バカと9人の女神と召喚獣 バカテス×ラブライブ!   作:星震

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おさらい!バカライブ世界像!

【文月学園】

明久たちがもともと通っていた学校。
数年前から世界初の特殊な学習システム、『試験召喚戦争』を取り入れた進学校である。
その学園システムは世界からも注目されているため多くの寄付と援助を受けている。
だがそのためかお金の使い方は狂っていると生徒の間でウワサが立っている。


【音ノ木坂学院高校】

明久たちが送り込まれた学校。
入学生徒数が年々減り続けていることから廃校が立案された。
廃校を阻止する目的も含め、今年から試験召喚戦争を取り入れた。
ただし文月学園の試験召喚戦争とは違い、クラスの設備格差はなく、クラス分けの方法もテストで決めているわけでもなく、試験召喚戦争をあくまで学校行事として取り入れている。
だが差別のない音ノ木坂のやり方こそが学習システムのあるべき姿ではないかという意見と文月学園の格差社会を教えることもできる学習システムの良点を失っているのではないかという意見に分かれている。
現在はμ'sの活躍もあり、廃校を見直す考えも出ている。





ようやく更新できました。
ただ少しずつ書いていたため矛盾が生じてる場合があります。
誤字やおかしい点があれば報告下さい。

新たに感想、お気に入り登録してくださった皆様ありがとうございます!
今回もよろしくお願いします!!


バカと誤算と一日目

「ほう、ここが部屋か。」

 

「分かってはいたけど……

 無駄に広いね…」

 

やっと合宿場に着いた僕たち。

文月学園のお金の使い方はもう分かりきってることだからね…

無駄に広い部屋を見ても驚かないよ。

 

けどね、ただ一つ気になることといえば……

 

「いくら僕たちが繋がっちゃったから

 って男女同じ部屋にするって……」

 

「ごめんなさい…」

 

「小泉さんが謝ることじゃないよ。

 悪いのはこんな手錠を作った鉄人

 なんだから」

 

電車から降りてすぐに鉄人に現状を報告した結果、この手錠の予備の鍵は作ってないらしく、手錠自体も破壊することも叶わないくらい頑丈に作られているみたいだ。

鉄人は現状を聞いてすぐに予備の鍵を注文したものの鍵が到着するのは合宿の最終日になるとの連絡がきたと言っていた。

・・・鉄人、許すマジ

 

「なんで私たちまで同じ部屋に

 ならなきゃいけないのよ…」

 

「かよちんがいつ明久先輩に襲われるか

 分からないからだよ!」

 

「なら凛だけでよかったじゃない…」

 

「凛たちがそうしたら真姫ちゃん

 どこの部屋に入るの?」

 

「う……」

 

西木野さんは完全に被害者だ…

本当にこんなことに付き合わせてごめんね…

 

「嫌ならお主は帰ってもいいんじゃぞ。

 男子と同じ部屋など嫌じゃろう?」

 

「普通3人か4人で使う部屋を7人で

 使うのが狭いってだけだから…

 別に嫌じゃない……けど…」

 

「大丈夫だよ秀吉先輩。

 真姫ちゃんは秀吉先輩がいるなら

 大丈夫かなって安心していたから…」

 

「凛~!!」

 

「ま…まひひゃん!!

 ほっへをひっはらはいへ!!

 (ほっぺをひっぱらないで!!)」

 

「どうしてアンタはそう口が軽いのよ~!!」

 

西木野さんにほっぺを横に引っ張られて涙目の凛ちゃん。

秀吉も後輩に慕われているね~。

 

「おい明久」

 

「ん?何、雄二?」

 

「不味いことになったぞ。

 コイツらが一緒の部屋じゃあ作戦が

 実行できねぇ…!」

 

「!!」

 

確かに考えればそうだ。

下手に三人に作戦がバレてしまえば

三人を巻き込んでしまうかもしれない。

それだけは避けなくてはいけないよね…

 

「更に言うなら今のお前と小泉は手錠で

 繋がってる。

 作戦のときも離れることができないぞ」

 

「くっ…!

