Fate/STEINS;Order   作:電磁パルス6号

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──相対性理論ってとてもロマンチックで、とても切ないものだね──




離散時間のサイクロトロン

けたたましい警報が鳴り響く廊下を、フォウ…改めて助手2号と走るとその途中でロマンの背中が見えた。

 

「えぇー!?倫太郎君っこっちは危ないよ!避難してって言ったじゃないか!」

 

「えぇいうるさい!ヘタレドクター!今はそんな事を言っている場合ではぬぁぁい!」

 

「フォウファーーウ!」

 

「へ、ヘタレドクターかぁ…僕ってそんなに頼りなく見えるかなぁ…ショック…」

 

何やらロマンが凹んでいるように見えるが気にしない。しかし、ロマンはこっちは危ない、と言っていた。ということは…

 

「ドクターロマンよ!こっちが危険だということは中央管制室はこの廊下の先という事だな!?」

 

「いや、それは確かにそうだけど…」

 

「頼む!俺に行かせてくれ!危険なことくらい最初から分かっている!だが、あそこにはマシュが…!」

 

慌てふためいていたドクターロマンだったが、俺の様子を見て、何かを感じ取ったらしい。その顔つきが一転して俺を見据えていた。

 

「──分かったよ、でもそれならすぐに行くよ!今中央管制室は原因不明の火災が発生しているから、すぐにでも閉鎖するから─」

 

「…あぁ!分かっている!行くぞ助手2号よ!」

 

「フォウフォーーウ!」

 

助手2号、そしてドクターロマンと中央管制室へ向かう、しばらく走り、少し大きい閉じきっているゲートが見えてくる。そしてかなりの煙がゲートから漏れ出して廊下を覆っている。これ以上進むのは消防官でもない俺たちには間違いなく危険だ。しかし…

 

 

 

───先輩、大丈夫ですか───

 

 

 

見ず知らずの俺に、自分がどこの世界に迷い込んでしまったのかひどく混乱している俺に手を差し伸べてくれた彼女がここにいるのなら…

 

 

 

「迷いなんか、要らないじゃないか…」

 

 

 

ゲートは開かれた。そこは、俺の個室から見た時と同じ、地獄だった。まずやったことはゲートのすぐ近く、入ってきた俺たちの足元に転がっている男の遺体を見て、胃液を吐き出すのを堪えることだけだった。

 

「生存者は…いそうにない…無事なのはカルデアスだけだ…」

 

口元を押さえながらもこの惨状から目を背けないロマンが苦しそうに一言零した。

 

「そんな訳ない!まだ…まだ探せばきっと…!」

 

「僕だって辛いさ!でも倫太郎君…君だって分かっているだろ!こんな状況で生き残っている人がいるわけ──」

 

その時だった。けたたましく鳴る警報が一層大きく鳴り響き、さっきとは違うアナウンスが流れる。

 

 

 

動力部の停止を確認。発電量が不足しています。

予備電力への切り替えに異常があります。

職員は手動で切り替えてください。

隔壁閉鎖まであと40秒。

中央区画に残っている職員は速やかに──

 

 

 

「──倫太郎君、僕は地下の発電所に行く、何としてでもカルデアスの火を絶やすわけにはいかない」

 

ドクターロマンは早口で言う。そうだ、今は悠長に言い争っている場合ではない!

 

「分かった!それでは俺は──」

 

「倫太郎君は戻るんだ!今来た道を戻れば、ギリギリ間に合う!早く避難するんだよ!」

 

俺の返事を待たずにドクターロマンは急いで中央管制室を飛び出していった。ドクターロマンは本気で俺の身を案じているのだろう。しかし、それではここに来た意味がないじゃないか!

