東方妄想譚 ~ドタバタ☆私立幻想学園~   作:さとゴン

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第11話  昼休みの心理戦

 

 

 きーんこーんかーんこーん

 

 

 

 「むっ、もう終わりか。では今日はここまでだ。きちんと復習するのだぞ」

 

 「起立、礼」

 

 いつもの挨拶で授業が締めくくられる。

 

 保健室を出てから今まで、何事もなく昼休みを迎えることができた。

 

 朝は厄日だなんだって言ってたけど、結局あの後は何も起きなかったな。

 

 流石にあんなひどい目にあったんだし、今日はもう何もないだろ。

 

 ……なんでだろう、今のセリフはフラグになった気がする。

 

 ま、まあそんなことよりお昼の時間だよね!今日は誰と食べようかな!!

 

 今日も流たちと食べようか、それとも偶には別の人と食べようか…。

 

 「き、叶也」

 

 「はーい、…って妖夢、なんかあったの?」

 

 なんだかものすごい形相だ。少しデジャブを感じるな。

 

 「あ、あの今日の昼食なんですが」

 

 お昼がどうかしたのかな?

 

 「えっと、その、い、一緒にた「きょうやー、学食行こうぜー。どうせ弁当なんてないだろ?」

 

 妖夢がすべてを言い切る前に魔理沙のセリフが割り込んできた。

 

 「うん、別にかまわないよ。…で妖夢、今何を言おうとしてたの?」

 

 「い、いえ、別に何でもありません。すいませんが私は少し用を思い出したので」

 

 そういうと妖夢はとぼとぼと教室から出て行った。

 

 なんだかわからないけど悪いことをしてしまった気がするな。なんとなく心の中で妖夢に謝る。

 

 そして魔理沙のところに行こうとしたのだが今度は淵に呼び止められた。

 

 「………叶也、呼ばれてる」

 

 「えっ、誰に?」

 

 淵はスッと教室の扉の方を指差す。

 

 「あの人は…」

 

 見覚えがある、というか知り合いだ。

 

 僕は淵にお礼を言って、魔理沙に少し待っててと告げた後に廊下で待つ彼女の下に向かった。

 

 ピンクのショートヘアーにぷかぷか浮かぶ第三の目。こんな特徴を持っている人は幻想郷で一人しかいないだろう。

 

 「何の用ですか、さとりさん?」

 

 そこで待っていたのは地霊殿の主、古明地さとりさんだった。

 

 セーラー服を着ているところを見るにさとりさんもこの学校の生徒か。

 

 「…どうやら、こいしの言っていたことは本当のようね」

 

 「えっ?」

 

 「いえ、何でもありません。少しお話がしたくてお昼を一緒に食べようと思ったんですが、先約があるのでしたら…」

 

 「あー、魔理沙がいても構わないんだったら、いっしょにどうですか?」

 

 「…いつ能力が効かなくなるかもわからないし、早い方がいいかしら」

 

 今日のさとりさんはなんかおかしい。よく聞こえないけどブツブツと独り言を呟いてるし。悩み事でもあるのかな?

 

 「そうですね、じゃあご一緒させてもらえますか」

 

 「はい。魔理沙なら文句は言わないでしょうし」

 

 「叶也、まだか?」

 

 ちょうど魔理沙がこっちにやってきた。隣にはアリスも立っている。

 

 「アリスも一緒でいいよな?」

 

 「僕は構わないよ。僕の方もさとりさんを誘ったところだし」

 

 「私は誰が一緒でも構わないぜ。アリスもいいよな?」

 

 「ええ、どっちでもいいわよ。そもそも私は無理矢理あんたに付き合わされてるわけだし。あんたが叶也と二人きりは恥ずか「わあわあわあ!それを言うな!」…はいはい、分かったわよ」

 

 一体アリスは何を言おうとしたんだろう?非常に気になるけど、魔理沙も聞かれたくないみたいだしいっか。

 

 「と、とにかく学食に行こうぜ!」

 

こうして少しドタバタしながらも僕らは食堂に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私立幻想学園は食堂もすごい。味、値段、品ぞろえ。どれをとっても文句のつけようがない。値段に限って言えばものによっては高いのもあるけど、安いのでもかなりおいしい。