 僕はどうすればいいんだ……」

 

「仕方ない、最悪小泉に目隠しでもして

 参戦するか?」

 

「いや、利き手が使えないから召喚獣

 の操作に支障が出るかもしれない。

 召喚獣は脳波だけで動かせるもの

 じゃないからね」

 

「困ったな…

 どうする?お前は残ってコイツらを

 守るか?」

 

「そうだね……悔しいけど今回は…」

 

僕がそう言おうとしたときだった。

 

「……雄二!!」

 

「康太か。どうだった?

 この館の構造は把握できたか?」

 

「……これを見てくれ」

 

「これは…地図か?

 どれどれ……………なにっ!?」

 

「そんな!康太、これって……」

 

「……俺たちは一杯喰わされたようだ」

 

僕たちは事前に康太をFFF団の会議にスパイとして参加させた。

そのとき康太が手に入れてきた敵の作戦の地図は一階の僕たちの部屋から

近い地下一階に女子の大浴場があった。

だが今康太が手に入れてきた地図を見ると女子の大浴場は四階にあったのだ。

 

「不味いよ雄二!

 ここからじゃあ四階に着くまでに

 時間を取られちゃうよ!

 その隙に覗かれたら…!!」

 

「チッ!!

 裏切り者が出てもいいように

 嘘の情報を伝えてきやがったな!

 バカの癖に手の込んだことしやがって!」

 

ここから四階までたどり着くには少し時間が掛かる。

計画当初は部屋がすぐ近くにあったから待ち伏せを考えていたけどこれによってそれが封じられてしまった。

 

「どうする雄二、当初の作戦よりも

 早く待ち伏せすれば…」

 

「いや、それはダメだ。

 早くに出撃して入浴に来た女子と

 鉢合わせてみろ。

 下手すりゃあ俺たちが覗きと勘違い

 されちまう」

 

向こうは覗きを目的としているから鉢合わせても問題はないけどこっちにはデメリットがある…

作戦開始前から優勢に立たれてしまった。

 

「……仕方ない。

 少し遅れてもやることは変わらない」

 

「開き直っていい問題なのかな…?

 放っておいていい問題じゃないと

 思うんだけど」

 

「今はどうすることもできねぇ問題より

 解決できる問題から潰す。

 それが先決だろ」

 

「じゃあ雄二は次に解決すべき問題は

 なんだと思うの?」

 

「戦力の違いだ」

 

「……なるほど」

 

確かに戦力が違いすぎるということは分かっていた。

いままで見落としていたけど。

向こうは数十という軍を率いてやってくる。

僕たち4人では太刀打ちできるわけがなかった。

 

「俺と秀吉に宛がある。

 だがどちらもお前の協力が必要でな。

 明久、ちょっと付き合ってくれねぇか?

 出来ればあの三人にはバレずに」

 

雄二の言うあの三人っていうのは

西木野さん、凛ちゃん、小泉さんのことかな?

 

「けどなんで僕?

 雄二と秀吉の知り合いなのに?」

 

「まぁ、いろいろ理由があるんだよ。

 騙されたと思って付き合ってくれ」

 

「わ…分かったよ。

 けどね雄二…………」

 

「あん?何だよ明久」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今の話、全部小泉さんに聞こえてるんだ」

 

「えっと…ごめんなさい………」

 

「……………忘れていた」

 

やっぱり雄二僕たちが手錠で繋がれてること忘れていたんだね…

 

 

 

 

 

【合宿場 二階】

 

というわけで、まずは雄二に連れられて二階に来たよ。

二階は確か文月学園の男子部屋だったかな…?

