ドラゴンクエストⅧ 空と大地と竜を継ぎし者   作:加賀りょう

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初投稿です。


旅の始まり

 ある草の葉の中を小さなネズミが走り回っていた。

 

 その先には一人の青年の姿。ネズミは、すかさず青年が座っていた切り株をよじ登り、青年の服のポケットへと入った。

 そんな姿を青年は、苦笑しながら見ている。

 

 青年の名はレイフェリオ。

 短い茶髪をバンダナで覆っており、その姿は旅装束というに相応しい装いだが、その顔はまだ幼さを残していた。

 

「きゅー?」

「いや、何か面白いものでもあったのと思って」

 

 小さな体を覗かせて、首を傾げる様は小動物特有の可愛らしさなのだろう。

 尋ねてきた疑問にレイフェリオは答えた。

 

「おーい、兄貴ー」

 

 草原の端にある川の向こうから青年を呼ぶ声がした。

 頭にトゲのある兜をかぶり、厳つい顔をしている彼はヤンガス。

 何故か自分より年上なのだが、レイフェリオを兄貴と呼んでいる。

 既に正すのも面倒な位に連呼されているため、反論はしないが。

 

「? ヤンガス、どうかしたのか?」

「そろそろ行かないんですかい? いつまでもこんなとこで油を売ってると日が暮れちまうでげす。早いとこ街に行きましょうや。アッシは、パァーっと飲み明かしたい気分でがすよ」

「あぁ、そろそろ行くと思うよ。姫も戻って来るだろうし」

「そうっすか。ってこのおかしなおっさんが王様だなんて、今でも信じられないっすよ! 兄貴が言うからそうなんでしょうが」

 

 そこまで言うと、ヤンガスの横にいた緑色の体躯をした魔物が声をあげた。

 

 

「誰がおかしなおっさんじゃ」

「あははは」

 

 レイフェリオは苦笑いしか出来ない。

 はたから見たら魔物にしか見えないのだが、確かにこの魔物は王、トロデーン国のトロデ王その人である。レイフェリオはその姿を一度目にしているから疑う余地はない。

 

「まぁ、よいわ。下賤の者にはわしの気高さなど到底わからぬということじゃな」

「ぬぅぅ」

 

 盛大な嫌味はヤンガスとの間に火花を散らしていた。

 レイフェリオは呆れ返ってため息をはく。

 

「それよりもトロデ王、姫はどちらに?」

「おおっそうじゃ、姫はどこじゃ? レイフェリオ知らぬのか?」

「えぇ」

 

 

 トロデ王とヤンガスが辺りを見回すが、その姿は見えない。

 レイフェリオは、静かに目を閉じ神経を研ぎ澄ました。すると、奥の方から近づいてくる気配を感じる。それは探していたものではなく、魔物の気配。

 レイフェリオは、背負っていた剣を手にした。

 

 

「……ヤンガスっ! 魔物だっ! そっちを頼む」

「がってんでがす、兄貴っ」

 

 すぐさま戦闘に突入した。数は多いものの、相手はスライム。レイフェリオの敵ではない。

 だが単純な力だけならレイフェリオよりもヤンガスのが上だ。

 トロデ王に戦闘能力がない以上取りこぼしは出来ない。

 ヤンガスと手分けすることで、隙をなくすのが最善だった。

 二人であっさりとスライム達を蹴散らすと、そこへ馬の鳴き声が響いてきた。

 だが、トロデ王には聞こえていないらしい。

 

 

「うむ、よわっちいやつらでよかったのぉ……!? って、そんな事より姫じゃ! わしの可愛い一人娘のミーティア姫は無事か!?」

「どうやらあそこ、らしいですね」

「ん? おお、姫! ミーティア姫!」

 

 レイフェリオが近づいてくる気配の場所を指差すと、そこには綺麗な白馬が歩いてきていた。

 トロデ王は走りながら近寄ると、その鬣を優しくなでた。

 

 

「さて馬姫さまもお戻りだし……日が暮れぬうちにそろそろ出発したほうがいいでがすよ」

「そうだな……」

 

 

 空を見上げると大分日も落ちてきているようだ。このまま日が暮れる前に街に入るのがいいだろう。

 

 ミーティア姫に馬車を引かせ、レイフェリオたちは近くにあるトラペッタの街を目指した。

 

 

 

 


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