ケモ耳娘拾いました 完結済み   作:ソアさぁん!

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ケモ耳娘魅入りました

時の流れはとても早い。最近になって痛感するのだ。

梅雨頃、アズキと出会い、そしてクロネと出会う。

3人での生活を送っているうちに、1ヶ月がたっていた。

特筆するような変わったことは起きていない。いや、強いて言うならアズキのエロ発言が増した事だ。出会った頃からセクハラが多い犬だと思っていたが、最近はどうも度が過ぎる。たまにクロネに尻尾握られて止められたりする程だ。

そんなこんなでいつの間にか猛暑日の続く8月中旬となっていた。

 

「春斗さぁん」

 

と、テーブルに突っ伏した、白いインナーのみを身に纏うアズキ。そのインナーは汗で若干透け始めている。それに本人は気がついていない。

 

「春斗ぉ」

 

と、同じくテーブルに突っ伏した、黒いインナーといつも履いているハーフパンツを身にまとったクロネ。彼女も、汗で全身がビッショリだ。

心無しか、2人とも尻尾や耳までぐったりとしているような気がする。

 

「分かってるよ。たく、ペット飼うのも大変だな」

 

俺はエアコンをつけ、温度を26度に設定する。最近聞いた話だが、28度が適温なのは室温であって、決して空調機の設定温度ではないらしい。

 

「悪態をつきつつも、エアコンをつけてくれる春斗さん大好きです」

 

「私も〜」

 

「はいはい」

 

適当に話を流し、俺は昼食を作るべく台所へ向かった。

今日は、素麺でいいだろう。

何故なら、どうせ夜にはたくさん食べるだろうから。

だって今日は、花火大会の日なのだから

 

「こんなにテンションが上がってるとか、俺の心はまだ中高生レベルってことかな」

 

もちろん、冗談である。

本当の理由は、もっと他にあり……

 

「ああクソ!別に、あいつらと遊びに行けるのが楽しみなわけじゃない! 」

 

この後、誤って沸騰したお湯の中に手を入れてしまい火傷しかけた。クソ……どうして俺ってやつは……

どうせ笑われるだけなので自分の手を茹でた事をアズキ達には言わずに出来上がった素麺を食わせた。もちろん、お湯は取り替えたぞ?

食後は各自自分のやりたいことを行っていた。アズキとクロネは本を読み、俺は家事だ。アズキに任せっぱなしだと、いざという時に出来なくなってしまうかもしれない。

 

そして、夕方。夏なので日が長いが、もうすぐ沈むだろう。

 

「2人とも、準備は出来たか? 」

 

2人とも頷く。

さて、出かけようか

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわぁ、人がたくさんいますねぇ」

 

「屋台もたくさん」

 

やはり、2人が目を輝かせてる姿を見ると、目の保養になるな。

俺達はバスを乗り継ぎ、そこそこ離れた町の祭り会場までやって来た。ここが、近場で1番活気のある場所だからだ。

これは去年の話だが、花火の量は約4500発程だった。田舎にしては多い方だろう。

 

「あんまりはしゃぐなよ。迷子になったらどうする」

 

「その時は、春斗さんが見つけてくれると信じてます! 」

 

おいコラ。迷子になる前提で屋台回る気か

というか、迷子になったら何も買えないだろ。俺が財布持ってるんだし。

本当に迷子になられてはたまらないので、俺は半ば強引にアズキとクロネの手を握った。

 

「は、春斗さん!? 」

 

なんだこいつ、珍しく焦ってるな。

そんなアズキが新鮮だったので少し虐めたくなった。

 

「どうしたんだ? アズキ」

 

一旦クロネから手を離し、アズキの顎に手を添える。もちろん、俺の方に体を引き寄せて、だ。

つまり今俺とアズキは超至近距離で見つめ合い、俗に言う顎クイをしている状況である。

彼女の顔は真っ赤に染まり、「あわわ」としか発声出来ていない。

俺はそのまま顔を近づけ唇を……

 

「痛い! 」

 

奪うふりをしようとしたらクロネに尻を蹴られた。思いっきり。恐らくクロネの放てる最大火力で。

 

「何私をほったらかして2人でいちゃいちゃしてるの? ……リア充なんて、爆散すればいいのに」

 

「ん? 今なんて? 」

 

何か怖い事を言い残し、クロネは先に行ってしまった。

っておい!迷子になった時お前が1番見つけにくいだろうが!

