ロウきゅーぶ!~疾風迅雷の天才~   作:園部

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試合はじめまりまっす


14話

昴side

 

最初は驚いたけど、案外この試合が組めたのはよかったかもしれない。

こっちが負けるとは思えないし上手くいけば彼女達を女バスに入れれれば公式戦にだって参加できる。

ただ問題なのは空だ。空はコーチの才能もあるんだろうか?

いや、仮に才能があろうとも実質2日で俺達に勝てるチームは作れないはず。

でも油断だけはしないようにしよう。

 

「おっと、空たちが来たか」

 

 

昴sisdeout

 

 

俺達は体育館に行った。今日は6年対5年の試合。

どうやら皆は集まってるみたいだな。

 

「椿、柊、真帆と遊んでないでこっちに来なさい。最終打ち合わせだ」

 

「「はーい」」

 

この2日で距離も縮まり俺は皆のことを名前で呼ぶようになった。

そして俺は5年女バスを集めて作戦会議を開く。

 

「じゃあ最終確認だ。まずはDF。最初は相手に好きにさせる。もちろんこっちはある程度DFはするが対策通りにしなくていい。そしてOF。これは最初から練習通りにする。ミミがボールを運んで適当にパスを散らす。雅美は常にアウトサイドでマークを躱し続けること。いつパスが来てもいいようにな。ただしボールが来てもシュートは打つな。すぐ味方にパスな。あとボールから目を離すなよ」

 

「はい」

 

「かげつもゴール下でパスを貰いやすいようにポジションとること。愛莉はお前よりも10cm以上高いし最近は技術も精神も高く向上してる。一番厳しいけど一番俺の練習に耐えたお前なら通用する。」

 

「はい!」

 

「椿、柊についても基本は2人と同じで常にパスが来ることを意識して。ただ2人は自由に動いていい。足を止めるな」

 

「「はーい!」」

 

「最後ミミ。お前がチームの生命線だ。だから最初は智花との1対1は避けろ。パスに徹して味方のフォロー優先で」

 

エースのミミが仮に初っ端からやられたら最悪すぎる。

 

「ウィ・・・トモカとショウブ・・・」

 

「大丈夫。必ずお前と智花の勝負は実現させる。イケルと思ったらイッっていいけどそれ以外はPGとしてゲームのコントロールを頼む。お前が折れたら負け確定だ。チームの柱として期待してる」

 

「ハイ!」

 

さて、後は・・・・

 

「対策通りのDFについては俺から開始の指示を出す。質問は?」

 

雅美が手を挙げる。

 

「なぜ最初好きにやらせるんですか?DFも最初から作戦通りに進めればいいと思います」

 

「相手に自分は絶好調だと思わせたいから。なのに急にシュートが入らなかったり止められたりしたら相手は混乱する。そしてこれでいいのかと迷う。迷えばプレーに影響が出てさらに動きが悪くなる。そうなれば悪循環に陥っていつも通りのプレーが出来なくなる。そうなればこっちが有利だ。それにお前らも実物見てイメージ修正しときたいだろ?」

 

「それもそうですね。分かりました」

 

さて、そろそろ試合が始まるか・・・

 

「じゃあアップしてきて。俺は相手のコーチに挨拶してくるから」

 

『はい!』

 

俺は昴さんのもとに行く。竹中もいるのか。

 

「おはようございます。昴さんに竹中」

 

「空・・・おはよう」

 

「おっす」

 

「今日はよろしく。胸を借りるつもりで相手になります」

 

「そんな気さらさらないよな?空の事だし何かあるんだろ?」

 

「それは試合の中で見せますよ。審判って竹中がやってくれるのか?」

 

「おう。中立だしな」

 

なら問題ないな。

 

 

そして試合が始まった。

 

まずは6年チームからか。さすがにジャンプボールでは愛莉に勝てないししょうがないか。けど昴さんは予想外だろ?差なんて掌1つ分だったんだから。

さて、まずはDFからだ

それぞれのマークについては、雅美が紗季に柊が真帆に椿がひなにかげつが愛莉にミミが智花に。

柊と椿のとこが若干揉めたけど、前後半でチェンジということで落ち着いた。

 

「愛莉!」

 

紗季が愛莉にパスをする。ミスマッチを考えれば当然だな。

受けた愛莉がそのままかげつを抜いてランニングシュートを決める。

 

