俺とクーデレ幼馴染の日常   作:ラギアz

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アイリス回削除してすみません。

……またもや桜さん回ですすみません!!!

(もしも居たら)アイリス派閥の皆さま、頑張って話を捻り出しますので……暫しお持ちください。

では、どうぞ。


俺と幼馴染と水泳授業

 七月に入った、夏休み直前の今日。学校に登校したのちに朝のHRを終え、1-Aは騒がしく成っていた。一時間目は数学。二時間目は英語と続き、三、四時間目は体育。

 授業内容は、水泳だ。

 騒がしいのは勿論それが理由で、男子も女子も盛り上がっている。

 そんな中で、俺―――――暁結城は友人の岡取永大と話していた。

「……はっきり言ってさ、暁は誰の水着みたい?」

「悩む。うん。候補は三人だよな」

「ああ。まずは金髪碧眼、誰もが認める巨乳の……」

「アイリスだな」

「それだ」

 ゴールドクレス・トアイリス。金髪碧眼、スタイルが抜群に良い転入生。身長も高く、並みのモデルは軽く凌駕する。ヴィーナスを思わせる母性に滲み溢れる魅力、時折浮かべる優しい笑みには何人物の男子が吹き飛ばされてきた。

 しかしそれは表の顔(白)。丁寧で優しい、敬語のアイリスの真の正体は腹黒いヤンデレである。

 裏の顔(黒)は俺に異常な執着を見せている。急にディープキスされた事もあった。最近の俺が良く殴られるのは大体アイリスの所為だ。

「二人目は、何とも意外に」

「「吉相凛」」

「……だな。分かってるじゃないか暁」

 吉相凛。

 同級生の女子高生、家事スキルが高いことはアイリスの家での合宿で判明しており、栗色の髪をポニーテールに纏めている。陽気でノリの良い、普通の女子高生。

 周りと比べれば容姿は整っていて、アイリス等が居なければクラス中から人気を集めていただろう。

 水着の話で話題に上がるあたり、スタイルが良い事も服の上から分かる。

 ここだけの話、永大はどうやら凛押しらしい。

 そして、最後。

 

「桜、だな」

「流石幼馴染。即答か」

 

 雪柳桜。

 黒髪ロングストレート、ボクっ娘であり俺の幼馴染である。ベランダでお互いの家を行き来出来るため、結構昔から交流がある。親同士の付き合いでもあって他の人たちよりも全然仲が良い。

 彼女は特別スタイルが言い訳でも無い。顔立ちは整っていて綺麗だが、胸などは凛にもアイリスにも負ける。

 だが、桜は体のラインが綺麗なのだ。慎まやかな、と言ってもDくらいの胸におへその線、膨らんだ臀部に程よく肉の付いた白い足。体のどの部位を取っても芸術品の様な美しさを持つ彼女桜はアイリスの様に輝く宝石みたいに派手な美しさとは違うベクトル。

 厳かな雰囲気に、和服を纏う静かな黒髪の女性。大和撫子の、静謐で雅な美しさを持つ。

 三人の美少女。甲乙つけがたい彼女たちにはそれぞれ派閥が出来始めていたりもする。

「……ま、水着は指定じゃないからな。見てからのお楽しみだ」

「そだな。ああ、桜はビキニよりもスク水が似合うと思うんだけどどう?」

「胸にひらがなで「さくら」、だな超分かります」

 流石永大。そういう事は直ぐに理解する。

 そうこうしている間に、一時間目の数学が始まった。まるでモンスターボールみたいな柄のジャージを着た先生が授業を始めて、教室にはカリカリとシャーペンの走る音が静かに響く。俺はその中で、ずっと晴天の空を見上げていた。

 

☆★☆

 

 俺たち男子一同は、女子が来るよりも早くにプールサイドへ滑り込んで来ていた。

 何故か?理由は簡単、アイリスと凛と桜の水着を見るためであるっっ!!

「お前誰押し?」「雪柳さんは……暁居るしな。暁爆ぜろ。アイリスさんかな!」

「俺はNTR厨だから雪柳さんで」「死ねお前」「爆ぜろ」「溺れろ」「蹴られろ」「転生しろ」「ごめん」

「アイリスさんだろJK」「いやいや意外に凛さんだな」「雪柳さんだろ」「「「やんのかオルァ!!」」」

 とまあ、朝の俺と永大見たいな会話が全体で繰り広げられている。取りあえずNTR厨さんにはお帰りいただこう。……あっ、プールに誰かが突き落とされた……。

 興奮は収まらず、その後も三分間続いた。収まるどころか段々とヒートアップして行っていた彼らは、扉の空く音で動きを止める。一瞬で静まり返る男性勢。ゆっくりと女子更衣室の方へと目を向ければ。

