リブルアーチに来ました。
一気にリブルアーチへとたどり着いたレイフェリオは、気配を探りながらゼシカたちを探す。
だが、探す間もなく彼らは見つかった。
本調子ではない身体を無理やり動かし屋敷へと近づく。ゼシカと対峙していたククールとヤンガスに既に戦いは始まっていた。
ゼシカの他にも影……シャドーが何体かいるようだ。
杖を掲げ魔力が放たれると、炎の渦が二人を囲む。以前のゼシカにはない威力だ。否、力をみるにあの呪文はベギラゴン。ゼシカはまだ習得していなかったはずだった。
油断している隙に、レイフェリオは魔力を溜めこみ呪文を放つ。
「ライデイン!」
「なっ!」
稲妻がゼシカとシャドーたちへと落ちる。
「ククール、ヤンガス」
「なっ、レイフェリオ!?」
「兄貴!? どうしてここに!」
ここにいるはずのないレイフェリオに、二人は目を見張った。しかし、今は説明をしている場合ではない。
「……お前、そうか。生きていたのね……好都合だ。ここで共に死なせてやるわ」
「ゼシカ……その杖の力なのか」
ドルマゲスが持っていた杖。トロデ―ンの秘宝と言っていたが、何か訳アリなのだろう。それさえ、ゼシカから離すことができれば、元に戻せる可能性もある。
「ククール、あの杖をゼシカの手から離せるか?」
「弓で狙えってことか……できないことはないが、今の状態なら手放しはしないだろうな」
「そうか……なら、戦うしかないのか」
「兄貴……」
ゼシカ自身に怪我を負わせることはしたくないが、多少弱らせなければ杖を離すことはしないだろう。ならば、やるこは一つだ。
「……ゼシカ、目を覚まさせてやる」
「レイフェリオ……そうだな。お前が来たのなら、多少はマシになるか」
「けど兄貴は……」
「悪いな。今の俺は前衛に立つことは無理だろう。ヤンガス、頼んだ」
「……わかったでがす、兄貴! まかせてくんなせぃ!」
直接斧で斬りつければゼシカが怪我をする可能性もあるが、杖の魔力が多少は防いでくれることを祈り、ヤンガスは斧を抱えてゼシカへと突撃していった。
一方でレイフェリオは、シャドーが余計な手出しをしないように呪文で牽制に入った。一体一体を倒していたのではキリがない。一気に片を付ける方がいい。ククールに目くばせをすると、力をため込んだ。
「ライデインっ!」
「バギマ!」
「キシャァァ……」
一気に魔力を解放した二人の呪文がシャドーを一掃する。残りはゼシカのみだ。
「ククール、矢を放ってくれ」
「……ったく、わかったぜ」
弓を構え、矢をゼシカへと放つ。その矢に合わせるように、レイフェリオが魔力を乗せた。ゼシカへと届く前に矢は炎を纏うと、そのまま命中する。
「ちっ!!」
「甘いぜっ!」
「くぅ」
ヤンガスの斧がゼシカの腕を掠める。それでもゼシカは杖を離さない。
「ゼシカっ!」
「うるさいわね。本当に……もういいわ、この街ごと燃え尽きるがいい」
ゼシカが空へと飛翔すると、杖を掲げる。頭上には、大きな魔力の塊。メラゾーマが巨大に膨れ上がっているようだ。放てば、この街など跡形もなくなってしまうほどの威力だろう。
「ゼシカ、止せっ! っ痛」
走りだそうにも、身体が想う通りに動かないレイフェリオでは何もできない。
その時、屋敷から飛び出してくる影があった。
「えぇい。邪魔じゃ! どけどけぃ」
屋敷の前にいた人を押しのけ、レイフェリオの前までやってくる。恰好から見るに術者のようだ。
「どうやら間一髪だったようじゃな。結界が完成したわい。このわしの命を狙う不届き者め! わしの超強力な退魔の結界をくらえぃ!」
そう叫ぶと、男を中心に光が広がっていった。
聖なる力が辺りを包み、飛翔しているゼシカを吹き飛ばした。衝撃で杖がその手から落ちる。
力を失ったゼシカはそのまま地面へと倒れ込んでしまった。
「ゼシカっ!」
「どわははは! こいつは相当効いたようじゃな」
ククールとヤンガスがゼシカに駆け寄る。レイフェリオもゆっくりと近づいた。
「ククール、ゼシカは?」
「……大丈夫だ。脈はある」
「そうか……」
「お主ら、何をしておる。早くその女に止めを刺さぬか!」
「うるせぇ! おっさんは黙ってろ!」
後ろで騒ぎ立てる男に思わずヤンガスが怒鳴りつける。当然だろうが、相手はこちらの事情を知らない。ゼシカをククールに任せることにし、レイフェリオは男に向き直った。
「……ん? なんじゃお前は?」
「失礼……俺は、レイフェリオ・クランザス・サザンビーク。彼女は、俺たちの仲間です」
「仲間? レイフェリオ? ……サザンビーク……ん? その紋章は」
レイフェリオの額当てにはサザンビークの王家の紋章がある。サザンビークを知っている者ならば、一度は見たことのあるものだ。この男も流石に知っていたのだろう。
「まさか、サザンビークの王族か!? こんなところに何故……ごほん、わしはハワード。その女はわしの命を狙った不届き者じゃ」
「……命を? そうですか、恐らく彼女には杖の呪いが掛けられていたのでしょう。彼女の手に杖はありませんので、もう貴方を狙うことはありません」
「呪い? どういうことじゃ?」
「これ以上は我々もまだ状況の整理をしていないので、また改めてということで今は彼女を介抱してあげたいのですが?」
「……仕方ない。其方がそういうのならば、ここは任せるとしよう。そこの者たちには手伝いをしてもらったことじゃしな」
「ありがとうございます」
納得がいったわけではないが、とりあえずゼシカのことはこれ以上責めることはないだろう。安堵するように、ため息を吐く。その時、ざわりとレイフェリオを悪寒が襲った。
「あっ……」
「ん? そういえば、わしの可愛いレオパルドちゃんはどこ行った? チェルスよ探してまいれ!」
「は、はい!」
チェルスと呼ばれた男が走っていくのを横目で見ながら、何か見落としているような気がしてならない。漠然とした不安がぬぐい切れなかったが、レイフェリオ自身も体力の限界だった。
ゼシカを連れ、一行は宿屋へと向かった。
あまり戦闘してませんでした。仲間を容赦なく攻撃するって言うのが、あまりしたくなかったというのもありますが・・・。