「ナイッシュー!アイリーン!」

 

「えへへ、ありがと。真帆ちゃん」

 

こちらを見るかげつに俺はそのまま頷く。

相手を抜いてシュートは気持ちいいだろ?その感覚を忘れないでほしいね。

次はこっちからのOF。ミミがボールを運び辺りを見渡す。

マークは智花か。ま、当然だな。

 

「止めるよ」

 

「トモカ・・・・まだハジマッタばかりデス」

 

そしてミミはかげつにボールを渡した。

さぁ、見せてやれかげつ。夏から練習したお前の技を。

ゴールを背に向けたかげつはそのまま半回転して後ろに飛びながらジャンプシュートを決めた。

 

「フェイドアウェイ!?」

 

昴さんは驚くよな。素人だと思ってた子がまさかフェイドアウェイをやってくるなんて思わなかっただろうし。成功率は精々5,6割だけどね。

 

「すげーなゲッタン!何今の!?」

 

「かげ。すごい。いつの間に?」

 

「空先輩との特訓の成果ですよ。驚かせようと思って秘密にしていたんですけど、夏から練習に付き合ってくれてたんです」

 

「マジか!?にーちゃんいつの間に・・・・」

 

真帆がじっとこちらを見てくる。かげつが暴露したみたいだな。

 

「かげつちゃん凄いね・・・・でも次は絶対止めるよ。」

 

お、愛莉の心に火がついたか。

とは言っても後は出させないけどね・・・・意識してくれたら儲けものだ。

今度は6年チームが真帆とひなの連携で点を取る。

こちらも負けじと椿、柊コンビで取り返す。

 

点数が8-8になった。

そろそろ頃合いか・・・・

俺は両手を大きくパンッ!と体育館中に鳴り響かせる。

体育館にいる皆がこちらを見る。5年チームは気づいたな。

 

「(試合は今からが本番ですよ。昴さんやみんなはどう対処するかな?)」

 

 

昴side

 

 

今のは一体なんだ・・・・?何かの合図?じゃあなんの・・・・

 

「愛莉!」

 

ここで紗季から愛莉にボールが渡る。さっきと同様抜こうとするが・・・抜けない。

 

「簡単には行かせません・・・(愛莉先輩は一度で抜けなかったら周りを見ようとする。その時ボールから一瞬意識を逸らしてしまう)ここ!」

 

かげつちゃんが愛莉からスティールを決める。

 

「(動きが変わった・・・・?)」

 

そして動揺するみんなを置き去りに5年女バスは速攻で決める。

 

そしてボールは紗季の手に渡る。

 

「(どういうこと・・・?愛莉が抜けなかったのはともかく簡単にスティールされたように見えたわ。とりあえずパスコースを・・・)」

 

「(紗季はチームが慌しくなったとき、周りを見すぎてるのが弱点・・・・)目の前に相手がいるのに随分余裕ね!」

 

紗季がスティールされた!?かげつちゃんはともかく少なくても雅美ちゃんは素人同然じゃなかったのか!?

 

「(タイムアウトを取るか・・・?こちらの想定以上にあっちはやる・・・)」

 

俺が迷ってる間に4点差になった。

 

「紗季パス!」

 

智花がパスを呼び込む。智花ならきっとこの不気味な雰囲気を変えてくれるはず!

 

「やっとデスカ・・・でもアンイデス」

 

そのパスは柊ちゃんにカットされボールがコートの外に出る。

 

「やったー!空先輩の言った通りだ!」

 

「(空か!?・・・・そういう事かよ!)」

 

タイムアウトを取ろうとしたが止めた。

なぜなら後数秒で1Qが終わるから。

そして第1Qが終わった。

 

 

昴sideout

 

 

今タイムアウトを取ろうとしてやめた?数秒だったしね。まぁ、気づいたところでどうしようもない。でもさすが本職のPG。流れに対する嗅覚は流石です。

 

「みんなお疲れ。こっちから言うことはない。後は教えた通り全て出せばいい」

 

『はい!』

 

「ミミはパスどう?面白い?」

 

「あまり・・・・オモシロくないデス」

 

「そっかそっか。じゃあそろそろトモカと勝負する?」

 

「イインデスカ!?」

 

「ただし1Qで1回。後は俺が指示するまでPGに徹してね」

 

「・・・ショウガナイデスネ」

 

「この試合が終わったら皆でアイスでも食べようか。俺が奢ってやろう!」

 

『おー!』

 

「あの・・・・空先輩」

 

「どうした雅美?」

 

「私もそろそろシュート打ちたいです」

 

「お前のシュートはうちの切り札だ。抜くタイミングは俺に任せてほしい」

 

「・・・・・・」

 

「紗季の絶望する顔見たくないか?」

 

「見たいです!」

 

即答かよ。紗季が不憫だ・・・・

 

「じゃあ俺に任せろ。あっちにとっては最悪のタイミングで打たせる」

 

さて、あっちの様子はどうかな?