 

「おい、連絡通り来たぞ。

 とっとと開けろ」

 

ドアを拳でドンドンと殴りながら言う雄二。

言動はともかく、もっと優しくノック

しようよ……

そんなことを思っていると誰かがドアを開けて出てきた。

 

「すまない坂本君。

 自習をしていたものでね」

 

「久保君!!」

 

「よ…吉井君!!」

 

部屋から出てきたのは文月学園2年Aクラスの久保君だった。

僕は以前から久保君とは面識があり、そのお陰もあってAクラスの数人とも面識がある。

ただ…ひとつ気になることは久保君に会うたびに僕が風邪をひいてるってことなんだ。

そうじゃなきゃこんなに寒気がするわけないもん。

 

「久しぶりだね、吉井君。

 君がいない間だって僕は浮気なんて

 してないから安心してほしい」

 

「登場早々何言ってんだお前」

 

雄二に突っ込まれる久保君。

浮気ってなんのことだろう?

 

「いや、なんでもないんだ。

 それで何か用があると聞いていたん

 だけれど…」

 

「あぁ。それじゃあ早速本題だ。

 実はな………」

 

雄二は久保君にこれまでの事件(ラブレター兼犯罪予告含む)を話し始めた。

そして本来の目的、久保君の力を貸してほしいということも。

 

「そんなことが……」

 

「あぁ。

 そこでお前の力を借りたいってわけだ。

 こんなことに力を使うのも無駄に

 感じるだろうがどうか手伝ってほしい」

 

「無駄なんて、そんな……

 僕はこれでも生徒会の端くれでね。

 これも学園の治安と秩序を守るため。

 喜んで協力させてもらうよ」

 

「本当!?

 ありがとう!久保君!!」

 

流石は久保君!

学年次席の久保君がいれば百人力だ!!

 

「それに吉井君にラブレター…

 犯罪予告をした者を逃がすわけには

 いかないからね…」

 

「え?」

 

何だろう。

やっぱり寒気がするんだ。

僕の体調管理が悪いってことかな…?

 

「何でもないよ。

 それより、ここは僕だけじゃなくて

 他の生徒会メンバーにも協力を仰ぐ

 のはどうだろうか」

 

「他のメンバー?

 会長が秀吉の姉だということは聞いた

 が生憎、他のメンバーは知らないぞ…?」

 

「大丈夫、坂本君も知っている人物さ。

 それに内一人は君が一番よく知って

 いる筈だよ」

 

雄二が一番よく知ってるって……

もしかして…

 

「雄二、なんなら僕が一人で…」

 

「いや、構わん。行くぞ、時間がない。

 久保、すまないが残りのメンバーの

 いる場所に案内してくれ」

 

「分かったよ。

 それより、吉井君。

 そろそろ聞いてもいいだろうか?」

 

「何?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「その背中に隠れている女性は一体

 誰なんだい…?」

 

「うぅっ……タスケテェ…」

 

僕は背中に隠れていた小泉さんと手錠で繋がれてしまった原因について話した。

久保君がやたら小泉さんとの関係について聞いてきたのは何か理由があるからなのかな…?

もしかして小泉さんと声が似ている

声優さんの名前が久保さんだかr…………

 

 

 

 

 

 

【合宿場 三階】

 

「それで今度はワシの出番なわけじゃな」

 

「……そして俺も」

 

「僕は必要あるの?雄二」

 

「おう、お前ら全員必要だ。

 なんとなく生徒会の面子が分かった。

 恐らく俺たちが全員知ってる」

 

秀吉、康太を連れてきて久保君の案内に着いていく僕たち。

なぜ僕たちが必要なのかは分からないけど。

 

「ここだよ。

 木下さん、いるかい?」

 

「待て秀吉。どこへいく気だ?」

 

「嫌じゃ!!

