ドラゴンクエストⅧ 空と大地と竜を継ぎし者   作:加賀りょう

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一年以上ぶり……(;^ω^)アワワ

ちょくちょく書いていたのですが、大分遅くなりました。
とりあえずこの話で空白の一か月は終わりを迎えます。
ようやく次は聖地ゴルド!!

やっとゲームの時間軸に戻った。。。


始動

 レイフェリオは早速、帰還の報告をするために謁見室へと向かった。扉を開けて中に入ると、王座で大臣と話をしていたクラビウスがレイフェリオを見るなり、慌てて駆け寄ってくる。

 

「レイっ! 無事であったか」

「ただいま戻りました、叔父上」

「怪我は、していないようだな。良く戻った」

 

 厳密にいえば負傷は負ったのだが、見た目には何も変わっていない。カタリナによって巻かれた包帯は未だに巻かれたまま。痛みがあるわけではない。同じ個所に負傷を負わない限りはバレることはないだろう。時間を置けば癒える傷。ただ、今はその時間がなかった。

 

「叔父上、状況はどうなっていますか?」

「帰って早々か……まぁよい」

 

 中へ入るよう促され、レイフェリオもクラビウスの後についていこうとすると、同行していたアイシアから声を掛けられた。

 

「あのレイ様、私も同席してもよろしいでしょうか?」

「アイシア?」

「お願いします。決して邪魔は致しません」

「……」

「構わんだろう。無関係というわけではないのだ」

 

 祖父がいなくなってどうなっているのかも気になるところだが、大聖堂自体がアイシアにとっては巫女として長期間過ごした場所でもある。気にならないはずがない。

 

「わかった。では叔父上、報告をお願いします」

「うむ」

 

 レイフェリオが郷へと戻っている間に、予想通りというかマルチェロが法皇の座に就いたらしい。ただし、これについては、サザンビーク、アスカンタの両国は異議を申し立てている。その他、マルチェロの古巣であるマイエラ修道院は、沈黙を保っているらしい。これは表立って異議を申し立てることが出来ないが故の反抗なのだろう。

まとめているのは、修道院に残っているサーファン辺りかもしれない。

 

「あと、トロデーン国のことなのだが……」

「……お聞きになりましたか?」

 

 トロデーン国は呪いにより城全体がいばらに覆われている。加えて、国自体も瘴気のような暗い闇に包まれているため、普通の者ならば見ただけで立ち去ってしまうだろう。

 

「その言い様……やはりお前は知っておったのか? 今のトロデーン国の状況を」

「……」

 

 出来るならば黙っておきたかった。恐らく、知られることはトロデ王にとって本意ではない。だが、そうもいっていられないこともわかっている。

 

「城に向かわせたが、中には入ることが敵わなかったそうだ。いばらに覆われた様が不気味だった、と」

「入らなかったのは良い判断だったでしょう。並みの人間では、中に入れば戻ることさえできたかどうか」

 

 城内には、魔物がはびこっている。戦闘能力がない一般人が向かえば、そこに待つのは死だ。そこそこの戦闘力がある人間でも、無傷ではいられないだろうから。

 

「レイは、内部がどうなっているのか知っているのか?」

「知っています。ただ、一つだけ言わせていただけるなら……トロデーン王と姫は無事です。この目で確認していますから」

「トロデ王とミーティア姫の二人と既に面識があるということか」

「はい。ですが、それ以上の状況について、俺からお話することはできません。それが王との約束ですから」

 

 サザンビークの王族には、現状を知られたくない。魔物に姿を変えられたことについて、トロデは常々そう話していた。レイフェリオはある意味当事者でもあったので仕方ないとしても、クラビウスへもチャゴスへも話すことはできない。

 

「お前がそういうのならば、無理に聞こうとは思わん。ただ、この状況でトロデーンからの支持が得られないことは、不利になりそうだが」

 

 トロデーン国もサザンビークに及ばないにしろ大国の一つ。確かにあった方がいい力だが、今の状況ではトロデ王もミーティア姫も、その力を明示することは出来ないだろう。

 

「……レイ様、クラビウス陛下」

「どうした、アイシア?」

「実は、あの時……最期におじい様とお会いした時に、おじい様から封書を頂きました」

「封書?」

 

 そうしてアイシアが差し出したのは、法皇の印籠により封をされたものだった。それを受け取ったクラビウスが両面を確認する。署名は法皇自身が書いたものであり、印籠には魔力が込められていた。

 