 

 

昴side

 

 

「どういうことなの?序盤のDFと終盤のDFが明らかに違うじゃない」

 

「わっかんねー!」

 

「ごめん。皆・・・・私が止められたせいで・・・」

 

「おー。愛莉のせいじゃない」

 

「そうだよ・・・私もあそこで呼びこまなければ・・・・」

 

俺は皆に言う

 

「まずは落ちついて話を聞いてほしい」

 

そして皆がこっちを見て黙る。

 

「なぜOFが止められたか・・・・十中八九それは空のせいだ。恐らく皆の動きや心情を読んでる空が指示したことだと思う」

 

「にーちゃんが?」

 

「私たちのことを読んだ?」

 

「愛莉を止めたときも先を読んでる動きだったし智花へのパスをカットしたときの柊ちゃんの言葉で確信を持ったよ。」

 

「そんな・・・・読まれてる相手にどうすれば・・・・」

 

愛莉の言う通りだ・・・・・

恐らく空は全員の癖も把握してるはず。それを消すことは出来ない。何故なら本人達も分かってないから。

 

「(試合に出てないのに影響力が強すぎだろ・・・・)」

 

「とりあえずDFのときは私が皆のフォローに回ります。雅美は見たとこシュートはないみたいですし、ノーマークにしても問題ないかと」

 

確かに彼女は一本も打ってない。

 

「DFについてはそれでいいと思う。問題なのはこっちのOFだ・・・」

 

迷ってると時間が来た。必ずこのQで逆転の芽を見つけてやる!

 

 

昴sideout

 

 

そして第2Qが始まる。

 

「ふふん、随分落ち込んでるみたいね」

 

「雅美・・・・・あなた何もしてないじゃない」

 

「は!?これからするわよ!」

 

「はいはい・・・・じゃあね」

 

「ちょ・・・どこ行くの!?」

 

「貴女シュートしないんだからマークしても意味ないの」

 

おー何か揉めてるっていうか、ああ。紗季が雅美のマークを解いたのね。

 

「思ったより早いな。まぁ、ノーマークだし打たせるか」

 

めちゃくちゃ笑顔でこっちを見る雅美。いつもそんな顔ならいいのに。

 

「マサミ」

 

ミミからのパスを受け取った雅美は、その場でシュート打つ。

 

「「え!?」」

 

昴さんと紗季が驚く。

 

「誰がシュートしないなんて言ったのよ」

 

めちゃくちゃドヤ顔だなぁ・・・・

さすがにマークを外せなくなったので再び紗季がつく。

 

さぁ、こっちのDFだ。

 

「ひな!」

 

「おー。ないすパス」

 

「へっへーん!絶対通さないもんね!」

 

「ひな。通らないよ?」

 

そしてひなは愛莉にパスをする。

 

「行くよ!かげつちゃん!」

 

「愛莉先輩・・・・」

 

ゴール下での1対1が始まる。

しかし愛莉はボールを受け取ってそのままジャンプシュートをする。

 

「これなら読みもなにも関係ないよね!」

 

「はい・・・・・入ればの話ですけど」

 

そのシュートは失敗に終わる。

かげつは愛莉をブロック出来ないのを理解してる。

だからかげつは視界を封じることにした。

掌を愛莉の目の前に被せゴールを見づらくした。

 

「そんな・・・・」

 

そして点差は8点に広がる。

 

「紗季ちょうだい!」

 

「へへーんまたと「ノン」え?」

 

椿のユニを引っ張りカットさせないミミ。

 

「なにすんのさ!」

 

「ココでトメマス。ソシテトドメもサシマス」

 

「・・・・そういうことならいいけどさ」

 

渋々だけど椿は下がった。味方の邪魔をしたミミには後で説教だ。

 

「トモカ。ショウブデス」

 

「うん・・・行くよ!」

 

ここでエース対決か・・・・正直悪手としか言えないな。もしここで智花がやられたら希望が無くなる。みんなの心が折れ試合は決まってしまうだろう。あまりにリスクが高い。

 

しかし始まる1on1

智花が力強く素早く抜こうとしても中々抜けない。

 

「・・・・」

 

「・・・・」

 

そして智花が真帆にパスをする・・・・・え?

