DRAGON QUESTⅤ~父はいつまでも、傍にいる~   作:トンヌラ

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遅くなってしまいました、申し訳ありません!


Episode13:10年ぶりの《冒険》に出掛ける二人

 ビアンカとの感動的な再会を果たしたリュカは、一度ビアンカの家に行く前に、村長の家を探していたパパスと町の入り口に止めてある馬車の中のゲレゲレを呼びに向かった。二人ーー正確には一人と一匹だがーーには是非ともビアンカに会わせたいからだ。

 両者の反応は予想通り喜んでいた。パパスは大きくなられたと嬉しそうに叫び、ゲレゲレはビアンカの頬を何度も舐めて久々に甘えていた。ボロボロになったリボンも触れてビアンカもありがとうとゲレゲレを抱き締めていた。

 互いに再会を喜び合った後ビアンカの家へと再び向かい、中に入る。なお、ゲレゲレは家に入れられなかったので馬車に戻ってもらった。ゲレゲレはとても寂しそうにしていたが、魔物を村の家の中に入れるのはとても面倒なことだと、カボチ村で教わったので仕方がない。

 

「とうさーん、ただいまー!」

 

「おお、お帰りビアンカ」

 

 家の中から優しげで、親しみのある声が響いた。パパスは一瞬誰か悩んだが、すぐに答えがひらめく。パパスの古来の親友の声だ。パパスはすかさずその名前を呟いた。

 

「この声は……ダンカンか!」

 

「そうよ、お父さんと二人で暮らしているの」

 

「二人? 奥方はどうした?」

 

 まさか離婚でもしたのか。そうパパスが推察するも、ビアンカは少し寂しそうな表情で答えた。

 

「お母さんは、死んじゃったんだ。もうずいぶん前にね」

 

「……それはすまなかった」

 

 軽率な憶測をしたこともかねて詫びを入れたが、ビアンカは屈託のない笑みを浮かべて首を横に振る。

 

「気にしなくていいわよ。もう過ぎたことだし」

 

「ビアンカ? 誰としゃべっているんだい? お客様かい?」

 

 いつまでも玄関で誰かとしゃべっていることを気にし始めたダンカンはビアンカに呼び掛ける。

 

「そうよっ……ってそうだ! 大事なこと忘れてたわ! 父さん、生きてたのよ! リュカとパパスおじさまが!!」

 

「な、なんだって!?」

 

 ビアンカが捲し立てるように報告すると、だだだと足音が大きく鳴り、ビアンカたちの前に姿を表した。

 

「ほらパパ! おじさまとリュカよ! おじさまはともかく、リュカはかなり変わったけどね」

 

「ああ……本当だ……お前たち生きていたんだな……」

 

 ダンカンは息を切らしつつも、涙を浮かべた。ダンカンのは10年前に比べるとずいぶんと更けてしまっており、以前のような快活で元気溢れる男の影はどこにもなかった。だが、中身は変わっていないようで、親友とその息子の再会を心から喜んでいた。

 

「ダンカン、久し振りだな。こんなところで会うとは思わなかったぞ」

 

「お久し振りです、ダンカンさん」

 

 そういってパパスはダンカンの手を握る。だが、ダンカンの手はとても弱々しく、パパスが少しでも力をいれたら砕けてしまいそうに脆かった。彼が宿屋の主人だった頃はたまに彼と腕相撲をしたりしたものだ。パパスは一瞬物悲しさを覚えつつも彼の手を離した。

 

「ああ、本当に久しぶりだ……リュカもずいぶん大きくなったな! 昔はよくビアンカと遊んでくれたんだっけ……」

 

「そうですね……」

 

 まるで本当の息子のようにダンカンはリュカの成長に歓喜し、頭を撫でる。

 

「しかしダンカン、再会したとたんに生きてたとかなんとかいっていたがどういうことなんだ?」

 

「ああすまなかったな。確かにいきなり生きてたなんて言われたら困るよな。ほら、お前の村のサンタローズが襲われただろ? それで心配だったんだ。だけどこうしてお前たちが生きていてくれてよかった! さっ、積もる話は中でしようじゃないか」

