俺とクーデレ幼馴染の日常   作:ラギアz

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毎回言ってる気がしますが……。

遅れてすみませんでしたあああああ!!!!

GWですね……。
何とかもう一本……行けるかなあ……。

では、どうぞ!


俺と幼馴染とギャルゲー

 夏休み。七月の、終盤。朝6時から机に向かっていた俺――――暁結城は、シャーペンを走らせていた。机の端には読み終えた本があり、原稿用紙は最低枚数を超えている。苦手な人が多い読書感想文を最後まで取っておき、二時間かけて――――

「終わったぞおおおおおおおおおおおおお!!!」

 遂に、終えた。

 夏休みの宿題を、自由研究も含めて七月中に終える事が出来た。俺史上最大の快挙である。

 勿論、俺一人の力ではない。平均平凡な成績の持ち主を、宿題終了まで導いてくれた人は今ベッドから降りて、傍に歩み寄ってきた。

「お疲れ。大分時間掛かったね」

「三日間で終わるお前に比べたらな」

「あれでも手は抜いたんだけどね。簡単すぎるのが悪いよ。……うん、良いじゃないか。これでキミは、明日からずっと自由だ」

 読書感想文を読み、微笑む。

 黒い流麗な髪を腰まで届かせ、静謐な雰囲気を纏う蒼い瞳の少女。成績優秀文武両道才色兼備、完璧と呼べる大和撫子であり、俺の幼馴染。

 ベランダでお互いの部屋を行き来できる関係。雪柳桜は、俺の頭をよしよしと撫でた。

「頑張ったね。今日は遊ぼっか」

「ええい、撫でるな撫でるな!それでだな、今日は永大から借りたゲームをしようと思う」

「ゲーム?何だい?スマッシュシスターズとかルイーズカートかい?」

「違う違う、恋愛シュミレーションゲームって言うのかな、ギャルゲーってやつ」

「……ボクが居るのに?」

「た、たかがゲームだから……。ま、朝ご飯を食べたら始めよう。昨日、既にコーラとかは買ってきている」

「カルピスある?」

「原液ならいつでも」

「握り潰すぞ」

「ごめんなさい」

 流れる様な会話をしながら一階のリビングへ。

 因みに俺の服装は赤いジャージ、桜は水色のタンクトップに薄いパーカー、白い短パンだ。

 下に降りるともう机には朝ごはんが並んでいて、エプロンを付けた少女が箸を並べている所だった。

 決してシスコンではないが、それでも可愛いと思う我が妹。黒髪ショートの黒髪黒目、どうやら寮生活の学校では上位から三人には入る成績優秀者らしい、名前を暁葵と言う。

「おはようございます。兄さん、桜お姉さん。どうやら珍しく勉強をしてるようだったので、私が朝ご飯を作っておきました」

「ありがとうね、葵ちゃん。結城の宿題は終わったよ」

 いつも通りの無表情で、敬語で報告する葵へと桜は微笑んだ。身長は少しだけ桜の方が高く、二人とも美少女だからか見ていると姉妹の様に見える。俺と葵が並ぶと、兄妹だとは余り信じてもらえない。

 三人で席に着くと、一斉に食べ始めた。

 典型的な和食だが、全部美味しい。どうやっても俺には到達できないレベルの料理に兄としての存在価値を失いかける。……いや待て、俺の存在価値って……考えるな。感じろ。

 食べ終え、今日の予定を確認する。俺と桜はゲーム、葵は久々の自室を堪能した後に少し出掛けるらしい。ナンパに気を付けるように、と言って置いてから昨日買っておいたお菓子等を持って部屋に帰り、備え付けのテレビを起動。そこに繋がっているゲームにカセットを差し込んで、コントローラーを持つ。

