2014.1.12
レミリア様の口調を改訂
~SIDE 魔理沙~
学校の図書館からの帰り道、放課後の廊下をパチュリーと二人で歩いていた。
「いやー、読んだ読んだ。やっぱりここの図書館はいい本がたくさんあるな」
「そうね、あれだけでもこの学園に来た価値があったというものよ」
そうそう、この学校の一番いいところかもしれないぜ。…ってあれ?
「パチュリーは本だけが目当てだと思ってたけど、他にもこの学園に来た理由があるのか?」
「むきゅ!?」
パチュリーが素っ頓狂な声を出した。よく使うけどあのむきゅってのは口癖なのか?
「そ、そういうあなたこそ、この学校を選んだ理由はあるのかしら?」
「うーん、特にないけど…叶也も霊夢もこの学校にするって言ってたしな。だから私もここにしたんだよ」
「…そういえばあなたと叶也は幼馴染だったわね」
「ああ、そうだぜ。あと霊夢もな…ってパチュリー、なんでそんな怖い顔してんだ?」
何故かすごい剣幕で睨まれてた。私なんかしたか?
「別に何でもないわ」
「そ、そうか」
そのまま雑談を交わし、曲がり角に差し掛かった時だった。
「「あっ」」
~SIDE 霊夢~
放課後の教室で私と妖夢は向かい合っていた
「これで終わりですか?」
「そうみたい。悪かったわね、私の仕事を手伝ってもらって」
「いいえ、今日はちょうど時間も開いていたので」
「そうはいっても、あんたの主人が待ってるんじゃないの?」
「それが、今日は用事があるらしく晩御飯はいらないと」
あの食欲の塊みたいな生き物(正確には死んでるけど)が晩御飯までに帰らないなんて。明日は槍でも降るのかしら。
そんなことを考えていると妖夢が私に近づいてきた。
「それで、あの、約束の…」
「ああ、はいはい、何でも答えてあげるわよ。何が聞きたいの?」
そういえば、妖夢が私の手伝いをするときに「で、できれば手伝いが終わったら聞きたいことがあるんですが…無理にとは言いませんが!」とか言ってた気がする。
一体なにかしら?
「きょ、叶也の好きな食べ物とか、知ってますか?」
「………はあ?」
なんとも小さい声でそんなことを聞いてきた。
「あ、いえ、これはですね…なんとなく、そう何なんとなく気になっただけで!特に深い意味などはなくてですね!」
「アイツはとくに好き嫌いなくなんでも食べるから…というか、あんたもそれなりに叶也とは長い付き合いでしょ。私に聞かなくても分かるんじゃないの?」
「私はあまりそういう趣味嗜好の話はしてこなかったので…。いつも剣のことばかりで」
ああ、そういえば叶也もそんなこと言ってたわね。小さい時から剣を握らせられたとか。冗談かと思ってたけどこの感じじゃ本当みたいね。
「まあ、アイツのことを聞きたいなら私じゃなくて本人に聞くのが一番ね。たぶん、何でも正直に答えてくれるわよ」
「…それができないから聞いてるのに」
また小さな声で何か言った様だけど、今度は聞こえなかった。
帰り支度も終え、そろそろ帰ろうとした時だった。教室のドア開き誰かが入ってきた。
「「え?」」
~SIDE 叶也~
レミリアさんと別れたあと、僕たちは目的もなく校内をぶらついていた。
「それにしても人に会わないな。フランちゃんは退屈じゃない?」
「お兄様と一緒なら何してても楽しいよ!」
なんていい子なんだフランちゃん。僕の日常をひっちゃかめっちゃかにしてる人たちにも見習ってほしいね。
「でも、どうして放課後に残ってたの?特に用事はなかったんでしょ?」
「今日は日傘を忘れちゃって…」
なるほど、確かに外を見ると朝とは打って変わって雲一つない空になっている。
吸血鬼にはきつい天気だ。
午前中は曇りだったから寮に置いてきてしまったのか。
「お姉さまを一人残していくのも可哀そうだったから」
って、忘れたのはレミリアさんだけなんだ。あの人は普段はあんなに厳かな言動をしてるのに、どこか抜けてるんだよね。
「だから暗くなるまでお兄様と遊んでる!」
「そうだね、保健室に戻るころには日も沈んでるだろうし」
それにしても今度はどこに行こうか。あと十分くらいだからあんまり遠くに行っても戻るのが遅くなるし。
そんなことを考えながら曲がり角に差し掛かった時だった。
「「あっ」」
二つの声が重なって響いた。
そこには二人の魔法使い、魔理沙とパチェがいた。
さてと、二人は僕のこの姿を見てどう反応するのかな?
