宿の部屋は流石に学校ごとで違うらしく、俺の部屋は永大と藻部、イケメン(桜と同じ委員会)との四人部屋だった。因みにイケメンと藻部は同じ班らしく、聞けば小学校以来の付き合いだとか。
……腐るなよ。
一日目とは言え、まだ昼過ぎ。この後には予定が詰まっている。
まずは学校合同班で、近くの山の遊歩道を探索。一応学校活動の一環と言う事もあり、遊歩道で見かけた鳥や虫、草などをスケッチしてレポートしろよ、と言う内容だ。その間に先生たちは打ち合わせをし、今後の事を決めるらしい。
とは言え、レポートなんてのはでっち上げで済ませて良い。
この遊歩道探索の真の目的は、学校同士での交流を深めるためとの事。行きのバスで先生がぶっちゃけてた。良いのか社会教師!!
と言う訳で、自室でジャージに着替えた後に集合場所へ。桜達と合流し、山へと向かう。
山の名前は修菊山。しゅうぎくやま、と読むらしい。遊歩道の長さは全部で3km程度だ。
……長いのか短いのか分からない。紅月らと合流して、先生に報告してから遊歩道に入る。山の中は夏という事もあり蝉の声が五月蠅いが、それでも俺の住んでいるところよりは全然涼しかった。時々吹き抜ける爽やかな風が汗を乾かし、髪を揺らす。
先頭には桜と凛とアイリス、他校の女子二人。最早打ち解けているらしい。
早いな、と思いながら俺は永大とぼちぼち歩く。隣のこいつは、他校の女子へと目を光らせていた。
「……胸は大きいな。だがトアイリスさんよりは小さい。顔は、ふむ。桜さんよりも可愛くない。愛嬌は凛の方が上か。分かってはいたけど、俺たちの班の女子レベル高すぎないか?」
「それな。と言うか、比べること自体間違ってる」
「確かにな。まずはあの人たちの良い所を上げていこう」
「胸」
「微妙に平均以上の顔」
「……し。身長」
「社交性あるんじゃねえかな……」
「……パス」
「ええ。んーっとだな、暁には見つけられない良い所……? ええ……?」
幾つか言っただけで言葉を詰まらせる。遊歩道散策よりもそっちがメインになって来た中で、突如桜が此方を振り向いた。
「結城、ちょっと来て」
「ん。わかった」
桜に手招きされて、俺は先頭の女子グループに近づく。永大も少し後ろから付いて着た。
「えっと、これがボ……私の幼馴染。まあ冴えないけど、これでも良い所はあるんだ」
「別にボクっ子でも構わないから! 寧ろ萌えるし!」
おおっと。
どうやら他校のショートカットの女子は拗らせてるっぽい。やべえ。
「う、うん。分かった」
「で!? で!? 幼馴染にありがちなすれ違いとか近すぎる距離感の話とかは!? はよ!」
「あ、それ私も聞きたい」
「だってさー桜ちゃん。ほらほら、日常生活で良いと思うよ?」
「……桜さん、どうぞ?」
控えめなもう一人の他校女子、凛、アイリスが桜を急かす。困ったように、少し照れた風に頬を掻きながら、彼女はおずおずと口を開いた。
「えっと……その、お弁当を毎日作ったり」
「「「うんうん!!」」」
「何でトアイリス以外はそんなに元気なのかな!? ……朝起こしたり、一緒にゲームしたり」
「「「ほおほお!!」」」
「そ、その……ベッドに引きずり込まれたり……っっ!」
「「「「えええええええええええええええええええええ!!??」」」」
永大が自然にフェードインし、女子三人と小声で会話を始める。アイリスがにこにこしつつ氷河期を展開する中で、真っ赤になった桜は顔を隠して俯いた。流石にこんな大勢の前で言うのは恥ずかしかったのだろうか。
いやまあ、巻き込まれた俺はもっと恥ずかしいんですけどね!
「いやはや、ラブラブじゃ無いですか~!」
「そこまで行くと幼馴染と言うか新婚さん?」
「桜ちゃん大胆ー!」
「暁サイテー!」
「最後のだけは全力で否定するぞ永大イ!!」
「はっはっは!! お前みたいなもやしが俺に追いつけるかな!?」
「上等だ鬼ごっこしてやんよオルア!」
「俺に追いつこうだなんて114514年早いわ!」
割と全力で走り始める俺と永大。遊歩道を少し走った瞬間に案の定永大はすっ転び、追いついた俺は頭をすぱあん! と叩いた。
割と強めの一撃に永大も声を上げる。後ろでは桜たちが、その更に後ろでは三人の他校男子が話している。
その中の一人は、やはり桜を見ているようだった。
……多少の警戒心を抱き、永大と一緒に桜の元へと戻る。
いやまあ桜は俺の彼女でもないし婚約者でも無いしであいつが誰と付き合うがぶっちゃけ何も言えないのだが、それでも警戒してしまうのが男と言うものである。見ず知らずの相手だし。
恐らくだが、少しばかりの警戒心に永大は気づいている。
へらへらしているし、今現在進行形で凛に蹴り飛ばされている。が、あいつはそう言う事には聡い。
桜の次に信用できる相手だ。まずNTRは無いし。こいつに限ってとられる事無いし。
……無いよな永大。信じてるぞ。
「で、山頂に行ったらどうすんの?」
「山頂に着いたら、少しの休憩。先生が居るらしいから班の皆で写真を撮って下山だって。ボクはそうやって説明されたけど」
「ふーん。何だ、つまらん」
「しょうがないですよ。学校行事ですからね」
永大の言葉に笑みを浮かべて返すアイリス(白)。
こいつの黒状態は果たしてこの林間学校で出るのだろうか。見たくねえ。
でも、アイリスは桜と同じくらいに頭が良い奴だ。勉強面でもそうだが、普通に頭の回転が速い。最適な答えを直ぐ出せる脳を持っている。
困ったら、こいつを頼ろう。……桜に頼めない時が出来たら。
そんなこんなで、林間学校はスムーズに進む。
大した事件も無く、紅月も桜を見てはいるがあまり行動はしていない。胸を撫で下ろしつつ、風呂を終えて、一日目は滞りなく終了した。
二日目は確か、昼間っからバーベキューとか川下りとか忙しい筈だ。
俺の班は消灯時間から二時間程布団の中で会話をし、寝付いた。
藻部が好きなのは町で見かけた黒髪ショートの中三くらいの女の子らしい。
イケメンはトアイリスだとか。
……おい待て藻部野郎。それ、滅茶苦茶見覚えあるんだが……っ!?
次回から紅月君頑張るよ。
……なんかこう、ネタバレすると……
ラギアさんはNTRが大嫌いですぜ(*‘ω‘ *)