因みに今のクロネの服は、白ワンピに帽子と、なかなか夏らしい格好をしているのだが、身長がそこまで高くないあいつは探しにくい。

 

「お前はいつまでぼーっとしてるつもりだ!? 、クロネを追うぞ! 」

 

「あ、はい! 」

 

アズキの嗅覚を頼りに、幸いすぐにクロネに追いついた。

しかし、食べ物や飲み物、テキ屋などに付き合わされ、かなりの金額を貢がされた。

……なんでさ

 

 

 

 

 

 

 

 

そろそろ、花火が上がる時間だ。俺達は会場の敷地内の公園で場所をとり、その時を待っていた。

 

「……なぁ、お前ら。流石に食いすぎじゃないか? 」

 

アズキは大判焼きを頬張り、クロネはチョコバナナとりんご飴を片手に1つずつ持ち、食べている。ゴミの入った袋の中にはリンゴとバナナの刺さっていた棒がいくつも捨ててあった。

 

「春斗も、食べたら? おいしいよ? 」

 

クロネがチョコバナナを差し出した。それは、さっきまでクロネが食べていた食べかけの物で……

 

「春斗さん、こっちも美味しいですよ」

 

今度はアズキが大判焼きを差し出した。こっちは完全に新品だ。

 

「あ、ありがとうアズキ。1口貰う」

 

口の中にあんこ甘さが広がっていく。

やはり、美味い

そしてアズキは俺が食った大判焼きを何のためらいもなく食いやがった。

 

「ふふふ、どうですかクロ。春斗さんと間接キスをする為にはこうでもしなきゃならないのですよ! なんたって、小心者の春斗さんですからねぇ! 」

 

こいつはなんで勝ち誇ってんの?

というか、喧嘩売ってる?売ってるよね?そろそろ俺怒るぞ?

そんなアズキを、クロネはキョトンとした顔で見ていた。

 

「間接キス? なんで? 私と、アズキと、春斗は家族なんだから普通じゃないの? 」

 

俺はクロネを膝の上に乗せ、帽子の上から頭を撫でてあげた。

そうだ。俺達は家族なんだ。

だから、美味しいものを共有するのも普通なんだ。多分。

何でもかんでも下ネタに走るエロ犬とは違うんだ。

頬を俺の手に擦りつけてくるから、嫌ではないのだろう。

 

「春斗さん! 家族なら、キスもしていいと思います! 」

 

「お前はすぐそんな馬鹿なことを言うからエロ犬って言われるんだ! 」

 

「さ、さっきは春斗さんから迫ってきたくせに! 私がエロ犬なら、春斗さんは変態さんです! 」

 

俺の名前の要素無くなってるじゃねぇか!

そうツッコミをいれようと思った時だった。

爆発音と共に、空に火花が散っていった。

花火が、始まったのだ。

さっきまでの言い争いはどこへいったのか、既にアズキは花火に魅入っている。それは俺もクロネも例外では無かった。

 

「綺麗……」

 

「来て、良かったです……」

 

2人はそれ以降ずっと黙っていた。

空に打ち上げられる花火を見つめ、それはそれは幸せそうな顔で。

 

 

 

 

 

 

 

 

花火が終わった後、俺は少しアズキ達のもとを離れた。

少し混み気味なトイレに並び、順番を待つ。

ふと、後ろから聞き覚えのある声が聞こえた。

振り返ると、そこには男4人でこの列に並ぶ同僚の姿があった。

こ、こいつ!友達いたのか!じゃなくて、この祭り来てたのか!

 

「ん? あ、春斗じゃん! 」

 

俺が振り返ったからか、あっちも気がついたようだ。職場ではあまり見せないような笑顔で手を振っている。っと、そんなこんなしてる間に俺の番が来たようだ。

 

 

 

 

 

 

用を足し終えてから、俺は同僚に呼び止められた。

 

「なんだよ、お前、1人で来てたのか? 」

 

「1人で祭りに来るメンタルなんて、俺は持ち合わせてないぞ」

 

それもそうかと同僚が笑う。

その後、連れの紹介をされたのでお返しに女の子がもう1人増えたと自慢しておいた。あいつの項垂れる姿、おもしろかったぞ。

……俺にだって、たまに連絡とってる友達くらいいるからな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「少し、遅くなっちゃったな」

 

同僚と別れた後、早足でアズキ達の所に戻る。

アイツらは、意外としっかりしてるから大丈夫だとは思うが……

いや、大丈夫では無かった。

アズキとクロネに、2人の男が迫っていた。

なんだ?ナンパか……?よし、こうなったら、恋愛系の典型的な行動を!

俺は2人に話しかけている男の手を掴み

 

「こいつら、俺の女なんで手ぇ出さないでくれます? 」

 

そう言い放った。

男2人と、あと何故かアズキとクロネまでもが目を丸くしている。

……ん?何この空気?

 

「あの、春斗さん」

 

「なんだよ」

 

「この人達、道を訪ねてきた外国人観光客さんですよ……? 」

 

血の気が引くのが分かる。

俺はすぐに手を離し、謝り倒した。

幸いな事に、この2人はとてもいい人達で、すぐに許してくれた。

……あれだな。祭りって、気分が浮かれるな。うん。

 

 


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