 

「え?」

 

「よっしゃー!」

 

真帆のマークの柊が呆けてると真帆がそのままジャンプシュートを決めた。

なるほど、あくまでチームに徹するか。

そして今ので恐らく分かったな。昴さんがこっちを見てニヤついてるし。

色々予定通りにいかないもんだ。

 

あちらがタイムアウトを取る

 

「柊、お前のマークは真帆だろ。ボーっとしてんな」

 

「うー・・・・だって今の明らかに1対1の場面でしょ」

 

「トモカ・・・・・ニゲタ?」

 

「いや、逃げるというより気づいたんだな。こっちの死角に」

 

『死角?』

 

さてさてどうするか・・・・

 

 

昴sideout

 

 

空が異常すぎて気づかなかった・・・・・本来ならもう少し早めに気づいてもおかしくなかったのに・・・・

 

「智花やったわね!」

 

「うん!真帆がちょうどいいところにいたからね」

 

「パスするとは思わなかったよもっかん!」

 

「でも、真帆ちゃんナイスシュートだったよ」

 

「おー。真帆ないす」

 

こっちの雰囲気も明るくなったな。

 

「さて、そろそろ逆転しようじゃないか」

 

俺がそう言うと皆がこっちを見る。

 

「策あるの!?すばるん!」

 

「それを今から話すよ。正直最初は騙されたよ・・・・確かに空は完璧に読んでるんだろう。でもあの読みを活かすのは空だからこそ出来ること。他の子じゃ絶対無理なんだ」

 

「え?じゃあ何で雅美たちは・・・」

 

「それは・・・・1人に絞ってるからね」

 

「1人に?」

 

「たった1人だけに絞ってるんだ。他の子の癖を知らなくても1人だけに絞れば活かせる。各々の相手にね・・・」

 

「待ってください。私はパスカットされたんですが・・・」

 

「ホントに完璧に読んでるなら全部カットされてるよ。じゃあ何で1回カットされただけなのにここまで印象深いんだろうね?」

 

「それは・・・・・柊の!」

 

「そう、あの発言のせいで印象深かったんだ。あれも計算して言わせたんだろうね・・・恐ろしいよ空は・・・」

 

1Q終わりのタイミングでのカットと発言内容。本当に小学生かよ。

 

「あと、これからは変則になるよ。まずDFは愛莉は柊ちゃん、紗季が椿ちゃん、真帆がかげつちゃん、ひなたちゃんが雅美ちゃん、智花はそのまま継続。ミミちゃんは智花にしか止められないからね」

 

「それで問題ないと思います。でもこっちのOFはどうしましょう?あっちは引き続きマークしてきますよ」

 

「ここからは体力勝負になるよ・・・・・みんな覚悟はある?」

 

「とーぜんじゃん!」

「もちろんです!」

「絶対に負けられません」

「私も頑張ります!」

「ひなもー」

 

さぁ、ここからは読みもクソもないぞ。6年女バスの力を見せてやる。

 

 

昴sideout

 

 

さて、こちらはどうするか・・・・

 

「向こうは確実に何かやってくる。だからこちらからは何もしない。勝負は次Qからだ」

 

『はい!』

 

見せてもらいましょうか。

 

タイムアウトが終わり試合が再開される。

なるほど、マークを変えてきたか・・・・

柊に渡るがこちらの攻撃は止められてしまった。

愛莉とじゃ分が悪いか・・・・

 

「走って!」

 

紗季の号令で全員がゴールに向かって走り出す。

そしてそのまま前方にボールを投げる。確かにこれなら読みもなにもないが・・・・

ひながキャッチしてそのままシュートを決める。

 

「なるほど、ラン&ガンか・・・」

 

こちらのOFはかげつに渡る。高さを生かしたミスマッチだが

 

「おらおら!ゲッタン負けねーぞ!」

 

「く・・・・」

 