 

「お茶とかは私が用意するわ、父さん。じゃあどうぞっ」

 

「お邪魔するよ、ビアンカ」

 

 リュカとパパスは、ダンカンと共にテーブルに付き、ビアンカの用意してくれたお茶を飲む。ほどよく暖められており、旅の疲れを解していく。

 

「それでさリュカ、おじさま。どうしてこの村に来たの? 私たちがこの村にいるの知らなかったわよね?」

 

「ああ、実は僕たち、水のリングを探しているんだ。そのためにはここの水門を開けなくちゃいけなくて……」

 

「そういうことか。確かにあの水門は村の人しか開け方を知らないわね。でもどうして水のリングを?」

 

 ビアンカの疑問にリュカはすぐに答えることができなかった。結婚するため、とは言いづらい。かといって言わないわけにもいかないだろう。伝説の勇者や母親の話は省いてリュカは簡潔に説明した。

 リュカの話を聞き終えたビアンカは面白げに笑みを浮かべて見せた。

 

「……ふーんそういうことか。でも、リュカが結婚するなんてね」

 

「正直僕はそこまで乗り気じゃないっていうか、成り行きでそうなっただけなんだけど……」

 

「でもいいじゃない! 結婚相手なんて欲しくてもそう簡単に見つけられないわよ?」

 

 ふふんと不適に微笑むビアンカにリュカも乾いた笑いをこぼす。竹を割ったようなさっぱりとした性格はやっぱり変わっていない。

 

「ビアンカはその、彼氏とかはいないの?」

 

「やーね、いるわけないじゃない! 父さんと一緒に暮らしているんだし、恋人なんて作ろうなんて思ってないわよ」

 

 そういってからビアンカは少しだけ嫌そうな顔をする。どうやら彼女はいい思い出がないようである。まあ、ビアンカの容姿は客観的に見てもとても綺麗になっている。身体もスラッとしており、男が寄ってくるのも無理はないかもしれない。それにビアンカは恋をする余裕がないようだ。

 

「ねっ、そんなことよりさ、今日家に泊まってよ。それでいろんな話を聞かせて。いいでしょ、父さん?」

 

「ああ、もちろん構わないとも。私も久々にパパスと語りたいと思っていたしな。それでいいか、パパス?」

 

「願ったりかなったりだ、ダンカン。昔話に花を咲かせようじゃないか」

 

 尤もパパスは10年も寝ていたので話すようなことは少ないだろうが、古くからの親友との間には、話がつまるなんていう心配は不要だろう。

 ビアンカはやったと歓声をあげるとリュカの腕をガシッとつかんだ。とっさの行動に驚いたリュカは間抜けみたいに口を開いたままだ。

 

「じゃあリュカ、こっちにいきましょう!」

 

「う、うん!」

 

 ビアンカはさっさとリュカの腕を引いて自分の部屋とおぼしきところへと連れていった。そういえば、10年前に初めてビアンカと逢ったとき、有無を言わさず二階までつれていかれて、無理してお姉ちゃんぶって読めもしない絵本を読んでくれたりしていた。こういう強引なところは全く変わっていない。リュカは彼女に悟られないようにそっと口端を上げた。

 

 

 こうしてリュカとビアンカは今までのことを遅くまでずっと話し続けた。10年の間奴隷にされたこと、ヘンリーのこと、暫定的な結婚相手のフローラのことを語る度にビアンカはまるで自分がそれを体験しているように憤り、笑ったりして自分なりの感想を示した。そんな彼女の反応を見るのが楽しくて、面白くてリュカは留まることを知らずにずっと話し続けた。もちろん、ビアンカの近況にもきちんと耳を傾けた。

