東方妄想譚 ~ドタバタ☆私立幻想学園~   作:さとゴン

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なんと今回は4000文字オーバーです(-_-;)

無駄に長くなってしまいすいません<(_ _)>


第10話  保健室のウサギ

 

 

 

 …う、うーん。なんだか体中が痛いな。

 

 目が覚めたとき何故か僕はベッドの上に横になっていた。

 

 えっと、……ダメだ思い出せない。レミリアさんにお仕置きれた後どうなったんだ?

 

 「おっ、やっと起きたのか。なかなか起きないから心配したんだぜ」

 

 「魔理沙?」

 

 ベッドの横の椅子に腰かけていたのは僕の幼馴染の霧雨魔理沙。…どんどん状況が読めなくないくな。

 

 「ああ、魔理沙ちゃんだぜ。頭強く打ちすぎて記憶喪失にでもなったのか?」

 

 「いや、そんなことはないけど。なんだか状況が呑み込めなくてね」

 

 「叶也はずっと気絶してたからな。ここは私が説明してやるよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 魔理沙が言うことには僕は通学路のど真ん中で黒焦げになっていたらしい。ちなみにフランちゃんとレミリアさんはその近くで姉妹喧嘩をしていたそうな。…喧嘩する前に僕の介抱をしてほしかったです。

 

 それを見かけた魔理沙は僕を担いで学校の保健室まで連れてきてくれたとのことだ。

 

 「いやー、ありがとね。あのままだと学校に遅刻して授業にも出れないところだったよ。」

 

 「気にするのはそこかよ…。てか、授業ならもう始まってるぞ。」

 

 「えっ!?」

 

 僕は保健室にある掛け時計を見た。

 

 ぎ、ぎゃあああああああああああ、もう一時間目が半分ほど終わってるうううううううううううう。

 

 「ぼ、僕の貴重な授業時間がぁ…」

 

 「叶也ってホント変な奴だな。普通だったら授業がサボれて嬉しい!って泣いて喜ぶもんだろ?」

 

 それは大袈裟すぎでしょ。まあ言いたいことは分かるけどね。僕も最初からこっちの人間だったらそんな風になってたのかもしれないし―――泣いて喜びはしないと思うけど。

 

 「とにかく一時間目の間だけでも休んどいたほうがいいぜ。なんだか今日のお前は回復が遅いみたいだし」

 

 そういえば、まだ体中が痛い。妖怪一屈強である鬼、その中でもトップクラスの実力者である萃香さんにも「お前の頑丈さと回復力は幻想郷でも五指に入るほどなんじゃないか?」と言われたほどなのにだ。というかそれはもう人間ではないような気が…、いや考えるのはやめておこう。

 

 「今、保健委員の兎が薬取りに行ってるから、おとなしく待ってるんだな」

 

 「わかったよ。ところで魔理沙は授業でなくていいの?」

 

 「叶也が心配で授業になんて集中できないぜ」

 

 うわぁ、満面の笑顔だよこの人。さては僕をダシにして授業をさぼったな。まったく僕は出たくても出られないってのに。

 

 「ごめんなさい、少し遅くなったわ」

 

 あっ、保健委員の人が薬を持ってきてくれたのかな?

 

 保健室に入ってきたのは頭の上の兎耳が特徴的な、鈴仙・優曇華院・イナバさんだった。

 

 「あっ、目が覚めたのね!」

 

 僕の顔を見て心底安心したように鈴仙さんは言った。

 

 「すいません、心配かけてしまって」

 

 「べ、別にあんたを心配なんかしてないわよ!保健室で死人が出なくてよかったと思っただけなんだからね!」

 

 怒鳴られてしまった。幻想郷にいた時から鈴仙さんには会うたびに怒られてばっかりだな。なんか嫌われるようなことでもしちゃったかな?

 

 「ところで薬はもらえたのか?」

 

 「ええ、これを飲めばたとえ四肢が全部もげた状態でも、元通りの健康体に戻れるそうよ」

 

 …効き目が強すぎて逆に怖いよ。なんだか色も毒々しい。匂いもきつい。

 

 「ねえ、ほかの薬はないの?」

 

 「あったらわざわざ先生のところまで薬取りに行ったりしないわよ。ほら飲みなさい。」

 

 仕方がないか。これを飲まなきゃ授業にも行かせてもらえないみたいだし。

 

 鈴仙さんが突き出してくる薬に手を伸ばした

 

 「ありが…っいて!」

 

 いったあ!み、右手を動かしただけなのに体中が痛い!