身長はかげつのほうが高いはずなのに・・・・

そこでフェイドアウェイを打とうとするが・・・

 

「使うなって言っただろうが!!」

 

俺はたまらず大声で言ってしまった。

 

「かげつ!」

 

柊がかげつに声をかけるが遅い。後ろから来た愛莉にかげつは止められてしまった。

相手の速攻でまたもや点を入れられるとこで第2Qが終了した。

 

 

「まずかげつ。何であそこでフェイドアウェイを打った?俺は使うなと言ったよな。しかも自分よりも小柄のやつに」

 

「・・・・すみません」

 

「未完で成功率も低い。外す可能性が高いのに接戦で使うな。分かったか?」

 

「・・・・・はい」

 

「今にも泣きそうな顔してんなよ。ちょっと来な」

 

俺はビクビクしてるかげつを近寄らせて頭を撫でる。

 

「大丈夫。お前はよくやってるよ。未完の技に縋らなくてもお前は強いんだから自信持っていけ」

 

「は、はい!」

 

とりあえずかげつはOK。

 

「さて、雅美。3Qからはバンバン打っていけ。仮に外してもかげつが取る。」

 

「・・・・・・私も・・・・」

 

うん?

 

「・・・・・撫でられたいです(ボソ」

 

顔を赤らめながらこっちをチラチラ見てくる。

 

「・・・・・おいで」

 

「は、はい・・・」

 

俺は試合中に何をやってるんだろうか・・・・

 

「ソラ。コウハンから・・・・」

 

「うん?ああ、もう好きにやっていい。読みも通用しなくなってきたしな」

 

ミミにパスの楽しさを覚えてほしいと思ったけど・・・・安西監督みたいにはいかないな・・・・

 

「メルシー。ゼッタイかちマス」

 

問題は・・・・・

 

「2人とも、大丈夫か?」

 

「「だ、大丈夫・・・・」」

 

肩で息をして呼吸を整える2人。

 

「お前らが一番走ってたからな。イケルか?」

 

「もちろんだよ・・・・だってにーたんの妹なんだからね」

 

「にーたんが見ててくれるもん」

 

うん、兄想いのいい妹達だ。竹中は幸せだな。

 

「全員聞け。相手は後半全部の攻撃足が止まることはないと知れ」

 

「そんな・・・・スタミナが持つんですか?」

 

「持たないだろうな・・・・こっちがな」

 

『え?』

 

正直スタミナじゃあの5人には絶対勝てない。

そもそもこっちは2日しかないんだ。体力トレなんて普段からもしないし・・・・ミミとかげつ以外だけど。

 

「だから相手に付き合う必要はない・・・・・勝手に自滅してもらうって言ってもお前ら反対だよな?」

 

『もちろん!』

 

だろうな。自滅なんかよりも自分達で倒したい気持ちが強いだろうし。

 

「ならあっちの策に乗るか。そのうえで叩き潰す。具体的な策を言うぞ。予定通り椿と柊マークチェンジ。DFは相手に付き合って、OFは外の雅美。中のかげつ。突破力のミミで攻める。悪いが椿と柊は2人でボール運びとパスを頼みたい」

 

「「ええー!!」」

 

「頼むよ。お前ら2人が総合的に一番上手いんだから」

 

「私たちが・・・・」

 

「一番・・・・?」

 

「当然だろ。ドリブルは雅美やかげつよりも上手くてパスはミミより上手いんだからさ。頼むぜ、お前ら2人でチームを救ってくれ」

 

「そういうことなら・・・」

 

「しょうがないなー!ボクたちが助けてあげるよ!」

 

正直策ってほどじゃないんだけどな、ラン&ガン。受けてやるんだからそっちも受けてくれよ

 

 

昴side

 

 

「まだ終わりじゃないよ。こっちもなんとか点を取れるようになったけどあっちのOFも完璧には止められてないんだから」

 

「そうですよね・・・・それに」

 

「ミミちゃんのOF・・・・今はまだパスばっかりで智花クラスの実力は見せてないけど必ず後半でやってくる」

 

「だいじょーぶ!安心してみていいよ!」

 

真帆は元気だなぁ。チームのムードメーカーはこうでなくちゃな。

 

「じゃあOFは引き続き走りっぱなしでマークを外して。そしてDFも引き続き同じように。策という策はないけど結局うちの強みはチームワークにある。急造チームに負けないように!」

 

『はい!』

 

俺は空の策は読めない。けど、だからってうちは負けないぞ!

