東方妄想譚 ~ドタバタ☆私立幻想学園~   作:さとゴン

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今回は完全なる説明回です

いつも二千文字に満たない程度なのに今回は四千文字…

無駄に長くなってすみません<(_ _)>






第3話  校長先生のおはなし

 

 

 

 「…自分の願望を叶える程度の能力、ですか。」

 

 「そうよ、それがあなたの能力なの。」

 

 マジか。あまりに凄すぎて何も言えない。というかなんでそんな凄まじい能力を僕が持ってるんだよ。

 

 「まあ、いきなりそんなこと言われても信じられないでしょうね。」

 

 「信じられないってことはないですが…。そういえば、どうして今まで能力が発動したことが無かったんですか?」

 

 「それも含めて、全て話すわ。」

 

 

 

 

 

 ~Said 紫~

 

 あれは10年以上前の話。私は外の世界から異質な力を感じてとある村に行ったの。

 

 その村は山の奥のほうにある隠れ里みたいな所だったわ。今の外の世界、その村があった国では考えられないほど閉鎖的な村だったの。

 

 そこで見たのは私も知らない力をその身に秘めた一人の赤ん坊。それが叶也、あなたよ。

 

 あなたはどういうわけか生まれた時からその‘力’、あなたの言葉を借りるならエネルギー、を有していた。そしておそらく能力も。

 

 しかし、当時の私にはあなたの持つ能力には気づけなかったの。すごい力を持った存在が外界に現れた、どうせ外の世界では力の存在になど気づけない、少し様子を見て問題が無いようなら放っておこう、そんな風に考えていたわ。

 

 けれども事態は私の考えた通りには進まなかった。ここから先の話は実際に私が見たわけじゃないの。あなたが幻想郷に着いてから調べたことよ。

 

 私はもう既に、あなたへ対する不安はあまりなかったから…。

 

 ある日ついにあなたはその能力を発動させてしまった。

 

 あなたがしたのはそんなに大したことではなかったそうよ。ただ欲しいものを生み出しただけ。

 

 でもあなたの村はそんな力の存在を許さなかった。

 

 あなたは村の蔵の中に監禁されたわ。それだけで済んだのはあなたのお父様が村の長に掛け合ってくれたおかげらしいわ。

 

 あなたも能力のおかげで退屈することは無かったし、毎日お父様が会いに来てくれた。だから蔵の中にいることに文句も言わず、その生活を続けていたわ。

 

 でもある日、あなたのお父様が亡くなったの。突然の病死だったそうよ。

 

 その時からあなたに対する扱いが変わったわ。

 

 もともと迷信深く排他的な村だったせいか、あなたが能力を使った時からあなたを悪霊憑きとして恐れていたの。

 

 さらに、あなたのところに毎日通っていた父親が突然死んだことから、あなたは呪いをばら撒いているという噂まで飛び交うようになったわ。

 

 そして村人はあなたに暴力を働くようになった。

 

 ある者はあなたが悪霊憑きだからという理由で。

 

 ある者は自分の家族が死んだのはお前のせいだと言いながら。

 

 ある者はむしゃくしゃしたからというだけで。

 

 これは推測になるのだけど、おそらくあなたはこの時願ったのだと思う。

 

 ここから逃げ出したいと。こんな扱いを受けることがない場所に行きたいと。

 

 そしてあなたは自分の能力に導かれて幻想郷に辿り着いたわ。

 

 その時に私は先代の博霊の巫女と一緒にあなたの力と能力を封じたの。

 

 そのあとはあなたも知っての通り。私があなたを保護して、時は流れて今に至るというわけよ。

 

 ~Said Out~

 

 

 

 

 

 …なんかすごい話だったな。まあ僕の話なんですけど。それにしてもいくつか気になることがある。

 

 「紫さん、いくつか質問してもいいですか。」

 

 「ええ、勿論いいわよ。」

 