 ビアンカは母親が亡くなった後、父の病気の療養のために温泉のあるこの静かな村に越してきたそうだ。毎日父のために食料をとってきたり出稼ぎに向かったりして、リュカほどではないにせよ大変な生活を送っていたそうだ。ただそのお陰でビアンカの力は一般女性にしてはかなりある方であり、リュカと腕相撲をしたが割りと苦戦してしまった。無論リュカの方が強かったのだが。

 こうしてリュカたちは時を忘れて夜遅くまで語り合った。

 そして、夜が明けた。

 

 

***

 

 

「おはようリュカ! よく眠れたかしら?」

 

 聞きなれた声が鼓膜を揺らし、いつのまにか沈み込んでいた意識が引き戻される。リュカは瞼を開けて、視界にビアンカを認識する。

 リュカは上体を起こして思い切り伸びをするとビアンカはふふふと小さく笑った。

 

「いやあ、よく眠ったよ。少しだけ眠いけどね」

 

「そうよねー、ずっと話してたもん。そうだ、今朝食のしたくするわね。だからもう少し寝てていいわ」

 

「いや、それは悪いし手伝うよ」

 

 リュカはベッドから離れ、ビアンカの後を着いていく。が、すでにテーブルにはサラダとコップ、パンに塗るバターやジャムが用意されており、後はパンが焼き終わるのを待つだけだった。リュカが手伝う余地などもうなかった。仕方がないのでリュカは席についてパンが焼き終わるのを待つ。

 

「あ、そうだ。暇なら父さんやおじさまを起こしてきてよ。きっと昨日ずっとお酒飲んでたから起きてないわ」

 

「うん、わかった」

 

 隣の部屋がダンカンたちの寝室になっているのでそこへと向かう。ドアを開けると見事に親父二人が眠っているーーかと思いきや。

 

「ああ、起こしに来てくれたのかリュカ。悪かったね」

 

「起きてたんですね、ダンカンさん。おはようございます」

 

「おはよう。たった今起きたばかりだがね」

 

「とりあえずビアンカが朝食つくってくれたので父さん起こしますね」

 

 リュカは、だらしなくいびきをかくパパスに近づいて揺り起こそうと腕を伸ばしたが父の吐く息はとても酒臭く、一瞬腕を引っ込めてしまう。

 それが、もしかしたらいけなかったかもしれない。

 

「……なぁリュカ。この事は ビアンカには言ってないんだが……ビアンカは本当は 私の実の娘じゃないんだよ」

 

 ピクリとリュカの肩が跳ねる。若干眠気に襲われていた頭に冷たい風が吹き込んでくるのを感じながらも、ダンカンの発した言葉を理解しようと努める。

 でもなぜ今こんなことをいったのか。本当に本当の娘じゃないのか。そういった疑問が頭の中を駆け巡り、うまく飲み込めない。

 

「……それは本当なんですか?」

 

 これしか、リュカはいうことができなかった。振り向いたリュカが見たダンカンの表情は、いつになく物悲しげで、今にも泣きそうだった。

 

「ああ。ある日ビアンカが捨てられているのを見かけて拾ったんだ。子供に恵まれなかった私たちは実の子供と同じように育てた」

 

 確かにリュカの目からしても、ダンカンも奥さんもビアンカの両親のように思えた。なんの疑いも持たなかった。ビアンカが捨て子なんて思わせもしなかった。ビアンカに対する愛情も、本物だと思う。

 

「私たちは本当の親子じゃない。だからこそよけいにビアンカのことがふびんでね。幸せにしてやりたいんだよ。私はこんな身体だから、この先どうなるか分からないし……リュカがビアンカと一緒にくらしてくれたら、安心なんだがなあ」

 

「えっ……」

 

 どう答えればいい。

 ダンカンは、自分のせいでビアンカを縛っていると思っている。ビアンカには普通の人と同じように幸せになってほしい。そんな思いが、リュカにひしひしと伝わってくる。

 だがここで、わかりました、ビアンカさんと結婚します何て軽々しく答えていい訳じゃない。第一リュカにはフローラという暫定的な結婚相手もいる。そんな簡単に下せない決断だ。

 返答に窮すリュカに、ダンカンは小さく首を振って小さく笑って見せた。

 

