教会にて待っていると、ゼシカとヤンガスがやってきた。
「あら、もう来ていたの」
「兄貴! グラッドって奴の行きそうな場所がわかったでがすよ」
「レオパルドの情報は残念ながらなかったわ」
「そうか……」
レオパルドの目撃情報については収穫なし。ならば、取り敢えずグラッドに会い用件を済ませたほうがいいだろう。
「ヤンガス、グラッドさんはどこにいるって?」
「部屋にいなかったんで、北西の洞窟じゃないかって話でがした」
「グラッドさんは、その洞窟で薬草園を作っているみたい。よく行っているらしいわ」
「薬草園か……わかった。行ってみよう」
「仕方ねぇか……どうする。このまま向かうのか?」
まだ時間にして昼頃だ。徒歩で行っているのだからさほど時間がかかる場所でもないだろう。だが、今後のことを考えれば装備を整えておいた方がいい。
「まずは準備をしてからだな」
「……そういえば、バタバタしていたから装備も変えてなかったな」
「そうね。ドルマゲスを倒してからはそんな余裕もなかったし」
「じゃあ、店に行くでがすよ」
一行は、まず武器防具屋へと向かった。
防具屋と武器屋は同じ場所で商売をしているらしいが、昼は防具屋で夜が武器屋となるらしい。現在は昼で、防具しか購入はできない。
それがここのやり方でもあるため、不満を言うこともできないだろう。
まずは防具類を見せてもらうことにした。
「……こおりの盾にドラゴン系か。これらは何か効力でもありますか?」
「良いところに目をつけられましたね。吹雪や炎のダメージを軽減する効果があるのですよ。知っての通り、この辺りは氷の魔物が多いですから、買っておいて損はありません!」
「確かにな……おい、どうする?」
「……そうだな。ゼシカが装備できるものはないから仕方ないが、購入しておいた方がよさそうだ。ククールはこのマントも装備できそうじゃないか?」
レイフェリオが示したのはビロードマント。レイフェリオも装備できそうではあるが、ククールの方が必要とするだろう。守備力も今までのマントよりも上がるのだから。
「だな。ならこれも頼む」
「毎度あり!」
こおりの盾をレイフェリオとククールの二つ買った以外は、ひとつずつ購入することとなった。
武器屋の主人は、夜まで寝ているということで今回は諦め、戻ってきてから物色することにした。今まで激戦をしてきた中で、特にヤンガスは武器もそろそろ限界にきている。買っておきたいのはやまやまだが、たたき起こすわけにもいかないだろう。
「仕方ないでがすよ。なぁに、そう簡単にアッシの斧が折れるわけないでがす!」
「……油断は禁物だけど、仕方ないか」
「最悪、こいつの場合は頭突きでもいけるだろうぜ?」
「それもそうね」
「おい、お前ら!」
「……」
頷き合うゼシカとククールに、レイフェリオも反論できなかった。
外へでるとトロデが陰に隠れていたところから顔を出す。
「ん? 用事は終わったのか?」
「いえ……実はグラッドさんが北西の薬草園にいるらしいので、そこへ向かおうと思っています」
「薬草園じゃと? こんな雪の中にあるものなのか?」
「洞窟の中、らしいぜ」
「……なるほどのう。致し方ない。では、早速向かうとするか」
旅にも随分と慣れてきたのか、トロデも文句をいうことは少なくなってきたように感じる。以前であれば、目的であるレオパルドのことを聞き忘れることなどなかった……はずだ。
ともあれ、一応伝えておくことは必要だろう。
「トロデ王、レオパルドのことですが……」
「? おぉ、そうじゃった。忘れ取ったわい」
「そっちの方が優先事項なのだけどね……」
「ん? 何か言ったかのゼシカ?」
「何も言ってないわ」
「そうかの? それでレイフェリオ、どうじゃったのだ?」
「結論から言えば、目撃した人はいませんでした。なので、メディさんの依頼を先に済ませようと思います」
「そうか……どちらにしてもメディばあさんには世話になったのじゃ。構わん。用事を済ませてから、考えるとしようかの」
「そうですね……」
ここでレオパルドの情報がなければ、手詰まりだ。
足を止めるわけにはいかないので、メディが依頼をしてくれたことに感謝しなければならないだろう。もし何もなければ、どこへ向かえばいいかわからなくなり途方に暮れているかもしれない。
グラッドに預かりものを渡したあとは、賢者の末裔の情報を探すことも視野に入れる必要があるだろう。
レオパルドは必ず賢者の末裔の元に現れる。雲をつかむような話ではあるが、やるしかない。
依頼を達成した後のことは、グラッドに会ってから相談すればいい。
既に歩き出しているトロデやヤンガス、ゼシカからは、特に焦りも何も感じていないようだった。楽観視しているのか、それとも目の前に目的が一応あることで気に留めていないのか。
恐らく後者だとは思うが。
「ゼシカはともかく、あいつらにそれを求めない方がいいだろうな」
「ククール?」
「お前は考えすぎだ。焦っても仕方ないだろう?」
「……だが、こうしている間に既に、ということもある」
「もしそうだったとしても、俺たちには何もできない。ならできることからやるしかねぇだろ?」
「……お前は冷静だな」
こういう時、パーティの指針を決めるのはレイフェリオとククールが多い。それは、当事者としてだけでなく、周りを冷静に見ることができる眼を持っているからだろう。
「俺が熱くなったときは、お前が冷静になっているだろうさ」
「そうか……そうかもな」
「あぁ。ほら、まずはグラッドに会ってからだ」
「わかった」
魔物と既に戦闘に入りそうなヤンガスらを視界に入れ、武器を握るとレイフェリオとククールはかけていった。
最近、ククールの立ち位置が参謀的な感じになってますね。