そこで詩音の考えた策が今回披露されます。
ちなみにここまではfgoと矛盾は無しですが次からは完全にオリジナルになっていきます。
第二十三章 動乱
路地裏での交渉を終えたあと、詩音は家に帰ってきた。家の中にはいい匂いが溢れていた。
「カレーだ!」
詩音は駆け出した。カレーは詩音の好物のひとつだった。食事場に入るとそこにはセイバーがいた。
「お、帰ったかマスター。どうだった?守備は?」
セイバーの問いに詩音はブイサインで応じた。
椅子に座るとご飯がよそわれ、カレーが出てきた。「そうだ、マスター。吉報だぞ。もう働く必要が無いぞ。」
突然のことに詩音は目を丸くした。
「株だよ。俺に与えられた観察眼、その力の応用さ。本当はこっちに来た時にすぐやりたかったが何分元手がないとな。でも何とか今日溜まった。なんと今日はランサーがパチンコで大勝したみたいでな、その金なんだ。」
結局遊んどんかい、と内心ツッコミつつ、ランサーにこればっかりは感謝した。
と、その時、そのランサーが食事場に入ってきた。
だがその顔はどこか沈んだようだった。
「よー、ランサー。大勝したんだっ…」
「マスター。ちょっと。」
いつになく神妙な声に詩音から笑顔が消えた。
「…キャスターが狩られたぞ。」
「…!!」
アサシンから聞いた情報には、殺人を続けるキャスターの討伐の命令は出ているようだがいくらなんでも早すぎる。どうやって場所を特定したのだろうか。まるで…初めからそこにいると分かっているような…
「…誰がやった?」
「あいつらとランサーだな。」
「キャスターやったのはランサーか?」
「いや、ちがう。あいつらだ。でもランサーの交渉に行っていたメンツに加えあと1人いた。雰囲気からしておそらくランサーだろう。黒髪で長髪の女だったな。朱槍を使ってた。1本でもキャスターの召喚したやつ数十個は狩ったはずたがそれ加え空中に似たような槍を出してそれを操っていたような…。そこまではビデオに記録してある。だがそこからはバッテリー切れになる前に引き返さなきゃならなかったからな。俺自身が現場に走ったんだが…
俺が急いでいったらキャスターの気配が消えてランサーが出て来たんだ。その後はなんかイスカンダル?とか言うんが入っていったり変な奴が出てきたり…ごちゃごちゃした後、そいつらが出てきたぞ。」
ランサーの口から明かされたのは詩音にとって想定外ばかりだ。と、そこに、情報協定を結んだばかりのアサシンが入ってきた。30代後半で中肉中背、と言ったところか。
「お食事中失礼。動きが…バーサーカー陣営がランサー陣営に対して時臣氏の打倒を条件に協力体制に入った…と…」
とんでもなく重要な事を伝えてくれたがアサシンは、ちょっとした放心状態になっていたようだった。
「こ、これは一体?なぜこれ程までのサーヴァントがここに?4?いや、5体?天草殿。情報開示を求めます。一体あなたは…何者なのです?」
詩音は気づく。今までここにサーヴァントが来なかったのはライダーが結界をはり極力霊体化などをして悟らせなかったためだ。だが逆に言えば違和感に気づいてしまえば、そこに弁明の余地はない。ここは正直に話すしかない。
「…実は…」
詩音は語る。自分たちの素性。なぜ過去に来たのか。目的。そして、人類史の滅亡の事実。
ひとしきり話したあと、アサシンは首をふった。
「…えらく尊大な話ですな。にわかには信じられませんが…」
…それもそうだろう。いきなり自分たちは未来から来たとか言われて、はいそうですかと受け止めたならその人の神経を疑う。
「信じてもらわなくても結構です。しかし、これだけは。我々はあなた方の邪魔をしようというのではありません。そこだけはご理解ください。」
そう、そこが大切なのだ。お互いに利益のある協力だと信じてもらわないと詩音には勝ちは得られないだろう。
