俺は朝から逃げていた
「バスケ部入れー!!」
「断る!!」
やつは竹中・・・・・竹中なんとか。いや、俺は最近転校してきたから知らんし
「なんでだよ!」
「この時期から入ってもしょうがないだろ!」
「そんなことねえ!お前って晴嵐学園の疾風迅雷だろ!?月バスでみたぞ!」
「だからなんだ!そんなもん俺が入る理由になにはならん!!」
「戦力になるんだしバスケ好きなんだろ!入れ!!」
「ふざけんな!」
俺は本気を出し竹中を引き離す
「くそー・・・やっぱ速いな・・・・諦めないからなー!!」
背中から何か聞こえてくるが無視する。
はーウザイなぁ。この時期から入れるわけないだろ・・・・・
俺が入らない理由は単純。別にバスケが嫌いでもないし辞めたわけじゃない。ただ俺が入ったら今までレギュラーだったやつが腐ってしまうかもしれない。ポット出のやつにスタメン取られるとか絶対嫌だろうし、チームワークにも影響がある。
だから俺は小学校にいるうちはチームには入らない。
「(どうせすぐ6年に上がるし実質1年ちょっとだ。自主練して中等部になれば入ればいい。まぁ、新規のチームがあるなら入るけどそんな都合よく作られないだろうしな・・・・あれは?)」
どうやら女の子がイジメられている・・・・ってまたか。
「(アイツらまた愛莉を・・・・ムカつく。平気で他者を虐げるやつや複数で1人の子を虐めるのやつらをみるとイライラするぜ)」
「相変わらずデカいな香椎は!」
「ホントは男じゃねーの?」
「言っとくけど頼みの御巫は来ないからな!」
「あいつは竹中と追いかけっこしてるから呼んでもこねーよ!」
「呼んだか?」
「「「「・・・・・・」」」」
「まだ懲りてなかったんだな・・・・・テメーら歯食いしばれ!!!」
「「「「ギャー!!!!!」」」」
俺は4人を沈めて愛莉に近づいた
「大丈夫か?アイツらまだ懲りてなかったんだな・・・・」
「うん、ありがとう・・・空君」
「立てるか?怪我はないか?」
「大丈夫だよ・・・・・っと」
「その調子なら大丈夫そうか?じゃあ教室まで行こうか」
そのまま教室に向かうと
「ごめんね。また迷惑かけちゃった・・・」
「愛莉のせいじゃないだろ。またバカ共に呼ばれたら携帯で呼べ」
「うん、空君ありがとう!」
愛莉は俺が転校してきた初日からイジメられていた。助けてくれる人もいたがいつもそいつらがいないタイミングで狙ってくる。
「いいよ。今度こそ懲りるといいんだけどな・・・・」
「そうだね・・・・・」
「大丈夫だよ。愛莉のことはちゃんと守るからさ」
「空君・・・・・」
教室に戻ってきた俺達は・・・・
「アイリーン!」
「心配したのよ。またあいつらに連れていかれたんじゃないかって」
「おーヒナ、心配した」
3人の女子が寄ってくる。
「大丈夫だよ。空君が守ってくれたから」
「さすがソーラン!」
ソーランというのは俺のあだ名らしい。ソーラン節を連想しちゃうからやめてほしいとは思う。
「よかった。竹中と鬼ごっこしてたんでしょ?空は大丈夫だった?」
「大丈夫だよ。紗季」
「ヒナもー空、大丈夫?」
「大丈夫だよ、ヒナ」
そうして話しているとお昼終了のチャイムが鳴った。
「やば!次の時間体育だ!」
真帆が焦ったように言うと、みんな一斉に更衣室に向かう・
体育館
今日の体育はバスケらしい。竹中がはりきってるが変なことにならないといいけど
「下手糞がシュートすんな!」
「ふざけんな!!」
男女合同の体育。競技はバスケで男女混合のチームになっていたが・・・・
「全部俺ら男子にボール渡せばいいんだよ!下手糞なんだからジッとしてろ!」
「ふざけんな!みんなで楽しんでやってるんだろ!」
真帆と竹中の喧嘩が発生した。
