ダンジョンズ&ドラゴンズもの練習   作:tbc

43 / 45
ボツ稿 ネトゲものと集団転移ものを半々

 

=1:ハロー、ワールド=

 

 惰性で進学した県立校の校門をくぐったと思えば、いつの間にやら立派なレンガ造りの校舎を前にした見知らぬ並木道の中にいた。

 周囲にポツポツといた新入生や先輩方の姿は大勢の見知らぬ男子女子に変わって、中には耳が尖ってて長かったり、明らかに背が小さかったりする外国人というにはおかしな姿まである。無骨で醜いハゲの人型モンスターもいて、それを見た黒人系長耳女子がたった今 悲鳴を上げて逃げ出して行った。

 とりあえず手近にいた、異なる学校の制服を着た白人系長耳男子――口端から覗く犬歯がチャーミング――に話しかけた。

 

「悪い、ここはどこだろうか。さっきまで○○市にいたはずだが」

「いや、うちは△△町の……○○市?○○県のか?」

 

 県名、市名が同じなだけあって、俺の出身地はすぐに通じた。

 しかし彼の言う△△町は聞き覚えがなく、具体的な都道府県を聞いてみると隣県どころか海峡を挟んだ別地方だった。

 

「直前に、地元の入学式に出ようと9時頃に校門をくぐったところまでは覚えている。そっちは」

「うちも同じや。校門をくぐったんやけど……10時前やったな」

「時間の違いはあるな。誤差か?もっと不思議な現象もあるわけだし、気づいてるか。その耳、人間じゃなくなってるぞ」

「は、何言って、うわマジなんかこれ!?ちょ、鏡、鏡貸せ!」

 

 鏡なんて持ち合わせはない。そもそも背負っていたはずの学生鞄までどこかに消え去っていた。

 念の為、俺自身も耳や頭を隅々まで触るが、変化は感じられない。どうやらこの場にいる数割の、変化を与えられなかった人間に入れられたようだ。

 

「あの校舎に行けば鏡になるものくらい、あるだろう。ひとまず道を聞くため、鏡を探すため行ってみないか」

「……そやな。まわりの奴もうちらと同じみたいやし、こんな大騒ぎなら親切にしてくれるやろ」

 

 他の人にも話を聞きたいところだが、まだ落ち着いてない人類たちが多すぎて上手く聞けそうもない。そのため彼らは放っておいて、俺たち二人は先に並木道から立派な校舎へと向かった。

 校門には「冒険者学園」と、謎の校名が漢字で書かれていたので宇宙人に攫われた説は無いと思った。

 

 

===

 

 見知らぬ構内に侵入した俺たちは、正面の建物に入ったところで最近設置されたのか塗装が新しいベニヤの案内板を見つける。

 俺たちより先に来ていた男子(人間)が一人、それを見て悩んでいた。

 

「なあ、あんたGANTZって漫画知っとるか?死んだ人間が天国の代わりに、宇宙人との殺し合いに連れ去られるって話」

「知っている。これほど親切じゃなかったように思うが。そもそもジャンルが違う」

 

 俺たちの頭も悩せられた案内板の内容はこうだ。

 

『この学園へやってきたみんなへ

 このエントランスホールにある装置の透明なボールに手を当てて、

 浮かんでくる6つのうち一番高い【数値】を覚えよう!

 

 【筋力】や【耐久力】が高い人は、  左奥の戦士組の教室へ進んでね。

 【敏捷力】が高い人は、     左手前のスキル組の教室へ進んでね。

 【知力】【魅力】が高い人は、   右手前の魔法組の教室へ進んでね。

 【判断力】が高い人は、       右奥の信仰組の教室へ進んでね。

 

 複数の【数値】が高い人は、上の4つのどれか、または階段から上がって二階の特別科の教室へ進んでね』

 

「ドラクエやな」

「RPGだな。……学園もののファンタジーなんて、メジャーどころに聞き覚えはないが。アトリエシリーズともズレてる。

 何にせよ、校門にあった冒険者学園って名前が真実味を帯びた。なんで俺たちがここにいるのかはまだ分からないが……」

 

 ベニヤ板の前には長テーブルがあって、その上には金枠に嵌めて固定された水晶玉が10個ほど並んでいた。

 俺たちより先に悩んでいる男子はそれを触りながらベニヤ板の説明を凝視している。その水晶玉は、他に置かれているものと違ってぼんやりと二桁の小さな数字が複数浮かんでいるのが見える。

 

「魔法かぁ。ホントなら面白そうやん」

「さあ、案外 レベルを上げて物理で殴るゲームかもしれん」

 

 俺は足を踏み出して、水晶玉に両手をかざし、ゆっくりと挟むように指先から触った。

 ひんやりと冷たい感触が伝わると、水晶玉にはモヤモヤと二桁の数字とその説明の文字が6組、浮かんだ。

 

『筋力11 敏捷力16 耐久力14 知力13 判断力14 魅力10』

 

 一番高い数字は敏捷力。案内板に従えばスキル組ということなのだろうが……。

 

「そっちはどうだった?」

「よっしゃ、知力17や!これが高いのか低いのか分からんけど、そっち20とか出とったか」

「いや、16が最大だ。最低が10で、一桁は出ないと見たがどうか」

「こっちも12が最低で、一桁はないな。そこのやつにも聞いてみたらええんちゃう?なあ、あんたは数字どないなったんか?」

 

 エルフ耳は隣にいた先客、冴えないおかっぱ頭をしたメガネの人間男子に話しかけた。

 じっくりと考え込んでいたらしい彼は人外に話しかけられたことに戸惑い、少したって気を取り戻してエルフ耳の問いに答えた。

 