 ゲームが起動して、タイトルが表示される。

『ときメギイッ! メモリアル』

 色々可笑しいだろ。

 これあれだよな。ときめきメモリアルだよな?無理にパクろうとしてどうして壊したし。

 取りあえず、ニューゲームを選択。

 ユーザーネームを片仮名の「ユウキ」にして、ゲームを開始する。操作としてはノベルゲームに近く、ヒロイン達との会話は基本的に選択肢で行われるらしい。

 テレビの前で桜と隣り合って座り、チュートリアルを終わらせる。

 攻略対象は、四人。

 まずは幼馴染。ツインテール、ツンデレ系。……貧s、スレンダーな体。

 次いでクラスメイト。ショートカットの、ふんわり系。平均くらい。

 転入生。金髪碧眼の外人。でかい。

 先輩。クール系の黒髪ロング。でかい。

「……凄いな。面子濃いな」

「幼馴染を攻略する? 転入生は論外として、クラスメイトかい?」

「なにゆえ論外なのじゃ。……んー、先輩かな。先輩良いよね。クールだし黒髪ロングだし」

「……ふふ」

「ん? どした?」

「いや、何でも」

 何故か嬉しそうな桜を一瞥してから、ゲームをスタート。朝起きて幼馴染に起こされて、一日が始まる。まずは遭遇イベントらしい。

『三ケ野 奏。俺の幼馴染で、弁当とか作ってくれる。が、ツンツンしてる』

 主人公のテロップが表示されて、静止画が映された。

 覆いかぶさってきている幼馴染の姿。盛大に見覚えがありすぎて笑えないぜ。

『早く起きなさい!ご飯冷めちゃうでしょ!』

「あのねえ、起きる時間とか計算してご飯作るんだよ。初歩の初歩だよ」

「高レベルすぎないか!?」

 さも当然の様に言ってのけた桜。ゲームは淡々と進み、どうやら入学式の少し後から始まるらしい。幼馴染とは同じクラスで、席は隣同士ではない。主人公……ユウキの隣は、二人目のヒロイン。

『加峰 涼花。クラスメイトで、話しやすい人だ』

 ……ふむ。台詞を見るに、どうしても某ヒロインの普通な方が……思い浮かぶ。♭良いぜ。

 転入生はどうやらゲームの序盤終了から乱入してくるらしい。放課後になり、今日主人公と奏は部活動体験に行くらしい。律儀にユウキの机に来た奏についていくと、選択肢が出た。

 

『1、文芸部 2、テニス部 3、美術部 4、校舎裏』

「校舎裏だな」

「どうしてそうなるんだい」

 冷静なツッコミが入り、渋々俺は1を選択。

『じゃあ、行きましょうか。……意外ね。文芸部に興味あったなんて』

『1、先輩に会いに行く 2、俺より強い奴に会いに行く』

「……2だな」

「キミはバカかな!?」

 桜の鋭い一撃が後頭部に入って、間違えてボタンを押してしまう。

『俺より強い奴に会いに行く!』

「あーあ……」

「お前が叩いたからだぞ!?」

 残念そうな声を出す桜に言い返してから、ゲームを進める。ギャルゲーをやるのは初めてだから、新鮮で面白い。部室に着くと、居たのは黒髪ロングのクール先輩だけだった。

 主人公、ユウキは部室に入るなりさっきの言葉を叫んだ。マジで馬鹿だった……え?リアルと一緒?

「ユウキは馬鹿だなあ」

「同じ名前として凄くきついぜ」

「結城はバカだなあ」

「イントネーションの些細な違いは気づかないぜ……」

 突然叫んだ主人公を驚いたように見ていた先輩は、本を閉じるとふっと笑みを零した。

 椅子の背もたれにぎしっと背を預け、苦笑しながら呟く。(CVはお好きな人を当てて下さい)

 

『それは、私が強い奴になるのかな?新入生君』

 

「……ちょっと学校行ってくる」

「夏休みだから先輩は居ないよ……多分」

 くくくと笑う先輩とイベントが進んでいく。

 話に混ぜて貰えないのが不満なのか、時折映る奏の表情は段々と険しくなっていった。

 隣の桜も胡坐のままカルピスを飲んでいた。クーラーの効いている自室は涼しいが、外から聞こえる蝉の声が嫌でも夏だと言う事を分からせる。

『さて、ところで後ろの女の子は何て言うんだい?彼女かな?』

『か、かか彼女!?えー、えっと……まだそこまでは……』

 

