進藤ヒカルに転生してしまった男の物語 作:ケーキの実
何度も消したり書いたりを繰り返しており納得の行くように書けませんでした。
投稿したのも正直微妙な出来になってしまい本当にごめんなさい
「へぇ〜ここがヒカルの部屋ね」
明日美が俺の部屋を見渡して言った。
何故、明日美が俺の家に来ているのかというと、先日俺が1組1位を取った事でお祝いをしてくれるみたいだ。
まぁ、悪い気はしないよ。可愛い子と二人っきりでいれるんだからね。
「飲み物とってくるから適当に座ってて」
♢♢♢♢
どうしてこうなった!?
目の前に向かい合って俺と明日美は碁を打っていた。
あれから、たわいのないお喋りに興じてた筈が突然、明日美が「ねぇ、指導碁をお願い」と言われ一局ならと了承したのが悪かった。
既に20局はゆうに超えていたりする。佐為は乗り気で一生懸命に指導碁を打っていた。
まぁ、実際に打ってるのは俺なんだけどな。
「ねぇ、ヒカル。ここってどこが悪かったの?」
『おい、佐為。説明してやれ
『ヒカール!私は奈瀬さんとは話せまんよ!!!』
『あー!くそっ。めんどくさい』
『そんな事言わないでちゃんとやりましょうよ』
それから明日美に聞かれた事を佐為の通訳として何度も答えた。
正直、普通に碁を打つより疲れたわ。
指導碁の仕事とか原作であるみたいだけどやりたくないわ。
「はぁ〜疲れた。明日美、今日はこれで終わりな」
心底溜息をついて明日美の方を向いた。
「あ、ごめん。ヒカルのお祝いだったのにこんな事になっちゃって……」
「別にいいけど、改めて自分に指導碁は向いてないと自覚したよ」
「えーーー!凄く勉強になったし、分かりやすく説明してくれて私は良かったと思ったんだけどな〜」
「まぁ、明日美だけなら偶になら考えてやらない事もないかな」
「ほ、本当!?」
俯いてた明日美が突然ガバッと体を起こし俺の方に詰め寄った。
「たまにならな」
「よかった。最近、順位が伸びなくてずっと勉強してたんだけど、中々結果が出なくてね」
明日美の順位は16位。そう1組の真ん中の位置だったりする。
俺が来てから2つほど順位が上がっているがその程度。
「明日美ってネットしたりする?」
「ネットならたまに買い物とかに使ったりしてるよ」
「ならこれはどう?」
待機状態のPCを立ち上げて、見て欲しいページを開いた。
「『ワールド囲碁ネット』ね。聞いたことあるけどやった事はないかな?」
「なら、やろうぜ!ここはアマチュアも偶にプロも現れたりするから強い人はそれなりにいるよ」
「そうなんだ。面白そうだし帰ったらやってみるね」
彼は気付いていなかった。ログイン状態の名前を。
ネット囲碁で最強を誇る【HIKARU】という文字を見つめていた少女がいた事に。
♢♢♢♢
「はぁ〜今日は楽しかった」
ヒカルに駅まで送ってもらい自宅に着いた明日美はベットに倒れこみ、今日の事を思い出した。
1組1位のお祝いと称しヒカルのお宅に訪問。男の子の部屋に初めて足を踏み入れた時はドキドキしてしまった。
ヒカルは気付いていなかったけど、少し緊張していた。
それから頼み込んで指導碁を打ってもらい、改善点をアドバイスしてもらった。
私は院生の先生たちにも指導碁を何度も教えを請い続けたが、大した成果は出なかった。
でも、今日ヒカルに打ってもらった指導碁は今まで一番為になった。
先生方には悪いけど、私はもう先生たちに教えを請う事はほとんど無くなると思う。
ヒカルは偶になら打ってくれると言ってたから今のうちに今日の事をノートにまとめよう。
「あ、忘れてた」
ヒカルにワールド囲碁ネットで世界中の人達と打てるからオススメされてたんだった。
部屋に置いてあるノートパソコンに電源を入れ、ワールド囲碁ネットと検索した。
「ハンドルネームは『ASUMI』と。そう言えばヒカルも本名だったよね」
「そうだ。ヒカルの棋譜が残ってないか調べてみよう」
んふふ。もしネットに残っていたら収集して糧にしよう。
えっと、『ワールド囲碁ネット HIKARU』と。
「えぇぇぇーーーー!?」
そこに表示されたのはネット碁、最強の棋士『HIKARU』をまとめているサイトだった。
スクロールして何度もヒカルがネットで打っていた碁を見詰めた。
「これ、ヒカルだ」
何度も何度確認してヒカル本人だと分かってしまった。
でも、これはまずいよね?
