fate/grandドンチャカ 作:( ∴)〈名前を入れてください
「先手必勝!喰らいな嬢ちゃん!」
「やぁっ!」
ヒーローが突き出した槍をマシュはその手に持つ大盾を持って押し返し遠くへ跳ね除ける。ヒーローはマシュの身丈の半分程度しかなく、擬似的にサーヴァントの力を持っているマシュの筋力はC、何と筋骨隆々のカルデアのオカンよりもワンランク高いのだ。つまりは英霊としての力を持っているマシュにヒーローが力比べをして勝てるのかという話であり残念ながら槍持ちヒーローでは荷が重かったらしくそのまま吹き飛ばされてしまう。
「やっば!ヒーローやっば!」
「喧しい!黙って見てろ!」
後ろのギョロ目の言葉を一喝しヒーローはピューっと口笛を吹く。するとギョロ目達の後ろから1羽の鳥がヒーローの元に駆け付ける。そしてヒーローはその鳥に跨りながら空中からマシュに向かって槍をドンドンと放り投げていく。
「──先輩は必ず守りますッ!」
「ヒーロー!神様に当たったらどうするおつもりですか!」
「俺が当てるとでも思ってんのかよ!……まぁご命令とあらば止めるけどよ」
メデンの言葉に言い返すとヒーローは鳥の轡から手を離し地上に降りながらまた口笛を吹く、すると今度は鳥ではなく馬がヒーローの元まで駆け付ける。その馬はブルルッと一鳴きするとヒーローに向かって乗れと言わんばかりに首を自分の背に向かって降る。
「あいよ。行くぞ相棒!」
その速度はまるで雷の如く凄まじい速度と音を持ってマシュの構えている盾に向かって近付いた。ドンッとまるで爆発したような踏み込み音をさせて馬はマシュの盾に近付いたかと思えばその速度のままに大盾を蹴り付ける。凄まじい轟音で繰り出される蹴りの数々、恐らく大盾を支える彼女の手にはかなりの負担があるのだろう。マシュは顔を苦しそうに歪めながらもその手を離そうとはしない。守るべき存在が後ろにはいる。だが、これ以上は耐えられそうにない、故にマシュの決断は速かった。
「──宝具ッ!展開します!」
「何言ってんのかさっぱり分かんねぇが……来いやぁ!」
マシュの大盾から光が発せられ、その姿を見たヒーローは更に追撃を掛けるべく大きな矛をその手に持ちそれを大盾目掛けて突き刺した。
「仮想宝具 疑似展開/人理の礎 !」
「ぶっ散れ!」
矛と馬の足が大盾に触れる瞬間、大盾から光の紋様が浮かび上がりそれは巨大化していく。そして紋様が浮かびあがるとヒーロー達の方へ突風が吹き荒れた。まるでヒーロー達を拒絶しているかの如く、貴方には近付けさせないと言うマシュの心が形になったように。
「やっば!やっば!」
「たーまやー!」
「あーれー!」
その突風によって廊下の向こうへと吹き飛ばされていくギョロ目達とは違いヒーローは吹き飛ばさる事なく矛を地面に突き刺し馬の轡を自分の方に押し寄せてこれ以上は動かんとギンッ!と身体を大盾
に向ける。突風が収まらず、大盾から出ている巨大な紋様、それを見て、感じたヒーローは本能的に感じる。これは今の俺ではどうする事も出来ない物、神の助け、奇跡が必要だと。
「太鼓だァ!追い風のミラクルを奏でてくれ神様!」
今までの展開に付いていけなかった貴方はマシュに揺すぶられ正気を取り戻し、マシュは真剣な顔で貴方にこれからどうすれば良いのか指示を求めている。
「先輩、指示を!」
貴方はあのギョロ目が何なのか検討が付きます。夢で、あの本で見た存在。名をパタポン族。セカイの果てを目指し辿り着き、契約書に書かれていた事その通りならば自分の目指す場所まで共に行ってくれる、新たな仲間だ。
ならば仲間同士で争っているこの現状は何とかしなくてはならない。
「ちっ!同じ顔が3人と色黒が1人!まぁた増えやがった!」
「俺達を相手に一人?でそこまで戦えるとはやるじゃねえか!」
「……やばっ!?本気出すしかねえな!」
早急に何とかするべき、じゃないとカルデアが大変な事になる。貴方はそう結論付けマシュに指示を出す。
マシュ。今から言う事を全て信じて欲しい
