ケモ耳娘拾いました 完結済み   作:ソアさぁん!

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一幕 犬耳娘拾いました
ケモ耳娘連れ込みました


さて、突然だが質問だ。

雨の降り続けるある日、よく利用する人通りのほとんどない道の端に、犬や猫が入っている段ボール箱を発見したことのある人はいるだろうか?

答えは人それぞれだろうが、俺は少なくとも今まで見たことがなかった。

二つ目の質問だ。一つ目と同じような状況で、段ボールの代わりにハイライトが抜け落ちた目、いわゆるレイプ目をした16~18歳ほどの見た目の少女が膝を抱えて座っていたらどうなる?

俺なら警察沙汰だと答える。

では、最後の質問だ。

雨の降り続けるある日、よく利用している人通りのほとんどない道の端に、可愛らしい程にピンと立つ耳をはやしている16~18ほどの可憐な少女が、段ボールの中で上目遣いで「あの、私を拾ってくれませんか?」と言ってきたら。

どうすればいいのか教えてくれ。

 

 

時は遡ること十分弱。珍しく仕事を夕方までに完了させることができた俺はさっさと家に帰って風呂でも入ろうと、朝も通った街頭が一つもなく、人気がない道を迷わず直進した。

ふと、鼻頭に水滴が落ちてきた。

 

「……雨か」

 

鞄から折りたたみ式の傘を取り出し、広げる。

雨は次第に強くなっていき、それにつれスーツが濡れ始める。

……明日休みでよかった。明日、クリーニング屋に持っていくとするか。

そんな事より晩飯考えないとな。

 

「……ん?」

 

晩飯の献立を考えながら足を進めると、遠くに何やら見慣れないものが放置してあるのが目に止まった。もちろん、朝にはなかったものだ。

まあ、誰かが粗大ゴミを放置したんだろ。たく、社会のルールくらいわきまえてほしい。

素通りしようと、歩の速度を少しばかり速める。

 

「……んん?」

 

少し近づいた所で、違和感を感じた。

シルエットが明らかに人間だったのだ。

俺は驚愕のあまり目を見開いた。

捨て犬捨て猫は聞いたことがあるが、まさか捨て人がいるわけが……!

全力ダッシュでシルエットの場所まで向かった。

 

「えーと……?」

 

俺はつい呆然としてしまった。

道の端には一つの段ボールが置いてあり、中には犬のような耳と尻尾を身につけた高校生くらいの少女が入っていたのだ。段ボールには拾ってくださいの文字。もはや軽く事件だ。

膝を抱えている少女に、俺は一言話しかける。

 

「お前、寒くないのか?」

 

耳をピクリと反応させ、少女はゆっくり顔をあげると、「私に話しかけてるの?」と言いたげに首を傾げた。

 

「……ああそうだよ。いったい、何でこんな事してるんだよ?」

 

傘を少女に手渡して、問いかける。

すると少女はゆっくり口を開いた。

 

「あの、私を拾ってくれませんか?」

 

「はい?」

 

俺は真顔で聞き返してしまった。

 

 

……例えば。そう例えばの話をしよう。

例えば、高校三年生の男子がいたとする。そいつが女子高生を家に連れていく。これは犯罪か?無理矢理ならYESだが、大抵はNOだ。

ならば、二十歳はどうだろう。二十歳の男(非正式社員、童貞)が道ばたにいた女子高生を家に連れ込んだとする。

もう明らかに犯罪みたいな物だ。

 

俺は玄関で靴を脱ぎ、頭を抱えた。

 

「わぁ~、割と綺麗なアパートですね」

 

「お、おい。濡れたまま動き回るなよ」

 

二十歳、童貞の男がケモ耳少女を連れ込んでしまった……

 

「わ!このアパート浴槽もあるんですね!」

 

少女は濡れた尻尾をはたはたさせながら動き回る。

……あーあー、床がびちょびちょだ。

俺は靴下を脱ぎ、洗濯機に投げ入れてからバスタオルを取り出して少女に渡してやった。

「あ、ありがとうございます!」

 

少女は目を細め、ニパーと笑う。……全く。さっきまで死んだような目してたのに、元気だな。

 

「ありがとうございました!」

 

「いやいや、まだ濡れてるだろ」

 

「え?どこがですか?」

 

「下だよ下」

 

……これはセクハラではない。ただスカートから水滴が滴り落ちていたから注意しただけだ。

 

「髪もまだ濡れてるし……。ちょいと貸して見ろ」

 

俺はタオルをひったくり、少女の髪を軽く拭いた。

まずはこめかみを、続いて後頭部を。そして最後に耳のあたりを拭こうと手を移動させた。

 

「ひゃあ!?」

 

俺の手がタオル越しに耳に触れると、少女は奇声を発し、へなへなと座り込んでしまった。

 

「大丈夫か!?」

 

しゃがみ込み、顔をのぞき込むと、少女は顔を赤く染めあげていた。その目には涙が溜まっており、息も荒げている。

 

「耳は、いえ、耳と尻尾はだめれしゅぅ……」

 

「……ん!?」

 

これはネタか?ネタなのか?

俺はてっきり耳はカチューシャ、尻尾は飾りかと思っていた。だから特に突っ込まなかったしケモ耳娘と言ったのも、見た目がそうだったからだ。

しかし……

 

「それ、もしかして本物……?」

「はい。もう、いきなり人の耳触るなんてセクハラもいいところです」

 

絶句!

俺はいったい何度この少女に驚かされただろうか。まさか本物だとは思いもよらなかったよ!

 

「悪い!まさか本物の耳とは思わなくて!」

 

「むー……」

 

両耳を手で覆い、唸りながら涙目で睨みつけられる。

 

「詫びに飯くれてやるから許してくれよ」

 

「?なに言ってるんですか。もう私は貴方に拾われた身ですよ。ここに住むに決まってるじゃないですか」

 

涙をぬぐい取ると、当たり前と言わんばかりにそんな事を……

はい?

 

「これからよろしくお願いします。ご主人!」

 

さっきの涙はどこへ消えたのか、ケモ耳の少女はまぶしい笑顔を向けてきた。

……俺の生活って、どうなんだろうな。

正直不安でしかない美少女との生活が今始まろうとしていた。


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