「お、おうっ?どうしたの、皆こっち見て……」

「「「「「「「「凛さんキタ―――――!!!!!!」」」」」」」」

「おおうっ!?」

 ピンクの水着に零れんばかりの胸を押し入れて、タオルを肩に掛けて居る凛の姿があった。どっと沸きあがる男子の中には勿論永大も居て、若干引き気味の凛は唯一叫んでいない俺の横へと速足で駆け寄って来た。

「ど、どうしたの?」

「凛の水着に反応してるだけだよ」

「うわあ……そんなに良いの?見えてないしさ、このクラスには桜ちゃんとアイリスちゃん居るんだよ?」

「スタイル良いからね、凛は」

「ほほう。そう言って貰えるのは嬉しいですなあ」

 にやにやと笑みを浮かべる凛。彼女が俺の隣で立っていると、やがて他の女子も更衣室から出て来始める。それらにもしっかりと注目しながら、凛と永大と話していると。

 突然、女子の列が割れた。その中心に、大きく輝く物が急に現れる。

「……え、えっと……皆さん、どうしました?私の水着、変ですかね?」

「「「「「「「「「「アイリスキタ―――――!!!!!!!」」」」」」」

「き、来ましたよ!」

 さっきよりも大きい歓声。両こぶしを小さく握って、答えるアイリス。

 来ている水着は青のビキニで、白く眩い肌がこれでもかとばかりに露出されていた。クラス一大きな胸も、膨らんだ臀部も、綺麗な背中も、生足も。

 本人が全く気にしていないのが、寧ろ艶めかしい。白いパーカーの前を開けて、彼女もまた凛と同じように俺の傍へと歩み寄ってきた。男子からの視線が刃物レベルで突き刺さる。冷汗がだらだらと流れる中で、アイリスは俺の耳にそっと口を近づけた。

「……どう?この水着。周りのエロ猿が騒いでるけど、結城もシたいって思った?ねえねえ、別に私は授業サボって盛っても良いんだけど。どう?」

「ダメデス。シタクナイデス。……コウフン、シテマセン」

 耳に吐息が当たって、アイリスは明らかにわざと柔らかい体を俺に押し付けてくる。むぎゅむぎゅと腕に当たって形を変える双丘を視界から除外しつつ、全力で俺は心を落ち着ける。目を強く閉じて、唇を真一文字に結んだまま黙る。

 そうしなきゃ堕ちそうです。はい。

「ざーんねん。私は何時でも良いから……ね♡」

「ハイ……」

 そう言って耳から口を離し、アイリスは俺の腕にしがみ付いたままニコニコとしている。

 左に凛、右にアイリス。そろそろ血が出そうなくらいに怨念の籠った視線が俺を容赦なく貫く。

 ……そして、女子が完全に出終わり、扉がぱたりと閉まる。しかし周りには桜の姿はどこにも無かった。

 ざわざわ、と男子勢が眉を顰める中で、静かにもう一度ドアが開く。女子も男子も、全員がその音に反応してそっちへと振り向き、硬直した。

 扉を閉めて、タオルを腕に掛けて、顔を真っ赤に染めた桜がそこに立っていた。

 特筆すべきは、その水着―――――旧スク、である。

 俺たちの視線を余す事無く集めた桜の頬は真っ赤で、ぺたぺたとゆっくり俺の方へと近づいてきている。アイリスや凛の時の様に何かを叫ぶ余裕は全員無かった。

 旧スクとは、上下で分かれているスクール水着。藍色の生地に、水抜き穴はワンポイント。

 膨らんでいる胸元には白い場所があって、そこには「桜」ではなく「さくら」と書かれていた。どれだけ男を殺しに来ているのだろうかと俺は本気で悩み、そして思い出す。

 

 桜の旧スクに「さくら」って書いたの、俺だ……っ!!

 

 スクール水着は体にぴったりと張り付くため体のラインがくっきりと浮かび上がる。よって桜の綺麗な肌も体の線も見えて、それが如何に整っている黄金比かが誰の目から見ても明らかだった。

 旧スクに美しいというのも変態チックだが、正にその言葉が一番相応しい。

 胸のひらがなも良い。過去の俺、ナイス。

 様々な要素が集結した結果、崩れ去りそうな黄金バランスの上に桜は成り立っていた。長い黒髪を無造作に背中へと流している彼女はちらちらと自分を見つめる周囲を伺いながら、やがて俺の元へ。俯いたまま、桜は俺へと寄りかかってきた。