「分かりました、先輩の事を信じています。どんな指示でも」
──
貴方はマシュに宝具の展開を止めるように指示すると彼等が戦っている戦場に身を投げ込む。
「何をしているマスター!死にたいのか!?」
「神様!危ねぇ!?」
貴方の姿を見た彼等は即座に戦闘を止め互いに睨み合いを続けながら貴方に向かって注意を促してくる、貴方はその声を無視して彼等に話し掛ける。
皆、少し待って欲しい
「神様がそう言うのなら」
「……ハァ。分かった、向こうから戦意は感じられない。詳しく話を聞かせてもらうぞ」
大盾の向こうで相対していたのかエミヤとヒーローはお互いに武器を下ろしこちらを見詰める。ふと遠くを見るとこちらに近付いてくるパタポン達とクーフーリン三兄弟、そして忠犬牛若丸。凡そこのカルデアにいる最大戦力がここに集まっていた。
「「かみさまー!」」
「神様!ご無事のようで何よりです!」
メデンとパタポン達が声をあげ
「主殿!ご怪我は有りませんか!?」
「坊主。これは一体どういう事だ?」
「アンザス!」「あっつ!あっつ!」
「おー。コイツら不死身かよ、何度死んでも蘇りやがる」
牛若丸の心配そうな声と槍ニキの現状を問う声、そして捕縛しているパタポンにルーン魔術ブッパしている術ニキとそれを不思議そうに見詰めるプロトニキ
……取り敢えず術ニキは解放してあげて?
「あん?坊主にはコイツらが何なのかが分かるのか?」
「かみさまありがとー!」
貴方にここにいる全ての者達の視線が集まります、どうやら全てを説明しなければならないようだ。
えぇっとね……
───
「成程成程、つまり彼等は神様の敵ではなく使い魔であったと。それはつまり私達と同じようなものですね」
「お前ら神様に仕えてるのか!先に言えよ!」
「おなじー」「なかまー」「みかたー」
メデンは貴方の説明に納得したのかしきりにウンウンと頷きヒーローはさっきまで殺気を向けていた相手に好意の感情を向け、パタポン達は一斉に手のひらクルーを始めた。パタポン達にとって神とは絶対、故にその反応になるのは当たり前なのだ。
「……言葉で言われて納得出来るかと言われればNOだな」
「……首がない」
見た事のない生物が良く分からない契約書を書いたらマスターの味方になった等と言う理由の分からない話を鵜呑みには出来ないエミヤに敵なら首を切って褒めて欲しいけど首はないし敵じゃないしで褒めて貰えないと落ち込む牛若丸。
「──これがそのパタポンの書ねぇ……さっぱり読めん。読めるか槍の俺?」
「無理に決まってんだろ?読めるか若い俺?」
「何で年上の俺が読めずに年下の俺が読めるんだよ普通に読めねぇよ」
貴方が説明の際に渡したパタポンの書を読もうとするもサッパリ読めずに話しているクーフーリン三兄弟。
「ふむ……つまり私達は神様の使い魔と交戦し、神様の住まう家を壊したと」
メデンがそう呟く。確かに戦闘していた廊下は見るも無残に崩壊しており、直ぐに修繕が必要なレベルである。
「……私が直すしか」
「では、こちらで修理してきましょう!ダイ・クー!コウ・ジー!」
「ほいほい」
「はいはい」
エミヤがウンザリとした顔で動こうとする前にメデンがパチンと指をならす。すると列の中から工事用の帽子を被ったパタポン達が出て来て何処からともなく立ち入り禁止の看板を立てる。
「やるぞー」「おー」
ガガガガガズゾゾゾゾキューンドドドドト。
工事用の工具を使い廊下の修理を始め、その姿を満足そうに見て頷いたメデンと信じられない物を見たように唖然として動けなくなるエミヤ
「……」
「やるかー?」ズドドド
「……いや、構わない」
「そうかー」ギューンスガガガガガ
貴方はパタポン達が修復工事を始めた所を見ているとメデンが貴方の視界の目の前にニュッと現れる。
「神様。私達以外に使い魔がいるようでしたらその者達と信仰を深める為に一つ祭りを催したいのですが……」
祭りを催すと言っても食料は大切にしなきゃダメで無駄遣い出来ないんだ。ゴメンね?
