思ってたよりボリュームあっておハーブ生えますわww
〜〜カフェ・ムーンフロント〜〜
バトルを終えた悠たちは、ニャル子が使った謎の必殺拳について話を聞く為、喫茶店に来た。
席に着いた悠と陽介は手早く注文を済ますと、程なくしてオリジナルブレンドのコーヒーが運ばれてくる。
「さてニャル子、さっきの技は一体なんなんだ?」
悠は、コーヒーにミルクと砂糖を入れ、マドラーでかき混ぜながらニャル子に問いかける。
「あれはですね、高次行動制御補助プログラム''レールアクション''ですよ!」
「レールアクション?」
「レールアクションとはですね…」
レールアクション…それは、神姫バトルにおいて、人の反射神経、運動神経では対応しきれない高速機動や複雑な運動を行う為の補助プログラムであり、事前にプログラムに組み込んだ軌道や動作をコマンド1つで再現する。
ただ飛ぶだけではなく、武装を用い、その性能を引き出し、1つの技にまで昇華することも出来る。
要するにニャル子は、漫画の技をレールアクションのプログラムにして再現したのだ。
「ちょっと待て!百歩譲ってあれがレールアクションだとしてもだな、あり得ないんだよ」
「どういう事だ陽介?」
だが、これだけの説明では陽介は納得しない。
「本来ならナックルのレールアクションは、相手に高速で接近して一発お見舞いするってやつなんだ。
追加入力で軌道を相手の背後に回り込むってのに変えたり、ゼロ距離で使うとそのまますぐにぶん殴るっつうバリエーションもあるんだが…今は関係無いな」
「つまりニャル子様が使った…人越拳?は、本来のナックルのレールアクションとかけ離れてるんですよ」
陽介とハヤテが、懇切丁寧に本来のナックルのレールアクションについて説明をしてくれる。
確かに、陽介の説明通りなら、ニャル子の挙動はあり得ないものだ。
しかし、次のニャル子の発言によって、その説はひっくり返されてしまう。
「そりゃあそうですよ。だってあれ、''オリジナル''ですもの!」
「は?」
「はい?」
「なるほど」
「「はあぁぁぁっっっ!!」」
「…すみませんお客様、店内ではお静かにお願いいたします」
「あっ…すみません」
ニャル子の発言に動揺した陽介とハヤテは、つい大声をあげて叫んでしまった。
店員と周囲の客の視線が痛い…
「ちょっと!どういうことですかニャル子様!」
まるで納得のいっていない2人。ハヤテは声のボリュームを抑えながらも追及を続ける。
「だ〜か〜ら〜、オリジナルのレールアクションだって言ってるじゃないですか〜。
それ以上でもそれ以下でもありませんよ?」
「いや、だからって、レールアクション作るのにも、プログラムの専門の知識とかいるんじゃねーのかよ?」
「そんなんこのご時世ネット漁りゃ〜出て来ますよ。試してみたらいかがですか?」
「実は…私たち、既に1度挑戦して挫折してるんですよ…」
追及を続ける2人だが、イマイチ納得のいく説明が返ってこない。
「なあ陽介」
「ん?どした悠?」
「レールアクションって本来は何処で手に入れるんだ?」
なかなか話が進まないが、その中で感じた素朴な疑問を陽介に聞く悠。
「ああ、それなら後で神姫ネット見てみ?基本のレールアクションをダウンロード出来るページがあるからさ。
あとは…そうだな、神姫センターで毎日やってる大会の優勝商品になってたり、バトルして、勝った相手のデータから貰えたりもするな」
「なるほど。なら自作する場合は?」
「さっきも言った通り、専門的な知識が必要になってくる。皆が使ってるレールアクションは、九分九厘メーカーのプログラマーが作ったもんだ。
現状、オリジナルのレールアクションを使ってんのは…F1チャンプ''竹姫 葉月''ただ1人だ」
「F1チャンプ…」
「ああ、少なくとも、公式戦でこいつ以外にオリジナルを使っているやつはいない筈だ。
公式戦で使えば、間違いなくニュースになるしな」
「なるほど…なあニャル子?」
「なんでしょう悠さん?」
「お前がレールアクションを作った経緯を一から聞きたいんだが、いいか?」
「分かりました!そう…あれは草木も眠るthree cow time…」
「丑三つ時な…」
「ていうか私たちと態度が違い過ぎませんかね…」
陽介から一通り話を聞き終えると、話を進めるために、ニャル子のレールアクションの秘密を一から聞き出そうとする悠。
陽介たちにはテキトーな返事ばかりを返していたが、悠の言うことには素直に応じる。
「私はクレイドルでスリープ状態になっていたんですが…いや、なろうとしていたんですが…起動した時間があれだったんで、寝つきが悪くてですね」
「陽介、神姫に寝つきの悪さなんてあるのか?」
「んなもん聞いたことねーよ…」
「それでですね、悠さんを起こすのもアレなんで、神姫サファリでバトルについて色々調べてたんですよ」
「その時にレールアクションについて知ったんだな?」
「その通り!英語で言うとexactly!」
「that’s right な?exactlyでも間違いじゃないが」
「あぁん!いちいち揚げ足取らないでくださいよ〜」
「それで作り方も調べたのか?」
「えぇ!なかなか苦労しましたが!」
「それで…なんで人越拳に?」
「一通り調べたあとは、レールアクションのネタがほしくてですね…本棚の漫画を何冊か適当に乱読させていただきました!」
「なるほど、教えてくれてありがとうニャル子」
「いえいえ、今回の件は、本来なら事前に報告すべき所を、悠さんをビックリさせようと思って黙ってた私に落ち度があります。
いや〜、皆さま!お騒がせしてどうもすみませんでした〜♪ニャハッ♪」
一通り話終えたニャル子は、皆に頭を下げる。が、言葉尻が軽く、反省している様子など微塵も感じられない。
「はぁ、今の話で分かったのは…ニャル子のスペックが高いってことだけだな…」
「良いことじゃないか」
「悠様、ニャル子様?オリジナルのレールアクションを使うのはいいですが、やり過ぎないでくださいよ?チート扱いされても知りませんからね?」
「そうだな、忠告ありがとうハヤテ」
「ふぅ、そんでこのあとはどする?ゲーセンに戻るか?」
「そうだな。あと2、3戦はバトルしてみたいかな?」
「よし!じゃあ行くか!」
「ああ!ニャル子!行くぞ!」
「イエッサー!」
「『かめはめ波ァァァッッッ!!!!!』」
「言ったそばから何してんですかぁァァァッッッ!!!
私が忠告した意味無いじゃないですかぁ!」
「てか、あいつら何気に息ピッタリだな…」
次回はライバル登場ですよ!byニャル子