 

 それに広い。学校の生徒が全員入れるんじゃないかってくらいには広い。この学園の建物ってやたらとでかいんだよな。図書館しかり、食堂しかり。

 

 ホントにどうやってこんなとんでもない学校を運営しているんだ?…まあ、紫さんならなんでもできちゃいそうだからそこまで不思議ではないか。

 

 「じゃあ、それぞれ自分が食べたいものを取ってきてからこのテーブルに集合で!」

 

 と魔理沙が言って、みんなバラバラになってから少し時間が経過している。

 

 僕は日替わりランチセットAを買ってテーブルに戻ってきていた。

 

 ちなみに、テーブルはお弁当を持ってきていたアリスに取っておいてもらった。

 

 「アリス、ほかの二人は?」

 

 「まだよ。お昼時は混むから、…って来たみたいね」

 

 アリスの視線を追うとお盆を持って歩いてくる二人が見えた。

 

 魔理沙はかつ丼で、さとりさんはパスタか。

 

 そのあとは雑談しながらお昼御飯を食べた。

 

 穏やかなお昼時。

 

 このまま和やかにそんな時間が過ぎていくと思っていた。

 

 だけどそんな空気はさとりさんが投じた一言によって消し飛んだ。

 

 「ところで前々から気になっていたんですが、叶也さんには好きな女の子はいるんですか?」

 

 「「ぶふぅ!!!」」

 

 僕と魔理沙は思いっきり吹き出した。アリスも若干驚いている。

 

 こ、これってあれだよね、いわゆる恋愛的な好きのことだよね。それとも友達としてだれが一番好きか聞かれてるのか?

 

 「きゅ、急にどうしたんですか?」

 

 「そ、そうだぜ!こんな真昼間からなんて話をするんだ!」

 

 魔理沙は真っ赤な顔になって僕を援護する。でも時間帯の問題ではないと思うんだ、僕は。

 

 そんな思いを視線に乗せて魔理沙に送る。じっと見ていると魔理沙はさらに赤くなって俯いてしまった。なんで?

 

 「いえ、大したことではないので気軽に答えてください」

 

 いや、僕にとっては大事ですよ?今まで考えたこともないし…、幻想郷の女の子ってみんな可愛いし、綺麗だし面白い人たちばっかりだけど、恋愛感情を持ったことはない、と思う。

 

 「えっと、みんな大好きですよ、友達として」

 

 「そうですか」

 

 なんだか、こういうこと聞かれるの初めてだからどうしたらいいか分からないよ。顔とか真っ赤になってるんじゃないかな。

 

 「…深層意識までのぞいてみたけど特別な感情を抱いている女の子はいないようね。でも、幼馴染のあの二人は少し注意が必要かもしれないわ」

 

 また独り言だ。やっぱり今日のさとりさんはなんかおかしいぞ。

 

 「では次ですが…」

 

 「次!?」

 

 「はい、次は好きな女の子のタイプを教えてくれませんか?」

 

 何なんだ?いったい何が起きてるんだ?誰か助けておくれよ!!

 

 助けを求めて魔理沙とアリスの方を見る。

 

 アリスは面白い物を見るような目で僕とさとりさんのやり取りを見ている。

 

 魔理沙はさっきまで真っ赤になって湯気を出してたのに、今は食い入るように僕を見ている。

 

 だめだ、味方がいない。

 

 と、とにかくこの場を何とかやり過ごさないと。

 

 「ええっと、と、とくにそういうことは考えたことないかな。でもやっぱり話してて楽しい人がいい、かも」

 

 こ、これでどうだ!おいアリス、つまらない答えね、とか言うな!

 

 「…くっ、こっちもあまり情報が得られないわね。でも髪型は長いほうが好きみたい。少し伸ばしてみようかしら」

 

 また独り言を…ってあれ魔理沙が怖い顔してる。

 

 「さとり、もしかしてお前…叶也の心を読んでるのか?」

 

 えっ、僕の心を?

