ドラゴンクエストⅧ 空と大地と竜を継ぎし者   作:加賀りょう

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闇の遺跡へと上陸です。


闇の遺跡地方
闇の遺跡へ


 舵を切って闇の遺跡がある方角の西へと向かう。

 

 海の魔物が狂暴化しているというのは真実のようで、向かっている途中にも魔物が襲ってくる。このように襲われては、民間の定期船の巡行は難しいだろう。

 この辺りの魔物であれば、今のレイフェリオたちには苦戦する相手ではなく、難なく退けることができた。

 東の大陸を離れ、西の大陸が見えてきた。陸伝いに航行し、更に進む。

 目的地は、地図で言うところの北西のはずれにある島がその場所だそうだ。無論、ここにいる誰もが行ったことがない。未知の領域ではあるため、目的地が近づくにつれ緊張感が増してくる。

 

「ねぇもしかして、あれがそうなの?」

 

 ゼシカが指で示す。岩肌が見えた大地の奥に、雨雲とは違った暗い闇色の雲が視界に映った。

 

「……だろうね」

「ようやく、ここまで来たってわけだ」

「こっちは準備万端でがすよ」

 

 大地にはちらほらと魔物の姿も見える。遺跡に行くまでの間も戦闘は避けられないだろう。

 船を陸地に寄せて、レイフェリオたちは船を下りた。

 

「王はここで姫と待っていてください」

「うーむ、仕方ないのう。気をつけるのじゃぞ」

「はい」

 

 非戦闘要員でもあるトロデとミーティアは船の中で留守番だ。町があるわけでもなく、戦闘のみが行われるだろう場所だ。何が起こるかわからない。一緒に行動するよりは、待っていてもらった方が安全だろう。

 

 遺跡へと向かって歩いていたところに、早速魔物が現れる。

 

「変な頭の魔物ね……気持ち悪いわ」

「同感だね。だが、嫌な気配を持っているぜ……」

「わかってるわよ。先手必勝ね。くらいなさいっ! イオラ」

 

 魔力を溜めると、ゼシカが呪文を放った。三体の魔物は爆発に巻き込まれる。爆発の煙が収まり再び魔物の姿が見えたが、ダメージを受けている気配はなかった。

 

「えっ?」

「ケッケッケッケ」

「呪文が効かねぇ?」

「皆、伏せろ!!」

 

 レイフェリオが叫ぶと同時に、魔物の両手から光が放たれた。眩しいほどの輝きが視力を奪う。

 

「キキッ」

「きゃっ」

 

 視力を奪われたゼシカへと容赦なく魔物は爪を立ててきた。ククールとヤンガスはどうにか防御が間に合ったようで、武器を構えている。

 

「レイフェリオ、あれを知っているのか?」

「あぁ……レッサーデーモン。本で見たことがある程度だが……物理攻撃で戦った方がいいようだ。俺とヤンガスが前に出るから、ククールはゼシカを頼む」

「わかった」

「ヤンガス!」

「合点でがすよ」

 

 傷を負ったゼシカをククールに任せ、レイフェリオとヤンガスがレッサーデーモンへと攻撃を繰り出す。長い手足を持つため、攻撃のリーチが長い。避けるならば、紙一重ではなく距離を取って躱さなければいけなかった。

 身のこなしが素早いレイフェリオはともかく、ヤンガスにそれは難しい。

 結局、多少のかすり傷を負ったものの魔物を退けることができた。

 

「……呪文が効かない敵なんて、初めてだったわ」

「ゼシカ」

 

 呪文が基本攻撃パターンであったゼシカからすれば、通用しない敵と出会った場合、強力な攻撃手段がなくなってしまう。ムチでの物理攻撃がないわけではないが、やはり呪文と比較すれば劣るのは当然だった。

 

「攻撃だけが呪文じゃないだろ?」

「わかってるわ……けど全く効かないとなると、支援するくらいしか私にはできることないのよね」

「支援でも十分だろ? 今後はそっちを優先しないといけない場面も出てきそうだしな」

 

 真面目に切り返したのはククールだ。

 ここにいる魔物は周辺を見る限り、一筋縄ではいかない魔物が多いようだ。遺跡の闇に関連しているのだと思われるが、闇の眷属に属する魔物なのかもしれない。

 戦ったことがないタイプの魔物もいる。だからこそ、支援系の呪文を唱える機会が増えてくるだとうとククールは予想しているのだろう。

 

「それには賛成だな。……注意するのはドルマゲスだけではなさそうだ」

「レイフェリオ、ククール……わかったわ」

 

 ゼシカも納得したに頷いた。

 その後も魔物との戦闘を繰り返し、ようやく遺跡へと辿りついた。

 

「これは……」

 

 だが入り口をみてレイフェリオは眉を寄せる。闇の力だろうが、唯一の入り口である場所に結界が施されていたのだ。これでは先へと進むことができない。

 

「なんでがすかこれ? 黒っぽい霧みたいでがすね……」

「この先にドルマゲスがいるのでしょうね」

「行ってみるでがすよ!」

「あっ、ヤンガス待て!」

 

 レイフェリオの制止も及ばず、ヤンガスは闇が覆う霧の中へと入っていった。と思ったのだが、すぐに戻ってくる。

 

「あんた、行ったんじゃなかったの?」

「……何も見えなかったんだよ」

「見えなかった、か。やはり結界があるみたいだな……」

「結界? それを破らないと進めないってことか、おいどうする?」

 

 結界を破る。容易なことではないだろう。

 杖の力を使って闇の力を増幅させることで、ドルマゲスは結界を張った。ならば、その闇を払う光の力があればいい。

 

「兄貴、どうするんでげすか?」

「……闇を払うには、反対の力が必要だ」

「確かに理屈ではそうだぜ? だが当てがあるのか?」

「……闇、は暗闇。夜か。ならば反対は朝。太陽……あっ」

 

 暫く考え込んでいたレイフェリオが顔をあげる。

 

「兄貴?」

「……いったん国に戻ろう。もしかしたらどうにかできるかもしれない」

「サザンビークに戻るの?」

「……叔父上に頼まなければいけないだろうからな」

 

 アスカンタに王家の宝といわれる古くから伝わる月影のハープがあったように、サザンビークにも同じく古くから伝えられる宝がある。

 それが太陽の鏡だ。

 王家の物であるため、持ち出すには王の許可が必要である。レイフェリオは急ぎ、サザンビークへとルーラを唱えた。

 

 

 

 

 

 

 

 




短くてすみません・・・。

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