結局今回も桜の描写が一瞬しかなかったorz
今僕は窮地に立たされている。
といっても悪漢に襲われているとか、雷や竜巻みたいな天災に見舞われているわけではない
じゃあいったい僕はどうして危機に瀕しているのかというと―――
「私自ら作ってきたお弁当よ!さあ、存分に味わいなさい!」
「そんな不良天人が作ったものより私のお弁当の方が美味しいわ。食べてみなさい」
「本の虫のパチュリーに料理なんてできるのか?精々レシピ本を読んだことがあるくらいだろ。それよりも私が作ったお弁当の方が絶対に美味しいはずだぜ」
「あんただって普段人の家のご飯をつまみに来てばっかりで碌に料理なんてしないでしょ。叶也はいつも通り私のご飯を食べるのよ」
「いえ、叶也も幼馴染である霊夢さんの手料理は食べ慣れている筈です。ここは私のお弁当をどうぞ」
目の前の女子5人に詰め寄られているせいなんですよ。
5人とも鬼気迫る形相でこちらに詰め寄っている。
チルノたちが腰を抜かして動けなくなってしまうほどだ。大ちゃんだけはなんだか悔しそうな顔をしているけど。
なんだかわからないけどお弁当を食べればいいの?それだけで僕はこの緊迫感あふれる状態から抜け出せるのか?
ならば!
「お弁当なら食べるからみんな落ち着いてよ!」
ピタリ
まさにそんな擬音が当てはまる様に全員の動きが止まった。
そして彼女たちの視線がすべて僕に集まる。
「あ、えと、順番に食べさせてもらうから、できればじゃんけんとかで順番を…」
「「「「「じゃんけん、ポン!」」」」」
僕が言い終わる前にじゃんけんが始まった。
なんだかみんな微妙におかしいけどどうしたんだろ?
僕が頭を悩ませているうちに、じゃんけんは決着した。
「ふふん、やっぱり私の勝ちね」
一番は天子、やっぱりこういうのは強いな。
「まあ、私は順番なんてどうでもいいんだけど」
二番は霊夢か。
「そんなこと言うなら譲ってくれよ…」
三番は魔理沙、霊夢の言うとおり順番に拘る必要はないと思うんだけどね。
「できるだけ早く食べてもらわないとまた邪魔が入りそうです…」
四番は妖夢、なんだか悲痛な面持ちだ。
「ふふふ、私の秘密兵器を味あわせてあげるわ」
最後はパチェ、何故だろう、今の彼女からは新薬を作っている時の永琳さんと同じ気配がする。
「それじゃあ、天子のから…ん?」
箸に手を伸ばそうとしたとき、僕の袖が引っ張られていることに気が付いた。
「あの、叶也さん私もいただいていいですか?」
そう聞いてきたのは大ちゃんだった。
「僕は構わないけど…」
言いながら天子の方を見る。もともとこれを作ってきたのは天子だし、僕が決めることでもないだろう。
「私は構わないわよ。なんならそこにいる氷精たちも食べなさい」
「たべるのだー」
「しょうがないわね、ぐるめなあたいが食べてあげるわ!」
「天人の料理は~、天にも昇る味~♪」
「……ライバルの実力は知っておかないと」
最後の大ちゃんの呟きはよく聞こえなかったけどみんなも一緒に食べるようだ。
「それじゃあ、いただきます」
「「「「いただきます」」」」
そして天子の弁当を見る。
重箱の中に並んだ料理に僕は違和感を覚えた。
「天子、これは何?」
「これは天界の桃を使った桃まんね」
「じゃあ、これは?」
「それは天界の桃を使ったサラダよ」
「それじゃあ、これは?」
「天界の桃を使ったパスタ」
そう、彼女の料理にはどれもふんだんに桃が使われていた。
「おいしーのだー!」
「なかなかやるわね!」
みんなの反応を見るにおいしいんだろうけど、若干抵抗がある。
とはいえ食べないという選択肢はないので意を決して箸を伸ばす。
「はむ、もぐもぐ…………………おいしい」
「でしょ!!」
最初は桃を使った料理に何とも言えないものを感じていたが、食べてみたら案外おいしい。
桃の自然な甘みが他の食材と見事にマッチしている。
「まさか天子がこんなに料理上手だったなんて…」
「今回は私の故郷の料理を作ったの。だから不味いわけがないわ!」
天子のトンデモ理論はいつものことだが、今回はおいしいことを認めざるを得ない。
ある程度天子のお弁当を堪能したので次に行くか。
「じゃあ、次は霊夢のお弁当をいただくよ」
スッと霊夢は無言でお弁当を差し出してきた。
中身は卵焼きや唐揚げなど一般的なお弁当の具である。
どれを食べるか一瞬悩み、卵焼きを口に入れる。
「うん、やっぱり霊夢の料理はおいしいね」
「別に、お世辞はいいわよ」
いつも通りの返答が返ってきた。本当においしいんだけどな。
「くっ、さすが霊夢さん。この煮物も味がしっかりと染み込んでいてとてもおいしい」
大ちゃんも絶賛しているし、何故か全身から敗北感を漂わせているが。
他のおかずも食べてみたけどやっぱりおいしい。
「こんなにおいしい料理が作れるんだし、霊夢はいいお嫁さんになれるね」
その瞬間、霊夢は顔を真っ赤にさせて頭から湯気をシューシュー出し始めた。
「ば、馬鹿なこと言ってないでさっさと次の弁当でも食べに行きなさい」
あれ?おかしなこと言っちゃったかな。前に萃香さんがこのセリフを言ってあげると女の子は喜ぶって言ってたんだけど。
とりあえず次の弁当に向かった。
「ほら、私のお弁当」
少し赤くなりながら魔理沙が差し出してきたのは少し大きめのバスケットだった。
「何がいいのかわからなかったから、サンドイッチを作ってきたぜ」
意外だ。魔理沙のことだからきのこ尽くしのお弁当でも作ってくると思ってた。
「だ、黙ってないで早く食べろよ」
「そうだね、いただきます」
もぐもぐ、うん普通においしい。マンガみたいに見た目だけよくて中身が毒物みたいな展開ではないようだ。
「うん、おいしいよ。魔理沙も意外と料理上手だったんだね」
「意外とは余計だぜ。でも……うん、喜んでくれたみたいで何よりだ」
そういってはにかむ魔理沙に少しドキッとさせられたのは秘密だ。
「こんなに料理上手なら、私の屋台でお手伝いしてもらいたいわ」
みすちーがそう呟いた。こっちの世界でも屋台を経営してるのか?