 「じゃあまず最初なんですが。どうして幻想郷に着くまでの間、僕は能力を使わなかったんでしょう?この能力があれば暴力から身を守ることもできたでしょうし。」

 

 「それは、あなたの能力を使うための条件が満たされていなかったからだと思うわ。」

 

 条件か。やっぱりこれだけ大きな力を行使するにはある程度の制限があるということだろう。

 

 「ちょうどいいからあなたの能力の条件も説明するわ。まず一つ目はエネルギーの消費。願いの大きさにもよるけど今回みたいな世界を改変するレベルの力の行使となると、あなたの持つエネルギーのほとんどが消費されるわ。」

 

 ふむふむ、まあこれは当然だろう。魔法には魔力が、妖術には妖力が必要になるように僕の能力も当然何かしらの動力源が必要になる。

 

 「二つ目は強い願望。心の底からの願い、というほど強くなくても構わないけど、あなたが本当に望む願望にしかこの能力は発動しないわ。」

 

 なるほど、なるほど。確かに僕は本を読むたびに外への憧れを強くしていった。最近読んでいた本から、学校に通ってみたいという願望も生まれていたしね。

 

 「そして最後の三つ目は、願いを言葉にして表すことよ。あなたの発する言葉が引き金になるわ。」

 

 なんか最後だけ普通だな。でもこれで一つ分かった。この異変は僕が博霊神社で呟いた言葉が原因で引き起こされたわけか。

 

 

 「おそらくだけど、あなたは三つ目の条件のことに気付いていなかったと思うの。それに暴力の最中や後は痛みで願いを口にできなかったのかもしれないわ。もう一つの可能性はエネルギー不足ね。結界に覆われている幻想郷に辿り着くにはそれなりのエネルギーを用するわ。何らかの理由でエネルギーが充填されて幻想郷に辿り着いたのかもしれない。真相はわからないわ。」

 

 そうか。紫さんが分からないなら仕方がないか。それにしても、結局僕の能力には制限らしい制限がなかったな…。まあ気にしても仕方がないし、次いってみよー。

 

 「じゃあ次なんですが、どうして今回僕の能力が発動したんでしょうか?」

 

 「これも推測だけどあなたが手に取った黒い珠のせいよ。確か何代か前の博霊の巫女が強力な結界を使う妖怪を退治するために使った珠で、結界や封印の破壊、その他にも解呪等に使えるものがあったはず。多分その珠が、あなたに掛かっていた封印を解いたのよ。」

 

 そんなにすごい珠だったのか。マジで値打ものじゃないか。…この異変が終わったら霊夢に謝ろう、土下座で。

 

 「あと、どうして僕は幻想郷に来る前の記憶がないんですかね?」

 

 「…ごめんなさい。それは私にもわからないの。」

 

 「あっ、いや、いいんです。なんとなく気になっただけなんで。」

 

 紫さんにとても申し訳なさそうな顔をさせてしまった。実際そこまで興味のあることではないからなぁ。なんだかこっちも申し訳ない気分になってきた…。

 

 「そ、それじゃあ最後の質問ですけど、どうやったら異変は終わるんですか。」

 

 流石にこのままにはできないだろう。僕的にはもう少しこの世界を堪能したいところだが、そういうわけにもいかないしね。

 

 「それなんだけど…。」

 

 おや?歯切れの悪い言葉が返って来た。そんなに難しい条件でもあるのかな?