「ふむ……余では開けられないか」

「しかるべき時に必要となる、とおじい様が仰っておりました。私にもその中身を確認することはできませんでしたが、もしかするとレイ様ならば出来るかもしれません」

「俺が?」

 

 巫女姫であり孫であったアイシアに開けられないものを、レイフェリオが開けられるとは思えない。クラビウスは黙って封書をレイフェリオへと差し出した。仕方なくそれを受け取り、レイフェリオは印籠へと触れる。すると、封をしていた印籠から火が現れた。

 

「これは……」

「やはりおじい様はレイ様へと遺されたのですね」

 

 最期の手紙ともいえるものが孫のアイシアではなく、その婚約者であったレイフェリオだった。ほんの少し悲しみを見せるアイシアに、レイフェリオはポンと頭へと手を乗せる。

 

「レイ様?」

「猊下は最期にアイシアと言葉を交わした。そうしてこれを託した。誰よりも猊下はアイシアを信頼して、心を寄せていた証だ」

「……はい、ありがとうございますレイ様」

 

 レイフェリオは改めて封書を見た。その中身を確認するべく、入っている手紙を取り出す。そこには、変わらず達筆な法皇の言葉が書かれていた。

 

 レイフェリオ様

 

 最期の対面があのようになってしまうことを、お詫び申し上げます。

 賢者についてレイフェリオ様がご存知だということであれば、既に世界の真実も知っていることでしょう。

 私は、その子孫の一人として知識を持っておりました。

 他の賢者の子孫より、よほど状況については通じているはずです。

 

 私が貴方をアイシアの婿に望んだのは、貴方の特殊な血筋ゆえでした。

 貴方のお父上から全て事情は聴いております。その上でアイシアを守ってくださるのは貴方しかいないと

 確信しておりました。

 

 あの子も、特別な血を持って生まれました。

 巫女としての力は、もしかしたら私以上のもの。誰かに利用される前に、貴方の傍に置いておきたかった。

 

 どうか、アイシアを宜しくお願いします。幼き頃より両親から離してしまったあの子を、

 幸せにしてやってください。

 

 世界を頼みます。

 

 ここに法皇として、宣言いたします。

 

 我亡きあと、すべての力を、権限を

 レイフェリオ・クランザス・サザンビークへ

 

 クローム・クリフォート

 

 

 

 レイフェリオが手紙を読み上げると、ふわりと光が身体を包んだ。温かい力は、きっとレイフェリオへと託した法皇の力だ。魔力とは違う力だが、異質には感じない。きっと法皇自身が望んだものだからなのだろう。

 

「それはおじい様の法力……」

「法力?」

「はい、歴代法皇が譲られてきたものだと聞いております。死後、その名を継ぐ時に受け継がれるものですが……」

「今回のマルチェロの行動を予見して、俺を指名したということか」

「だと思います。ですが、これで他の誰も大聖堂にある法皇の間は使えません。それが出来るのは、レイ様だけです」

「……俺は法皇になるつもりはないが、それでも他の誰かに渡すよりはマシか。マルチェロに渡すことだけは出来ない」

「その通りです」

 

 ならばそれだけで十分だ。その後のことは全てが終わった時に考えればいいのだから。

 

「レイ、アスカンタを始めとして、今回の法皇崩御について疑念がある旨について同意を得ている。準備は整ったと言えるだろうが……本当に向かうのか?」

「はい。あれから一月近く経ってしまいました。ククールたちの安否も心配ですが、俺が動かなければ何も変わらないでしょう」

 

 

 煉獄島に囚われているらしいが、そこで一月も無事でいるかなどわからない。囚われたら最後、生きては出られないと言われているらしいが……。

 

「レイ様」

「生きている、と信じるしかない。マルチェロをおさえ、大聖堂を掌握する。そうすれば、助けることも出来るはずだ。その為に、猊下の意志を使うことになるのは心苦しいが」

「おじい様が生きていれば、必ず協力してくれたはずです。私も、及ばずながら巫女姫としてお傍におります。私の姿は人々もご存知ですから、きっとお役に立てると思います」

「だがそれは――」

「私にとっても他人事ではありません。ちゃんと考えて、決めました。私にも責任がありますから」

 

 ここで過ごした日々の中で、アイシアにも思うところがあったのかもしれない。目の前で祖父を失い、最後まで法皇に従っていた大聖堂の騎士たちはおそらく既にいないはずだ。あの場で、多くの命が失われた。生かされたという意味ではアイシアもレイフェリオと変わらない。

 

「わかった」

「ありがとうございます」

「絶対に俺から離れるな。それだけは約束してくれ」

「はい!」

 

 


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