DRAGON QUESTⅤ~父はいつまでも、傍にいる~   作:トンヌラ

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随分間空きましたね。すみません。
しかし、フローラの争奪戦に参加する主人公の理由付けが結構苦労しました。だって、あって間もない女と盾のためとはいえ結婚したいというんですよ?やっぱり5主人公はどこか飛んでる……


Episode11:盾のために結婚を迫られる息子

 サラボナの町で出会った女性フローラの案内により、リュカたちは彼女の家にお邪魔することとなった。彼女の家は、この町で一番大きいらしく、お嬢様然としている彼女にまさにぴったりなものだった。父は大金持ちのようで、大層大事に育てられてきたのだろうと容易に想像できる。

 

「ここですね。どうぞいらっしゃい」

 

 彼女の家についたようで、指で示す。

 まず屋根は海のように深い蒼で、壁は汚れ一つない白で染められており、面積も高さも他とは桁違いである。ラインハットの城よりも一回りほど小さいが間違いなく一般庶民の家よりかは遥かに大きいだろう。庭もきちんと手入れされており、美しく彩られている。パパスとリュカは感嘆の声をあげ、ただただ家を見上げていた。

 フローラはこれまた人5人くらいが入れそうな大きなドアについている呼び鈴を慣れた手つきで鳴らす。すぐさまドアが開くとエプロンをかけたメイドが出迎えてくれた。

 

「あら、お嬢様。お帰りなさいませ。そちらの方は?」

 

「こちらはリリアンを拾ってくださった方々よ。旅の方のようですので家にお呼びしたの」

 

「なるほど。この度は本当にありがとうございます。旦那様に確認をとりますので少々お待ちくださいね」

 

 メイドはぺこりと頭を下げるとそっとドアを閉めた。

 

「……しかし、なかなか素晴らしい家ですな」

 

 パパスはははっと乾いたような笑いをあげた。フローラはありがとうございますと丁重に礼をのべる。

 

「こんなみすぼらしい格好でお邪魔して、なにか申し訳なくなるな……こんなことなら一張羅でも持ってくるべきだったか……」

 

 パパスは独り言のようにぼそりと呟く。しかしもう今さらなにも変わらないだろう。

 と、その時ドアが開かれ、メイドの顔がすっと出てきた。

 

「お待たせしました。どうぞなかにお入りください」

 

「ご苦労様。さ、ではどうぞ」

 

 フローラはリュカとパパスを先に玄関に通す。メイドが靴を預かって羽毛で出来た暖かいスリッパを出してくれたのでそれを履き、応接間まで案内される。

 それまでの間、パパスとリュカの視線はあちこちに飾られている高価そうな家具に向けられていた。壁に掛けられている武器や盾、鎧、冑、さらには絵画、巻物、壺は、これまで世界中を旅してきたパパスですらも見たこともないようなものがあったりした。いくつかは見たことがあるのもあったが、どれもこれもとてつもなく貴重で手が出せないほどの高額で売買されていた。それをいくつも所有できる主人の、尋常ではない財力を嫌でも思い知らされる。財力だけなら、パパスの王国といい勝負だろうか。

 

「こちらです」

 

 メイドは手でパパスたちを制すと、静かに応接間のドアをノックをした。

 

「なんだ?」

 

 随分と穏やかな声だ。キツそうな人間ではなさそうだと少しばかり安心した親子二人はそっと胸を撫で下ろす。

 

「お客様をお連れいたしました」

 

「ご苦労だったな。うむ、連れてきたまえ」

 

「畏まりました、ルドマン様」

 

(ルドマン……? まさかあのルドマンか?)