 

 

昴sideout

 

 

最初は6年女バスにバスケの辛さをこの試合で教えようと思った。

彼女たちがこれからもバスケを続けるなら必要だと思ったからだ。

でも・・・・

 

「(余計なお世話だったな・・・・・)」

 

俺を救ってくれた彼女たちは俺みたいに弱くない。

どれだけ相性が悪くても、癖や弱点を見抜かれそこを突かれてもへこたれない。

見誤っていたな・・・・彼女たちのハートの強さを。

 

「残り半分!後悔しないように全部出してこい!」

 

『はい!』

 

そして第3Qが始まる。

お互いのOFは止められず一進一退の攻防を繰り広げている。

決められたらすぐに取り返す。それの繰り返し。

第4Qが始まってもそれは変わらなかった

そしてゲームが動いた。

 

「トモカ・・・・こんどはカチマス!」

 

「ミミちゃん・・・・受けてたつよ!」

 

両エース同士の1on1

ここで勝負が決まるな。もうスタミナもない。ここでエースが負けたら心に残る希望が消えてしまう。だからこれが最後の勝負だろう。

俺は智花の弱点だけは教えなかった。ミミが拒否したからだ。

智花とはそういうの抜きでやりたいって・・・・

 

「(ヌケきれマセン)・・・・コレデ!」

 

ミミはスクープシュートを放つ。

これは・・・・・

 

「させない!!」

 

凄い跳ぶな・・・・

本来スクープシュートはブロックされた時点で失敗だ。明らかに軌道が低い。

でもだからって普通触れられるか?

そしてそのまま智花は速攻に持ち込み決めた。

最後は結局足がまともに動かず5年女バスが負けた・・・・

 

 

色々言い訳はある。体力が最後まで残ってたらとかミミが智花の弱点を把握してればとか相手の自滅を誘えばとか・・・・・でも結局それは敗者の言い訳だ。何を言おうと関係ない。俺達は負けた・・・・・だから

 

「もう1回はないよ。椿、柊」

 

「「だってだって!!」

 

「・・・・・後任せるわ。竹中」

 

「おう、お疲れ」

 

竹中に全部投げて俺は昴さんのほうに行った。

 

「お疲れさまです。どうでした?」

 

「正直、序盤からあのままやってたらこっちが負けてたと思うよ・・・」

 

「まー完璧弱点とか突いてましたし」

 

「それにかげつちゃんには驚いたなー」

 

「俺の弟子なんで。まだまだ荒削りですけどこれからもっと成長しますよ」

 

「そこも驚いた。一体いつの間に・・・・」

 

「夏からですね。ひなの自主練に付き合いたいって・・・」

 

「でもあの動きは・・・・」

 

「本格的に教えてますよー。ただ、あの子たちに正式なコーチがついてくれればって思うんですけどね・・・・俺がやってもいいですけど毎回は無理ですし・・・」

 

「・・・・一応あてはあるんだ」

 

「昴さんのあてか・・・・・銀河さん・・・は、仕事だから・・・・葵さん辺りですか?」

 

「正解。流石だね」

 

なら安心かな。さて、出ていった5年チームを追いますか。

 

「じゃあ俺もそろそろ行きます。」

 

「あ、待って!何で敵対したか教えてほしいんだけど!」

 

「・・・・・色々あります。かげつに試合経験させたりとか6年女バスに試合させてやりたいとか、あの子達のうっ憤を晴らす手伝いとか、人数不足の女バスにあの子達が入ってくれれば公式戦に出れるんじゃね?とか」

 

「思ったより多いね・・・・」

 

「まぁ、一番の懸念は解消されたので問題なしです!ではまた今度!!」

 

俺はそのまま体育館を出た。後ろから真帆の声が聞こえるけど昴さんが説明するだろ。

 

 

俺は近くの公園で彼女達+竹中を見つけた。

 

「皆お疲れ。勝たせてやれなくて悪いな・・・・」

 

「いえ、空先輩はよくやってくれたと思います・・・・それに反則しない程度で手段を選ばなければ勝っていたかもしれません」

 

「そうだよ・・・・・負けたのはボク達のせいって分かってるもん・・・」

 

「だから余計悔しいの!」

 