「(素人相手に下手糞って・・・・当然だろう。いるんだよなー体育のとき自分の得意競技になるとすぐ熱くなるやつ。こいつら色々喧嘩してばっかだけど今回は真帆が正論だな。体育なんだからみんなで楽しめばいいのに・・・・でも俺が一番気になるのは・・・・)」
俺はピンク髪の・・・・湊?を見る。
「(明らかに動きが経験者だ・・・・あまりボールに触らないようにしてるから実力はよく分からないけど・・・・もうちょっと動いてやればいい試合になるのに)」
俺より少し後に転校してきた子であまり明るい感じの印象はなかった。
「それなら白黒ハッキリつけるか!男女別れてで試合をするぞー」
「あ、それなら俺女子チームで」
俺は手を挙げて宣言する。
「は!?お前男子だろ!」
「俺が思うに今回お前が悪い。だから俺は女子チームに入る。美星先生、いいですよね?」
「いいぞー。まぁ、戦力的にもありじゃないか?」
「普通にキツイわ!!」
「その代わり俺はシュートしない。それで認めてくれないか?」
体育館がざわつく
「それならいいぞ!」
「ちょっと大丈夫なの!?」
紗季が慌てたように言うが・・・・
「大丈夫。その代わり俺がメンバー選出するから女子集まってー!」
俺は女子に号令をかける
「メンバーは当事者の真帆。残りは紗季、愛莉、俺、そして湊だ」
「え!?」
湊は驚いた声を出す。
「大丈夫だろ?俺はシュートできないから代わりにみんなを助けてやってほしい」
「わ、私は・・・・・」
「お願い湊さん!」
「お願いー」
みんなからお願いされる湊は逃げ場がなくなったようで
「は、はい・・・・」
「(これでよかったんでしょ?)」
「(あたしが何も言わなくても分かってたのか)」
「(先生がバスケやってるとき湊のほうを気にしていたし、湊も動きが経験者っぽいけど存在感を示さなかった。多分前の学校で何かあったんだろうな。でも先生はこれをきっかけにしてみんなと馴染ませようとしてたんでしょ?)」
「(お前エスパー?まぁ、そうなんだよ。助けてやってくれ)」
「(分かってます)」
「じゃあ頑張っていこうかー」
そして試合が始まる。
ジャンプボールを愛莉にやらせてみたがビビって飛べなかった。
「ご、ごめんなさい。」
「気にしなくていいよー。まずはディフェンスだ」
どうやら経験者は竹中だけっぽいな。ということは・・・・
「ボールよこせー!」
竹中がボールを呼び込むが俺がカットする。
「な!?」
「そらそうだよ。お前にボール集まるのって当然だろ?」
俺はドリブルでコートを駆ける。しかし一旦ストップしてみんなが来るのを待つ
まず湊の実力を把握しときたいな・・・・
マークにあった湊だったがそれを軽く振り切る。その一瞬を見逃さずに俺はパスを送る。
「シュートしてみて」
湊は俺の言う通りジャンプシュートをするが、そのシュートは俺の想像を大きく超えていた・・・・
「(なんつーシュートを打つんだよ・・・・)」
ジャンプシュートすればある程度実力が分かる。入る入らないは重要じゃない。重要なのはフォーム。ジャンプシュートにはバスケの基本の動きが全て詰まってると言っても過言じゃない。そこから見た湊の実力は・・・・
「(個人技のみなら全国レベル・・・しかも男子を混ぜても全く遜色ない)」
こんなところに原石が埋もれていたなんて・・・俺はそう思わずにいられないほど湊に見入っていた。
「湊、ナイシュー」
「うん、ありがとう」
「で、湊の下の名前は?」
「え?智花だよ」
湊 智花・・・か
「じゃあ今から智花って呼ぶから、俺の事は空でいい」
「え?う、うん!」
「智花の実力はある程度分かったよ。正直想像以上だった」
「ありがと・・・」
「本気でボール回すから目離すなよ!」
俺は智花の返事を待たずディフェンスに戻る
「ちっ・・・・ワンゴール決めたくらいで盛り上がってんじゃねえよ!」
竹中がドリブルで突っ込んでくるが
「(あの様子じゃパスもないな。)真帆と紗季!竹中について!ボールは取らなくていいぞ!」
