東方妄想譚 ~ドタバタ☆私立幻想学園~   作:さとゴン

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先週更新できなかったので今週はもう一本


2014.1.12
レミリア様の口調を改訂


第14話  大人の世界

 

 「う、うーん…」

 

 思考が定まらない。

 

 確か僕は永琳先生の薬を飲んで、それから気を失ったんだったか。

 

 「ようやく目が覚めたみたいだね」

 

 「てゐ、か。まだ頭がはっきりとしないんだけど、僕ってどうなったの?」

 

 「まあ百聞は一見にしかずって言うし、とりあえずこれ見てみ」

 

 そういうと、てゐは大きな姿見を持ってきた。

 

 そこには一人の男が映っていた。

 

 身長は180㎝を超えているだろう。足が長く、引き締まった体をしている。

 

 顔はきりっとしたイケメンで、髪は腰のあたりまで伸びている。

 

 服は何故か執事服。似合っているけど保健室じゃ場違いだ。

 

 というか、僕の目の前にあるのは鏡で、僕は今その鏡の目の前に立っているんだから…

 

 「えええええええええええええええええ!?これ僕!?」

 

 「あら、起きたのね。調子はどうかしら?」

 

 「調子って、そんなこと言ってる場合じゃないです!僕が別人になってますよ!」

 

 「ふふ、おかしなことを言うのね。あなたは間違いなく八雲叶也よ。ただ少しだけ成長してしまっただけで」

 

 「せ、成長…?」

 

 「ええ、あなたの姿はだいたい十年後くらいのものね。原因は薬の発育作用が効きすぎたせいだと思うわ。それにしてもずいぶん男前になったわね。」

 

 「そうですね、普段はどちらかと言うと可愛い系の顔だったし」

 

 「なんで二人ともそんなに落ち着いてるんですか!僕、大人になっちゃったんですよ!?」

 

 「まあまあ、叶也。五体満足なだけまだましじゃないか。鈴仙なんてまだ目が覚めないんだし」

 

 未だベッドには時折うめき声をあげる鈴仙さんが横になっていた。

 

 「れ、鈴仙さんの話はとりあえず置いといて、これって元に戻れるんですか?」

 

 「戻せるわよ」

 

 「ほ、ほんとですか!じゃあすぐに…「ただし」はい?」

 

 「少しだけ時間が欲しいわね。ほんの一時間くらいかしら。その間校内をぶらついてきてくれる?」

 

 「なんでわざわざこんな時に校内散歩しないといけないんですか…」

 

 「宣伝のためよ」

 

 「宣伝って、何を宣伝するって言うんですか?」

 

 「あなたがこの薬の存在を広めてくれたら、もしかしたらこの薬に興味をもつ人が来るかもしれないもの」

 

 なるほど、モルモットを増やす気か…。普通の人ならそんなヤバそうなことに首を突っ込んだりしないけど、妖怪は人生が長いせいか、面白そうなことには進んで首を突っ込むからなぁ。

 

 本当なら断るところだけど、ここでごねたら元に戻れる薬も作ってくれそうにないし…。

 

 「…わかりました。適当に校内をぶらついてくればいいんですね」

 

 「ええ、物分かりが良くて助かるわ」

 

 「はあ、じゃあ行ってくるんで早く薬を作ってくださいね」

 

 僕はため息をつきながら保健室を後に…

 

 「あっ、そうだ。なんで僕、執事服なんか着てるんですか?」

 

 「私の趣味よ」

 

 「………」

 

 「クス、冗談よ」

 

 正直、冗談に聞こえなかった。

 

 「あなたの服は見るも絶えない姿になってたから、代わりの服を着せただけよ」

 

 「それが何で執事服に?」

 

 「代わりの服を探していてら、奇妙なものを集めるのが趣味の教師が借してくれたのよ。他にはないって言うから仕方がなくそれを着せたの」

 

 学校に執事服を持ってくる教師っていったい…

 

 僕は頭を抱えながら、今度こそ保健室を出た。

 

 

 

 「…なんで宣伝なんて嘘ついて、叶也を追いだしたんですか?」

 

 「あらばれちゃった?まあせっかく面白いことを教えてもらったんだし、お礼としてもっと面白くなりそうな展開にしてみただけよ」

 

 

 

 あの後僕はあてどなく校内を歩きまわっていた。

 

 「適当にぶらつけって言われても、放課後の学校じゃみんな部活とか委員会でいないでしょ…」

 

 「お兄様!」

 