椿と柊には八つ当たりされるのを覚悟してたが・・・・

 

「気持ちよく勝たせてやれなかった時点で敗因は俺だよ。もっとやりようあったんじゃないかって思う」

 

「いや、2日でアイツら追いつめるって相当だと思うけど・・・」

 

うっせー竹中。それでも負けは俺のせいなんだよ。

 

「ワタシのせいデス・・・・トモカのジャクテンを聞かなかったワタシが・・・・」

 

「それなら私も・・・・終盤は愛莉さんにいっぱい止められたし・・・」

 

雰囲気が暗い。さて、どうするか・・・・

 

「試合見てたよ・・・・負けちゃったね・・・」

 

そうか・・・葵さんは見てたのか・・・

 

「おねーさんだれ?」

 

「いまひーたち機嫌悪いんだけど」

 

「やめろ2人とも。この人は俺や竹中、かげつの知り合いで・・・」

 

「荻山葵って言います。それで・・・・まだ君たちが女バスに勝ちたいって言うなら・・・私を雇ってみない?」

 

「デモ・・・・ワタシたちにはソラがいます・・・」

 

ミミ・・・・

 

「俺はずっとお前らを見てられるわけじゃない。見捨てる気はさらさらないけど・・・コーチが2人いてもいいんじゃないか?」

 

「それなら・・・・」

 

「いいけど・・・・」

 

椿と柊は賛同する。

 

「私も賛成です」

 

「ウィ。ワタシもいいデス」

 

かげつとミミも賛成・・・後は

 

「私は・・・・・空先輩はあそこに戻らないんですか?」

 

「俺はどっちも大事。お前らに愛着も沸いたしな・・・・・優柔不断な男は嫌いか?」

 

「い・・・・いえ・・・」

 

「じゃあOK?」

 

「はい。よろしくお願いします」

 

良かった。どうやら竹中も手伝ってくれるみたいだし・・・・コーチが3人か。

 

「ありがとう。急に来た私を受け入れてくれて・・・・」

 

これから楽しくなりそうだな・・・・・

 

 

 

「これが近況。部員は残念ながら増えませんでしたとさ・・・・」

 

俺は今自分の部屋で電話をしている。相手は・・・・・

 

『そうなんだ。残念だったねー増えたらまた練習試合したいなーって思ったのに』

 

「未有のところはどうだ?」

 

『未有の所はすっごい生意気な後輩いるんだよ!』

 

「それはお疲れさま・・・・あれ?未有も結構生意気だったような・・・」

 

『昔の話禁止!未有はちゃんと変わったの!』

 

「へーじゃあ今はちゃんとキャプテンやってるんだ」

 

『とーぜんでしょ!それより・・・・空に会いたーい!』

 

「週1で電話してんじゃん・・・・つーか随分素直になったというか・・・今部屋なんだろ?相方は?」

 

相方は部屋の同居者。寮住まいの未有は2人で1つの部屋で生活してる。

 

『だって皆知ってるし隠す必要もないでしょ。相方は今お風呂言ってるよー。未有はこれから入るところ!・・・・想像しちゃった?』

 

「してませんー」

 

俺の部屋のドアが開いて真帆が抱きついてくる

 

「にーちゃん!暇!寝る前になんかしようぜ!」

 

「今電話中です。あとで『その声・・・・・アホリボンね!』こら・・・」

 

「お?チビリボンと電話中?」

 

俺の携帯を奪った真帆が未有と話す。

 

「にーちゃんは私のだぞー。今から一緒に寝ますー!」

 

『はぁ!?ふざけんな今からそっち行・・・・あ、先生!?いやこれは・・・」

 

そして電話がきれた。

 

「どうしたんだろう?」

 

「いーじゃん!とりあえず寝よう!」

 

「遊ぶんじゃなかったっけ?」

 

「一緒に寝る!ほらベッドいこうよー」

 

はぁ、しょうがない妹様だよ。

 

「へっへーにーちゃんのお願い何にするかなー・・・・」

 

「ほどほどで頼む」

 

俺は今回裏切った罰で6年女バス+昴さんに俺に出来る範囲で何でも1つ願いを叶えることになった。智花や紗季や愛莉は事情を話して理解してくれたし納得もしてくれたがひなと真帆だけは中々許してくれずこういうことになった。




未有の口調ってどんな感じでしたっけ?

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