「いえいえ!食料その他モロモロは全てコチラでお出しします!神様の元に集う際に全てを持って参りましたので、これから毎日祭りを開ける程度にはありますよ?」
「ちょっと待った」
メデンのその言葉に待ったを掛けるのはクーフーリン(槍)
「何ですか?」
「……メシは美味いのか?」
「……勿論、最高峰のシェフを用意しております。恐らく生涯一度も食べた事の無い美味な料理をお出しする事が出来るはずです」
「俺はランサーのクラスで現界したクーフーリンだ。宜しくな」
「神様に使える巫女、メデンと申します。これからは我等パタポン族をどうぞ宜しく」
仲良く?なったであろう2人を見て安心した貴方は突然の戦闘で宝具を展開し
た疲れからかへたりこんでいるマシュの元に歩いていく。
「……良く分かりませんが何とかなったんですね?」
うん、マシュのお陰だよ。ありがとう
「……いえ。私が早とちりをしなければこのような」
それは違うよ。もしも隣にいたのがマシュじゃなくて他のサーヴァントだったら俺は冷静になれずに話が纏まらなかった。
実際に貴方はマシュに声を掛けられるまで混乱していた。だからこそ貴方は自分が混乱した時に冷静にしてくれるマシュに全幅の信頼を置いている。
「先輩……」
「そいつが神様の恋人か?」
あっヒーロー
「こっ……恋人ッ!?」
「あの……宝具だったか?アレを通じて嬢ちゃんの誰かを守る為の真摯な思いを感じた。神様は彼女を大事にしとけよきっと嬢ちゃんは良い女になるぞ」
当たり前だろ。マシュは俺の大切な後輩なんだから
「はいっ!私が先輩を守ります!」
「……こりゃ前途多難だねぇ」
───
トントンと小刻みに包丁を振り下ろし、グツグツと料理を煮込む。厨房とは戦場である。そしてそんな戦場で息を合わせ共に料理という名の戦いを駆け抜ける玄人達がそこにはいた。1人は皆大好きカルデアのオカン(♂)流石の奉仕体質で鍛え上げた料理の腕は伊達ではない。
そして彼と共に料理を作るのはパタ族のシェフ、画面の前の私達がお世話になった彼
「ふむ……なかなかやるな。流石は神様の食事を作っているだけの事はある」
「……過ぎた謙遜は嫌味に聞こえるぞシェフ、私など貴方に比べたら趣味で料理をしているくらいだろう?ラ・がしゃぽん殿?」
コック帽を被り調理をするのはラ・がしゃぽん、彼の調理の腕は最早神域まで達している。彼のシチューを食せばあまりの美味に身体に力が漲りどんな攻撃を受けようともよろめかない頑強な身体となり全ての身体異常を跳ね除ける超人となる。(分かりやすく言えば体力、力、対状態異常up)まるでドーピ〇グコンソメスープだ。
「いや……君の料理も素晴らしい。その出来栄えも然ることながらそれを食べる相手に対する配慮が充分にされてある、ここまで事を出来るパタ族はそうはいまい、料理人の鏡だ。将来が楽しみだよ」
「非才の身ではあるが料理だけは得意分野でね。生前は良く作っていたものだ、やはり料理というのは美味しいのは当たり前で相手にどうすれば美味しく食べて貰えるか、料理人はそれを追求すべきだと私は思っている」
「「……」」ピシガシグッグッ
調理場で生まれる友情。先程までパタ族に対して否定的であったエミヤが何故パタ族と共に料理を作っているのか、それを語るには暫し時を戻す必要がある。
「……次の特異点が発見されたからブリーディングを開こうと思ったら何で君が特異点みたいな状態になっているんだい?」
パタポン達の件が一段落着いた貴方は取り敢えず皆を連れて元の要件であったドクターの元に向かった。ドクターの元に着きボロボロになった彼等に投げ掛けられた言葉は中々に辛辣なものであった。が貴方は笑って誤魔化す事しか出来ない、因みにその他の選択肢は平謝りである。先程の現状が腹に据えかねたのかその整った顔を引くつかせ赤髪を束ねたポニーテールは怒りの炎を連想させる。彼の名前はロマニ・アーキマン。ここカルデアの医療部門のトップを務める青年であり周囲からは「Dr.ロマン」と呼ばれている。
「様子はモニターから確認させて貰ったよ。しかし……パタポンか、何ていうか愛嬌のあるというか描きやすそうな顔というか」
そう言いながらパタポン達のスケッチの準備を始めるのは人体の美を追求した肉体を持った美女、代表作モナリザで世界中に認知されているかのレオナルド・ダ・ヴィンチ又の名をダヴィンチちゃんその人であり、自分の性別を変更して現界したド変態である。
「てれるー」「かいてー」「パター!」
「……何処から声を出しているんだい?」サラサラ
「?」「知らないけど出てるー」「さぁ?」
「知力については個体差が激しい……っと」カキカキ
