長々と問答書いて今回はつまらないと思う人もいると思います。
今回はあえて読まずに聖杯問答編完結で全部一気読みもいいと思います。それでも読まれるという方。ありがとうございます!笑
第二十八章 運命の日(問答)
~現時点。アインツベルン城下の森にて~
夜になった。詩音はまずバーサーカーを拾いにアインツベルンの森へと向かった。だがもう聖杯問答は始まっているはずだ。だから詩音は先にランサーとセイバーを問答の所へ向かわせた。カルデア勢力がおかしなことをしないための見張りの役割を果たしてもらう。と、そこに
「Aa…」
約束通りそこにはバーサーカーがいた。映像で見ていた狂戦士ではなく、割と大人しめだった。
「行こうか。」
「Aa」
うなづいたように見えた。
詩音はランサー達の待つ舞台へ進み出した。
~数分前。アインツベルン城にて~
詩音から監視を命じられたランサーたちは霊体化して城の中に潜んでいた。先程イスカンダルというやつが豪快に城の監視システムなどをぶっ壊してくれたため、割と潜入は楽だった。だが、、
「…ああ、酒…いいな…。」
ランサーは先程からそのことが気になっていた。酒豪で知られ、宝具の日本号だって結果的に酒で得たものだった。
宴会の様子を見ているだけというのはとても辛かった。
「まるで蛇の生殺しだ…」
「まあまあ、しょうがないですよ。」
親子ほどの年齢差の2人だったが若いセイバーがランサーを宥める変な構図だった。だがその構図も長くは続かなかった。それはギルガメッシュがゲートオブバビロンから至高の酒を出し2人の王に振舞った時だった。
ランサーの美酒センサー、略して美酒サーがゲージを振り切った。
「…ところで、お前達はいつまでそこにいるつも…」
イスカンダルが問おうとした瞬間ランサーが出てきた。その後には呆れた顔のセイバーが立っていた。
「うわぁ!」
ウェイバーが奇妙な声をあげた。ギルガメッシュはなにか不思議そうな顔をしていた。ランサーはともかくセイバーのクラスの英霊は今ここで宴の席にいる。なのにまだセイバーがいるとは。これはどういう事なのだろう。だが、そんなイレギュラーに対してギルガメッシュは大して驚かなかった。英霊が何人いようと自分は関係ない。なぜならば自分こそが最強であり法だからだ。下賎の者達が決めたことなど児戯にすぎない。故にその児戯にいちいちこだわらない。そしてギルガメッシュはイスカンダルの行動を予見し…
「あんな奴腹までも宴に招きいれるのか、征服王?」
「当然だ。王の言葉は万民に向け発するもの。わざわざ傾聴しに来たというのならば敵も味方もありわせぬ。さあ、遠慮は要らぬ。共に語ろうとする者はここに来て盃を取れ!この酒は貴様らの血とと共にある!」
イスカンダルは柄杓を高らかに掲げる。
「ぜひ、頂きたい!」
ランサーはハッキリと告げた。最も、ランサーは酒が欲しかったのであり、王のあり方などはどうでも良かったのだが。
「おお!ならばそこに座れ。ほれ、金ピカ、あいつらにも酒を頼む。」
「たわけ。なぜお前が俺に指図をする?あのような雑種はわが酒を飲むに能わぬ。」
「まあそう硬いこというな。寛容さでも、王の器は出るのだぞ?」
後ろからランサーもソウダソウダーとけしかけていた。
「…ふん!」
ギルガメッシュは財宝から二つの容器を取り出しランサーらに渡した。
「ところで貴様らは一体何者だ?宴の席にたったのなら名前くらい知っても良いのではないか?まあどうしてもというのならそれでも構わんが…」
「おお!名か。そういえば言い忘れておった。お主が名乗りを上げたならこちらも上げるべきだったな。我が名は母里友信!通称母里太兵衛!黒田八虎の一番槍である!」
ランサーは惜しげもなく真名を言ってしまった。セイバーは自分も告げるべきか迷っていたがやはり武人として名乗らないわけにもいかず…
「…私の名は長宗我部元親が嫡子、長宗我部信親。以後お見知りおきを。」
ランサー、母里友信と違い丁重な言葉遣いにイスカンダルは少し驚いた様だったがすぐに戻った。
「さて、お互いの素性もしれた事だし、まずは一献。」
「お!やっとかい。待ちくたびれたぜ。」
ランサーの目はとてつもなく輝いていた。そして、イスカンダルから注がれた酒をぐい、と飲み干すと…
「かあっ!旨い!我が人生でもこんなうまい酒は初めてだ!感謝する!ほれ、セイバーも飲んでみろ!こんなうまい酒、滅多に飲めんぞ!」