 

 パパスの脳にわずかに電流が走った。遠い過去に聞いたことがあるのだが、相当な金持ちとして広く知れわたっている。パパスも旅の間に何度も彼の名前を聞いており、時々パパスが訪れる港にある船が彼に所有物であることもあってずっと前から彼のことは認識していた。最も、会うのはこれが初めてだが。

 パパスが息をごくりと飲む間にもメイドはドアを開いた。かちゃっとわずかに響く開閉音によって現実に引き戻され、リュカに続いて中に入る。

 

「やぁようこそ! ささ、中に入ってくれたまえ」

 

「失礼いたします」

 

 陽気な声でリュカたちを歓迎した男が恐らくここの主人、ルドマンだろう。パパスは素早く彼の風貌を確認する。

 顔といい、体型といい全体的に丸みを帯びている。しかし何よりも特徴的なのは髪型だ。彼の髪型は中央部分には毛髪が一本もないのだが、左右対称的に角のように尖った形の髪があるのだ。彼の第一印象を言い表すならば、小太りな悪魔の姿をした優しそうな金持ちだろうか。

 パパスは風貌を認識し、イメージ通りであったことに密かにホッとした。これがムキムキの戦士タイプならいろんな意味でぶっ飛んでしまっただろう。

 

「お父様、ただいま帰りました」

 

 パパスたちの後からフローラが入ってきた。ルドマンは優しく微笑んでお帰りと言い、上にいってなさいと告げた。フローラも素直に従い、ごゆっくりとおしとやかに声をかけるとすたすたと階段を上っていった。

 

「随分と立派な娘さんですな」

 

「うむ、私の自慢の娘だよ。しかしこの度は娘がお騒がせした。ささ、どうぞそちらのソファにお掛けになってください」

 

「では失礼します」

 

 パパスとリュカはありがたくソファに腰かけた。汚い身なりで座っていいのかという懸念こそはあったが、ルドマンは全く気にしないと言わんばかりのニコニコ顔であったため、何も断らずに座ってしまった。

 

「えーでは自己紹介しよう。私はルドマンという。自慢ではないが、この町では一番の金持ちだ。貴殿方は?」

 

「私の名前はパパスです。そしてこちらにいるのが息子のリュカです」

 

「なんと、親子で旅をなされているとは! 私も実はこう見えて昔は旅をしていたんだよ!」

 

 この太った男が旅をしていたとは驚きだが、それは言わずに廊下に飾られているお宝に話を向ける。

 

「ええ、数々のお宝を拝見させてもらいました。手にいれたいお宝もあったのですが、なかなか手が届かなかったので……。まさか今日再び見られるとは思いませんでした」

 

「はっはっは! いやぁでも親子で旅というのはとっても楽しいことですな! 私も久々に娘と旅をしてみたいものだよ」

 

 最もパパスたちの旅はただの遊びではないため楽しいという感情だけではないのだが、そこに関してとやかく言うのは無意味もいいところだ。

 それよりもパパスは違うことが気になっていて、ルドマンの話に耳を傾けた。

 

「まだ娘が小さかった頃……確か10年ほど前ですかな。そこで船旅をしたきりかな。私も町の発展で忙しかったのでな」

 

 はっはっはとルドマンが高笑いし、手に持っていた紅茶をすするとパパスに質問を投げ掛けた。

 

「それで、貴殿方はどうしてこの町にこられたのかな?」

 

 いずれ切り出そうと思っていた話題について触れられるチャンスが来た。パパスは食い付くように身を乗り出して答えた。

 

「実は、かつて天空の勇者が使った伝説の盾の噂を聞いてここまで来ました。私たちはある目的のために、伝説の武具を探しているのです」

 

「伝説の盾か。それだったらこれかもしれないな」

 

 ルドマンは立ち上がって、奥に置かれている宝箱のロックを解除する。そしてパカッと開けてリュカたちに見せた。

 

「おおっ……」

 

 ルドマンが見せた盾は、割と小さめだった。しかし、白光する表面、そして金の装飾が派手に散りばめられておりただの盾ではないことは分かる。並大抵の攻撃ではきっとこの盾を打ち破ることはできないだろう。恐らく、これがかつて天空の勇者が魔界の王を倒したときに使われた盾に違いない。

 

「きっとそれです。実物を見たのははじめてですが、恐らく我々の探し求めていたものはこれです」

 

「なるほど……ふーむ」

 