「フランがこんな遅くまで残ってるなんて珍しいな。ところでそこのカッコいいお兄さんは誰なんだ?」
魔理沙に睨みつけられた。
あれ、もしかして僕疑われてる?いたいけな少女をかどかわす変態さんだと思われてる?
パチェの方に視線を移すとこちらも少し冷たい目をしている。
「いや違うんだよ!僕は不審者とかではないくて…」
「不審者はみんなそういうんだぜ」
「第一、校内を執事服でうろつく人間がまともだとは思えないわ」
おっしゃる通りだ!?この服のせいでこんな誤解を招くとは…。
どうやって誤解を解こうか。こうなっては僕が叶也だってことを言っても信じてもらえそうにないし…。このままじゃ、弾幕まで飛んできそうだ。
その時、僕の苦悩を察してくれたのかフランちゃんが助け舟を出してくれた。
「ちょっと待ってよ二人とも!」
「ちょっと退いててくれるか、フラン。なあに、すぐに済む」
「そこのあなたも大人しくしててくれるかしら。少し眠ってもらうだけだから」
なんか傷つくなぁ、これ。
そしてフランちゃんは誤解を解くためにもう一声かけた。
「この人は、お兄様なんだよ!!」
「「………はあ!?」」
一瞬の静寂のあと、二人の驚きの声が上がった。
「ごめん、まさかそんなことになってるとは思わなくて」
「私もすまなかっわ。てっきり紅魔館の執事を装ってフランに近づく不届き者だと思って」
「はは、もういいよ。最初から何とも思ってないから」
ホントはちょっとばかり精神的ダメージを負ったけど、まあそれだけだ。二人の申し訳なさそうな顔を見てたらそんなことも気にならなくなってくる。
「それにしても、これが十年後の叶也か…」
「むきゅぅ…」
視線が突き刺さる。そんなにまじまじと見られると恥ずかしいんだけど。
二人の方を見ると慌てながら目を逸らす。さっきからこの繰り返しだ。
「…大人になると更にかっこよくなるんだな」
「…とっとと、魔法使いにして不老にさせようと思ってたけど考えを改めるべきかしら」
「あのぅ、二人とも?」
またも視線が気になって声をかける。
「な、何でもないんだぜ」
「き、気にしないでちょうだい」
なんとも挙動不審だな。
気晴らしにフランちゃんの方を見ると、えへへ、と微笑みで返してくれた。癒される。
「それにしても、二人はどこに向かってるの?」
「魔理沙が教室に忘れ物をしたらしくてね。それを取りに行くところだったのよ」
「そうだったんだ。って、僕も荷物置きっぱなしだったよ」
「じゃあ、ちょうどいいし一緒に取りに行こうぜ」
「そうだね」
そのまま、四人で教室まで歩いた。と言っても、すでに結構近くだったので一分もかからず着いたんだけど。
「じゃあ、ちょっと取ってくるから」
「二人はここで待っててくれよ。すぐに戻ってくるぜ」
そして教室に入った。
中にはまだ残っていた二人の生徒がいた。
「「えっ?」」
突然現れた執事服の男に驚いたのか、二人そろって声を漏らした。
なんかデジャブだな。
「あんたはまた厄介なことに巻き込まれてるのね」
「………」
教室にいた霊夢と妖夢にも事情を説明した。この説明も三回目、もはや慣れてきた。
因みに今は全員で保健室に向かっている。なんでも僕がちゃんと元に戻るか心配らしい。
それにしても…
「………」
さっきから妖夢が無言なんだけど何かあったのかな。顔も赤いし。
「妖夢どうかした?」
「あ、いえ、な、なんでもないです!大丈夫です!」
がばっと顔をあげて勢いよく返事を返してくる。
だけど僕の顔を見たあと更に顔を赤くして俯いてしまった。何か呟いてる気もするけどよく聞こえない。いったいなんなんだ?
「お兄様、保健室に着いたよ!」
フランちゃんに声をかけられて前を見ると確かに既に保健室についていた。
「じゃあ元に戻してもらうか」
そう口に出して扉を開けた。
「先生、薬できましたか?」
「あら、ずいぶん人を連れてきてくれたのね。全員薬に興味があるのかしら?」
僕の質問をスルーして、逆に質問で返された。まさかまだできてないのか?