すっかりダヴィンチちゃんの研究対象となったパタポン。やはり万能の御方でも完全無欠の未知の生物については分からないのか不思議そうにパタポンをスケッチしながら話をしている。
「貴方が神様の使い魔の総括役ですか」
「うーん……僕は君達が神様と呼ぶ□□君の上司かな?」
メデンの素朴な疑問にドクターは答える。自分達の神様の上の存在、その答えにメデンはその大きなギョロ目を三日月の如く細くして笑う。
「ハンッ、神様より上の存在など私達には存在しません。私達にとっては神様が全て、神様以外に従う事など有り得ません」
「……つまり□□君の言葉には絶対服従という事かい?」
「神様の言葉こそが私達パタ族の全て、神様が望む事"を"叶えるのが我等の使命です。」
ロマンは言外に「お前達は彼の言う事ならばそれが何であれ全て従うのだな?」と確認しそれに対してメデンは「神様の望む事は何でも叶えるけどお前が神様に無理矢理言わせたらどうなるのか分かるな?」と牽制を入れる。言外での殴り合い、彼等を良く見ればバチバチと視線で火花が散っているように見えない事もない。
「俺達パタ族は神様に対して俺達の存在全てを捧げても足りない御恩がある。元よりパタ族にとって神様とは俺達にとっての全てだが今はそれ以上の存在だ」
「だから神様が悲しむ真似は絶対にしない……まぁ、最初のアレは許してくれ、誤解だったんだ。てっきり神様が攫われているものかと」
そう言いながら頭を下げるヒーロー。非礼を詫びるヒーローと自分達が原因で神様の施設を破壊した癖にいけすけしゃしゃと神様の上司と名乗る男と舌戦を始めるメデン。このメデンノリノリである。
「いや、分かってるなら良いんだ。コチラとしたら破壊された箇所は君達によって迅速な対応がされているみたいだし。そちらからしたら自分達の全てである神様が誘拐されているように見えたのだろうしここはお互い様にしておこうか」
「すまない。迷惑を掛けたな」
「……そうですね。ここらが丁度良い終わり所でしょうし」
しかしメデン先程のヒーローの大人な対応をドブに捨てるクソ対応を発動させる。
「すまん……こいつはセカイの果てまで辿り着いた事によって色々と吹っ切れたみたいでな。昔はここまで表には出さなかったんだが」
「いや、君みたいな人?がいるなら何とかなりそうだ。ようこそカルデアへ……ところでセカイの果てって何だい?」
「セカイの果てとは何かか……難しい質問だな。まぁ一言で言うならこの世で1番近くて1番遠い所かな」
ヒーローの答えを皮切りにパタポン達はドンドン話し始める。
「セカイの果てはどんなとこ?」「それは甘い?」「それは酸っぱい?」「それは辛い?」「探して探してセカイの果てへ」「セカイの果ては綺麗?眩しい?」「セカイの果てには全部あった。辿り着いたら全部持ってた」
「セカイの果ては何処までも望む限り何処までも」
その言葉を言い終わった瞬間パタポン達は先程までの騒がしさを一瞬で消して部屋には静けさが取り戻される。
「成程……セカイの果てとは出発点だったって事かい?」
「……さあね」
貴方はセカイの果てという言葉を聞いて頭に映像が過る。貴方は何時でも太鼓を持っていた、今は手元にないが貴方を神足らしめん太鼓達が。それは勇気、知恵、力、奇跡の力が込められていた四つの太鼓。貴方はその太鼓をパタポンドンチャカと打ち鳴らし
「……□□君。その太鼓は一体?」
「神様。その太鼓は!?」
メデンとドクターから声を聞いてふと思考の底から浮かび上がると目の前に四つの太鼓がフワフワと浮かび、そこに刻まれている顔でコチラを見詰めていた。
「んだこりゃ?太鼓か?」
暇そうにしていた槍ニキがポンッと軽快に太鼓を鳴らそうとするも音が出る事はない
「んだこれ?壊れてんのか?」
「ヘッタクソだな代われ槍の俺。こういうのはな知的に打つもんなんだよ」
術ニキが太鼓を鳴らそうとするも音は出ない。叩いても音が出ない太鼓なん何の意味があるのだろうか
「んだこれ?壊れてんだろ?」
「だろ?」
「年を取ったら太鼓すらロクに叩けなくなるのかよ」
プロトニキが太鼓すらロクに叩けない駄目な大人×2を嘲笑いながら太鼓を鳴らそうとする、が。
「「よぉ下手くそ」」
「お前らだって鳴らせなかっただろうが!」
下手くそが3人増えた、貴方は流石に可笑しいと思い太鼓を見る。
「止めとけ止めとけ。それ間違いなく壊れてる。3人叩いて鳴らないとか普通有り得ないから」
「当然です。それは神の太鼓、神以外に鳴らせる存在はいません」
「んじゃあ鳴らせるのは坊主だけって事か?」
「えぇ。それが神の力です」
ドンッ!ドンッ!ドンッ!ドンッ!心臓がビートを刻む、心臓が血を全身に流し力が溢れ出る、周りの言葉なんて今の貴方には聞こえない。聞こえるのは心臓のビートだけだ。
パタ!パタ!パタ!パタ!
