今さらではありますが、続きを投稿します。
相変わらずオリジナル要素満載ですが、楽しんでもらえたなら嬉しいです。
声が聞こえた気がして、レイフェリオは目を開ける。ベッドに寝かされていたようだ。天井に見覚えがある。ここは、グルーノの家にあるレイフェリオの部屋だ。
身体を起こせば、節々が痛む。起き上がれないほどではないにしても、あれほどの戦闘の後だ。仕方ない。
「にしても、あの声は……」
『レイー!!』
そこへパタパタと羽をはばたかせながらリオがやって来た。ゆっくりとベッドの上にいるレイフェリオの膝に降り立つ。
「リオ」
『良かった! 目が覚めた! レイ、ずっと眠ってたから』
「ずっと? どのくらいだ」
『トーポが3日って言ってたよ』
「……そんなに経っているのか」
リオの言葉にレイフェリオは驚く。これまでの旅の中でも最長だ。それほどに疲労していたということだとしても、寝すぎだ。思わず顔に手を当てて俯く。
『レイ? どうかした?』
不安そうなトーンで声をかけてきたリオに、レイフェリオは直ぐに顔を上げて首を横に振った。
「いや、何でもないんだ」
「失礼します」
カタリと音を立てて入ってきたのは、郷に辿り着いた時にレイフェリオを介抱してくれた女性だった。その名をカタリナという。レイフェリオが郷で暮らしていた頃も、世話係りとして側にいたらしい。尤も、その記憶はレイフェリオにはないのだが。
「カタリナさん」
「お目覚めになられてようございました。本当に、レティスの子は優秀でございますね」
「リオが、ですか?」
「ええ。ピピっと鳴いたかとおもえばレイフェリオ様の元へ飛んで行ったものですから、お目覚めになられたのだとわかりました」
「そうでしたか……」
レイフェリオの部屋に入ってきた時も驚かなかったのは、既に予想していたからだったのだろう。
その手に水が張った桶とタオルを持っていたカタリナは、ベッド脇に置くとレイフェリオへと手を伸ばす。
「包帯を替えせて頂きますね。じっとしていて下さいますか?」
「は、はい」
竜神族の民が着る服と同じものを着させられていたレイフェリオ。前開きなので、脱がすのも用意な作りになっていた。
+人からこのように世話をされることには慣れているレイフェリオは、それほど強い抵抗はない。ただ、身体が痛むので動かすことに躊躇いがあるだけで。戦闘では怪我をしていても、痛みを気にすることなく動けるのだが、戦闘から離れてしまえば気にしないではいられないものだ。
上着を脱がされ包帯を替える。呪文で治癒は施しているのだが、竜神王から受けた怪我は呪文の治癒力を上回っているのだろう。完全に癒えてはいなかった。薬を塗ると、再び包帯を巻かれる。
「あと数日もすれば、完全に癒えるでしょう。それまでは療養してください」
「ありがとうございます」
「食事を持ってきますので、ここでお待ち下さい」
「え、いや」
自分で向かうと告げようと思ったが、カタリナの行動は速かった。テキパキと桶とタオルを持つと、そのまま部屋を出て行く。扉がないので声は届くだろうが、あまりの手際の良さにレイフェリオは言葉を失ってしまった。
差ほど時間を置かずに、カタリナは戻ってくる。盆の上には、目覚めたばかりのレイフェリオを気遣うメニューが並べられている。竜神族も食べるものは人と変わらない。病人にはお粥が定番なのも同じだった。
「あと、これは竜神王様からのお心遣いです」
「竜神王……から」
食事と一緒に置かれているのは、透き通った青色の液体だった。一目でわかるのは、液体には魔力が含まれているということ。効能まではわからないが、何かしら恩恵を与えてくれるものなのだろう。
「エルフの秘薬よりも効果は高いものです。今、消耗している魔力を最大まで回復させてくれるでしょう。食後にお飲みください」
「ですが、貴重なものなのでは?」
「だとしても、今のレイフェリオ様には必要なものです。何よりも、竜神王様のお達しですから。お飲みになるのを確認するまで、私もここにいますよ」
「……はぁ、わかりました。飲みます」
監視されているようで居心地は悪いが、カタリナがいなければレイフェリオが貴重な薬を飲むことはなかったはずだ。エルフの秘薬でさえ、大変に貴重な薬。その上をいくようなモノを簡単に飲むことなど出来れば避けたいというのが、レイフェリオの心情だった。それでも、己の魔力も回復しきってはいない事実がある以上、誤魔化しは利かない。
食事を終えて薬を飲み干すと、カタリナは満足そうに微笑みながら盆を持って下がっていった。
『レイ?』
「……これは、凄いな」
『うん! 元に戻ってるよ! これが、レイの本来の魔力なんだね』
「そうだな……確かに、完全に回復するのは久しぶりかもしれない」
時折休んではいたものの、ドルマゲスとの戦いで使いすぎた力は中々完全に回復してはくれなかった。どこかで渇きを覚えていたのも確かだ。今は、それがない。
あくまで魔力を回復するためのものなのか、怪我の痛みは消えていないものの、十分過ぎる効果だった。
その日はカタリナの言い付けもあり、部屋でゆっくりと身体を休めることに努めた。グルーノもレイフェリオが起きたことに涙を浮かべながらも喜んでくれていた。
翌日、包帯を替え終わると許可も出たのでレイフェリオは外に出た。肩にはリオが乗っている。午後には、竜神王との面会が待っており、それまでの空いた時間を郷の皆への顔見せに使うことにしたのだ。
幼き頃を過ごしたという郷。レイフェリオには記憶がないが、郷の住人たちは違う。今回の顛末についても、既に周知されているらしい。
レイフェリオの姿を見て、口々にお礼を告げられた。中には、まだ起き上がることが出来ずにいる者もいるようだ。奪われてしまった力を取り戻すのは、簡単ではない。竜神族の持つ力はそれほどに大きい。レイフェリオも身に染みていることだ。
一通り郷を回ればいい時間になった。
「そろそろ向かうか……」
『竜神王のところ?』
「あぁ。漸く、聞ける」
『レイ?』
今回のこともそうだが、レイフェリオには知りたいことがあった。それが、この郷にきた目的でもある。長老たちもそうだろうが、竜神王ならばレイフェリオの身の内にある力のことも知っている筈だ。
レイフェリオは服の上から胸を抑える。この力が何なのか。それと向き合う時が来たのだ。そんな覚悟を決めて、レイフェリオは歩きだす。
まだ不安定な投稿になると思いますが、気長に付き合って下さい。
それでは、本年も宜しくお願いします。