「そんなわけないでしょ。冗談はいいから早く叶也に薬を渡しなさい」
霊夢が強い語調でで永琳さんに言い寄る。なんだか少し機嫌が悪そうに見えるな。
「あら怖い、そんなに怒らなくてもいいじゃないの。それとも、叶也に変な薬を飲ませたのがそれほど気に食わなかったかしら?」
「……そんなこと関係ないわよ。いいからとっとと薬を出しなさい」
「はいはい、これよ」
そういうと永琳さんはポケットから茶色い液体が入った小瓶を取り出した。
霊夢はそれを受け取り僕に手渡してくれた。
「さっさと元に戻りなさい。あんたがそんなんだと、こっちも調子が狂うわ」
「うん、わかった。…あと、心配してくれてありがと」
さっきの永琳さんの言葉が本当なら霊夢は僕のために怒ってくれていたようだ。
だったらちゃんとお礼は言っておかないとね。
「い、いいからさっさと飲みなさい。みんな待ってるんだから」
そういうと霊夢はそっぽを向いてしまった。少し顔が赤い。もたもたしてるから怒っちゃったかな?
「じゃあ、ええっと、いただきます?」
少し緊張しながら薬を飲んだ。
味は…まあ、大人になる薬と同じだったとだけ。
「………戻った?」
周りの反応を見るがまだ変化は起きていないようだ。
「失敗なのか?……って熱い!身体が…!!」
何だこれ!熱湯に頭から突っ込んだみたいに全身があつい!
そして僕の体が脈動するかのように震えだした。
なんだこれ!?なんか気持ち悪いぞ!?
全身の熱が収まるころにようやく体の震えも止まった。
「こ、今度こそ戻った?」
そう聞くとてゐが姿見を持ってきてくれた。
そこにはちょっと背の小さい少年、つまり僕が映っていた。
「やったあああああ!!」
よ、よかったぁ、実は少し不安だったんだよ。表には出さないようにしてたけど。
周りのみんなも安堵した様子で僕を見ている。
…本当だったらこのままハッピーエンドだったんだけど、このとき僕は失敗を犯してしまった。
このとき、体が縮まったせいで服がぶかぶかになっていた。そんな状態で飛び上がって喜んだらどうなるか。
まあ簡単に言えば、つまずいた。
ぶかぶかになったズボンの裾をふんずけて盛大にこけた。
そしてさらに僕のまわりにはたくさんの人が居たわけで、そのうちの一人、フランちゃんに倒れこんでしまったわけだ。
「うわああああ!?」
「きゃああああ!?」
いててて、またやってしまった。
「お、お兄様、大丈夫?」
「うん、フランちゃんこそ怪我はない?」
フランちゃんは笑いながらうなずいた。
いや、よかった。今日は二度目だからね。かなり申し訳なく思う。
…ん?二度目?
「八雲、叶也」
こ、この声は…
「貴方はまったく懲りていなかったようね…」
何故か保健室のベッドからレミリアさんが這い出てきた。いやそんなことよりこの状況は…
「どうやらもう一度仕置きをしなければならないようだわ…」
「いや、これは事故と言うかなんというか…「言い訳は不要!!!」
あ、終わった。もう無理な流れだ。
「さすがに二度目は手加減してやれないかもしれないなわ」
「いやほんと許して下さい!と言うか、なんでみんなもスペルカードを構えるの!?みんなは見てたよね!ね!!」
次の瞬間、僕の目の前で色とりどりの光がはじけた。
~叶也たちが来る少し前~
ヤッホー、てゐちゃんだよ!
しかし、あたしの出番が全然ないなんて作者は何を考えてるんだろうね。
みんなだってあたしの活躍劇を楽しみにしてただろうに。
これだから小説初心者の作者はダメダメだね。読者のニーズってものが分かってないんだよ!
まあ、作者に対する愚痴はこれくらいにしておこうかね。
「で、お師匠様。なんでこの吸血鬼は焦げ付いて気を失ってるんですか?」
「うどんげと同じ薬を飲んだからよ」
「ちょっ、なんであんな爆薬飲ませたんですか!」
「私が無理矢理飲ませたわけじゃないのよ?でも彼女が私の話も聞かないで一気に飲んでしまったの。止める暇もなかったわ」
あ、今うっすらと笑った。絶対確信犯だ。
はあ、こんな大妖怪に喧嘩を売らないでほしいよ。
売るにしてもあたしとは関わりのないところでやってほしいもんだね。
「吸血鬼だからどうせすぐ目覚めると思うけど、一応ベッドに寝かせといてちょうだい」
「はい、全力でやります」
まあここできちんと看病しとけばあたしの株は上がるかもしれないし。
強い者にはきっちりごまをすらないとね!
~SIDE OUT~
次回予告(仮)
寮に戻った叶也を待っていたのは本日最後の厄介ごとだった。
第16話、厄日の最後
次回は妖夢のご主人様に、ピックアップ!
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