「……すまなかったな、朝からこんな話をして。パパスは私が起こしておくからビアンカのところにいってなさい」

 

「はい……」

 

 ダンカンはいつものように優しい笑みをリュカに向けると呑気に寝ているパパスの肩を揺らした。リュカはどこか浮かない気持ちで部屋を出てテーブルにつくも、この事をビアンカに悟られるのは絶対にあってはならないのでどうにか表情を繕う。

 

「起こしてきた?」

 

 中でどんな話をしていたか知る由もないビアンカは変わらない調子で訊ねてくる。

 

「うん、そろそろくるよ」

 

「そっか。パンが焼き終わったし先に食べちゃいましょうか」

 

「そうだね」

 

 そういえば重い話をしていたので空腹感を忘れていたが、今になって腹が音をたてて主張してきている。こんがり焼けたトーストを手にとってかぶりつくと、何も入っていなかった胃が刺激されていく。程好い加減で焼かれているパンはリュカ好みであり、ビアンカの料理の才能に驚かされた。

 夢中になってパンを食べ進めていると、向かいのテーブルの座って同じくパンを食べているビアンカの口が開く。

 

「ねえ……食べながらでいいから聞いてくれる? 昨日あれから考えたんだけどね。水のリングを探すの、私も手伝ってあげるわ!」

 

「えっ? どうして?」

 

 リュカは顔を上げてビアンカを見る。昨晩確かに水のリングの話をした。だが、ビアンカがついてくるとは思っていなかった。

 

「だってリュカには幸せになってほしいもんね。いいでしょ?」

 

 ビアンカはうふふと微笑みながらリュカに是非を問う。だが、ビアンカを冒険に連れ出していいものか。リュカは咄嗟に考え、首を振る。

 

「ダメだ、危険すぎるよ。どんな魔物がいるか分からないし、関係ないから巻き込むわけには……」

 

「なによ。10年前に約束したじゃない、また冒険しようって!」

 

 ビアンカは頬を膨らませて抗議する。確かに覚えてはいるが、リュカにしてみればただの子供の口約束かと思っていた。まさか持ち出してくるとは思わなかったので暫し言葉に窮してしまう。

 

「とにかく私は着いていくわ! いいわね?」

 

 ビアンカはずいっとリュカに顔を近づける。もうこれは逃れない。ビアンカに隙を与えたが最期、二度と言い分を聞いてもらえない。こういうところは10年かけても変わらなかった。

 

「わかったよ……でも危険だったら直ぐに帰ろう。いいね?」

 

「やったー! また一緒に冒険できるわね!」

 

 ビアンカは嬉しそうにガッツポーズを決めて残ったパンを再び食べる。リュカはなんだかおかしくなってこっそりと笑った。ビアンカは、変わっていない。外見は綺麗になったし、少し丸くはなったけど、根本的なところはやっぱり変わっていない。自分やその周りの人は色々変わったけど、彼女だけは未だに太陽のように輝く笑顔を浮かべている。彼女と過ごす時間は、暖かいままだ。

 リュカはしばらくビアンカを見つめていたが気恥ずかしくなり、ビアンカに倣って朝食を胃の中に入れていった。

 

「ごちそうさま。美味しかったよ」

 

 完食したリュカに嬉しそうに笑いながらビアンカは立ち上がる。

 

「それはよかったわ! じゃあリュカ、準備できたら私にいって! ちょっと準備してくるわ!」

 

 そういうとビアンカはたったと駆け出して自分の部屋へと戻っていく。リュカも装備を整えるべく荷物を取り出していく。

 

「おや、どこか出掛けるのかい?」

 

 突如、隣の部屋から出てきたダンカンに声をかけられる。リュカはええと受け答えてぎこちなく笑う。さっきの話がまたちらついてしまった。

 

「そっか……しかし君の父さんったら全然起きやしないんだ。よっぽど疲れてるんだろうけどいくらなんでも寝過ぎだよ。いつもこうなのかい?」

 

