ドラゴンクエストⅧ 空と大地と竜を継ぎし者   作:加賀りょう

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アスカンタ王イベントからパルミドへ向かうまでです。
オリジナル展開入ります。


パルミドへ

 レイフェリオ達は、その後立ち直った王から朝食に招待された。

 久しぶりの王が食事をするということに、城全体が沸いていた。外の垂れ幕も通常のものに変えられ、服装も黒一色から元に戻された。民もみな喜んでいるという。

 

「皆さん、この度は本当にありがとうございました。シセルが僕に教えてくれたこと、もう二度と忘れはしません。夢のような出来事でしたが、僕は信じます」

「パヴァン王……」

「キラと皆さんのお陰で僕は漸く悪夢から覚めることができました。これからは、王の務めに励みます」

「そうね。キラも喜ぶと思うわ」

「だな。がんばれよ」

「モグモグ……って、何でククールは偉そうなんでがすか?」

「あはは」

 

 王に対する態度ではない。それはゼシカも同じなのだが……。

 パヴァンも大して気にしているわけではなさそうだった。それがよいのかは別として。

 

「ありがとうございます。もしこの先何か困ったことがありましたらいつでも言ってください。必ずその時はお力になりましょう」

「ありがとうございます、パヴァン王」

 

 レイフェリオが礼を述べるが、ククールとヤンガスは料理に夢中で聞いてはいなかった。

 そんな様子に呆れていると、ふと視線を感じ目をむける。

 

「何でしょうか?」

「あっ……その……すみません。その知っている方に似ていたのでつい」

「……そう、ですか」

 

 嫌な予感がして、レイフェリオは特に追求しなかった。

 だが、近くにいたゼシカはそうはいかない。

 

「それって誰なの?」

「!? ゼシカ!」

「あー、その似ているといってもお会いしたのはもうずっと前で……サザンビークの王子だった方なのですが、エルトリオ様ですね」

「王子? ……ということは今は王様?」

「いえ……随分と前に亡くなったと聞いています」

「そう、なのね……」

 

 レイフェリオは重く息を吐いた。勘の鋭いゼシカのことだ。もう気がついたのかもしれない。ククールとヤンガスはみれば、言い合いをしているので聞こえてなかったと思うが。

 

「ではパヴァン王、私たちはこれで失礼します」

「はい、どうかこの先の旅でもお気をつけて。いつでも遊びに来てください」

 

 レイフェリオは席を立ち、ヤンガスたちにも声を掛ける。まだ言い合い……というよりは、ヤンガスがククールに言いくるめられているだけのようだが、それをひとまずおさめて城を出ていった。

 

 城内、そして城下町は、来た当初とはうって変わって活気に満ちていた。これが本来のアスカンタという国なのだろう。

 

「ねぇ、レイフェリオ」

「……」

 

 後ろを歩いていたゼシカが、レイフェリオに固い声で声を掛けると、レイフェリオは立ち止まった。前を行くククールとヤンガスは気がついていない。

 ゼシカもレイフェリオと向かい合う形で立ち止まる。

 

「さっきの話だけど貴方は、サザンビークの王族……? エルトリオ王子はもしかして貴方の?」

「……あぁ。父だ」

「何故、こんな風に旅をしているの?」

「……俺がどんな理由で旅をしていても君に、関係があるか?」

「それは……けど!」

「……俺の正体を知ったところで、ゼシカたちには何の関係もない。知らなくても同じことだよ」

「レイフェリオ……でも」

「ごめん……」

 

 レイフェリオは拒絶を示すと、ゼシカの横を抜けていった。この話はレイフェリオにとってのタブーなのかもしれない。だが、エルトリオの名を出したとき、レイフェリオの瞳が悲しげに揺れていたのをゼシカは見ていた。

 

「……仕方ないわね。まだ暫くは黙ってるわよ」

 

 理由はわからないが、レイフェリオが自分で言うときが来るまでは黙ってておこう。

 

「でも私ってば仮にも王族に怪我させちゃったの、よね……」

 

 リーザスの塔で、誤解だったとはいえレイフェリオに呪文を放ち、重傷を負わせた。もし、レイフェリオが回復呪文を使えなかったらと思うと、ゾッとする。

 

「……知らない方が、良かった……かも」

 

 いつまでも歩き出さないゼシカが気になったのか、いつの間にかククールが側まで来ていた。

 

「どうかしたのか? 顔色悪いぜ?」

「あっ……な、なんでもないわよ。ほら、行くわよ」

「お、おいっ!」

 

 訳がわからないが、ククールは歩いていくゼシカを追った。

 

 城下町を出ると、いつものようにトロデが待っていたのだが……。

 

「王?」

「ええのう。お前達はパヴァン王から盛大にもてなされて、楽しそうじゃのう……きっと、ご馳走や酒もいっぱい振る舞われたんじゃろうな。羨ましいのう……」

 

 不貞腐れていた。

 

「まっ、ヤンガスは料理ばかりに夢中だったな」

「そういうククールは酒ばかりだったがすよ」

「ふん、その間わしと姫は町の外で待ちぼうけじゃ。あぁ寂しい寂しい……」

 

 足元にあった小石を蹴るその姿は、王というより子どもだ。

 だが、魔物の姿であるトロデを町中に連れていくわけにはいかないのだから、どうしようもない。

 

「そりゃおっさんだってまともな姿だったら町の中に入って、酒飲み一つでも飲みたいでがしょうよ。アッシも昔から見かけの悪さで苦労したもんでさぁ。だから、わかりやす」

 

 ヤンガスだけがトロデに同意する。実際問題、無理なものは無理なのだが。

 すると、ヤンガスはなにかを考え込みレイフェリオへと向き直った。

 

「兄貴、この大陸の南の方にある以前アッシが住んでいた町によってきやせんか?」

「南の町?」

「パルミドって小汚ねぇ町ですが、どんなよそ者も受け入れるフトコロの深いところでしてね」

「なるほどな、そこならトロデ王も中に入れるって訳か……」

「それに、アスカンタではドルマゲスの手掛かりもなかったでげすが、あの町にはアッシなじみの情報屋がいるんで、きっと奴の情報も掴めるはず!」

「おぉ、ならば一石二鳥じゃ。ほれ、レイフェリオ。パルミドへ向かうのじゃ」

 

 ヤンガスの言葉にトロデもテンションがあがったようだ。酒が飲みたい、という理由はどうかと思うがドルマゲスの手掛かりがないのは確かだった。

 ならば、その情報屋に行くのは現時点では正しいだろう。

 

「わかりました」

 

 こうして、一行はパルミドへと向かうことになった。

 

 

 

 

 




やはり、一番最初に気がつくのはゼシカでした。

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