 

 

 

「誰か!誰か生きている者はいないか!おい、返事をしろ、おい!」

 

 

 

──システム、レイシフト最終段階へ移行します。

座標 西暦2004年 1月 30日 日本 冬木。

ラプラスによる転移保護 成立。

特異点への因子追加枠、確保。

アンサモンプログラム、セット。

マスターは最終調整に入ってください。

 

 

 

また機械の声のアナウンスが流れ出す。えぇいやかましい!訳の分からんことをまくし立てるな!生存者が見つからず、焦りと苛立ちで俺はがむしゃらに瓦礫を退かす。角で切ったのか手から血が出るが、そんな事は関係ない。そして──

 

「────見つけたっ!」

 

「────……先…輩……?」

 

退かした瓦礫の陰で見えていなかったマシュを発見した。だが喜ぶのは後だ!急いで中央管制室から出ようとマシュを担ごうとするが…

 

「──マシュ…お前その体は…!」

 

「──……ダメですよ、先輩…私はもう、助かりません…」

 

巨大な瓦礫でマシュの下半身は、完全に潰されていた。おそらく、もうマシュは助からないのだろう。だが…

 

「そんな事関係あるか!必ずお前を連れてここから脱出する!」

 

「───先輩……」

 

肉は裂け、爪が剥がれた手で何とか瓦礫を退かそうと力を込め続ける。しかし、全く動く様子も見られない。

 

すると、中央管制室のちょうど真ん中に立つ巨大な地球儀のようなものが、黒から灼熱の太陽のように赤く燃え盛った。

 

 

 

観測スタッフに警告。

カルデアスの様子が変化しました。

シバによる近未来観測データを書き換えます。

近未来100年までの地球において人類の痕跡は発見できません。

人類の生存は確認できません。

人類の未来は保証できません。

 

 

 

「……そんな……カルデアスが真っ赤に…」

 

「マシュよ、そんな地球儀の事は後回しだ!少しでも力を入れろ!」

 

「……先輩……いえ、そんな、ことよりも…」

 

 

 

中央隔壁、封鎖します。

館内洗浄開始まで、あと180秒です。

 

 

 

アナウンスが響く。もう中央管制室から出ることは、できない…。

 

「──隔壁…閉まっちゃい…ましたね…」

 

「………気にするな、マシュよ。このぐらい、この狂気のマッドサイエンティスト、鳳凰院凶真にかかれば、どうという事はない!!」

 

「………先輩…ふふ…不思議…ですね…何だか…安心しちゃう…マッドさん…なんですね…」

 

マシュは笑った。俺が最後の強がりを、眩しいものを見るかのように、目を細めながら…。

 

 

コフィン内マスターのバイタル、基準値に達していません。

レイシフト定員に達していません。

該当マスターを検索中………

発見しました。

暫定適応番号00 岡部倫太郎をマスターとして再設定します。

アンサモンプログラム、スタート。

霊子変換を開始します。

 

 

アナウンスが鳴り響く。だが、燃え盛る炎の現場に長居したせいか、煙を多く吸いすぎて意識が朦朧としているらしい。俺の、そしてマシュの体が光の粒子を纏っているかのように光り輝いて見えた。

 

「……あの…先輩…」

 

そんな中、マシュは、最期の力を振り絞っているような細いながらも確かな意識を感じさせる声で言う。

 

「……手を握ってもらって、いいですか?」

 

「……あぁ、もちろんだ。マシュ、きっと、大丈夫だ…」

 

きっと、大丈夫、俺はさらに続けてそう言い、マシュと手を重ねた。

 

 

 

 

あぁ…不思議だ。こんなにも炎が燃え盛っているのに、どうして、マシュの手はこんなにも、冷たくなっていくのだろう…。

 

 

 

 

そして、アナウンスは響き渡る。

 

 

 

レイシフト開始まで、あと、

 

 

3

 

 

 

 

2

 

 

 

 

1

 

 

 

 

全行程、完了。

ファーストオーダー、実証を開始します。

 

 

 

 

 

 

 

そして、俺とマシュは光の渦の中に巻き込まれた。その時俺は、どこかで聞いたような、しかし誰からのものか分からないメッセージを聞いたような気がしたまま、意識を失った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『頑張れよ、これから始まるのは、未来を取り戻す、長くも大切な物語だ』

 




エル・プサイ・コングルゥ(謝罪) 思っくそ更新してませんでした。ホントにすんません。期末テスト→受験のコンボで書く気が無くなった、ではなく、忙しくて気がついたら何ヶ月もほったらかしにしてました。ホントにすんません。この春から一人暮らしを始めて自分の時間が今までよりは取れそうになったので、なるべく間を空けずにこれならも更新していきたいと思います。…はぁ、いつになったらオカリンがあのサーヴァントを召喚できるんだろ…。でばでは、また。

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