 姉上と交渉する役だけは嫌じゃ!!」

 

久保君がドアをノックした途端、

逃げようとする秀吉。

速攻、雄二に取り押さえられたけど。

 

「落ち着け、大丈夫だ。

 お前はお膳立てするだけでいい。

 なんたってこっちには対秀吉姉用の

 最強の交渉材料があるんだからな」

 

「無理じゃ!!無理じゃあっ!」

 

どんだけお姉さんにトラウマを持ってるんだ秀吉は……

 

「どうしたの久保君……ってどうして

 愚弟(コイツ)がいるのよ」

 

「久しぶりに会った弟への第一声が

 罵倒とは…

 変わっとらんのぅ姉上は……

 そんなじゃから素直になれんのじゃ…」

 

「な・ん・で・すって………!?」

 

「姉上!!

 アイアンクローはやめてほしいの

 じゃぁっ!!」

 

秀吉の顔が木下さんの握力によって

潰される。

 

「それで久保君、何か用があるの?」

 

「アイアンクローしたまま会話するのは

 やめてくだされ姉上!!」

 

「いや、用があるのは僕じゃないんだ。」

 

「用があるのは俺たちだ。秀吉姉」

 

「こんにちは、木下さん」

 

「よ…よよよ、吉井君!?

 ………ついでに坂本君」

 

「俺は後回しかよ……

 だが、事態は急を要するものでな。

 用件を聞いてもらえないだろうか」

 

「………分かったわ。

 どうやらただ事ではないようだし、

 とりあえず上がって」

 

木下さんに言われるまま、僕たち5人は木下さんの部屋に迎え入れられた。

……秀吉は掴まれたままで

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、優子おかえり………ってあれ?

 吉井君たちだ!

 すっごい久しぶりだね!」

 

「工藤さん!

 工藤さんもいるってことはここの階は

 Aクラスの女子の部屋なんだね」

 

工藤愛子さん。

2年Aクラス所属、康太と同じで保健体育が得意。

ただし本人曰く康太とは違って実技が得意なんだとか…

凄い問題発言な気がするけどね…

 

「やっほー、久しぶり。

 ムッツリーニ君」

 

「……工藤愛子、その名で俺を呼ぶな」

 

「あ…そうだったね……

 ごめんね、康太君…」

 

「……いや、謝ることではない」

 

ちなみに工藤さんは康太を保健体育のテストで唯一タメが張れる相手としてライバル視している。

そして出会っては康太に鼻血を出させている。

 

「ほら、代表もそんなとこにいないで…

 あれ?いない…」

 

工藤さんが目を向けた先には工藤さんが代表と呼んだ人はいなかった。

 

「・・・雄二」

 

「翔子……」

 

霧島さん移動するの速すぎない?

工藤さんが呼び掛ける前に移動するって…

 

「悪い翔子。

 今は緊急事態なんだ。

 何も言わず今から俺たちの話すことを

 聞いてほしい」

 

「・・・分かった」

 

霧島さんは何か雄二に話したそうにしていたけど雄二がそう言うと頷いた。

霧島翔子さん、2年Aクラス所属の学年首席。

そして雄二の幼馴染み。

 

「その前に吉井君に質問があるんだけど…」

 

「え?何かな工藤さん」

 

「吉井君ってそういう趣味があったの?」

 

「うぅっ………」

 

話に着いてこれず涙目になっている小泉さん。

その小泉さんと手錠で繋がれた僕を見て工藤さんはゴミを見る目でそう言った。

 

「ちっがぁぁぁぁぁう!!」

 

今日も今日とてこのセリフが爆発した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そんなことになってるの!?

 ということはボクたちも………」

 

「あぁ、覗く対象になってるだろうな」

 

とりあえず工藤さんたちに事件の説明を終えた。

あのバカたちがやろうとしてることも全部。

 

「そんなことになってたなんて…

 このことを凛ちゃんたちは知ってる

 んですか…?」

 

「ううん、知らないよ。

 言ってもいないんだ……」

 

話をしている過程で僕と繋がっていた小泉さんにもこの作戦のことがバレてしまった。

 

「ボクも流石に見ず知らずの男子に

 裸体を覗かれるのは嫌だよ~!」

 

工藤さん、その言い方だと知ってる男子だったら覗かれてもいいってことになるよ?