『1、そうです彼女です 2、違います! 3、先輩が彼女の方が良いです』

 

 ……さて。

 突然隣の桜が俺の服をつまんで、上目遣いで此方を見上げてきたのだが。

 コントローラを持ったままそちらに視線を向けると、目が合う。少し潤んでいて、じっと訴えかけるような目だった。ゲームの軽快なBGMが流れる中で、そのまま見つめ合う事数秒。

「……別に、好きなの選べば良いじゃないか。ボクは気にしないよ?キミが幼馴染を彼女と言おうが先輩に惹かれて行こうが結城の勝手だしね」

 じゃあその上目遣いを辞めていただきたい。何も出来なくなる!

 それでは、選択肢を選ぶとしよう。画面に向き直り、コントローラを再び握りしめる。

 と言っても、半分以上決定している。2,3にカーソルを合わせると桜が服を強く握るのだ。可愛い。……どころじゃ無い。そろそろ鼻血出そう。

 と、煩悩を垂れ流していた時だった。突然、俺の電話から着信音が響く。

 机の上に手を伸ばして携帯を取ると、掛けてきたのは永大だった。一瞬出ないという選択肢も考えたが、桜が服から手を離したのを見て立ち上がり、部屋の外へ。スマホの画面をスライドして、電話に出た。

 

「もしもし」

『やあ少年。……そろそろ、先輩ルートに入りかけの部位で幼馴染との関係をどうしようか悩んでいるんじゃないかな!?』

「ストーカーかよ変態だな通報しました」

『ちっげえよ!』

「じゃあ何で分かったんだよ!」

『お前が先輩みたいな人が好きなのは桜さん見てて分かるし、何より俺も好きだしな。先輩』

 そうだ。この岡取永大とは、何かと好みが合う。

 黒髪ロングストレートは至高とか、夏のタンクトップ貧乳女子が屈んだ時に胸が見えるの良いよねとか、部活帰りの電車内で延々と萌えについて真剣に語った時もある。因みに、生徒会の後輩も巻き込んだ。中学生時代だ。

「……で?電話の内容は?」

『おう、簡単な説明だ。まず2。これはゲームが進む。3。先輩ルートに入って、幼馴染ルートに再入するのが難しい』

「ふむ」

『で、1だが……幼馴染ルート確定のENDだ。ゲーム終わる』

「つまりは?」

『長く遊ぶなら、2か3だ。3なら一応全部のルート入れるしな。2は後々好感度上げが大変になる』

「桜とずっと遊びたいなら、3かなあ……」

『それが良いと思うぞ。……ふっふっふ……じゃあな!』

「おう、またな」

 ストーカーじみた永大の言葉を受けて、俺は部屋に戻った。中では桜がポッキーを咥えてサクサクと食べ進めている。俺の方を見ると、じゃがりこレベルの速さでポッキーを食べ終えた。前にふざけて反対側を咥えたのを覚えていて、警戒しているのだろうか。

 机の上にスマホを置いてから、床に座ってコーラを一口。炭酸が喉を刺激する。

 昔は飲めなかったんだよなあ、と思いながらコントローラを握り、カーソルを3に合わせた。

 すまん桜。長く遊ぶためにはこれだって、永大が言ってたんです―――――――!!