 ルドマンは盾を宝箱に戻し、再び錠にかけると椅子に座った。どうやらそう簡単には渡してくれそうにない。

 

「あの、その盾をどうかお譲りいただけませんか? どうしても必要なんです」

 

 リュカが必死に頼み込む。だが、その程度でルドマンが折れるわけがない。ルドマンは渋い顔を向けて口を開く。

 

「しかしこれは家宝なんだ。そう簡単には渡すことはできん」

 

「……そうですよね」

 

 断られたリュカとパパスは俯いてしまう。最も、これはルドマンの言い分が正しいのはわかっている。初対面の人間がいきなり家宝を寄越せといったら当然突っぱねるのは道理だ。

 こうなれば、天空の盾をほしい理由を言うしかない。そう思い、パパスはごほんと咳き込むと顔を上げた。

 

「私たちは決してその天空の盾を邪な目的に使おうとは思っておりません。目的を果たしたらすぐにお返しします」

 

「ふむ……しかしその目的とはなんだね? 聞いておこうか」

 

「ええ、実は……」

 

 パパスはルドマンに旅の経緯をすべて説明した。ルドマンはふむふむと頷きながら内容を把握し、整理すべくまとめる。

 

「つまり……魔界に攫われた妻を助け出すために、魔界に入るために必要な天空の勇者とその武具を探しているわけだな」

 

「はい」

 

 パパスが答えると、そうかと顎に生えたひげを撫でながら唸る。ルドマンはまだ半信半疑だった。当然だ。こんな話を信じろという方がおかしい。宝欲しさについた法螺の可能性も否定できないのだ。

 パパスは未だにルドマンが完全に信じてはいないことを察知し、必死に策を考える。どうすればこの天空の盾を譲ってもらえる? それがなければ、マーサは――

 

「……正直信じがたい話だ。そもそも見当がつかない。だが、それが本当か確かめたいと思う」

 

「え……?」

 

 ルドマンの意外な言葉に凍り付く。信じられない、だから帰れと突っ張られるかと思っていたが、余地は与えてくれたようだ。そのことにホッとしつつ、ルドマンの言葉に耳を傾ける。

 

「私が与える試練を見事クリアしたら、貴方方の話を信じよう。ただの法螺吹きには出来ぬ試練だがの」

 

「ほ、本当ですか!? それで、どんな?」

 

 まるで水を得た魚の様に喰い付く親子二人。しかし、ルドマンはにやりと笑いながらこう言い放った。

 

「それはもうじき教えよう。どうせなら一緒にやってしまいたいしな」

 

「……一緒? 私たちのほかに天空の盾をほしがっているものがいるのですか?」

 

「まあそんなところだ。もっとも、天空の盾などおまけに過ぎないと考えているのだろうがね」

 

 天空の盾がオマケ扱いというのならほかにそれ以上の宝はあるのだろうか。パパスは顎に手を添えて一考してみるが、しかしまるで見当がつかなかった。

 ふと、コンコンとドアを叩く音が響いた。ルドマンが何用かと応じると淑やかな女性の声が聞こえた。

 

「ルドマン様。人数が集まりました。中に入れても構いませんか?」

 

「うむ、準備はできているぞ。入れ給え」

 

 パパスが顔をあげるといつの間にか椅子が新たに後ろに3つ追加されていた。恐らくルドマンから何かを奪い取ろうと考えている者たちだ。それも、天空の盾以上に価値のあるものを。

 メイドがドアを開けると、ぞろぞろと人が入ってきた。その数はきっちり3人。ルドマンが用意した椅子の数と同じである。ルドマンはあらかじめ知っていたのかと思ったが、ルドマン自体も微かに驚いているようで、まったくの偶然らしい。しかも全員男である。