 

「優子だってそうでしょ……

 あれ?優子……?」

 

さっきと同様、工藤さんが振り向いた場所に木下さんはいなかった。

 

『秀吉、アンタに吉井君が来るときは

 連絡しろっていつも言ってたわよね?』

 

『姉上よ、それはワシらの家に来る

 ときのはず…』

 

『今回だって同じに決まってるでしょ!?

 あー危なかった…

 あの本隠しておいて正解だったわ…』

 

『姉上の本というとあの男子と男子に

 よる如何わしい本…』

 

『死にたいの?』

 

あ、さっきから二人とも何をしているのかと思ったら二人で話してたんだね…

やっぱり久しぶりの姉弟の再会だもんね。

大事な話くらいあるよね。

あ、秀吉またアイアンクローされた……

 

「助けてあげなくていいんですか…?」

 

「小泉さん、あれはきっと愛の鞭なんだ。

 僕たちが手を出してはいけないよ」

 

そうだと思いたい。

ごめんよ秀吉。

 

「・・・それで私たちに何の用」

 

「単刀直入に言う。

 俺たちはあのバカどもを止めなければ

 ならない。

 だが俺たちだけでは戦力不足だ。

 そこでAクラストップのお前らの

 力を貸してほしい」

 

「・・・雄二は卑怯。

 私が断らないの知ってて言ってる」

 

「なんとでも言ってくれ。

 だが頼む、俺たちだけじゃ駄目なんだ」

 

「勿論、無理にとは言わないし、

 霧島さんたちがこんなことに

 関わりたくないっていうなら…」

 

「何言ってるのよ吉井君」

 

木下さんがお茶を持ってきながら僕の目の前に腰かけた。

 

「吉井君たちには今までこれでもかって

 くらいに助けて貰った。

 やっと恩返しができるこの機会を

 見逃すわけにはいかないわ」

 

「木下さん……」

 

「それに、学園の治安と秩序を

 乱そうとしているバカがいるってのに

 黙ってハイそうですかなんて

 見過ごせる程私たち生徒会は甘く

 ないのよ?」

 

「生徒会って…確かさっき久保君も…」

 

そうか、久保君の言っていた生徒会

メンバーって…!!

 

「いかにも。

 改めて自己紹介をしておこう。

 僕は文月学園生徒会会計、久保利光」

 

「工藤愛子、生徒会書記だよ!」

 

「・・・霧島翔子、生徒会副会長」

 

「そして私、文月学園生徒会長、

 木下優子。

 私たちがいるってのにこれ以上バカな

 真似はさせないわ。

 私たち文月学園生徒会は吉井君たちの

 阻止計画に喜んで協力させてもらうわ」

 

「木下さん…ありがとう!!」

 

少しだけ希望が見えた気がした。

学年首席の4人を仲間に加え、戦力不足を解決することができた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「吉井先輩、今お時間いいですか…?」

 

「え?うん。大丈夫だけど…」

 

木下さんたちの部屋から帰って飲み物を買いに来た。

手が繋がっているため一緒についてきてもらうことになってしまった。

小泉さんに買った飲み物を一本渡して

自販機の近くにあった椅子に座った。

 

「どうしてこんな大事な事を皆に

 黙ってたんですか」

 

「それは……」

 

小泉さんは真剣な顔で僕に問う。

アイドルのことになると真剣な顔になる小泉さんだけど今の真剣な顔はそのときとは違う真面目さを持った表情だった。

 

「こんなことになっていたなんて

 さっきまで知りませんでした。

 それにこのことは吉井先輩たち

 だけじゃなくて私たちにも関わる

 ことです。

 なのに…」

 

「小泉さん……それは……」

 

「それにこの事件が起きても被害を

 受けるのは私たちです。

 私、知ってるんです。

 吉井先輩の召喚獣のこと」

 

「どうして…」

 

「穂乃果先輩たちからμ'sの活動を

 認めてもらうために優勝を目指した

 第一回試験召喚大会の話を聞きました。

 そのとき先輩が体を張って戦力に

 なっていたことも……」

 

あのときは僕だけじゃ駄目だったな…

散々格好つけといて結局最後は園田さんに助けられちゃったし。

 

「前回も今回も、どうして先輩が

 そこまでして他の人のために必死に

 なって傷つかなくちゃいけないん

 ですか…?」

 

「別に僕は傷ついてなんか…」

 

「傷ついてますよ…

 それにこんなことをして先輩に

 何が残るんですか…?