「……水着どうしたんだ?他に無かったっけ?」

「サイズが合わなかった。その、去年キミに貰ったこれは少し伸びるから胸が入ったんだよ……」

「え、大きくなったの?」

「黙れ変態」

 小声でぼそぼそと会話をする俺たちを睨む男子。最早慣れ始めてきた嫉妬と憎しみの視線に半ば諦めつつ、俺は桜の背に軽く手を回した。授業開始まで、後一分。

「結城……」

 すると、突然桜が俺の名を呼んだ。声の方向を見れば、潤んだ瞳で彼女は俺をじっと上目遣いで見つめている。ドキッとしつつも平静を装い、俺は無言で言葉の続きを促した。

「今度、ボクの水着一緒に買いに行ってくれる……?」

「お、おう。勿論行こう直ぐ行こう。夏休みは海にも行こうな」

「うん」

 素直に頷いた桜は、そっと俺から離れた。それと同時に始業のチャイムが鳴り、俺たちはぞろぞろと整列する。体育の筋肉質な先生は良く通る声で指示を出して、準備体操。その後は一列に並んでから冷たいシャワーを浴び始める。

 永大と馬鹿話や夏休みの事を話していると、もう直ぐにシャワーの順番がやって来た。冷たいシャワーを全身に浴びて、震えながら帽子を被る。そのまま25mプールに入水し、今日は最初の水泳と言う事で自由。友達と遊んでもよし、泳ぎまくっても良し。俺は勿論、桜と凛とアイリス、永大とプールの隅っこで固まった。

「……いやはや、圧巻ですなあ。我がクラスの三大美女が目の前に居るだなんて」

「別にあんたの為に居る訳じゃ無いんだからね勘違いしないでよね」

「凛さん、凛さん、ちょっと俺に対して酷くないすか?その、マジトーンはツンデレやないぞ?」

「うん。本気だもん」

「永大は、5000のダメージを受けた」

 凛が真顔で頷くと、永大はそのまま後ろへと倒れこんで水中へ。ごぽぽ……と泡が膨れて、直後。

「とうっ」

「ひゃんっ!ちょっと、どこ触ってんの!?」

「えっ、お腹のつもり何だけど」

「胸に当たったぞこのやろー!」

「えっごめんうわっ何をするやめろちょっと待って周囲の男子共やめろあああああああああああ!!!」

 途中までは凛の攻撃を受け流していた永大だが、騒ぎを聞きつけた男子は素早く奴を捕獲した。そのまま手早く連行して、永大は遠くへ消えていく。

 数分後に戻ってきた永大は……ボロボロだった。うん。ちょっと同情した。が、一歩間違えれば俺もああなるのである。

 凛は気まずそうに永大と話して、アイリスは他の女子に絡まれている。

 段々とその輪に男子も混ざりはじめ、桜の周りにも人込みが出来始めた。強引に俺と桜の間へと割り込んでくる奴の所為で後ろに流された俺はプールを上がり、プールサイドに腰を下ろす。

 青い空と白い雲の下で、水を掛け合ったりしてはしゃぐ様子をじっと眺める。

 どこか寂しくて、それでもその賑やかさが近くにあって。この何とも言えない感覚が、俺は好きだった。

 そうして佇んでいれば、やがて体は乾く。水着からも水気が無くなってきたくらいの時に、俺を小さな影が覆った。

「……結城、どうしたんだい?そんな処で体育ずわりして。ぼっちか、ごめんね」

「自己完結すんな!桜こそどうしたんだよ、さっきまで人に囲まれてたろ」

「嫉妬かな?残念、適当に会話して抜けてきた。ボクは彼らに微塵も興味が無いからね」

 流麗な黒髪から水を滴らせて、白い肌に水滴を流して、桜は微笑を浮かべた。逆光の彼女は張り付いていた髪を指ですくって耳に掛けると、肌が触れ合うくらいの距離に座る。

「キミは昔から、こうやって皆が騒いでいるのを一歩引いて見てたね。つまらなくないのかい?」

「……ま、俺は昔ずっと病院通ってたしな。友達も、永大だけだった」

「昔はボクも君の事が嫌いだったしね」

「今は?」

「言わせるな、恥ずかしい。……まあ、多分だけどセロリよりはマシだよ」

「そっか。……え!?俺食材と比べられるの!?というかセロリって桜が一番嫌いな野菜ー!!」

 俺の叫びに、桜は小さく笑みをこぼす。

 騒がしい雰囲気からどこか隔離されているここで、桜は懐かしむように瞳を細めた。

 

「……結城のお陰で、ボクは今ここに居られる。ありがとう、結城」

「うんにゃ。もう昔の事だし気にすんな」

 

 そう言えば。

 あの日もこんな、夏の始まりだった―――――――――

 

 俺は目を閉じて、古い記憶を少し掘り起こす。良くも悪くもない、記憶。

 その後俺は直ぐに目を開けて、立ち上がった。桜も俺と同じように立ち上がって、俺の手を引いてプールの方へと歩く。二人で水の中へ入るやいなや、桜はすいーっと泳いで行ってしまう。

 さて。

 今年の夏は、どんな事をしてやろうか。

 

 桜を追いかけながら、俺は一人心の中で呟いた。


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