滅する。父も同じようにな。 だが、悲観する必要は無いさ。俺はこの戦、どうしても勝ちたい。俺みたいな我儘な奴に付き合わせて申し訳ない。だが必ず勝って見せる。」

「…なんでそんなに自信があるんだ?兵力はあちらの方が上じゃないか。」

「確かにな。だがそんなものどうにでもなる。それにな、この戦で消滅することが確定なら出し惜しみする必要なんてないんだ。時間制限つきだが、この戦だけは本家の武田信玄を召喚するよりも強い。信じろ。」

「…そうか。分かった。」

詩音は目をつぶり少しだけ感傷にひたった。

だが、そんなセンチメンタルな気分はすぐに止められる。

「おーい、勝頼様とそのマスター及びサーヴァント方!軍議を開くから来てくださーい!」

男の声が聞こえる。見ると先程勘助と呼ばれていた男だ。戦国史にあまり詳しくない詩音だがこの男は知っていた。山本勘助、武田家の軍師だった。

詩音と勝頼、それに信親と友信は勘助につれられ広い廊下を歩いた。

木造の本殿は静かだが同時に荘厳さをありありと醸し出していた。

そこには勘助をのぞく、先程信玄の後ろに立っていた24人の将たちがいた。

「よし、揃ったな。ではこれより軍議を始める。」




という訳で、やっと武田信玄を出せました。
イスカンダル&孔明vs武田信玄および家臣団。
これが書きたかったんですよー。
でも肝心の戦いはまだしていませんね…。
情報収集が思ったより大変でして…、すみません!
がんばって書きます。次もこれと同じくらい長作になりそうなのでまた時間かかると思いますが…
まぁまた思い出したら読んでくれると嬉しいです!

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