「いや、そうでもないですよ。父さんは大体早起きです」

 

「……まあいいや、私は先に朝御飯をいただくよ。ビアンカはどうしたんだい?」

 

「それが……」

 

「リュカー! もういける?」

 

 説明しようと口を開いたリュカだったが、ビアンカの声がそれよりも早く届き、こちらへとビアンカが駆け寄ってきた。ビアンカは腰に《いばらのムチ》を装備しており、明らかに冒険に出る出で立ちだ。ダンカンは目を丸くしてリュカを見る。

 

「なんだ、お前たち二人でいくのか?」

 

「ええ、水のリングを探しにいくんです。でも父さんもつれていこうかな……」

 

 大切な娘ーー本当のではないがーーを預かる身としては、最強クラスの男のパパスを連れていった方が安全に決まっている。彼一人に任せておけば戦闘においては全くといっていいほど問題ないからだ。

 だが、ダンカンは首を横に振った。

 

「パパスはとりあえず寝かせておいてやりなさい。お前たち二人なら大丈夫だろうしな。なんといっても、子供の時魔物退治もしたしな。家なら私に任せておいてくれ」

 

「ほんとに!? ありがとう父さん!」

 

「たまにはビアンカにも自由にさせてやりたいしな。それにビアンカは君が来てから本当に嬉しそうにしていた。ではリュカ、ビアンカをよろしく頼むよ」

 

「も、もう何言ってるのよ! 父さんったら……」

 

 意味ありげに笑うダンカンに抗議するビアンカを宥めつつリュカは剣を背に吊るし、準備を終えた。

 

「危なくなったら直ぐに戻ってきます。では、いってきます!」

 

 リュカはぺこりと頭を下げるとビアンカの家を出た。ビアンカと山奥の村を歩いていると村人からの視線が集まってくる。ビアンカはこの村ではとても知名度が高いのだろう。話しかけてくる村人たちにも笑顔できちんと対応しているし、彼女も気配りに長けているからそれは道理とも言えるかもしれない。

 村人達の相手を終えると村を出て、馬車で待っているモンスターたちを迎えに行った。ゲレゲレは待ちわびていたというようにビアンカに直ぐに飛び付いてじゃれあったが、ビアンカが上手く手なづけ、ルドマンのくれた船に乗せた。

 そのまま水門までいったが、相変わらず固く閉ざされており、行く手を阻んでいる。

 

「ビアンカ、ここは頼む」

 

「任せて! うんしょっと……」

 

 ビアンカは船から身を乗り出して、慣れた手つきで水門の鍵を弄くる。すると、大きな音をたてながら水門が上に開いていく。

 

「ありがとうビアンカ!」

 

「どういたしまして。さあ、先に進みましょう!」

 

 水門を潜り、船を進めていくと開けた湖のようなところへとたどり着く。ビアンカも目を見開いている辺り、初めてくる場所なのだろう。

 さらに少し進んでいくと北東に小さな水路が見えたのでそこを通っていく。するとその先には、滝が流れていた。

 

「あっ、もしかしてあれって……」

 

 ビアンカが船首から身を乗り出して滝を指差す。滝から流れ出る水に覆われていてよく分からないが、よく見るとうっすらと暗く、若干縦に伸びた半円が覗いている。きっとあれは洞窟だろう。

 

「水のリングはあの中かもしれないな。行ってみよう」

 

 滝が水面に打ち鳴らす轟音を耳で感じながら船は進んでいく。このときリュカは、10年前のあの真夜中の冒険を思い起こされていた。真夜中に誰にも気付かれないように村を出て、幽霊の出る城を二人で探索した時に味わったあの興奮が、愉悦がそっくりそのまま蘇っていく。

 きっとそれは、隣で楽しそうにゲレゲレと戯れているビアンカも同じなんだろう。

 冒険を楽しんでいたあの頃への回帰の旅になりそうだと、リュカは密かに思ったのだった。

 

 

 

 




ちょっと投稿ペースも進行ペースも遅いかもしれませんね……

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