 強く押される、○ボタン。

『えっ?』

『ん……その、告白かな?』

 ふう。これでゲームは続く。桜の機嫌は後で取るとして、今はこれで進めよう。

 と、思った矢先だった。

「うぐうっ!」

 突然、首に何かが激突し、勢いに任せて背中を床に叩き付けてしまう。コントローラが手から放り出されて、ぶつけた所が結構痛んだ。

 横たわる態勢になると、突如影が俺を覆う。未だに焦点の合わない視界がやがて捉えたのは、かなりムスッとしている桜の顔だった。彼女は今、倒れている俺に覆いかぶさっている。長い黒髪が自然に垂れて頬をくすぐり、ふわりと良い香りがした。

「……先輩を選んだな」

「いやそのえっと、あのう、さっき気にしないと言ってませんでしたか?」

「怒らないとは言ってないよね?」

「いやそれ気にしt」

「うるさい」

「……はい」

 蒼い瞳でじっと見据えられ、何も言えなくなる。有無を言わさぬ視線で俺を制した彼女は、黒髪を指先で掬い上げて耳にかけた。その煽情的な動作、普段は髪に隠れて見えない首の横と耳にドキリとする。

 十数年一緒に居るのに、動作一つ一つで心が動くのは如何なものか。

 まあ、しょうがない。桜が可愛いのだ。

 彼女は俺のお腹に腰を下ろした。柔らかな温もり、少し尖った骨、重くは無い体重が乗ってくる。

 安心する重さと温かさ。桜はそのまま腕を伸ばして、俺の頭のすぐ横に右手を置いた。そこに体重を掛ける様にして彼女は前傾姿勢に。顔が近づいて、耳に髪を掛けた桜がすぐ傍に来た。

 息が、当たる。

 鼻と鼻が、触れ合いそうだ。

 至近距離で見つめ合う内に、自分の頬が段々熱くなるのを感じる。

 それは夏の暑さでは無い。冷房は、充分に効いていた。蝉の声は、やけに遠い。

「結城。あそこで先輩選ぶだなんて、酷いじゃないか。幼馴染のボクが居るのに、幼馴染選ばないなんて」

「……いやでも!それがギャルゲー何d

 反論しようとした瞬間に、冷たい人差し指が唇に押し付けられた。桜の細くて白い指が俺の唇を抑えて、何も言えなくなってしまう。紅潮させた頬を緩めた彼女は、そうして呟いた。

 

「だから――――ボクがもう一度、幼馴染(雪柳桜)の良さを、教えてあげるよ」

 

 唇に当てられていた人差し指が外される。瞳を閉じて、桜はそっと俺に顔を近づける。

 動けない俺の唇と、桜の柔らかい薄紅色の唇が優しく触れ合った。じんわりと伝わってくる暖かさ。口を離した彼女は、つっかえ棒にしていた右手から力を抜く。自然に、桜は俺に全身を預ける形となった。

「……どう?」

 彼女が、小さく尋ねる。聞こえるかどうかの、瀬戸際。

 吐息交じりの言葉に、どもりながら答えることしか出来なかった。

「えっと……その、最高、です」

「そうかい?それは良かった、な……」

 再びの口づけ。唇同士が押し合い、形を変えて、気持ちを相手に押し入れる。

 桜の舌が口内に侵入し、成されるがままに俺は蹂躙された。息が詰まるような長い長いキスを終えて、口を離す。繋がっていた銀の糸が切れた。桜は、頬を赤く染めて煽情的に俺を見下ろす。

「……良いものだね。どうかな?これで、分かったかい――――」

 潤んだ瞳を此方に向けた彼女が口を開いた瞬間、突然部屋のドアが開いた。

 音に反応して視線を向けると、そこに立っていたのはボーイッシュな恰好した葵。我が妹は俺と桜を見た後に、手に持っていたパンフレットをバッグに閉まった。質問があったのだろうか。

「えと、すみません。兄さん、避妊と洗濯はお願いしますね。私は嫌ですよ、兄さんのアレが付いた服洗うの」

「しねえよ!おいちょっと待て葵、待ってよ葵ちゃーん!!!」

「キモイです。では。桜さん、童○の兄をどうかよろしくお願い申し上げます」

「ふぇっ!?あっ、うう……」

「桜が恥ずかしさでオーバーヒートしてる!?」

 冷めた視線の妹。俺の上で羞恥に染まる桜。そして、幼馴染に馬乗りされたまま叫ぶ俺。

 ……中々にカオスな絵面なのは、言うまでも無いだろう……。


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