妹に砲を向けられた時   作:風月 雪桜

5 / 8
今回は残酷な描写、アンチヘイト、コロコロ変わる視点等々が含まれております
苦手な方、食事中の方は読むのをお控えください

また艦娘を貶める意図はございません
これらを了承した方のみ本編へどうぞ!!


絶望と破壊

俺も銃を撃つ

 

敵も応戦し、機銃を放ち人間や塹壕をなぎ払う

 

曳光弾が闇夜を照らし死の幻想を見せる

 

「くそっ」

弾切れのため役に立たない塹壕に隠れリロードする

 

近くの奴が自前のロケットランチャーを放ち、歓声が湧く

 

殺ったのか、艦娘を!!

 

続けて、そいつは腰に付けていた手榴弾を投げつける...ことが出来なかった

 

そいつの頭が吹き飛び、脳漿をぶちまける

 

くそっ!

艦娘どもめ!

祖国を!故郷を荒らしやがって

何が『人間のために戦います!』だ!

何が『祖国を守れて嬉しい』だ!

 

お前らが...どんだけ期待されていたと思ってんだ

 

その時何故か妹の姿が思い浮かぶ

『私いつか艦娘になりたい!』

『なれる訳ないだろ

馬鹿みたいなこと言ってないで宿題しろ!ペシッ』

『痛い!

お兄ちゃんなんて嫌い!』

 

グシャと音とともに左腕に激痛が走る

 

塹壕を貫通し、機銃弾が左腕を吹き飛ばしたのだ

もう、銃を撃つことはおろか激痛で立つこともままならない

 

追い討ちをかけるかのように、近くに着弾した砲弾の破片が腹に突き刺さる

もはや痛みすら感じなくなった

 

辺りには味方の骸が積み重なり、艦娘がその山を乗り越え市街地へと侵入する

 

ああ...俺はこんな所で死ぬのか...

俺は辛うじて動く右手で家族の写る一枚の写真を取り出した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ながなが~

遅いよ、早く行こうよ!」

 

「ああ...

すぐ、行こう」

私は人間の死体を避けながら、市街地へ行こうとする

 

「ちょっと、そっちじゃなくてこっちだよ!」

 

私は水無月に引っ張られ、塹壕の方へ戻された

そこにも、無数の屍が転がっている

 

噎せかえりそうになるのをこらえ、皐月と文月のいる所まで来た

 

そこにも真っ赤な血溜まりがいくつもあるが、皐月と文月は一人の兵士の前にいた

 

兵士は左腕がなく、腹部に鉄の破片が刺さっていた

今すぐ治療しても助かるか分からない位の怪我だ

 

「......」

 

「どうしたの、ながなが?」

 

「なんでもない」

 

私にはどうしようもない

どうしようもないんだ

 

「私達を()()も沈めたくせに!

私達の苦しみを、知りなよ~」

 

文月は腹部に刺さっている破片を足で踏みつける

兵士は苦痛で顔を歪め、目には憎しみ色が濃くなる

 

「ながながもやろうよ!

ニンゲンが憎いんでしょ?」

 

「...ああ」

 

私はゆっくり兵士に近づき、踏みつける

文月や皐月、水無月にばれないように手加減しながら

 

「う......がぁ...げほぉ」

 

水無月も参加し、兵士が血を吐く

 

「実はボク、“いいもの”持っているんだ!

じゃーん!」

 

皐月が取り出したのは、人間の使う拳銃

それをおもむろに兵士に向け、発砲する

 

パァーン

 

「わっ!

結構反動大きいだね!」

 

「ズルい!

私もやりたいよぉ~」

 

「私もやりたい!

さっちんやふみちゃんばかりズルい」

 

「......」

 

皐月は何故か私に拳銃を渡す

 

「じゃあ...

はい、まず長月からでいいよ!」

 

「え...わ、分かった...」

 

皐月から拳銃を受け取る

凄く重く、冷たかった

 

私は拳銃を兵士の足に向ける

 

このまま撃てば、この射撃で死ぬ可能性は低いだろう

だが、兵士()はその分長く苦しむ事になる

 

...だったら、いっそ殺してしまった方が彼のためではないのか?

 

手が震える

 

...怖い...

 

何故か彼は驚くように目を見開いている

視界もぼやけて見える

 

泣いているのか...!?

ヤバい、皐月や文月、水無月にバレたら怪しまれる...

 

「長月どうしたの?」

 

「い、いや、なんでもない」

 

バレる前に狙いを定める

彼の頭に

 

後は引き金を引くだけ、覚悟を決めるだけ

 

彼が微かに微笑み口が動く

次の瞬間私は発砲し、反動でよろめく

 

彼は息絶えていた

 

「ちょ、ちょっと長月!