 傷だけじゃないですか……!!」

 

「小泉さん、僕は……」

 

「教えてください。

 どうして先輩がこんなことをするのか」

 

「………」

 

僕はどうしてこんなことをすることにしたのか、それを思い出した。

本気でこの作戦の重要さを知ったのは

小泉さんと手錠で繋がる前、雄二に言われた言葉がきっかけだった。

 

 

 

『明久、そろそろお前にこの作戦の

 成功がどれだけ重要なのか教えておく』

 

『どうしたの雄二、突然改まって』

 

『お前の場合、本番前にビビって

 つい皆の前でボロが出ないか

 心配だったから言わなかったんだ。

 明久、敵が本当に覗くだけで満足

 すると思うか?』

 

『それが本来の目的じゃないの?』

 

『いや、覗きなんて一瞬の快楽。

 奴等はその光景を写真に収める

 くらいする筈だ』

 

『確かに…

 僕だって秀吉の裸体を見たら写真に

 永久保存したくはなる…!』

 

『いや共感するなよ……

 奴等にμ'sの皆がその…裸体を

 撮られたとする。

 それでもし、どっかからその写真が

 漏れてみろ。

 μ'sはスクールアイドルとして活動

 できなくなるぞ…!』

 

『そんな…!!』

 

『いいか明久、お前がお人好しなのは

 分かってる。

 だが今回だけはμ'sを…アイツらを

 守ることだけを考えるんだ』

 

『それじゃあ他の人たちは……?』

 

『こんなこと言いたくないが今回は

 状況が違う。

 全ての入浴時間に敵の多人数と

 戦える程余裕はない。

 μ'sの皆の入浴時間だけ戦う。

 他は諦めろ…!』

 

『くっ……!

 仕方ないことなのか……』

 

『だが、これだけの大事になれば

 先生たちだって駆けつける筈だ。

 それに久保たちに協力を仰げれば

 戦力は安定する。

 μ's以外の生徒は先生たちと久保たち

 に任せるんだ』

 

『……分かったよ雄二』

 

 

 

 

「小泉さん、これは僕のためでも

 あるんだ。

 理由は…まだ話せないけど……」

 

「だったら皆に助けて貰った方が…」

 

「それは駄目だよ。

 こんなことに皆を巻き込みたくない」

 

「けど…!!」

 

皆を助けたい、けど皆を巻き込みたくない。

実に傲慢な願いだと思う。

けど僕はμ'sが活動できなくなるのなんて何があっても嫌だ。

そのために他の人たちを捨てる覚悟までしたんだから。

 

「小泉さん、今度は僕から質問させてよ。

 どうして僕を止めるの?

 被害を受けるのは小泉さんたちだよ?

 僕たちが戦って傷つかずにすむなら…」

 

「そんなの………」

 

 

 

 

 

 

「心配だからに決まってるじゃない

 ですか!!」

 

「!!」

 

僕は初めて小泉さんが大声を出したのを聞いた。

僕は自分の目を小泉さんの涙を浮かべながらも真剣に訴えてくる瞳から離すことができなかった。

 

「正直、誰が被害者かなんてどうでも

 いいんです…!

 私は先輩が傷つくのが嫌なだけ

 なんです!!」

 

「小泉さん……」

 

小泉さんはついに泣き出してしまった。

 

「私はμ'sの中でも吉井先輩とは一番

 接点がなかったかもしれません…!

