各部活が勧誘のためにテントを出して賑わっている中、風紀委員会という腕章をつけて風紀委員長からもらった袋の入れ物に木刀をしまっている俺は一昔前の番長だ。ただし、悪ではなくて正義のだけど。多分花蓮も同じ事をいうだろう。
だからといえば目立つかといえばそうではなく、そんな事より勧誘の方が大事らしい。むしろ健全に勧誘して平和に終わったら、なんと幸せだろう。今のところ騒ぎはなく万々歳。巡回のルートが運よく平和なところだったみたいだ。
「鬼頭さん」
落ち着いた声。俺を鬼頭さんと呼ぶのは学校で二人しかいない。落ち着いた声から北山だということが分かった。なんて、消去法じゃなくてもすぐに分かったが。
「北山に光井か。部活見学か?」
「はい、そうです!」
「鬼頭さんは風紀委員会の仕事?」
北山は俺の腕章に気づいたのかそう聞いてくる。
「そう。さっそくこき使われてるよと言っても騒ぎにはいまだあってないけど」
「もしかして忙しかったですか?」
光井がそう聞いてくる。それとなく北山の顔を見ると、例えるなら悪いことをしたような黒猫もような表情だった。ついでに黒猫なのは北山の髪が綺麗な黒髪だからだ。
「いや、巡回ルートを回るだけだから忙しいという訳じゃないよ」
ちょっと最悪感とそんな顔をしてほしくないから出た言葉だった。北山の表情が気になってついて若干北山の方を向いてしまう。多分だけど表情がよかったみたいな顔をしていたから安心した。そんな北山は俺を見ると
「・・・ついて行ってもいい?」
予想外の提案をするのだった。
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その三人組は異様に見えただろう。男子一人に女子が二人。しかも男子生徒が二科生だ。密かに出回っている新入生の成績ではその二人の一科生は上位の成績を持つ。密かに狙っていた上級生はこの二科生をどうにかできないかと思ったが質の悪いことにその二科生は風紀委員会の腕章を左腕につけていた。なんかの見間違いかと思ったがやはり風紀委員会の腕章だった。二科生が風紀委員など腹立たしかったが、流石に目の前でことを起こす人はいない。せいぜい悪口が限度だった。
俺は心の中でため息をつく。あちらさんはこの騒ぎ出し、小声だ。聞こえないと思っているんだろうが、残念ながらばっちり聞こえている。文字通り俺の聴力は人外だ。それぐらいなら簡単に聞き取れる。とはいえ聞いても何の役にも立たないしそんなのは流すに限る。それぐらいならとうに聞き飽きている。
「鬼頭さん?」
「え?」
音は流しても少しボーとしていたのか。俺の名前を呼んだ北山はいつの間にか目の前にいて思わず止まる。
「大丈夫?」
と心配そうな顔をして俺を見てる。沢山の言葉はないく言葉は少ないがいろんなことが詰まっているような暖かい大丈夫だった。
「あ、ああ。少しボーとしていたみたいだ」
思わず少し慌てた俺を北山はじっと見つめる。何だか北山の位置が普通より一歩前なような気がする。がそれは気のせいだろう。そもそもおれに人の物理的な距離感がわかるわけがない。北山は納得したのかそのまま俺の隣に戻った。
そこから少し歩いたところだった。魔法が発動した感覚がする。それは二人も分かったのか光井も北山も俺を見ていた。
「それじゃあ行ってくる」
俺がそう言ってその方向に行こうとすると後ろから頑張れという北山の声がした。
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そこに行くと二人の上級生が魔法を打ち合っていた。えーとレコーダーのスイッチを入れてから木刀をしまっていた袋を取る。足音を消し気配を消しサッと忍び寄り、想子弾で魔法式を壊す。いきなり不発になった魔法に驚いた
隙に距離を一瞬で詰め、胴に一発当て、気絶させる。もう一人は、さっきから魔法がことごとく砕け散り、自棄になったのか自己加速魔法を自分にかけ突進してる。いくら魔法師だからって少し位格闘技をかじっても良かったのにと思いつつ俺は、一歩横にずれて足を出す。不意を突いて当たると確信し、にやけていた上級生は見事に吹っ飛び頭から地面にダイブしていった。
「本部ですか?逮捕者二名です」
取り敢えず俺の初取り締まりはうまくいったのだった。
取り敢えず一巻はこれで終了です。裏では達也が乱闘を制圧中です。
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