 

 「ちょ、ちょっとあんたそんなにひどいの!?」

 

 正直かなりきつい。なんたってちょっと動かしただけでこの様だもんな。

 

 どうやって薬を飲めばいいんだよ。

 

 ふと鈴仙さんのほうを見るとなんだか深刻な顔をしている。どうしたんだろ?

 

 「…じゃあ、私が飲ませてあげるわ」

 

 「え?」

 

 「か、勘違いしないでよ!これは保健委員としての仕事なんだからね!私は嫌だけど仕方がなくやってあげるんだから感謝しなさいよ!」

 

 顔を赤くしながら一気に捲し立てる鈴仙さん。僕の体は今動かないわけだしそれが最善策かな?

 

 「じゃあ、おねが「ちょっと待った」…へ?」

 

 僕のセリフを途中で遮ったのは魔理沙だった。いったいなんで?

 

 「叶也もいやいや飲まされるのは辛いだろ?ここは私が飲ませてやるよ」

 

 そんなことを言い出す魔理沙。僕は飲ませてくれるならどっちでもいいんだけど確かに無理して飲ませてもらうのも心苦しいかな。

 

 「じゃあ、まり「待ちなさい!」…さ?」

 

 今度は鈴仙さんに止められた。

 

 「これは保健委員の仕事よ!部外者は引っ込んでなさい!」

 

 「おいおい、部外者とは失礼だな。私が叶也をここまで運んできたんだ。やっぱり拾ったものの面倒は最後まで自分で見ないといけないだろ?」

 

 まるで捨て犬のような扱いだな、僕。

 

 「そんなの関係ないわ!ここは保健室で私は保健委員、そして保健室にけが人がいるなら、その手当をするのが保健委員の仕事よ!」

 

 「そんなこと言って、ホントは叶也に手ずから薬を飲ませてあげたいだけなんじゃないか?叶也がここに運んできたとき、お前顔面蒼白になって慌ててたもんな。」

 

 あっ、やっぱり心配してくれてたんだ。さっきのは僕に気を使わせないための気遣いだったのかな。

 

 「そ、そんなことないわよ!そういうあなただって、叶也を運んできたときすごく泣きそうな顔してたじゃない!」

 

 「なっ、そんなわけないだろ!!」

 

 えっ、魔理沙が泣きそうになってたって!?……正直想像できないな。少なくともここ数年は魔理沙のそんな顔は見てなかったし。

 

 というか僕ってそんなにひどい状況だったの?

 

 「と、とにかくその薬を寄越せ!」

 

 顔を赤くしながら魔理沙は鈴仙さんの手から薬を掠め取った。

 

 「ちょっ、何すんのよ返しなさい!」

 

 今度は鈴仙さんが魔理沙から薬を取り返す。

 

 そこからは薬争奪戦が始まった。もはや当事者の僕のことすら忘れてるんじゃないか?

 

 「ちょっと二人ともそんなに暴れたら薬が…」

 

 僕が声をかけた瞬間二人の動きが一瞬ずれた。そしてそのずれは大きな誤差につながった。

 

 「「「あっ」」」

 

 二人が取り合っていた薬が宙を舞った。それは弧を描きながら動けない僕のほうに向かってきて、そして…

 

 がしゃーーーん!

 

 「きょ、叶也?大丈夫か?」

 

 「…まあ、大丈夫だよ。というか今のでなんか体も治っちゃったし」

 

 そう、なんとあの薬、体にかけただけでも効果があったらしい。そんな強力なもの服用したらいったいどうなってたんだか。

 

 「ごめんなさい、私も少し熱くなり過ぎたわ」

 

 「そ、そんないいんですよ。すっかり体も良くなったし、僕は気にしてませ…ん……」

 

 そのとき、僕は落ち込んでいる鈴仙さんを慰めようと彼女の顔を覗き込んだ。そして今日初めて彼女の紅い目を直視した。

 

 そして、世界が変わった。

 

 変わったといっても、景色に変化はない。

 

 ただ僕の周りにおぞましいアイツがたくさん現れた。

 

 体の震えが止まらない、嫌な汗が噴き出してくる、呼吸が整えられない。

 

 「……い」

 

 「ん?どうした叶也、なんか様子がおかしいぞ?」

 

 「うわっ、あんた汗がひどいわよ。それに顔も真っ青になってるし」

 

 「いやああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」

 

 なんでここに奴らがいるんだ!む、無理だ、僕にはこの空間にいるのがもう耐えがたい!