「「了解!!」」
そうして2人が竹中にマークする。
「(素人2人。いつもなら抜けるんだろうけど熱くなってる頭じゃ・・・)」
「邪魔だ!」
「「キャッ!」」
「竹中ファールだぞ。あからさますぎだろ」
美星に言われ、2人に突っ込んだことによるファールを貰う竹中。
「(あらら、想像以上に頭に来てるな)ボール頂戴」
愛莉からボールを受け取る俺
「(さて、智花・・・・俺の本気のパスを取れるかな?)」
俺は速攻でドリブルを仕掛ける。
「あいつを自由にさせんな!全員つけ!」
「(俺はシュートを打たないのに?そんなことまで忘れてるのか・・・)」
俺は4人に囲まれる。
「じゃあ、ダンスと行こうか?」
相手は手を出してくるが俺はその場回りながらドリブルをして相手に取らせないようにする
「は?素人とはいえ4人に囲まれてんだぞ?・・・これが全国クラス・・・」
竹中は茫然としているが俺は相手が自ら作ったスキをついてパスを出す
「智花!!」
バシン!と強い音が体育館に鳴り響く。
「(凄い。痛いけど不快な痛みじゃない・・・・・パスのスピードも速いのに正確だしリズムが狂わないタイミングでくれた・・・でも、握り直さなくていいようにボールの縫い目に合わせてパスするなんて。さすがに偶然だよね?)」
智花は偶然と片づけて2本目のシュートを決める。
「ナイス!もっかん!」
「も、もっかん?」
「あんたまた変な渾名を・・・」
「いいじゃん!もっかんもいいよね!?」
「う、うん・・・・」
「智花ちゃん凄いなー・・・」
「そうだな。女子であれだけのセンスなんて久しぶりにみた」
まぁ、前に見たのは海外でだけど
さて、ディフェンスだけど・・・・・竹中が冷静になってるな。
無理な突破もやめてボール回しに徹してる。
「よぉ、無茶はやめたのか?」
「ああ、お前のドリブルみて頭冷えた。」
「そっか。じゃあこっからかな・・・て言いたいけど」
「分かってる。俺以上の実力を持つ湊とお前じゃこっちの負けだ。だから最後に」
竹中がパスを受けると
「全国MVPの疾風迅雷に1on1を挑みたい」
「いいぜ。全国の頂きを見せてやる。」
明らかに空の雰囲気が変わって場に緊張が走る。
「(これが全国クラスのプレッシャーか・・・怖い・・・けど、負けない!)」
「(竹中か・・・・実力は県大の下位から中位クラスってとこだけど、努力してるのは分かる。才能もないわけじゃなさそうだし、恐らく中学の後期辺りで化けるタイプだな。中学での楽しみが増えたよ)」
竹中がフェイクをかけて抜こうとするも、スティールをくらいボールは取られる。
「時間もないしこれが最後の攻撃だな。折角だし見せてやるよ」
俺はそのまま走ってダンクを決める。
「マジかよ・・・・」
「と、俺はシュート禁止だったな。すまんこっちの反則負けか」
「いいよ。どっちにしろ点数で負けてるし」
「じゃあ引き分けってことで」
「・・・・お前もしかして初めからそのつもりだった?」
「どうだろうねー」
俺は竹中から離れ智花のところに向かう
「よ、どうだった?」
「空君・・・・・」
「楽しかったか?」
「・・・・・うん!」
どうやら楽しんでくれたみたいだ。
そこに4人が来る
「もっかーん!ソーラン!2人とも凄いな!」
「ホントに凄かったわ。2人ともあんなに上手かったのね」
「2人ともカッコよかった!」
「おー、かっこいい!」
「じゃあ、智花後は任せた」
「へ?」
俺はその場を後にした。
翌日
「ソーランソーラン!」
「朝からどうした?」
「女子バスケ部作ったから入って!」
「・・・・・はい?」
真帆のこの一言によって俺の学園生活が変わることになるんだが、その時の俺はそんなことを予想していなかった
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