西暦2012年
イザナミを倒した後、日常へ戻った特捜隊の面々。
無事進級し、都内の高校へと再び戻っていった鳴上悠。
八十稲羽の友人たちとの交流は続いていたが、マヨナカアリーナやマヨナカステージといったシャドウ絡みの事件が何一つとして起こらなかった。
ここは、そんな平和な平行世界。
だが、ただ一つこの世界には他の平行世界と全く違う点があった。
『神姫』
桐条エレクトロニクスが開発、発表した、”心と感情”を持つ全高15㎝のフィギュアロボ。
多様な道具、機構を換装し、オーナーを、人々を補佐するパートナー。
やがて、神姫に様々な武装、装甲を装備させ戦わせる、神姫バトルという競技が生まれた。
その戦いに赴く神姫たちを、人は『武装神姫』と呼んだ。
そして、西暦2014年。
ヴァーチャルリアリティ技術の革新により、人は擬似的に神姫と一体となり、
意のままにコントロール出来るようになった。
これを”神姫ライドシステム”という。
この物語は、人知れず世界を救った英雄『鳴上悠』と、とあるロクでも無い神姫の物語。
〜〜オフィシャルショップ〜〜
「おっ!来たな悠!待ってたぜ!」
「おぅ、陽介」
ここは神姫センターに隣接する神姫のオフィシャルショップ。
神姫の素体はもちろん、日常生活をサポートする為の各種道具、機構。
そして、武装神姫として戦う為の武器や防具も売られている。
悠は初めて神姫を買うのだが、「それならうちで買え!サービスするぜ!」と陽介のバイト先でもあるオフィシャルショップに来ていた。
ちなみに、陽介は超が付く程の猛勉強のおかげで、悠と同じ大学に通っている。アパートで一人暮らし。
「一応ネットでも調べてきたんだが、どんな子がいるか見せてもらっていいか?」
「りょーかい、ちょっと待ってな」
………………
「よっと…」
陽介は棚から在庫のある神姫の外箱を持ってくる。
「今在庫があるのは…犬型のハウリン。猫型のマオチャオ。火器型のゼルノグラード。天使型のアーンヴァルMk.2。セイレーン型のエウクランテ。マーメイド型のイーアネイラ。
実際に動いてるとこが見たかったら、デモ用の神姫連れてくっけど?」
「いや、大丈夫だ」
「そうか。で?誰にすんだ?ちなみにオススメはアーンヴァル型だな。真面目で素直、人当たりもいいし、大抵のことは教えりゃそつ無くこなすぜ」
「陽介の神姫は確か…ゼルノグラードだったな」
「そっ。ノリの軽いミリオタ系のな。でもなぜか、うちのハヤテはやたら世話焼きな性格になっちまったが…」
「神姫の性格って変わるのか?」
「ああ、どうもマスターの影響を受けて学習するらしい。悠なら大丈夫だろうが、お前も一応は気をつけろよ?」
「大丈夫だ。問題無い。」
「なんでそのセリフなんだよ。フラグ立てんなよ…んで?結局どうする?気に入った子がいなかったならカタログから発注できっけど?」
「そうだな…陽介のオススメしてくれたアーンヴァルにしよう」
「おっし!毎度あり!じゃあカウンターに来てくれ。マスター登録とか色々説明すっからさ」
陽介の説明を受け、マスター登録を済ませた。
〜〜悠のマンション・自室〜〜
悠の家はとあるマンションの一室。一応実家なのだが、両親は相変わらず忙しく働いており、実質一人暮らしだ。
「えっと…クレイドルをパソコンに繋いで、神姫ネットをインストール。マスター登録した情報でログイン。よし、これでオーナー登録を…」
カタカタカタ…
「ニャー」
「ん?にゃー太どうした?」
失礼、1人と1匹だ。
この猫はにゃー太。八十稲羽で触れ合った猫たちが忘れられず、両親を説得して飼い始めた猫。品種はミックスだが、毛の色が悠の髪と似た感じの色で、それが決め手になりこの子に決めた。現在2歳の男の子。
「ニャー」
「ああ、この子が気になるのか?ちょっと待ってろよ。あと少しで新しい家族が増えるからな」
「ニャオ〜」
「ははは、そうだな!お前の妹になるのか!」
カタカタカタ…
にゃー太と話しながらもセットアップを進めていく悠。
え?なぜ猫と喋れるかだって?言霊使いは伊達では無いのだよ。
そうこうしているうちに、いよいよ最後のステップである名前の入力にたどり着く。
これが終われば、神姫に設定がインストールされ、起動するはずだ。
「名前か…どうするか」
「ニャオニャオ!」
「なに?俺の妹なら名前にニャーをつけろだって?うーん…アーンヴァル…ニャーンバル…ニャール〜…ニャル?ニャル⁉︎」
カタカタカタ…
『ニャル子』
カッターン!
「君の名前は”ニャル子”に決めた!」
設定が全て終わり、インストールが始まる。
………インストールが正常に完了しました。
「………」
ニャル子と名付けられた神姫は、ゆっくりと目を開くと、まるで寝起きの人の様に身体を伸ばしながら立ち上がり…
「………」
厳しい顔つきで悠を睨む。
「ニャル子?俺が分かるか?」
「………」
悠が声をかけると、ニャル子はゆっくりと口を開き…
「問おう、貴方が私のマスターか?」
「………」
「………どうなのだ?」
(聞いてた性格と全然違う⁉︎)
「………」
「………」
しばしの沈黙が場を支配する。
が、その沈黙に耐えかねたのか、ニャル子の方から口を開き…
「…あーっ!もうっ!ノリ悪いですねあなた!何か言葉を返して下さいよ!こういうのでだんまりは悪手ですよ!」
「あ、ああ。うん?」
「え〜…コホン。出鼻を挫かれましたが、改めて自己紹介を」
急なキャラの変わり様に戸惑う悠。
そんな彼を気遣ってか、咳払いをして場を仕切り直すニャル子。
「私は天使型アーンヴァルMk.2”ニャル子”と申します。これからよろしくお願いしますね?悠さんっ♡」
この2人のハチャメチャな物語はまだ始まったばかりである。
こんなのはジャブですよ!
これからドンドンぶっ壊していきますよ!byニャル子