「いや、私は…」
「なんだ貴様。我の酒が飲めぬと申すか?」
「いや、そういう訳では…ただ酒は父からあまり飲むなと言われていて…」
「んなモンほっとけ。ほれ、ほれ。」
ランサーはしつこくセイバーにすすめ、遂にセイバーが折れた。ちびっ、と酒を飲んでみると芳醇な香りと旨みが口に広がった。
「…美味しい…」
「だろ?半端なく美味いんだよこれ!」
自分の酒が褒められていることに気を良くしたのかギルガメッシュもほほ笑んだ。
「ええ、ほんとに美味しい。酒とはこれ程まで美味しいものなのですね。」
「なんだその言い方。まるで初めて飲んだみたいだな。」
「初めてですよ。酒を飲んだのは。」
え。とそこにいた全員が固まった。ランサーが話を続けた。
「ホントか!?驚きだな。酒を飲んだことがないとか。英雄になるぐらいなら勝ち戦の後の宴くらい経験したことあるだろ?そこで酒でも飲んだはずだろ。」
ランサーの言葉にセイバーが俯く。
「私が戦いに臨んだのは生涯でも10回もないでしょう。初陣時もまだ幼いからと父に止められ、その後も酒は飲まぬまま私は戦死しましてね。」
辺りに静寂が広がった。その静寂を破ったのはウェイバーだった。
「おい!聞いたかライダー!こいつは生涯で少しだけしか戦いに出てないんだとよ!超雑魚じゃないか!なぁ!ライだぁぁ」
イスカンダルからデコピンが放たれた。セイバーはなんとも言えない顔をしていた。
「ちょっ、おまっ、何を…」
「…そんな事も分からんのか。こいつが本当に10回もまともに戦場に出ていないのならその数回の戦いで英霊と認められたという事だ。これが英雄以外のなんだと言うのだ。」
「あ…」
イスカンダルのもっともな意見にウェイバーは押し黙った。
それからカルデアが乱入するまで、彼らに静寂が訪れたままだった。
~数分後。アインツベルン城下の森にて~
カルデアのマスターにして正真正銘のヒーロー、人類最後のマスター・藤丸立香及びその一行はケイネスの計らいでバーサーカー陣営と合流する。…筈だったのだが…。
「…来ないな。」
肝心のバーサーカーの姿がない。
「…これはどういう事なんでしょう?」
藤丸は隣にいたグレートビッグベン・ロンドンスター、もといロードエルメロイ二世に話しかけた。
「…バーサーカーの気を感じる。が、、城に向かっているらしい…」
「え?!じゃあ交渉は破綻なのですか?」
厳つい鋼鉄に身を包んでいる割に体の線がでて、へそを出している変な服装に身を包み、身の丈以上の盾を持ったデミ・サーヴァントのマシュが問いかける。
「…その可能性は低いと思うな。雁夜にこちらを裏切るメリットがない。」
「じゃあなんで?」
「…ドクター。バーサーカーの隣にいる男を見てみてくれ。こちらのものよりドクターのほうが優れているはずだ。」
エルメロイ二世はDr.ロマンにそう頼んだ。
「はいはーい。隣の男の子ねー。ちょっとまってね。 」
モニター越しにおじさんの声が響いた。
「…はい。解析完了……ん?」
「どうしたの?」
藤丸が不思議そうに尋ねる。
「これは…バーサーカーのマスターでは…ない…?」
「え?!」
「やはりか…」
「ちょ、どういう事なんです?」
「乗っ取りか、嵌められたか…。いずれにしろバーサーカーはもう使う事は難しいかもな。」
「でっ、でもギルガメッシュを倒さなきゃならないんじゃ…?」
藤丸が不安そうな声をあげる。そこに…
「問題ない。そのギルガメッシュとやら、私が貰おう。 」
第三者の声が聞こえた。ケルト神話の影の女王・スカサハがそこにいた。
「実に面白い。そいつは私を楽しませてくれるかもしれない。なぜなら、、」
スカサハは少し間をおき、
「…バカ弟子の仇があるからな。」
藤丸は少し考えたあと、控えめにうなづく。
これまで彼はスカサハに何度も助けられてきた。そして、彼は彼女の力を信頼していた。事実、彼女は藤丸が当ててからスターティングメンバーから外れることはなかった。
「そうと決まったら行こうか。」
この物語において最強の勢力・カルデアもまた宴の席に歩を進める。夜はまだ、始まったばかりだ。
次は、次こそは僕が1番書きたかったところに入るはずです!またスカサハvsギルガメッシュも書くつもりです。何字になるんだろ…。
ともかくここは書きたいことが多い分、文書量も多く制作にも時間がかかります。どうか気長に待っていて下さるとありがたいです。
読んでくれてありがとうございました!