 3人が椅子に掛けて座るとリュカはちらりと風貌を確認する。一番左端の男はルドマンほどではないにせよ小太りな男であり、顔に汗がこびりついている。恐らく緊張しているのだろうが、正直言ってあんまり印象の良いものではない。真ん中の男は金髪の少し浮いた感じの男だが、3人の中では一番端正な顔立ちをしている。そして右端の男は、優しそうな雰囲気を醸し出している。綺麗な茶髪をしており、顔も悪くはない。ただ、左端の男に負けず劣らずで緊張はしているらしく、体が小刻みに震えていた。いったい3人は何が目的でこの家に来たのだろうか、よくわからない。リュカは父に問うがパパスもまるで見当がつかないらしく、首をかしげる。

 ここまできたらとりあえずルドマンの言葉を待つしかない。そう思って前を向いた。

 ルドマンはふうと一息つくと立ち上がり、パンと手をたたいた。全員の目線がルドマンへと向き、ルドマンはそれを確認すると口を開いた。

 

「みなさん、ようこそ! 私がこの家の主人のルドマンです。……さて。本日こうしてお集まりいただいたのは――」

 

「――うるさいわね~!! なんのさわぎ? また私と付き合いたいって男たちが来たわけ? 悪いけど私は今の生活がいいの。結婚なんてしないわよ」

 

 突如、電撃のごとく突き刺さる機嫌の悪そうな女の声に一同は振り向く。一体何事かと思ったが、さらなる衝撃がリュカ達を襲った。

 腰に手を当てて眉をひそめている彼女の服は、一言で表すなら派手だった。先ほどのフローラの格好が清楚だったので余計にその落差が激しい。高く結わえられている豊かな黒髪、胸元の大きくあいたシルクのワンピース、色のついた長い爪、真紅のハイヒールといった、派手に派手を重ねたような奇抜な格好をしている。顔はきれいな方なのだが、あまりに服装がキツイのか、誰も鼻の下を伸ばしていない。

 

「こらっ、何をしているデボラ! その方たちはお前じゃなくてフローラのために来たんだ」

 

 デボラと呼ばれた娘はルドマンに叱られる。どうやらルドマンとは同居の仲だろう。しかし、ルドマンの側妻とも思えない。

 

「あら、フローラの? じゃあ私には関係ないから昼寝でもしようっと」

 

 デボラはきょとんとして表情を柔らかくする――かと思ったが、そうでもなく興味なさげに言い放つとすたすたと階段を上がっていってしまった。

 まるで嵐が去ったような静けさを妙にありがたく思っているところでルドマンが咳き込んだ。

 

「全く、娘には困ったもんだ……いや、私の娘が失礼をしました」

 

(側妻でもなければ愛人でもなく、娘だったのか。ということはフローラさんとデボラさんっていう人は姉妹……なんてことだ)

 

 世にも不思議な事実を思い知ったリュカは戦慄しながらもルドマンの方へと視線を向ける。

 

「では、改めてと。今回お集まりいただいたのはほかでもない、わが娘フローラの結婚相手を決めるためだ」

 

 ――結婚相手だと!?

 パパスとリュカは唖然と口を開いた。さっきのデボラという嵐の後に再び第二波が襲い掛かったのだ、たまったものではない。

 しかし、結婚相手と聞いて納得いくこともあった。天空の盾がおまけ扱いなのは、フローラが目当てだからに違いない。フローラの意思はきちんと汲まれているか、疑問なところではあるが。

 

「しかし、ただの男にかわいいフローラを嫁にやろうとは思わんのだ。そこで条件を聞いてほしい」

 

 条件、という言葉を聞いて場の男達は息を飲む。ルドマンはおほんと一度仕切るように咳き込むと、全員の視線に答えるように見回しながらその条件を告げる。

 

「古い言い伝えによるとこの大陸のどこかに2つの不思議な指輪があるらしいのだ。炎のリング、そして水のリングと呼ばれ、身につけた者に幸福をもたらすとか。もしもこの2つのリングを手に入れ、娘との結婚指輪にできたなら、よろこんで結婚を認めよう」

 

 笑顔でにこにこ笑いながら途中でリュカたちの方を向いた。

 

「我が家のムコにはその証として家宝の盾をさずけるつもりだ」

 

(……なるほど)

 