 

 「ちょっと魔理沙、そんなはずないよ。魔理沙も知ってるだろ。僕にはさとりさんの能力は効かないんだよ」

 

 「でも、今朝は鈴仙の狂気の魔眼も効いてたじゃないか」

 

 あっ、そういえばそうだ。昼休みはそのことを紫さんに相談しに行こうと思ってたのにすっかり忘れてた。

 

 「どうなんだ、さとり!」

 

 「そう、ですよ…。私は能力で叶也さんの心を読んでいました。………こっそりこんなことをする私を軽蔑しましたか?」

 

 そういって、僕に視線を向けてくるさとりさん。

 

 正直、そんなに迷惑ってわけでもない。僕の心の中なんてしょっちゅう霊夢や紫さんにばれてるし。それにさとりさんになら見られても迷惑ではないかな。

 

 「確かに心の中を見られていたのはびっくりしたけど、そんな軽蔑するほどのことでもないですよ。」

 

 そういうと、さとりさんは目を見開いて少しの間固まってしまった。

 

 「えっと、大丈夫ですか?」

 

 「大丈夫、ですよ。やっぱり叶也さんは不思議な方ですね」

 

 褒められたのか、貶されたのかよくわからない返答をもらってしまった。でもとりあえず一件落着かな?

 

 あっ、そうだ。

 

 「というわけで魔理沙、僕は何とも思ってないからそんなに怒んないでね?」

 

 いまだに怖い顔をしている魔理沙にそう告げた。怖いというか鬼気迫る感じだ。

 

 「叶也がどう思っているかなんて関係ないぜ!」

 

 あれ?僕の代わりに怒ってくれてたんじゃないの?

 

 「さとり、ちょっと耳かしてくれ」

 

 「はい、どうぞ」

 

 さとりさんはもう話の内容が分かっているのか、にやりと笑って魔理沙によっていく。

 

 「…お前、叶也はだれが好きかとか、叶也の好みとか見たんだろ?お願いだから教えてくれよ」

 

 「…それはおしえられないですね。私だけの秘密です」

 

 「…そんなこと言うなよ。言わなきゃこのこと紫にばらすぞ?」

 

 「…それは、色々と面倒なことになりそうですね」

 

 今度は二人でひそひそ話が始まってしまった。

 

 こっそりお話しされると話の中身が気になるよね?

 

 こういう時は直接聞くのが一番だ!

 

 「ねえねえ、二人で何話してるの?」

 

 「っ!?い、今は聞かないで!!」

 

 「ごべら!!!」

 

 魔理沙が瞬時に作った魔力の弾が僕にぶち当たる。

 

 弾き飛ばされた僕はアリスの隣に綺麗に落っこちた。

 

 「いててて。ねえ、アリスはあの二人がなに話してるか分かる?」

 

 起き上がりながらアリスに聞いてみる。アリスは意外と人の機微に敏感だから何かわかるかも。

 

 「大体は予想がつくけど、あんたには教えないわよ」

 

 「なんで!?」

 

 「あんたも少しは自分で考えなさい。あんたが気づかないと周りが苦労するのよ」

 

 「え??」

 

 「はあ、先が思いやられるわ」

 

 

 

 

 

 そのあと、今度は魔理沙とさとりさんが一緒になって僕を質問攻めにしてきた。

 

 「初恋の人は?」とか、「どんな服が好きか?」とか、挙句の果てには「胸が大きい女の子と小さい女の子どっちが好きですか?」とか聞かれた。

 

 さすがに恥ずかしくて逃げ出そうとしたけど、アリスに捕まえられたし。

 

 なんだか精神的に疲れる昼休みだったなぁ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~SIDE ???~

 

 やっぱり、お兄ちゃんは見ていて退屈しない。

 

 魔理沙に飛ばされたときのお兄ちゃんの顔はすっごいおもしろかった!

 

 ホントにお兄ちゃんは面白いなあ。

 

 そうだ、次はあの人に教えてあげよう。

 

 今なら薬とかも効くかもしれないし、案外面白いことが起きるかも!

 

 そうと決まれば保健室に、って今は化学室かな?

 

 まあ、どっちでもいいか。放課後まで時間はまだまだあるし、とにかく探しに行ってみよー!

 

 ~SIDE OUT~

 

 

 





 少女暗躍中…


 謝罪
 テスト期間につき今月の更新はこれ以上できないと思います
 毎週楽しみにしてくれている皆様、誠に申し訳ございません
 来月からはまた週一更新で頑張ります

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