 

 「ちょっ、どうした叶也!」

 

 「…似てるわ」

 

 「はあ?何に似てるんだ?」

 

 「私の狂気の魔眼に捕われた人間たちの反応と似てるのよ」

 

 「でも叶也には…」

 

 「ええ、私の魔眼は効かないはずなのよ。とりあえず私が元に戻せるかやってみるわ」

 

 周りで何か話しているが今はそれどころじゃない!は、早くこの状況を何とかしないと僕の精神が持たないよ!

 

 「と、とにかく全部消せばいいんだ!」

 

 こうなったら僕の最強のスペルカードを―――

 

 「叶也!こっちを見なさい!!」

 

 僕を呼ぶ声に反射的に振り返る。

 

 僕の目はまるで吸い込まれるように鈴仙さんの目を見た。

 

 その瞬間僕の周りから奴らは消えさった。

 

 「あ、れ?」

 

 「やっぱり狂気の魔眼のせいだったのね」

 

 「えっ?でも僕には狂気の魔眼は効かないよ?」

 

 「そんなの私だって知ってるわよ。つまり今のあんたは異常だってことよ」

 

 一体なんでだろ?この世界が関係してるのか、それともさっきの薬のせいか…。とりあえず後で紫さんに聞いてみよう。それが一番手っ取り早いだろう。

 

 「こ、このまま、ずっと元に戻らないなんてことは、無いわよね?」

 

 少し怯えながら、鈴仙さんが聞いてきた。

 

 もしかして薬のせいだと思ってるのかな。それで責任を感じてるのかも。

 

 「大丈夫だよ鈴仙さん。きっと元に戻るから」

 

 「あっ」

 

 僕は思わず鈴仙さんの頭を撫でていた。なんだか弱弱しい鈴仙さんを慰めたくて、気づいたら頭の上に手が伸びていた。

 

 そのまま少しの間沈黙が続いた。なんだか恥ずかしいな。鈴仙さんも顔が赤くなってるし

 

 「あー、おほん、私を無視するのもいい加減にしてほしいんだけど」

 

 「あっ、えっと、き、気安く頭を撫でないでよ!」

 

 「ご、ごめん!」

 

 僕は慌てて手をどかした。

 

 しまったな、この前パチェにも注意されたばっかりなのに。

 

 手を退けたとき鈴仙さんが一瞬残念そうな顔をしたように見えたのは気のせいだと思う。

 

 「とりあえず、そろそろ教室に行こうぜ。ちょうど一時間目も終わったみたいだし」

 

 学校に授業終了のチャイムが響き渡る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 保健室で鈴仙さんと別れ、魔理沙と教室に向かいながらふと思った。

 

 今日はまだ半分も終わってないというのにこんなにひどい目にあうなんて、ほんとに厄日なんじゃないかな?

 

 僕のこの想像は当たっていたのだが、この時の僕は偶然だと思い気にも留めていなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~SIDE ???~

 

 私が保健室の前を通りかかったのは偶然だった。

 

 つまらない授業を抜け出して当てもなく学校を歩き回っていたら突然悲鳴が聞こえてきた。

 

 何が起きたのか気になって悲鳴の発生源まで行ってみるとそこにはお兄ちゃんたちがいた。

 

 やった!こんなところでお兄ちゃんに会えるなんて!

 

 私はすぐにお兄ちゃんに飛びつこうとしたけど、驚かせようと思って能力を使ってこっそり近づいた。

 

 それにしてもお兄ちゃんの様子がおかしいけど大丈夫かな?

 

 あっ、治った。

 

 

 

 

 

 「あ、れ?」

 

 「やっぱり狂気の魔眼のせいだったのね」

 

 「えっ?でも僕には狂気の魔眼は効かないよ?」

 

 「そんなの私だって知ってるわよ。つまり今のあんたは異常だってことよ」

 

 

 

 

 

 お兄ちゃんに能力が効く?それってもしかして…

 

 「今ならお姉ちゃんの能力も効くんじゃないかな?」

 

 これは面白いことができそうだ。

 

 そんなことを考えていると授業終了のチャイムが校舎に鳴り響いた。

 

 善は急げっていうしさっそくお姉ちゃんのクラスに行こうかな。

 

 ~SIDE OUT~

 

 

 





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