太鼓目掛けて手を振り下ろす。その瞬間優しくも全てを包み込むパタという音が部屋中に鳴り響く
「どうなってやがる……魔力は分け与えられて無い筈なのに力が溢れ出してくる」
「今ならば百人切り……千人切りすら出来ます!」
「これは力の太鼓。かつて神はこの太鼓の力を使い、並み居る強敵達と戦える一騎当千の力をパタ族に与えました」
サーヴァントとパタポン達の身体が淡く光を放つ。彼等の肉体に溢れんばかりの力が今注ぎ込まれているのだ。
自分の周りで太鼓が自分も打てと言わんばかりにコチラを見詰める。
ポンッ!ポンッ!ポンッ!ポンッ!
叩くと例えば力尽きようとも立ち上がり強敵と戦う勇気を与えるポンの音が
「凄い……心に勇気が漲ります」
「これは勇気の太鼓。神はこの太鼓を使い死にゆくパタ族に立ち上がる勇気を与えました」
チャカ!チャカ!チャカ!チャカ!
「頭が冴え渡る……今なら何でも思い付きそうだッ!」
「俺のルーン文字が冴え渡る……ッ!」
「これは知恵の太鼓。神はこの太鼓を持って前進ばかりのパタ族に後ろに下がる知恵を授けて下さいました」
貴方は太鼓を通して彼等に力が流れている事を感じます。力を勇気を知恵を、ならば最後の太鼓は何なのだろうか。
ドンッ!ドンッ!ドンッ!ドンッ!
「……先程と違って特に何も感じないな」
「何か変わったか?」
「いえ……特には」
太鼓が鳴っても何も感じない事に不思議がるとメデンは面白そうに目を細めて語り出す。
「それは奇跡の太鼓。ミラクルと呼ばれる奇跡を起こす為の譜面さえ持っていればそのミラクルに応じた奇跡を起こせる太鼓なのです」
「……奇跡か。そう簡単に起こせるものではない」
エミヤの自嘲じみた声を聞いてメデンは言葉を続ける
「出来ますよ。ミラクルさえあれば何でもね」
「……何?」
「雨の降らない灼熱の地獄に雨を降らす事も、絶体絶命の時に追い風を起こす事も、あらゆる物を粉砕する地震を、全てを凍らせる吹雪も、全てを打ち倒す力を、あらゆる攻撃を跳ね除ける力を」
絶句した。
譜面1つで天候、災害を操る事が太鼓1つで出来るなど正しく神の起こす御業そのものではないか。神の御業を起こせる太鼓、それが本当ならば正しく奇跡の太鼓だ。
ノリノリで太鼓を打っている貴方とそれに乗って踊っているパタポン達以外はその太鼓の存在に冷や汗を覚える。
彼等が追い求める聖杯、万能の力を持ち持ち主の願いを叶える杯と似て非なる力を持った太鼓。メデンが言うには『神の太鼓』と言うものらしいが果たしてそれを個人が所持して良い物なのかと
「かみさまー!」「太鼓は良いぞ」「やっべ!かみさまやっべ!」「すっげ!かみさますっげ!」
彼等はパタポンドンチャカと楽しそうに太鼓を打ち鳴らしている貴方を見詰める。だが貴方はその視線に気付かないほどに太鼓に熱中して、身体が魂が太鼓を覚えているかの如くその打つ手が止まらない。
ビートを刻んでいると、ふと貴方は自分の後輩がコチラを見詰めている事に気付いた。
マシュも叩いてみる?