 つまり、この盾――あるいはフローラ――ほしくば、二つのリングを手に入れなければいけない。そして――盾を手に入れるということは、フローラとの結婚も承諾する必要がある。

 パパスはちらりとリュカの顔を見る。リュカも、パパスと同じことを悟ったらしく、困惑を訴えるように顔を歪ませる。パパスは、年齢的にも倫理的にもフローラとの結婚が憚られるが、リュカは同世代であり、恋人もいないため問題はない。だが、リュカにしてみれば、結婚の意志もないのに結婚するためにリングを手に入れるのは、何とも言えなくなってしまうだろう。

 

「話は以上である。ではこれにて――」

 

 そんなリュカの心境などいざ知らず、ルドマンは男たちに背を向けて去ろうとした。

 だが、その時――

 

「待ってください!!」

 

 奥にある階段から声が聞こえた。さっきのデボラとは違い、優しくてしかし力の強い声だった。全員の視線がフローラへと集中し、だらしなく頬を落とす男もいた。

 

「フローラ、部屋で待ってなさいと言っただろう」

 

 ルドマンは諫めるようにフローラに言うが、フローラは激しく首を振って言い返す。

 

「お父さま。私は今までずっとお父さまのおっしゃる通りにしてきました。でも夫となる人だけは自分で決めたいんです!」

 

 ルドマンは僅かに目を見開いて驚きを見せ、黙ってしまう。フローラは言い返さない父を見た後、今度は結婚を望む男たちの方を見て叫んだ。

 

「それにみなさん! 炎のリングは溶岩の流れる危険な洞くつにあると聞いたこともあります。どうかお願いです! 私などのために危ない事をしないでください」

 

 フローラはそう警告する。なるほど、危険な場所に存在するリングを持ってこさせるとは、ルドマンという男もなかなか無茶なことを要求する。

 だが、男というのはそんなもので折れないものだ。特に己が本当に欲するものならば。パパスは後ろに座る欲深き男たちの瞳を見る。皆、ギラギラと瞳を輝かせている。フローラにしてみれば警告のつもりが、男たちに油を注ぐことになってしまったようだ。

 フローラはそんな男たちの瞳に困った表情を見せる。が、ふと彼女の視線がパパスとリュカのそれと合った。だがリュカはとっさにすぐ逸らし、ルドマンの方へと顔を向ける。

 ルドマンはフローラの乱入によって熱くなったこの場を正すため再び咳をした。そして先ほどよりも大きな声で告げる。

 

「ゴホン! とにかくフローラと結婚できるのは、2つのリングをもって来た者だけだ! まず炎のリングは南東の洞窟に眠っているとのことだ! では、話はこれにて!! さあ、フローラ来なさい!!」

 

 ルドマンが終了を宣言し、二階に上がっていくと、後ろに座る男たちが勢いよく立ち上がり、ドアから順に出ていった。それぞれの瞳には欄欄と燃える焔が宿っていた。リュカとパパスはただ黙って、男たちの背を見つめていた。

 

「……どうするか、父さん」

 

「……いくしかないだろう。天空の盾が、手に入るのだから」

 

「……でも、結婚って……まだそんな、フローラさんのこと解ってないのに……というかそもそも状況がよく――」

 

「つべこべ言わず、行くぞ……」

 

 嵐のような展開に参ったパパスの力ない声にリュカは肩を落として応じ、屋敷を出ていった。

 それもそうだ。リュカは今日初めて会ったばかりの女の子で争うレースに参加させられたのだ。しかも、天空の盾があるため、負けるわけにもいかない。パパスのように逃げられる立場がうらやましくも感じた。

 どうにか別の手段で盾を入手はできないのだろうか。そう考えるリュカであったが、こういう時に限って何も思いつかないものであり、しぶしぶ諦めた。

 

 

 

 だが、このフローラ争奪戦こそが、リュカの人生を大きく揺るがす、最初の試練だった。そうとも知らないリュカは大きく、ため息をついたのだった。

 

 

 

 

 

 

 


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