まっすぐな瞳をアサシンに向ける。それに対しアサシンは未だ何かを決めかねているようだが…
「…ふっ。」
仄かに笑った。
「…今の話はおいそれと納得出来るものではありません。かと言って一蹴するにはあなた方の戦力は大きすぎる。正直あなた方を信じて良いのか分かりません。ですが、我らは強力な者ではない。あなた方のような強大な力と組めるのなら我らはあなた方と協力しましょう。」
その言葉に詩音は心の中で安堵する。紙一重だがまだ希望はある。
カレーの湯気は未だに空に伸びていた。
第二十四章 奇策
カレーを食べた後アサシンも交え今後の作戦会議を始めた。
アサシンの情報からバーサーカーとランサーとの連携が判明した。そしてほぼ間違いなくここにもランサー陣営のバックにあいつらは潜んでいる。
「…さて、どうするか…。」
正直言って状況はかなり悪い。相手は破竹の勢いで勢力を伸ばしている。これだから立ち回りの上手いものというのは厄介だ。だがそこに詩音はひとつ、付き入るスキを見つけた。それは…
「バーサーカー。突くとしたらここか。」
詩音はぽつり、と言った。
アサシンの情報から協力関係を築いたのは電話らしい。なので、バーサーカー陣営にはランサー陣営の顔は分からない。つまり…
「すり代わり」
セイバーが、答えた。詩音はうなづく。そう。すり代わり。ランサーのマスターを装いバーサーカー陣営に近づき、時臣との戦いの場を設けて雁夜はそこに、ランスロットは時臣のサーヴァントを引きつけることを口実に借り受ける。これで相手に落ちたはずのバーサーカー陣営が敵として現れるからあいてにも多少の困惑は出来るだろう。だが、詩音にはひとつ気になる事があった。アサシンはこれに納得するだろうか。アサシンのマスター、言峰綺礼は遠坂時臣とは師弟関係で今回も同盟を組んでいるようだ。同盟相手をみすみす殺す作戦に同意してもらえるだろうか。と、疑問に思っていると
「問題はどうやってアーチャーを引き離すか、でしょう。正直我らでは総員でも敵わないような…」
割と乗り気だった。
「えと、一応聞いとくけど時臣が死ぬかもしれないってのは大丈夫か?」
「え?ああ、そこを気にしているのですか?ええ。大丈夫です。我らの任務はあくまでも見張りなので。時臣氏の護衛は任務にありません。」
そういうものか?と、余念は残っていたが反対はしてないようなので話を続けた。
「それで、アーチャーをどう離すかだが、これはこちらに案がある。もう少ししたらな、アインツベルンの城でセイバー、アーチャー、ライダーが話すんだ。その時を狙おう。こちらから離すより向こうから離れて貰えば負担は減るさ。」
アサシンはなるほど、と納得したようだ。他のサーヴァント達も同様に。
することは決まった。奇計をもって盤上をひっくり返そう。詩音は告げる。
「…勝つぞ!」
その言葉に皆、大きくうなづいた。
感想の方で質問が来たのでここにも書いておきます。
キャラ紹介 今回は詩音の祖先の天草輝彦
忘れている方がほとんどだと思いますが1話でちらっと名前が出た程度の悲しい方です。
天草輝彦。故人。天草四郎の隠し子で苛烈なキリスト教弾圧や重税に乱を起こすつもりの四郎が父宗玄の知り合いでオランダに亡命する人に頼んで連れていってもらった。この時輝彦はまだ1歳にも満たない赤ちゃんだった。無事亡命後オランダで生活していた輝彦だが、成長した後、輝彦を連れてきた人から自らの境遇、父の存在、また、風の噂で聞いていた島原の乱、キリシタンの境遇をしり、憤激し、信仰では何も守れない、と思い力を求め魔術へと手を出すようになる。
詳しくは感想の返信の方に書いてあるのでそちらを参照にしていただけると助かります。
珍しくまじめなキャラ紹介でした。つぎはまたふざけれるかな?と思います。