ケモ耳娘拾いました 完結済み   作:ソアさぁん!

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1日遅れのクリスマス話になってしまいました。



クリスマスSP ケモ耳娘デートしました

「春斗、何か置いてある」

 

クリスマス当日、クロネは目を覚ますと、夜中に俺が置いておいた箱に目をつけた。

 

「プレゼントじゃないか?」

 

俺が開けるように促すと、目を輝かせながら丁寧に包装を剥がし、箱を開けた。

 

「可愛い……! 」

 

俺が、いや、サンタがクロネにあげたプレゼントは柴犬と黒猫のぬいぐるみ。2匹1組で、柴犬の上で黒猫が眠っているデザインのそのぬいぐるみは、何だかどことなくアズキとクロネに見えてしまい……

 

「凄く、嬉しい」

 

「さて、プレゼントも良いけど、早く着替えろ」

 

「?」

 

「3人で出かけようぜ」

 

その言葉に、クロネは目を輝かせ、アズキは食器を洗う手を止め、俺の目の前で着替えだした。

おい馬鹿やめろ。こんな時に限って黒の色っぽい下着履いてるんじゃない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「春斗、凄い大きい……」

 

「ここ、入るんですか……? 」

 

「妙な言い方すんなよ! 」

 

12月25日月曜日。平日の朝から俺達が来ているのは大人気テーマパーク、アニマルランド。その名の通り、動物をモチーフにしたアトラクションが数多くあり、マスコットキャラクターであるミルキー、ファニーは全国の子供たちに絶大な人気を誇っている。

因みにミルキーは犬、ファニーは猫。

しかし、今日アニマルランドに来たのはただ人気だからという訳では無い。

辺りを見回すと、冬休みなのであろう学生や、家族連れなどほとんどの入場客がケモ耳に尻尾を装備しているのだ。

そう、ここはそういったものの着用や、ケモ耳、尻尾を付けていればコスプレしたままで入場することが可能なコスプレテーマパークなのだ。

つまり、アズキとクロネが耳と尻尾を出しても違和感はない。

2人には、人目を気にせずにありのままの姿で楽しんでほしいのだ。

……あ、俺はつけないからな?

 

「いやしかし、驚きました。 まさか都合よくクリスマスの日に春斗さんの会社が冬休みになるなんて」

 

「有給とったんだよ。代わりに大晦日は遅くなると思うぞ」

 

「春斗、早く行こう」

 

クロネは俺の手首を掴んで入場口まで引っ張った。どうやら、俺はクロネにも力で負けるらしい。

自分で歩くと言ってなんとか手を離してもらい、入場料金を払って中に入る。その際に付け耳を貰ったが、しまっても大丈夫だろう。

しかし、思っていたよりクオリティが高い。アズキに帽子をとらせて比較してみるが、あまり変わりがないように思える。

ただ一つ変わるとしたら、動かない事か。因みに尻尾は別料金である。

 

「春斗さん春斗さん! 私あれ乗りたいです! 」

 

入場した途端にアズキは一つのアトラクションを指さした。

その先にあるのはこのテーマパークのメインアトラクション、ジェットコースターだ。

このテーマパーク、アニマルランドなんて可愛らしい名前だが、アトラクションは全然可愛くない。もちろん、子供向けの優しいものもあるのだが、このジェットコースターは動物なんて生易しいもんじゃない。急降下や旋回はもちろん、一回転や反転なども詰め込まれている。そのギミックの多さから野獣の二つ名を持っているのがこのジェットコースター。

正直なところ、俺はあまり絶叫マシンが得意ではない。このジェットコースターに限らず、そこら辺の遊園地にあるようなジェットコースターでも恐怖を覚えてしまうほどだ。

しかし、楽しそうなアズキの顔を見ていると不思議と乗れそうな気にもなってしまう。

 

「分かったから、耳を動かすな」

 

「は〜い」

 

返事をしながら俺の右腕にくっついてくる。胸が当たってるんだが、それは無意識なのか?恥ずかしいんだが……

不意に俺の左手に何かが当たった。

 

「迷子になったら、大変だから」

 