プロの棋士との棋譜もあるから、近いうちに騒ぎになる予感がひしひしと感じてしまった。
私は立ち上がり受話器を手に取りヒカルに連絡を取った。
♢♢♢♢
突然、明日美から電話がかかってきた。
内容が内容なだけに焦った声で事細かく説明された。
電話を置いた俺はどうしようか?と考え始めた。
佐為のスキルアップの為に行った行為でこちらが煩わしくなるのは頂けないな。
かといってここで辞めようものなら佐為が荒れるしな……。
また、吐き気を催す事になる事態は避けたい。
『なぁ、佐為』
『どうしましたヒカル?』
『明日美にネット碁の俺を特定されたんだけど、どうしようか?』
『え?ヒカル、特定されてマズイんですか?』
『ん?そう言えばあれ?…………。特に問題ないような気がしてきた』
そうだよ。原作ではヒカルも碁をやってたから問題になった訳であって、俺の場合は佐為一人が打ってるだけだ。
突然弱くなったり、突然強くなってりとかだと可笑しいが強さが一定なら例えプロに勝ってようが関係ないよな。
でも特定されて今から騒がられたりしたら色々面倒なのは確かだ。多分、明日美もプロに勝ってた事が公になれば色々と煩わしい事が出てくるってことを言いたかったんだな。ならここは原作通りに行くかな。
『なぁ、佐為。ハンドルネームをSAIに変えてもいい?』
『構いませんが……どうしてですか?』
『プロになる前から騒がられても困るんだよ』
『そういう事なら構いません』
♢♢♢♢
院生になり9ヶ月が経ち、5月になった。
今日は若獅子戦の大会だった。
「何とか間に合った」
「遅いわよヒカル」
「遅いですよ進藤くん」
明日美と篠田先生に怒られた。
『仕方ないだろうに。佐為が今朝の朝方までずっとネット碁をやめなかったんだから』
『それは先程から何度も謝ってますよ』
『なら今日はさっさと勝ちにいってくれよ。帰ってすぐに寝たい』
『分かりました』
「えーお静かにしてください。ただ今より第8回若獅子戦を行います。では、席に順に付いてください」
名前を呼ばれていた人達が続々と指定された座席に付いていく。
俺の名前も呼ばれ席についた。対戦相手を確認し、軽く苦笑し試合のアナウンスを待つだけだ。
「互い先ですが、院生が黒を持ちます。それでは始めてください」
「お願いします」
「お願いします」
♢♢♢♢
俺の名前は沢野茂、2段になったプロ棋士である。
そんな俺は目の前の碁盤を睨みつけながら溜息をついた。
小学生の子供が対戦相手と知った時は余裕だろと思っていた。
指定された座席を探し座席についた。対戦相手はまだいなかった。
最初はバカにされたと思った。目の前の院生が座席に着くなり俺の方を見て嘲笑のような笑みを浮かべた。
手を出しそうになる自分を抑えた事を褒めてやりたいくらいだった。
同期の中では一番早く2段にまで上がり順調な棋士ライフを送っていた。
この、俺を!院生のガキが舐めた真似をしてくれたな。
子供だからハンデをしてやろうと思ってた気持ちは消え失せ叩き潰す事を改めて決意した。
そんな風に思っていた。
俺の目の前に置かれた碁盤は既に劣勢。目の前の子供はただのガキではなかった。
ハンデを負ってここまで追い詰められたなら言い訳もしようがあったが今回は実力差で圧殺された。
「ありません」
「ありがとうございました」
子供の方は飄々とした然とした姿でその場から離れていく。
この日、一人の棋士は心を入れ替え一層碁の勉強を始める事になった。
♢♢♢♢
決勝戦まで中押し勝ちで勝利した。佐為は着実と俺との約束を待ってくれたらみたいでありがたい。
次の対戦相手は『倉田厚』か。確か、原作だと強敵だった記憶だよな。
原作の進藤ヒカル並みの成長チートタイプだよな。
子供の頃から碁をやっていたわけではない本物の天才。
ヒカルは佐為というお手本的存在がいたから強くなれたけど、倉田厚とかいう奴は一人で成り上がった強者。
「ん?キミがオレの対戦相手か?」
「そうだけどあんたは?」
「え?オレのこと知らねーの?」
「全然」
「いずれ、名人や本因坊を手に入れるのはオレだ!」
「はぁ〜」
「何だよ何だよ、溜息なんて付いちまって。それよかキミはプロ?」
「院生ですが?」
「院生が決勝まで勝ち上がってくるなんて他のプロは情けないな!!!」
倉田さんの声が会場に響き、俺に負けたプロ達が肩を落としていた。
こいつ空気が悪くなる事言うな。
『おい、佐為。こいつさっさと仕留めろ』
『どうしたんですか?』
『こいつの所為で他のプロ達に目の敵にされたんじゃ敵わないんだよ』
「倉田さん、本気で戦いませんか?」
「えっーと名前なんだっけ?」
「進藤です。進藤ヒカルです」
「進藤ね。よし、俺に勝てたらサインやるよ」
「いや、いらないっす。どうせなら今度焼肉でも奢ってください」
「まぁ、それでもいいよ」
♢♢♢♢
「負けました」
舐めていた?いや、本気で打った筈だ。勝負を挑んできた時は子供の無邪気さから来る虚勢だと思っていた。
だが、結果は中押し負け。本物だ。進藤ヒカルは本物だ。
塔矢行洋でも桑原のじーさんでもない。まだ院生にいる子供だ。
なのに、この碁から滲み出る打ち筋は歴戦の棋士にしか見えない。
こいつは只の子供ではない。いや、子供ですらない。
れっきとした棋士がここにいる。
若い世代がここまで登ってきていたのか。
来るぞ、若い世代の波が。
♢♢♢♢
この日、囲碁界は新生の棋士の誕生に歓喜した。
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