 

 「異変を終わらせる方法はおそらく二つ。一つはあなたの能力で世界を元に戻すこと。」

 

 なるほど。目には目を、歯には歯を、能力には能力をってことか。確かにこれならてっとり早く元の幻想郷に戻せる。

 

 「でもこの方法は使えないわ。理由は二つ。あなたがエネルギーを使い切っていること。そしてあなたの性格から考えるに元の世界に戻りたいという強い願望は湧かないだろう、ということよ。」

 

 確かに、僕はかなりこの世界を楽しみたいと思っている。まさか僕の願望が異変解決を妨げるとは。

 

 「もう一つの方法は、あなたが学園生活を楽しむことよ。」

 

 「へ?」

 

 「この世界はあなたの‘学生生活を送りたい’という願望から生まれているわ。だからあなたはただ楽しめばいい。学生として生活していればいずれは卒業を迎えるわ。そうすればあなたの学生としての生活は終わり、元の世界に戻れる…はず。」

 

 これは、つまり、…僕得な展開ktkr!!って感じかな?あまりに話が大きすぎて理解が追い付かないけど、ようは僕は夢の学園生活を送れるということなのだ!

 

 「あれ?でも紫さんの‘境界を操る程度の能力’で何とかできちゃったりしないんですか?」

 

 「それは無理なのよ…。あなたの能力はこの世界を作るとき全ての人間や妖怪、さらには神などあらゆる存在に影響を及ぼしたわ。だから今この世界にいる者たちは皆、異変に気づいていないの。私はあなたの能力に対するお守りを常に持っていたからこうして記憶は無事だけど、この学園の校長の役割を押し付けられたわ。そして私の能力は危険とみなされたのか、今じゃスキマを開くことくらいしかできないの。」

 

 うげっ、僕の能力ってそんなことまでできちゃうのか。でもこれで確実に僕はこの世界を楽しめるということだ。

 

 「というわけで明日からは学生としてこの学園に通うことね。まあ妖怪にとっては一年や二年くらい大した時間じゃないし、折角だから私も楽しませてもらうわ。」

 

 なんだかんだで紫さんもノリノリだ。まあ紫さんにとってはこれも珍しいイベント程度のものなのかもしれない。

 

 「じゃあ、僕はこの後どうすればいいんですかね?始業式ももう終わるだろうし。」

 

 「そうね…。今日はこの後クラスごとにホームルームをして下校だから、今から行けば上手くホームルームに合流できるんじゃないかしら。」

 

 「詳しいですね。」

 

 「だって私は校長先生ですもの。」

 

 紫さんはウインクしながら僕にそう答えた。

 

 「あと、これを持っていきなさい。」

 

 そういって手渡されたのは綺麗な白色の数珠だった。

 

 「それは先代の博霊の巫女が異変の後に置いて行ったものよ。なんでもあなたの能力の発動を抑えるものらしいわ。今はエネルギーが切れてるから能力も使えないけど、そのうち回復してしまうんだから絶対に身に着けておきなさい。」

 

 紫さん曰く、寝る時も風呂に入るときも外してはいけないらしい。少し不便だけど仕方ないか。

 

 「それにしても‘あの人’も能力の影響を受けてないんですか。」

 

 「ええ、何事もなかったようにここに現れて、そのまま何処かに行ってしまったわ。」

 

 先代博霊の巫女にして、霊夢の育ての親。

 

 例え世界が滅んでもあの人だけは生き残るだろうと思わせるような人物。

 

 前に僕は幻想郷で一番強いのは霊夢だと思うといったが、あの人は世界中のどんな生物よりも強いだろう。そんな超越者。

 

 「とにかく。これで言うべきことはすべて言ったわ。早く行かないとホームルームに遅れるわよ。」

 

 「おっとそうでした。じゃあ紫さん、行ってきます!」

 

 

 

 

 

 何はともあれ、こうして僕の学園生活が始まった。

 

 

 

 

 




やっぱりどこの世界も校長先生のお話は長くなるものですね(笑)

今回の話を読んで疑問や質問が生まれた人はどうぞ感想で質問してください

もしたくさん質問が集まったら質問に答えるためのコーナーを後書きに作りますのでどしどし送ってください

あと活動報告のほうにもいろいろ書いているので時間がありましたら是非ご覧ください


御意見、御指摘、御要望、お待ちしております。


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