 けどその私でもこんなに先輩を心配

 してるんですよ!?

 吉井先輩と一番長い間一緒にいて

 先輩が一度傷ついたところを見ている

 穂乃果先輩や海未先輩はどれだけ

 胸が痛いか私には分かりません…!!」

 

小泉さんのその言葉で僕はかつて園田さんに言われたことを思い出した。

 

『もう明久が傷つくのは嫌です!!』

 

その言葉は今でも僕の胸の中に残ったままだった。

園田さんも目の前で泣いている小泉さんもどれだけ僕を心配してくれたのか今更になって思い知らされた。

 

「先輩がこの事件を解決しなくちゃ

 いけないのは分かってます!

 けど…!!」

 

ガタン!!

 

「「!?」」

 

小泉さんが何かを言おうとしたときだった。

近くの物影から物音が聞こえた。

僕は嫌な予感が当たっていないことを祈りながら物影に近づいた。

 

「これは……?」

 

そこには一枚の写真だけが落ちていた。

 

「秀吉の写真…!!

 どうして僕の嫌な予感はいつも…!!」

 

この写真を持っているのは奴等しかいない。

 

「全部聞かれてた…!

 不味いことになっちゃったな……」

 

「吉井先輩……」

 

「小泉さん、小泉さんが僕を心配

 してくれるのは嬉しい。

 けど今回だけは止められないんだ…!」

 

「そんな……先輩…………」

 

「だから約束するよ。

 無理はしないって」

 

僕にできるのは約束することだけ。

止めるなんてことはできない。

 

「なら…………

 私も連れて行ってください」

 

「えっ?」

 

「無理かどうか先輩はきっと自分では

 分かりません。

 だから、私が決めます…

 それに、私たちは今繋がっちゃって

 いるんですから…

 先輩が行くなら私も行くしかないん

 です」

 

「けどそんなの危険だよ…!

 もし小泉さんに何かあったら…」

 

「確かに私じゃ役に立たないかも

 しれません。

 けど先輩が傷つかないように守って

 みせます!」

 

小泉さんの目は何かを決意したような真っ直ぐな目だった。

 

「小泉さん…

 ごめん、こんなことに巻き込んで……」

 

「先輩が謝ることじゃないですよ…!

 行くって言ったのは私ですから…

 っていうよりこの状態だと行くしか

 ないので…」

 

繋がった手を見て言う小泉さん。

この手が繋がってからっていうものの、小泉さんには迷惑をかけてばかりだなぁ…

 

「小泉さん、ありがとう」

 

「えっ?」

 

「一人より小泉さんが居てくれたほうが

 やれる気がしてきたよ」

 

「そんな…私は何も……」

 

「違うよ、小泉さんが心配してくれた

 から、一緒にいてくれるからそう

 思えたんだよ。

 だから、ありがとう」

 

「も…もう………

 あんまり女の子にそういうこというの

 駄目なんですよ……?」

 

「えぇっ!?そうなの…?

 まぁ、僕みたいなのに言われても…

 ねぇ……」

 

「い…いえそんなことは…!!

 少なくとも私は嬉しかったです……」

 

「えっ?それってどういう……」

 

「そ…それより時間!!

 長い間ここで休憩しすぎちゃい

 ましたね!

 皆心配するから早く戻らないと…」

 

「あ…本当だ………」

 

僕は買ったお茶を急いで飲み終わらせてごみ箱に捨てた。

早く戻らないと作戦が始まっちゃうから急いで戻った。

小泉さんと一緒に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帰り道、何故か二人して顔を合わせられなかった。

そして何故か急いで飲んだお茶が甘かった。




花陽ちゃんの表現が難しく、今回は少し早足になってしまいました。
花陽ちゃんファンの皆様ごめんなさい!!
これから改善していこうと思います。
次回ようやく開戦です。
明久たちの勇士(w)を見守ってください。

今回もありがとうございました!!

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