「わっ……私がですか!?」
しかしマシュはその言葉を聞くと顔を真っ青にして首を横に降る。貴方はそんなマシュの手を取り一緒に太鼓を叩いていく、だがマシュの顔は青ざめていく一方でその顔は笑顔にならない。楽しい音楽を奏でたら楽しくなる筈なのにその顔に楽しさは見えず恐怖だけが見える。
ポンッ!ポンッ!ポンッ!ポンッ!
パタポンドンチャカ!パタポンドンチャカ!
音に合わせてパタポン達は歌って騒ぎ踊り狂う。パタポンドンチャカのリズムに合わせてパタポン達は楽しそうに愉快そうに
「身体が疼いてきやがる……ッ!騒ぎたくて仕方ねぇッ!」
「……たまには知的に踊りますか!」
「こんな音楽聞かされて踊らないなんて損だろ!損!」
「主殿!私も踊ります!天才ですので舞踊なら何でも踊れますよ!」
「駄目だ……私まで踊ればカルデアに馬鹿しかいない事にッ!?」
踊り始めるクーフーリン三兄弟と牛若丸。そして身体から溢れ出る衝動を抑えその姿を見るエミヤ
「いーねぇ!久しぶりに作曲意欲が湧いてきたよ!」
「くっ……悔しい。踊りたくないのに踊っちゃう!」ビクンビクン
そう言いながら譜面を書き出していくダヴィンチちゃんとくっ殺ならくっ踊を始めるドクター。
そして
マシュ……楽しくない?
「……いいえっ!楽しいです!」
太鼓のリズムに合わせて踊りは続く。そうして踊りは宴会へとシフトチェンジしていき
「シェフ!りょーり!」「さけ!」「肉!」「パター!」
「直ぐに作るから待ってろ!」
「やっべ!シェフやっべ!」「やっべ!りょーりうっめ!」「生肉うっめ!」
「まだ調理途中だ!食うな馬鹿ども!」
「おーいオカン!ツマミはまだかー!」
「酒はまだかー!」
「肉なら俺がルーンで焼いてやるよ!」
「誰がオカンだ!ホットドック口にぶち込むぞ馬鹿ども!」
「はっ誰がそんな冗談に……グワーッ!」
「「槍の俺ーッ!」」
カルデア一の料理人とパタ族一の料理人が料理人役として大抜擢され冒頭に戻ると言う事だ。次々に料理を作れど作れど直ぐにお代わりの注文は来て、人外パワーをフルに使い2人は料理を高速で作り上げていく。そして宴会の中では
「馬鹿なッ!この俺が目玉に負けただと──ッ!?」
「修行が足りねぇなぁ坊主。腕相撲に必要なのは筋力だけじゃねぇ、技よ技」
「腕相撲で技?はっ!面白い。ならば毎日このハンマーを振り下ろし続けたトンかん・ポンの力に技で勝ってみろヒーロー!」
「ホイッ」グキッ!
「グワーッ!」
「「ト、トンかんポーンッ!」」
「……パタ族がヒーローに力で勝てる訳ないだろうが」
力に自信のある者達は己が力を示す為に腕相撲をしたり
「なーるほど。パタ族の音楽はそんな感じなのが多いんだ」
「えぇ、その通りだマドモアゼル。君は賢く、そしてその声色はまるで明朝の朝、森で小鳥が旋律を奏でるように美しく繊細だ。是非ともこのシュラバ・やポンの曲を歌ってくれないだろうか?」
「おっと、流石のダヴィンチちゃんもここまでキャラが濃いと対応しずらいぞ?」
音楽家としての経験がある者達は互いの世界の音楽について語り合い
「主殿!どうですかー!?」
「うしわかやっべ!」「ちょーきれー!」「ぶようすっげ!」「パター!」
貴方の太鼓の音に合わせて牛若丸やパタ族が楽しそうに踊り、貴方の傍らでは
「……♪」
貴方の後輩が楽しそうに耳を澄ませ音楽に耳を傾けそれを貴方と一緒に見詰めています。
楽しいね。マシュ
「はいっ!私、先輩の太鼓の音が好きです!」
飲めや騒げや大騒ぎ。太鼓のリズムで皆が踊り、太鼓の音色で皆が騒ぐ。そうして1日は過ぎていく。
ロマン「踊りたかったけど特異点の事で忙しいから(社畜並感)」
パタ族「がんばれー」
ロマン「くそう。人事だと思ってッ!」
ヒーロー「すまん俺達パタポンだから人の気持ち分からねぇわ」