 「ぐっ!?」

 

 いきなり何かが僕の背中に突撃してきた。

 

 「お兄様、朝は大丈夫だった?」

 

 突撃してきたのは、どうやらフランちゃんのようだ。

 

 「まあ、大丈夫だったよ。一応は」

 

 「ホント!よかったぁ」

 

 「だから言ったでしょう。叶也はあの程度でくたばりはしないと」

 

 フランちゃんの後ろから歩いてきたのはレミリアさんだった。どうやら朝の怒りは鎮まっているらしい。

 

 「って、二人とも僕の格好見て何とも思わないの?」

 

 「ん?ああなるほど。その恰好を見るに、ついに紅魔館で執事として働く気になったのね」

 

 「ホントに!お兄様もうちに住むの!!」

 

 「いやそうじゃなくて!!」

 

 「スカーレット家で働くなら見た目にも気を配らなくてはいけないわ。そんな風に髪を無造作にしておくのはよくないわね。今回は特別に私が髪を結ってあげる」

 

 は、話が勝手に進んでいる。

 

 僕が呆然としているうちに、レミリアさんは手際よく髪を結んでくれた。

 

 「簡単にポニーテールにしただけでも少しはまともになったわね。でもいつの間に髪を伸ばしたの?」

 

 「ポニテのお兄様もかっこいいよ!」

 

 「だからそうじゃなくて…僕、いま大人になってるんですけど!」

 

 「ふっ、貴方くらいの年ごろの男は背伸びをしたがるものだけど、自分で言うのは少々格好悪いわよ?」

 

 「そうじゃなくて!!実は…」

 

 ☯成年説明中☯

 

 「…と言うわけなんですよ」

 

 「………本当なの」

 

 「え?」

 

 「その話は本当なのかと聞いているの!!」

 

 「は、はい!」

 

 「こうしてはいられない、私は薬師に少し用ができたわ。………豊胸剤、是が非でも手に入れなきゃ」

 

 そういうとレミリアさんは物凄い勢いで走り去っていった。

 

 また怒らせてしまったのかな?最後になんかぼそっと言ってたみたいだけど。

 

 「お兄様、フランも散歩について行っていい?」

 

 「いいけど…フランちゃんは僕の変化に何も思わないの?」

 

 「うーん、お兄様はお兄様だから」

 

 うっ、なんだか照れるな。僕は照れ隠しにフランちゃんの頭を撫でた。いやぁ、フランちゃんの頭を撫でると癒されるなぁ。

 

 「えへへへ、あ」

 

 ドカン!!

 

 「ふ、フランちゃん?」

 

 その時、さっきまでにこにこしていたフランちゃんが誰もいない廊下にいきなり弾幕を放った。目には少し狂気が宿っている。

 

 「あれ、おかしいな?確かに殺気を感じたんだけど…、ごめんなさいお兄様、驚かせちゃって」

 

 「う、うん。驚いたけど別に大丈夫だよ。じゃあ、散歩を続けようか」

 

 こうして放課後の散歩はフランちゃんを加えて再開された。

 

 

 

 

 

 ~SIDE ???~

 永琳先生のおかげでさらにおもしろいことになってきたね。

 

 でも大人になったお兄ちゃんにはちょっとドキッとしちゃったかも。

 

 そんな風にお兄ちゃんを観察していると吸血鬼の姉妹が現れた。

 

 お兄ちゃんが状況の説明を終えたら、姉の方はどこかに向かって走り出した。

 

 何故かはわからないけど、すごい真剣な顔つきだったなぁ。

 

 それにしてもあの妹の方が気に食わない!お兄ちゃんに抱き着いたり、お兄ちゃんのことお兄様って呼んだり!

 

 そのポジションは私のものなのに!

 

 「えへへへ」

 

 あっ!お兄ちゃんに頭まで撫でてもらうなんて…私だってあんまり撫でてもらったことないのに!!

 

 あふれ出る怒りを視線に乗せて送っていたら、いきなり弾幕が襲ってきた。

 

 「あれ、おかしいな?確かに殺気を感じたんだけど…」

 

 さ、さすが吸血鬼。もう少しで直撃するところだった。

 

 今に見てなさいよ。このお返しはキチンとしてあげるんだから!

 

 そして私の追走劇は再開された。

 

 

 

 




次回予告(偽)
舞台はさらなる佳境へ
剣士、魔法使い、巫女を交えたバトルロワイヤルに!
はたして叶也の未来は…

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