そう言ってクロネは俺の左手を握った。

順番を待っているあいだも2人は俺にくっついていた。

周りからの視線が痛い……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ジェットコースターに乗ったあと、俺はベンチでアズキに膝枕されていた。未だに世界が回ってるように感じる。俺、こんなにジェットコースター弱かったのか……

1週目まではまだ良かったのだ。少しは酔っていたが1週で終わってくれていれば俺は倒れずに済んだのだ。しかし、2週目に入って急に目眩がし始めたのだ。そしてゴールしたら膝から崩れ落ちたって訳だ。

 

「ごめんなさい。春斗さんがこういうの苦手って分からずに……」

 

「大丈夫だから、暗い顔すんなって」

 

それが俺のせいなのは充分わかっている。俺のせいでアズキに、いや、アズキとクロネの2人に心配をさせてしまった。

これじゃあ、男として情けないじゃないか。

 

「春斗さん、こんな事言うのはどうかと思いますが、ジェットコースター、楽しかったです」

 

急に、アズキが言った。その顔には笑顔が浮かんでいて、優しく俺の頭を撫で始める。しゃがんでそれを眺めていたクロネも俺の頭に手を伸ばす。

そして俺は女の子2人に撫でられるという謎状況に陥ってしまった。

これは、なんと言うか恥ずかしい!

 

「ふ、2人のおかげで体調良くなったぞ! 」

 

その場から逃げるように立ち上がる。不服そうな2人だが、すぐに気を取り直したのか、アズキは俺の右腕にくっつき、クロネは俺の左手をしっかりと握り次のアトラクションへと足を進めた。

やれやれ、今日は迷惑かけちまったから、好きなようにさせてやるか……

俺はされるがままに1日連れ回された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1日が経つのは早いもので、もう夕方、テーマパーク閉園間近になってしまった。

この時間になると客も減り、昼間は行列を作っていたアトラクションも5分待ち程度になっている。

 

 

「春斗さん、最後にあれに乗りましょう」

 

「私も、乗りたい」

 

2人して指さしたのは、テーマパークの定番中の定番、観覧車だった。

ここの観覧車は結構の大きさがあり、てっぺんからの景色はとても美しいものだ。

何でこんなに詳しいかって?楽しみすぎて調べたからに決まってんだろ。

 

「春斗さん、早く〜」

 

腕を引っ張り、急かしてくる。何をこんなに急いでいのだろうか。

幸いなのか、まったく人がいなかったのですぐに乗ることが出来た。

アズキとクロネが並んで座り、俺がその向かいに座る。

ドアが閉められ、ゆっくりと地面から離れて行く。

てっぺんに近づくにつれて、テーマパークの外の夜景が視界に入ってくる。

 

「綺麗……」

 

「あぁ」

 

俺とクロネが夜景に魅入ってる中、アズキだけは夜景の感想を述べなかった。

横目で見てみると、アズキの顔が真っ赤に染まっていた。

まさか、また発情したのか?こんな所で?

耳を澄ませてみると、微かに乱れたアズキの呼吸音が聞こえる。

そして、遂に俺たちを乗せた観覧車はてっぺんへと到達した。

 

「春斗さん」

 

それと同時に、アズキに名前を呼ばれた。

 

「ん? ……んん!? 」

 

夜景から目をそらし、アズキを見るのと同時にアズキにキスされた。

頭を抑えられ、逃げようにも逃げられない状況だ。

そのキスは数秒間続き、離された。

 

「急に何するんだよ……」

 

「……嫌、でしたか? 」

 

上目遣いで、聞いてきた。さっきよりいっそう顔が赤くなっている

 

「春斗さん」

 

「ま、待て! ここにはクロネが! 」

 

「私は何も見てないし聞いてないよ」

 

クロネに助け舟を出してもらおうとしたが、目を瞑り、耳を塞ぎやがった!

 

「私は、春斗さんの事が」

 

また顔を近づけられ、反射的に後ろに下がろうとしてしまう。しかし、後ろは壁。もはや逃げ場は無かった。

 

「好きです」

 

その言葉を聞いた直後何故か俺の意識は途絶えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




この話は番外編扱いですが、少し次の話に繋がります

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