Fate/STEINS;Order   作:電磁パルス6号

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──世界線が変わっても、たった一人──

──岡部が忘れなければ私はそこにいる──

──だから──




平行上のホメオスタシス

───2015年ですよ?───

 

マシュは今、確かに言った。今この時代は2015年だとはっきりと。しかし俺は、その言葉をそのまま理解できずに、ただ目の前が真っ白になってしまい、立つことを保つのに精一杯だった。

 

「やはり先輩は休息をとるべきです!これからマスター候補生の説明会がありますが、今は先輩の体調を優先すべきです!」

 

「しかし、マシュも私も説明会に出席しなければならないからね…倫太郎君はともかくAチームであるマシュは欠席する訳にも…」

 

「ですがっ…先輩をこのまま放って置くことは私にはできません!」

 

マシュとレフが何か揉めているようだが、今はどうでもいい!そんなことよりも…!

 

「…マシュ!…マシュっ!──」

 

「先輩っ?どうしましたか?どこか痛いですかっ?わ、私は医療にそこまで詳しいくは───」

 

「第二次世界大戦後に第三次世───」

 

 

 

「───倫太郎君、少し、落ち着きたまえ。」

 

 

 

──声が出なくなった。なぜだ、突然声帯が全く機能しなくなったような感覚…。マシュの後ろ隣から…気の良さそうな笑顔を浮かべていたレフ・ライナール。あいつが今、少し慌てた様子で俺に駆け寄り肩に手を置いた。だが困り顔の顔の下から…あの時のシスターブラウン…天王寺綯のような真逆の言葉が聞こえてきた───。

 

 

 

 

 

『────それ以上口にすると、殺す─────』

 

 

 

 

 

 

体が動かない──。…天王寺萎の時とは全く違う。あの時は親を殺されたと思い込み復讐鬼となったシスターブラウンの底知れない狂気と目の前で殺された桐生萌郁の死体で恐怖に身が動かなかったが、この感覚は違う…何か、見えないが実在する縄で縛られているような感覚…、さっきの言葉も幻聴ではない!頭の中に直接囁かれたような…これは、まるで魔法でもかけられたかのようではないか…ッ!

 

「マシュ、どうやら倫太郎君は初めての霊子ダイブでひどく疲れて夢遊状態が続いているようだ」

 

「はいっ、やはり先輩はすぐに医務室でお休みになるべきです!」

 

「しかし、さっきも言った通り、私もマシュも欠席するという訳にはいかない。ふむ…医務室はここからけっこう離れているね」

 

──レフは何事も無いかのようにマシュと話しているが…クソっ!いったいどうなっているんだッ!

 

「そうだ、この廊下を少し歩いたところにマスター候補達の個室がある。マシュ、倫太郎君を個室まで送ってあげなさい。ここからなら説明会にも十分に間に合うだろう」

 

「先輩にはそれが最適解ですね。先輩っ、すぐに案内します!」

 

「では私は先に中央管制室へ行っているよ。倫太郎君はファーストミッションには後から開始すると、マリーに伝えなければならないからね」

 

──ッ!瞬間、俺の体を縛っていた見えない縄が解けた感覚がした。声も…よし、特に問題も無く発声できそうだ…。しかし…

 

「──すみません、レフ教授。俺の為にわざわざ手間をかけさせてしまって…」

 

「礼には及ばないさ。君は本当に運がいいからね」

 

「ここにレフ教授がいて助かりました…マシュもありがとな」

 

「なんの。先輩の頼みごとなら、昼食をおごる程度までなら承りますとも」

 

「──いやいや、たまたまさ。私は運命の出会いとか、宿命のライバルとかそういう数奇を重要視しているんだ──」

 

 

 

 

 

レフは中央管制室へ。俺とマシュはマスター候補達の個室へそれぞれ向かった。さっきの金縛りは間違いなくレフが何かしたのだろう…だがどうやったのか方法が全く考えつかない。いや、それよりもあの人間ではないような冷酷な殺気──。未だにカルデアやら霊子ダイブやら訳がわからん状況に俺がいるには変わらないが、まず間違いないのは、レフは危険な存在だということ。ここからはなるべくレフから距離を置かなくてはならない。

 

「ここが先輩の個室になります。本当に一人で大丈夫ですか?」

 

「うむ、なんの問題もない。もともと、今ではそれほど倦怠感や頭痛も治まってきたところだからな」

 

「それは何よりです。ですが念のためにもちゃんと休んでいてください。それでは、私は急いで説明会に参加してくるので、失礼します。先輩?無理をしてはダメですからね?」

 

ふむふむ…なるほど。俺の見立てによるとマシュは中々心配性で世話焼きな性格のようだ。さっきのレフナール(命名、特に意味はない)とは大違いだな。

 

───クイっ、クイっ───

 

ん?ズボンの裾が引っ張られる感触にふと見下ろす。そこには俺のズボンの裾を噛んで、必死に引っ張っている珍種猫がいた。…ほほう、ラボでは小動物を飼ったことはなかったが、なかなか悪くないものではないかッ!

 

「フォウさんが先輩を見てくれるようですね。これなら私も安心です」

 

「フ…世話係が逆に世話にされるとはな…」

 

「ふふ…それでは、私はこれで。またお会いしましょう、先輩」

 

最後にマシュは微笑んで中央管制室へ去っていった。本当にいい娘だ…。──助手もあれくらい素直で可愛げがあればなぁ…。

 

「フォフォフォッ!!フォウフォォウ!!」

 

「ぐはッ!なんだ珍種猫!いきなり腹にタックルしてきおってぇ!」

 

このフォウとやら…!なんとも気性が荒い猫(?)なんだ!さっきはズボンの裾を必死に引っ張っている時はちょっと可愛い奴だなと思ったが、前言撤回だ!なんとも生意気なぁ!!!

 

「ンいぃだろぉぉ!人間様──いィィやっ!この狂気のマァッッドサイエンティスト!鳳凰院凶真に逆らうとどうなるか思い知らせてやろォォ!」

 

「フォウッ!ンキュッ!フォフォフォッ!!」

 

おっと、生意気な猫のせいでつい封印していた鳳凰院凶真をうっかり名乗ってしまったが、まあ周りに人は見当たらないし問題もないか…。

そォォれ!捕まえた!

 

「ンキュっ!?フォフォフォッ!フォウッ!」

 

ようやく捕まえた珍種猫を抱え上げる。フゥーハハハっ!手こずらせおって!…おや?…ふむ…抱え上げられてなお暴れる珍種猫を観察していて分かったが…

 

 

「────メスか…。」

 

「ドゥフォォォォォォォォォウ!!?!?!!」

 

 

 

 

 

 

(──なんだか廊下が騒がしいな…まさか僕がサボっているのがバレたとかじゃないだろうな──)

 

 

 

 

 

 

 




エル・プサイ・コングルゥ(挨拶) 一話よりも短くなってしまいました。早くオカリンの英霊召喚までいきたいです…。おのれテストぉ…。

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