「手伝うのは構わないが、私は高くつくぜ?」
「所詮この世は金次第~♪残念無念また今度~♪」
そんなやり取りも織り交ぜつつ、魔理沙のお弁当を食べていった。
次は妖夢のお弁当か。
「きょ、叶也。どどどどうぞ」
腕をがくがく振るわせながら妖夢が弁当箱を突き出してきた。
何をそんなに緊張しているのか。
「それじゃあ、いただきます………あれ?」
ふたを開けたその中は、見事に空っぽだった。
「妖夢、これ」
「どうしました?……え!?」
弁当箱の中身を見せると妖夢も驚愕していた。この反応からするに新手のいじめではないようだ。
「な、なんで……」
呆然とする妖夢。まあ、たぶん幽々子さんが食べちゃったんだろ。それくらいしか思いつかない。
真っ白になった妖夢を不憫に思いながらも僕は最後のお弁当に向かった。
「よく来たわね、これが私のお弁当よ!」
そういって差し出されたものを見て僕は思わず後ずさった。
箱の中に詰め込まれていたものは今まで僕が見たことのないモノだった。
色は濃い紫、独特の臭いを放ち、常に蠢いている。
………これは食べ物なのか?
「ねえ、パチェ。これって何?」
「よく聞いてくれたわね。話せば長くなるから少し端折りながら説明するわ」
なぜ料理の説明でそんなに時間を使うんだ…。
「この料理は全ての食を極めたと言われている人物が書き記した『ベルゼブブの書』の一番最後の章に記されていたものよ」
絶対おかしいでしょ。なんで料理の本にそんな物騒なタイトルをつけてるの?
「その本には常人では成し得ない究極にして最強の料理として綴られていたのだけど、まあ私にかかればそれを再現するのも簡単だったわ」
分からない、僕にはこれが完成品なのか失敗作なのか分からないよ。
「ちなみに味見はした?」
「いいえ、叶也に一番に食べてもらいたくて」
くそ、退路をふさがれた!これじゃ、断りにくいじゃないか!!
でも待てよ。億が一の確率でその本が正しくてこの料理(?)が美味しい可能性もあるかもしれないじゃないか。
周りからは既に大ちゃんたちもいなくなっていた。おそらく何かしらの危険を感じ取ったのだろう。
これを食べなきゃ終わらないんだ。…もうやるしかない!
「い…いただきます!!!」
触手を伸ばしてきて抵抗してくる料理を無理矢理力でねじ伏せて口に運ぶ。
「くっちゃ、くっちゃ、ん?ねばねばするけど案外………ぶはっ!?」
強烈な刺激が口の中に襲いかかる。まさに味によるフルバースト。さらに鼻にも痛烈なにおいが行き渡る。もはや呼吸もままならない。足ががくがくと震えだし、立っていることもできなくなりその場に倒れる。その他いろいろな異常が僕の体を襲ったが僕は身動き一つとることはできなかった。
倒れた姿勢のまま空を見上げる。舞い散る桜の花びらを見ながらふと思う。
(そういえば、今日さくらをしっかりと見たのはこれが初めてだな…)
そんなことを思いながら、僕は意識を手放した。
こうして僕の花見は終わった。
因みにそのあと花見に来ていた永琳さんのおかげで僕は一命を取り留めた。
次回予告(?)
やっほー、てゐちゃんだよ☆彡
作中ではそろそろ五月くらいになるかな
五月は特にイベントもないし作者も話が考え付いてないみたい
たぶん来週から少しの間新キャラ登場習慣になるんじゃないかな
感想とかで出して欲しいキャラを書いたら案外登場するかもよ?
てなわけで第二十一話は「進撃の新聞部」
次回は天狗たちの活躍に、ピックアップ!
※必ずしも次回予告通りになるとは限りません。ご了承ください
ご意見ご指摘ご感想お待ちしてます
活動報告もよろしくです