「……知力が17で、あとは最低が11ばかりでした」

「ふむふむ、10後半が高くて、10に近いほど最低と見て良さそうやな」

 

 同感だ。つまり俺のステータスの殆どは半分以下である。自分のことながら、優秀と言えるほど頭は良くないし、部活動もしている学生に比べたら筋力はないのは確かだ。

 半分、すなわち平均あるだけ良いと考えよう。

 

「しかし、同じ知力が高い同士仲間やな。うちはタラオ、魔法組同士仲良くしてな」

「あの、その耳……エルフ、なんですか?」

「せやなー、なんかこうなっとった。鏡見とらんけど、放熱性グンバツでめっちゃ耳冷えるわ。でも人間時とあんま変わらへん感じよ」

 

 エルフ耳はいつの間にやらメガネくんと仲良くなって、俺の方を見ていない。異常事態の真っ只中で呑気なことだ。

 彼らほど呑気にはなれない俺はスキル科の教室へ向かわず、あえて他の教室へ寄り道をした。教室といっても既に先客の学生たちがいるだけで先生方とか見張りはいなかったので、長テーブルの各席に置かれていたパンフレット風の冊子を教室別にせしめることは簡単だったからだ。

 

===

 

『学生のみなさま、冒険者学園へようこそ。

 今から10分後に、アナウンスを始めます。学生の皆さんは教室の席について待っていてください』

 

 教室情報にくくりつけられたスピーカーから発される女性のアナウンスを聞き流しながら、スキル組教室でパンフレットで見た情報を整理する。教室ごとに違う内容は書かれていたが、俺たちのもっともな疑問を含む重要な事項は全ての冊子の冒頭に記述されていた。

 俺たちをこの謎空間へ連れてきたのは地球の神々である。神々は3年後、宇宙からの侵略者に地球が襲われることを予知したため、未来を担う学生たちに超常能力を身につけ、対抗させるために特殊な別世界に呼び出したとのこと。人間だけでは身につけられない技能もあるため、また何割かの学生は転生させられているとも書かれていた。

 ずいぶん理不尽だが概ね理解した。神様ならば、一瞬で見覚えのない場所へ連れてくる神通力も持つだろう。

 しかし納得がいかないこともある。人知を超えた神々ならば、もっとスマートに説明する手段、与える方法もあるのではないか?そもそも案内もなしに教室へパンフレットがポンと置かれただけでは、雑すぎる。別の意図か、手が加わったように思うが、裏付けはないのでこの場ではただの推測に過ぎない。

 

 

 4冊のパンフレットを読み込んでいるうちに、教室には学生が増えて騒がしくなっていた。混乱から落ち着いたのだろう人間以外の種族になった学生たちもいる。制服はやはり見覚えない学校のものばかりだが、不思議なことにサイズはぴったし合っている。そのへん、神様がわざわざ仕立て直したのだろうか?

 

「隣、失礼しますよ」

「どうぞ」

 

 反射的に声を返したが、その発した人物の方を見れば テーブルの上によじ登って座高との差から俺を見下ろしていた。子どものような身長の小さい女子生徒だ。

 

「本当に失礼だな」

「仕方ないでしょう、イスに座ると前方が見えないんです。

 立ったままでは落ちつくこともできませんし、こうしてテーブルに座るしかありません」

 

 彼女はそう言い、テーブルの前縁に腰掛けて、足をぶらぶら垂らしながらパンフレットを広げた。

 どう見ても、見たままの子どもではない。パンフレットには異なる人型生物(ヒューノマイド)についての説明もあった。

 人間やエルフ、ドワーフにオーク(豚面ではない)と、ゲームで馴染み深い種族名も見られるが、これら人型生物はまだ人間の身長とさほど変わらないとあった。目の前の女子は人間と比して明らかに小さいことから、小型種族のノーム、またはハーフリングのどちらかだろう。

 パンフレットによると、同じ非力な小型種族でもハーフリングは敏捷性に優れる一方、ノームは耐久力に優れるとある。外見は、ノームは日本人風な平たい顔つき、ハーフリングは西欧人風の細い輪郭と書かれており、この女子は見た感じの輪郭から……。

 

「ノームか」

「らしい、ですね。ショックです。小さい女の子は可愛いって、度が過ぎますよ」

 

 同じ背丈のノームやハーフリングの男子がいるじゃないか、と思いかけたがそれは差別発言に繋がりうる言葉だと気づき、寸で口を閉じた。

 ノーム女子は何かを言いかけた俺の口を胡乱げな視線で見ていたが、代わりに手元のパンフレットを注視した。

 

「その違うパンフレットはどこにあったんですか?」

「他の教室にあった。時間はあったし、見張りがいないから勝手に入ってくすねてもバレなかった」

「ああ、なるほど……それ見せてもらっても良いですか?」

「どうぞ。大したことは書かれていなかった」

 

 パンフレットに書かれていたのは、学校施設の地図と、「~~のクラスでは、~~といったことができます」といったネットゲームのチュートリアル地味た説明だ。学校で用いる教科書とは程遠い、理論や公式をすっ飛ばして戦士組、スキル組、魔法組や信仰組の各クラスごとに出来ること、やるべきことが載っているだけ。魔法といった超常能力の獲得法は載っていない。

 

「なんと言いますか、何の学校なのでしょう?」

「『侵略者の倒し方』じゃないかな。」

 

 

 




ここまで書いて導入でくどくなったからボツ

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。