殺しちゃったらダメじゃん

ボクらも楽しみにしてたのに!」

 

「皐月お姉ちゃん、長月ちゃんを許してあげてよ~

それにニンゲンはまだ市街地にいるんだから、一人や二人我慢してよ!」

 

「仕方ない

じゃ、早く市街地にいこう」

 

「「「おー!」」」

 

掛け声と共に三人は市街地へ向かっていく

 

私は、彼に近づく

 

彼の右手を胸の上に乗せる、本当は左手を組み合わせたかったが、左手は吹き飛んでしまっている

 

その時、私は右手に何か握っているのに気が付く

それは彼と彼の家族と思われる写真だった

 

「長月~

早く、置いていっちゃうよ~」

 

「...すぐいく」

 

私は写真を手に取ると、手を合わせ皐月達に合流するため爆発音と発砲音が鳴り響く市街地へ足を踏み入れた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

函館の市街地を四人の少女は走る

所々、亡骸が転がっているが気にせず走る

普通、か弱い子羊のように怯えながら必死に逃げていると思うだろう

だが、少女達目を見れば分かる

か弱い獲物を何処までも追い詰める野獣のような目をしていることに

 

「暁...

金剛さんから命令だ...

この付近にいる()を掃討しろと...」

 

「了解よ

横須賀第一鎮守府、第六駆逐隊は掃討を開始する

雷、電はペアで行動しなさい

私とヴェルは単独で

何か危機に陥ったら独断専行せずに無線で教えること

何か他にあるかしら?」

 

「ないわ!」

「なのです」

「Нет проблем(問題ない)」

 

「なら、行動開始よ!」

 

雷と電は嬉々として建物の中へ入っていく

暁も違う建物に入る

 

響はポツンと一人で立っていたが暫くすると来た道を戻り、一つの家屋の敷地に入る

 

家屋に入ると地下へ続く階段がある

響は地下へ降り、躊躇いもなくドアを開ける

 

「......」

 

そこには数十名の子供や女性が隠れていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

響は黒い制服だった物を着た何かを引きずり火の前まで運び火の中に投げ入れる

炎の光によって白く透き通るような髪は赤く染まっている

かなり苦戦したのか響の制服には返り血がべっとりと付き、左肩には刃物で斬られた傷がある

 

「あ、ヴェル!

無線繋がらなかったから心配したのよ?」

 

暁が響を見つけ、駆け寄る

 

「ごめん...

ちょっと、無線の調子が悪くて...」

 

「全く、まだ明石さんに見てもらってなかったの?

この前も突然繋がらなくなっちゃったんだから、ちゃんと調べて貰わなきゃ駄目じゃない!」

 

「...忙しかったんだ」

 

「まあいいわ

所で、なんでニンゲンの死体を燃やしているの?」

 

「金剛さんから疫病が発生する原因になるから燃やせ と命令されたんだ...

だからだよ...」

 

「ふーん

ならいいのよ」

 

そこに雷、電が合流する

 

「ここら辺のは粗方掃討したわ

戦い方も知らない民間人でつまらなかったわね」

 

返り血に染まった錨を持ちながらつまらなそうに報告する

 

「......じゃあ行こうか」

 

「ええ」

「そうね!」

「なのです」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「憧れあの人に、私近づけたってちょっと感じたい~」」

 

雪道を軽自動車がかなり危なっかしい運転で進んでいく

 

「大丈夫っぽい?」

 

軽自動車には二人のフードを被った少女と妖精さん達が呑気に歌を歌いながら雪景色を眺める

 

「お茶も、お風呂も、素敵な時間ね!

そーだよ、今夜は~お布団で話そぉ!」

 

「「そんな!ダメですぅ」」

 

二人は楽しそうに歌う

 

暫くすると、歌を歌いきり、運転していない方の少女が運転している少女に話しかける

 

「千歳基地まで後、どれくらいっぽい~?」

 

「まだまだ、だよ~

そもそも、ちゃんと作戦覚えてる?」

 

「大丈夫!

千歳基地に別動隊として潜入すればいいっぽい!!」

 

「間違いじゃないけど...」

 

運転している少女は、苦笑いする

 

「とにかく、これ以上犠牲を出さないように頑張らないとね!」




最後まで読んで下さりありがとうございます

投稿遅れて申し訳ありませんでした...
ながながのお話に苦労しまして(言い訳)

もうそろそろ中盤になりそうですね
思っていたほど長くなりそうになかったので

次の更新がいつになるか分かりませんが、のんびり待って頂けると幸いです!
後、質問等あったらいつでも受け付けています

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。